25話 攻略:獣王の森 最終戦②
戦闘シーンまだ続きます。
終わったらほのぼのいっぱい書きます。
--紅い軌跡を描いて、槍が銀狼を穿たんと迫る。
瞬間、軌道上に白い輝線が割り込みをかけた!
魔力同士が衝突し、灰色と銀色の獣の間に衝撃波が吹き荒れる。
ガゥが『一閃突』を発動する以前に、銀の王は魔力をその爪に溜めていた。
魔力が光り、戦技と成す。
--其は貴様らだけの特恵でないと知れ。
そう言わんばかりに、純白の輝きが爪を纏うように展開した!
熊手のようなかぎ爪状の輝線が四つ、左右で八つ。
戦技名『裂爪』、銀狼の専用技。
爪での斬撃の有効範囲を広げ、切れ味を増す魔力による武装。
獣王は右の『裂爪』を、死角から飛び出した槍に向かって放つ!
槍とかぎ爪による鍔迫り合いは果たして、互角とは言い難かった。
*
ガゥの槍が魔力のかぎ爪を穿った。
ガラスが割れるような破砕音を響かせて、砕け散る。
両者とも衝撃波によって少し後退。
--ガゥの槍の魔力が消える。
『一閃突』は一突きの威力を極限まで高める戦技だ。
そう、体を穿てない時点で、両者の趨勢は決した。
脚で地を蹴り、二度目の攻勢。
銀狼が左の『裂爪』を持って、ガゥを切り裂きにかかる!
ガゥが目を見開く。
躱せば有効範囲内の『裂爪』が体を裂き、受ければ確実に組み伏せられ、牙が体を穿つだろう。
「詰み」の一手が、迫った。
「がぉ、『硬化』!!」
灰色の同胞が、盾を掲げてガゥの前に立ち塞がる。
その盾と体は魔力によってコーティングされてより強固となっていた。
邪魔だとばかりに盾を回りこみ、銀狼が『裂爪』を飛ばす!
「がぉ、甘い、『攻撃誘導』」
飛翔する白い輝線が、曲がった。
歪んだ光は赤い魔力を纏うガォの盾へと吸い込まれる。
--ガァン!!
衝撃音が響く。
先刻矢毒女王蜂に受けた毒針の跡からみしみしと異音が発される。
一瞬の判断。
ガォは攻撃を受けながら体を半回転させ、『裂爪』を受け流した!
奇しくもそれはミカの使う『捌き』に似る。
魔力の発生源、爪を飛ばした狼もその煽りを受け、体勢を流された。
「がぉ、ガゥ!!」
「がぅ、『乱突』!!」
脚、胴、頭。
体勢を崩した銀狼をガゥの槍が捉えた!!
--直後。
「『光線』!!」
光線が銀を焼く。
咆哮を止めんと詠唱を終えたナタリーの魔法が、王に突き刺さった。
*
カラン・・・。
投げた毒針が、白い体毛によって阻まれ、落ちた。
少しでも傷が付いていれば、かなり有利に戦闘が進むのだが・・・。
毛で傷口が見えないな。
と、元気よく迅飢餓狼が俺に飛び掛かってきた!
あー、不発かな?
敵の飛び出しに合わせて、側方に回り込むように移動。
同時に狼の胴に剣を這わせるように出す!
戦技ではないが、剣道で「抜き胴」と呼ばれるテクニックだ。
--ギャリン!!
剣が白い毛の上を滑る!
