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異種族趣味の管理者【アドミニストレータ】  作者: てんとん
1章 導入:メンテナンス
6/33

6話 予定決めずに集まってグダるアレ。


 ナタリーはさっきの服以外の何着かをもってレジに並んでいる。この世界の買い物の仕方を早く覚えてもらわねば……俺は夏季休暇が終わったら半日以上家を空けるのだし。

 今、ナタリーは魔女服でなく、さっき試着した格好をしているので不自然に思われることはないだろう。店員さんに無理言ったかいあったというものだ。

 ミカはというと勝手に買い物を終わらせていた。なんでも識別の目とやらを持っているらしく、試着なしで自分のサイズに合った服を判別できるそうな。お金はどうしたのかと聞くと、自前で神界から持ってきたと言っていた。なんかよくわからんが、チートくさい。買った服も無限収納(インベントリ)とかいう空間の裂け目の中に入れてハンズフリーだし。

 流石神様である。


 その後、靴屋によってミカ用の靴を二足と、ナタリーはブーツを履いていたので、ほかの靴をもう一足買っておいた。



 昼飯を食べた後、特にすることもないのでネットカフェの複数人用の個室に入る。


「とりあえずここで時間をつぶすか」


 ナタリーがマンガとかを読めるのかと思ったが、地球に落ちてきて言語も違うであろう俺と喋れたことから、たぶん心配はいらないだろう。


「うーん、せっかく靴を買ったんだから、ワタシも歩いてみようかな」


 と、さっき買った二足のうち、サンダルを履いてミカが歩き回り始めた。これまでは浮きながら歩くふりをしていたんだったか?実際には浮遊移動してたわけだ。

 個室のドアをあけ放ち、ネカフェの廊下を徘徊する。


「ほっ、あー、これは結構疲れるねぇ。君たちはいつもこんなことをしてるのかい?」


 ミカの声が近づいたり遠ざかったりしながら聞こえる。


「ミカ、人も魔法使いも足は歩くためにあるんだぞ? 神様だってそうじゃないのか?あと迷惑になるから店内で歩き回るな」

「ナタリーたち魔法使いはあまり歩かないですよ? これがあるので」


 ナタリーが手に持った箒を指さして言う。

 箒は移動手段だから、生まれてすぐ練習を始めるらしい。こっちの世界でいう自転車の練習みたいなものか。ちなみに箒で飛ぶときに速度を出しすぎると、こっちでいう警察に捕まるそうな。


「だよね~ワタシたち飛べるもんね! タクムくんも飛んでみたらわかるんじゃない?」


「はい、『浮遊(フロート)』」


 ミカがそう唱えると、俺の体が少し浮き上がった。


「おい! 変なことすんなよ!」

「ただの浮遊魔法だよ。どうにもならないから安心してね。あ、視界に浮遊したまま動く方法を表示しといたからそれ見て動いてみるといいよ。ワタシもしばらく歩いてるからさ」


 というと、ミカは歩き回る作業に戻った。ほっ、ほっと言いながら手を振って歩き回る。俺の言いつけを守るようで、店の外に出て歩くつもりみたいだ。

 ナタリーはというと、俺のノートpcをいじいじしてる。ホテルで検索の仕方を教えたので、分からないことがあったら俺に聞くか調べるだろう。


 視界に表示された操作方法に従いながら、俺は浮きながら移動する。慣れてきて空中で自由な体勢をとれるようになってきた。寝そべりながら移動できるのは楽でいいな。

 一回ほど体が逆さまになって、頭に血が上り死ぬかと思ったが、ナタリーに助けられて事なきを得た。

 体が浮いてるだけで重力に逆らってるとかではないみたいだ。


 操作にも慣れてやることがないので、ナタリーと一緒に彼女のソースコードを見ている。よくわからない部分が多々あるが、変数名に"DNA"だの"Hydrogen(水素)"があったり、ナタリーのスリーサイズが書いてあったりしたので完全に読めないわけではなさそうだ。