すれ違いに交差して、彼我の距離差が開いた。
背中がミカにぶつかる。
丁度背中合わせで両者とも敵に対峙する形だ。
相対するは2体の迅飢餓狼
「なんだこりゃ・・・毛っていうより骨じゃないか?」
「そうみたいだねぇ、・・・すごい硬いし。」
うーん、多分戦技じゃないと切り裂けないな。
・・・ああ、そういうことか。
さっきの獣王の咆哮でMPを奪い取り、魔法や戦技を使えなくする。
んで、普通の攻撃では通らないから、後は甚振るだけ・・・と。
えぐい作戦だ・・・。
知性がないとかどうとかアーティもガリュードさんも言うけど、こと戦闘に関しては油断も隙もない。
まあ、地球の野生の獣もそこらへんは同じかぁ。
さて、少し戦ってみたところ飢餓狼に防御力と敏捷を上乗せしたような個体だ。
戦技を確実に当てなければ、MPにも限度がある。
「ミカ、『捌き』頼む!!俺が戦技を当てるから、体勢を崩してくれ!!」
「おっけ~!!」
軽い口調とは裏腹に、ふぅっと息を一息吐いて集中を始める。
「『捌き』の神髄、見せてあげるよ。この戦技には派生があるんだ~。」
え、まって、じゃあ俺いらなくね?
そんなツッコミを入れる前に、白狼が攻撃を仕掛けてきた!
*
左右に体を振ってのフェイントから、ミカの上を一匹が飛び越える。
直後、背後にいたもう一体が噛みつきにかかった!
「はい、ど~ぞ?」
首を傾け、笑い、しなを作る。
知的生物には魅力的に映るその姿は、魔物にとってどうなのだろう。
ここを噛めを言わんばかりにミカが腕を白狼に差し出す。
舐めるなとばかりに、狼が狙ったのは脚だった。
「あら?まあ足でも関係ないんだけど、ねっ!!」
噛まれんとする方の脚を白狼に向けて蹴り出す!
狼は咄嗟に跳躍。
蹴りを回避した。
--かに見えた。
ミカは端から蹴りによる攻撃など狙っていない。
片足で狼を追いかけて跳躍。
両脚で狼の頭を挟む!
狼の跳躍の勢いを殺さず、砲声。
「派生:『投げ』!!」
ミカの体が空中で魔力を帯びる。
刹那、急加速した!
「うらぁ!!」
空中で捻りを加え、白狼を地上へ打ち付ける。
--丁度跳躍を終え、着地から攻撃に転じようとしていたもう一匹を巻き込んで。
「タクムくん!!」
二匹の魔物。
その生殺与奪の権利が、巧に渡された。
*
俺の目の前に、狼が二匹、滑ってくる。
ミカに投げられた方のHPが残り5割弱、巻き込まれたほうが7割といったところか。
これなら連撃系の戦技がいいかな。
「『刻々撃』!!」
まずHPの低い方からだ!
鈍色の光が剣と脚を包んだ。
一匹に向かい、剣を上段から振り下ろす!
割と抵抗なく剣が入り、肩口を切り裂く。
--グァァァァアアアア!!
狼が苦痛を叫ぶ。
骨まで達する手ごたえが伝わってきたら、剣をわざと止めた。
脚に溜めた魔力を開放!
槍の突撃よろしく剣に体重を乗せ、押し込む!
一匹を貫いて、重なっていたもう一匹にまで剣が届く。
「まだまだぁ!!」
手に魔力を込め、斬り上げる!
貫かれていた一匹の体が宙を舞い、もう一体の肌を軽く裂いた。
俺はそのまま両手で剣の柄を持ち、跳躍。
魔力のアシストを受けて、急降下を敢行する。
超人的な動きからの兜割りは、白狼の背中から喉を貫いた!
コヒュー・・・と、呼吸が喉の風穴から漏れる音が響く。
「・・・ふう。」
「タクムくん!!そいつまだ動ける!!」
狼が体を回転させ、剣から逃れ、俺に噛みつきかかる!
「いや、もうこいつは動けないよ、大丈夫。」
MPバーの少し下。
赤い状態異常のアイコン。
"致死毒"の表示が点滅していた。
白狼はゆっくりと膝を折り、そのHPバーは消滅する。
割とMPを使ってしまった。
『刻々撃』は脚、手、剣に魔力を溜めるから消費がでかいのだ、連撃技だし。
ボスと戦っている残り三人はどうなったかと、視線を送る。
--直後、銀雷が轟いた。