 ちなみに人体の構成元素は酸素、炭素、窒素、水素、リン、イオウなどなどの29種類であるらしい。ネットは本当に何でも転がっている。


「スリーサイズって何です?」


この話をナタリーとしていたら、こんな質問が飛んできた。


「えっと……」


 普通はこれ言ったら怒るやつだろう。いやでも、歳聞いても怒んなかったし。


「なんです? 言いにくいことなんですか?変に思ったりしないから言うです!」

「あー、スリーサイズってのはさっき並んでた三つの数字で、ナタリーの、その……胸とおなかとお尻の大きさを表すものなんだ」


 ナタリーは目を閉じてしばらく考えたとおもったら、口元に花が咲いたような微笑を浮かべた。


「……そうですか。どうせナタリーはちっぱいでお尻がちっさいですよ……!! そういえばナタリーは聞いたことあるです。頭を強く打つと記憶が飛ぶことがあるらしいですよ?? 実験してみるです。タクム?」


 咲いた花はヒガンバナだったか……!ナタリーが箒を振りかぶる。

 やべえ、こいつ本気(マジ)だ!?目が笑ってねぇ!!彼岸に行くのはまだ早いっての!!

 俺はとっさに浮遊高度を上げる。


「この!箒が当たらないじゃないですか!! 『拘束(バインド)』!」


 箒にまとめられているほうき草のうちの数本が、伸びてきて俺を絡めとる。すぐに身動きが取れなくなった。


「観念して(こうべ)を垂れるのです……!!」


「あの、ナタリー様、頭は人間の急所なんですよ! 強く打っちゃうと死んじゃうですよ! だから、ね!? 箒を下げてほしいのです!?」


「今、ナタリーの口調をバカにしたのでダメです!! 有罪(ギルティ)ー!!」


 高校球児ばりの綺麗なフォームで箒をスイング。箒が空気と凄まじい擦過音を立てて迫る!!

 ——と、不意に浮遊感が消えた。

 顔の目の前を箒が凄まじい速度で通り過ぎる。箒は当たらなかったが、代わりに落ちた瞬間に腰を打った。非常に痛い。


「ちょ……ああっ!!」


 フルスイングの反動でよろけたナタリーが俺に躓いて倒れる。——ちょうど俺に覆いかぶさるような形で。


「ふぁ!?」


 至近距離でナタリーの顔が見える。こいつ、肌綺麗だなぁ。思えば子供はそんなものか?いや、218歳だったな。ファンタジーだ。

 ナタリーの顔が真っ赤に染まる。と、俺らがいる個室のドアが開いた。


「たっだいま~。……あらま、ナタリーちゃんやるねぇ!!」


 ミカの目には、拘束された俺と、覆いかぶさるナタリーが映っていた。


「ち、違うのです!!」


 がばっ、と体を起こし、ナタリーがドアのほうを振り返って言う。


「え~?? 口より現場が物語ってるよ~?? 縛って襲うなんてね!!」


 いやまあ、縛って襲われたけども。そんな浮いた襲い方じゃなかったな。


「違うのです違うのです!? ナタリーはそんないかがわしくないのです!! 獣じゃないのです!?」


「いいっていいって、分かるよ~!! タクムくん奥手っぽいし、まずは意識させるとこからだよね!」


「あー!! あー!! うぁー!!」


 ああ、ナタリーがぶっ壊れた……。顔真っ赤にして目ぇ回して暴れまわってる。食べ物の時といい、よく壊れるなこいつは。

 しばらくギャーギャーやっていたが、俺のこと忘れているだろう?


「おーい、これほどいてくれー!!」


「ナタリーちゃん、『拘束(バインド)』外してあげたら??」


「えっ?? ああ、忘れてたです。『解放(リリース)』」


 狂乱状態から戻ったナタリーが魔法を使う。俺を縛っていたほうき草が解け、元あるべき箒の長さに戻っていった。

 うん、二人とも当たり前みたいな顔して魔法を使うけど、訳が分からないよ。



 『浮遊(フロート)』の魔法は30分で効果が切れるらしい。いいタイミングで効果が切れてくれて何よりである。あのまま箒の直撃を受けていたら冗談じゃなく記憶障害コース直行だ。


「まだ夜までには時間あるな。どうする??」

「ワタシもう歩くのはいいや。足が痛くなっちゃった」

「ナタリーはゲームしたいです!!」


 ああ、そういえば『アナザ・ワールド』をアップデートしてから遊んでないな。


「じゃあ、『アナザ・ワールド』やろうか」


 とりあえず解凍してなかった"神様.zip"を解凍する。zipファイルの中身はやはり"ミカ.exe"を中心としたミカに関するファイル群だ。ミカ.exeとソースコードを開いた状態で『アナザ・ワールド』を起動する。


 直後、俺らは地球から消失した。



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