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異種族趣味の管理者【アドミニストレータ】  作者: てんとん
3章 正式サービス:魔法界
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20話 攻略:獣王の森②

戦闘シーンを書くのも楽しいですが、書いてるとほのぼの成分が欲しくなりますね。

私にとって、ほのぼのは必須アミノ酸です。

俺らは"静寂せいじゃくの密林"内を隊列フォーメーションを組んで進む。

先頭が感知ができて盾持ちのガォ。

その半歩後ろにHPの高いミカ。

後列は俺、ガゥ、ナタリーという配列だ。


有棘蜥蜴(スパインリザード)の『擬態ミミック』は、ミニマップに映らなくて厄介だが、ガォが先頭にいることで匂いによる感知が働く。

近くに敵がいると分かるだけでも大分気が楽になるものだ。

事実、奇襲される確率はぐっと下がった。


ガォが盾で受け、ミカの打撃とガゥの刺突しとつが蜥蜴に刺さる。

中列の俺がいるところまで抜けてきた蜥蜴には『伐採フェリング』を使い、棘を無力化してから剣で斬った。

そうしているうちに、ナタリーの魔法が詠唱される。

どうやらこの蜥蜴は火が弱点の様で、『火柱ザラマンドピラー』で簡単に焦げダルマになった。

付与系の魔法は『風刃シルフブレイダ』しか覚えていないらしく、火系の付与魔法マジックエンチャントを覚えれば楽になるのにとナタリーが愚痴っていた。



「うわぁ!?タクムー!!後ろから来たですよ!!」


ナタリーの叫び声に、俺は後ろを振り向く。

そこには杖で蜥蜴の棘を防いでいるナタリーの姿が!

今はガゥが前衛の応戦に回っているから後方への注意が疎かだった。

ナタリーのHPが少しづつ減少していく。


「待ってろ!!」


俺はその場から、蜥蜴に向かって疾駆する!

走りながら剣を片手で下段に構える。

同時に、戦技を叫ぶ。


「『転斬アラウスラッシュ』!!」


棘の間合いに入り、自身のHPが削れる。

てかすげえ痛い!!

痛覚を無視して、さらに足を踏み込む。

剣が薄い鈍色にびいろに輝いた。

下段から上段へ、体を回転させながら剣を跳ね上げる!

さらに体はもう一回転し、今度は上段から斜めに斬り下ろす。

ちょうどXの文字を描くように、剣が蜥蜴の体内を切り裂いた。


「ナタリー、下がって前の連中と合流してくれ!!中心で魔法を使ってもらう!!」

「分かったです!!」


ナタリーが遠ざかるのを背中で感じながら、辺りを見回す。

ふと思いついて、片手に杖、もう片方に剣を持ってみる。

う~ん、これは絵面的にどうだろう?

ダサくないかな?


と、『擬態ミミック』を解いて、有棘蜥蜴がまた姿を現した。

左手に持った杖を掲げ、『伐採フェリング』を詠唱してみる。

--果たして、不可視の刃が棘を切り取った!


同時にピロ~ン♪と例の音が脳内で響き、ログが更新された。


ジョブ:『魔法剣士ソードキャスター』を獲得しました! 有効化アクティベートしますか?


おい待て。

なんだそのいい部分だけ合わせて取ったようなジョブは?

アーティは魔法と剣士を組み合わせて使え、じゃなく魔法剣士のジョブ取得を目指せって暗に言ってたのか!?


「くっそ、ちょっと待てっての!!」


考えている間に、蜥蜴が迫る。

仕方がないので、yesボタンを素早くタップした。

瞬間、手の中の杖が宝物庫(アイテムボックス)内に戻る!


「ちょ!?」


何だこれ!?

あれか、このジョブ付けてると装備できませんってやつか?

幸い『伐採フェリング』で棘は半ばから斬られているので接近して応戦する。


戦技を使わずに何とか蜥蜴を倒し、俺も皆のところへ駆け寄る。

それを見て、ナタリーが魔法を発動させた。


「『焼却フラッシュオーバー』!!」


俺ら全員を囲むように魔法陣が地に描かれる。

描かれた魔法陣のふちから火焔が噴出した!!

広域に広がる火の暴威は、蜥蜴を飲み込み、表皮を焦がす。

残ったのはHPバーを2割残し、棘が崩れ落ちたかわいそうな見た目の爬虫類だ。

割と俺も棘にイライラしていたところだったので、嬉々として殲滅していった。



密林をあとわずかで抜けようかというところで、少し向こうのミニマップに無数の赤い光点が見えた。

どうやらそこは少し開けているらしい。

マップだけでは判断しずらいが、中心に大木がそびえているみたいだ。

光点が動かないので、その場で一時休憩とする。


「アーティ、HPってどうすれば回復するんだ?」


HPダメージを受けているのは主にミカだ。

HPバー全体の3割程度のダメージを受けている。

棘に一番苦戦していたのはミカだろうからな。


『基本的には腰を落ち着けて休めば回復していきます。ですが傷が深い場合や、出血が続く場合はその限りではありません。その場合は治療が必要です。』


いや、治療と言われてもな?

思えばこのパーティはヒーラーがいない。

これはかなり致命的なのでは?


「治療って、どうすればいいんだ?」

『この世界では魔法による治療が一般的ですね。』

「一応応急処置程度なら大丈夫です。けど、大けがになってくるとナタリーでは治せないのです。」

「がぉ、右に同じ。」

「がぅ、左に同じ。」


ガォとガゥがミカにすり寄っていたので、何をしてるのかなと思っていたが、応急処置か。


「ふぁ・・・。なんだか眠くなってきたよ。」

「お、おいミカ?大丈夫か?」


胡坐をかいていた俺の太ももあたりによろよろとミカが倒れてくる。


「んぅ・・・。」


ありゃ、そのまま寝てしまった。

見ると、HPバーが徐々に回復してきている。

それに棘による擦過傷さっかしょうがゆっくりと消えてきた。


「ん?」


クイックイッと俺のローブが引っ張られた。

見ると、ナタリーがちょっと顔を染めている。


「ナタリーもちょっと休憩するです。魔力使いすぎたです。」


そういったかと思ったら、背中合わせに体重を俺に預けてきた。

すぐに、すぅ・・・すぅ・・・。という寝息が背中越しに聞こえてくる。

苦笑しながら視線を戻すと、ガォとガゥが俺をまっすぐ見つめていた。


膝上と背中と両脇を占領されたので、仕方なく俺一人であたりを見張る。

そのままただ見張っていると確実に寝てしまうな。

そうだ、さっきのジョブについてアーティに聞いてみるか。


「なあアーティ、さっき『魔法剣士ソードキャスター』ってジョブを獲得したんだけど。」

『おめでとうございます!『魔法剣士ソードキャスター』は剣を振るいながら魔法を行使できるジョブです。『剣士ソードマン』の"戦技"とジョブ専用魔法の両方を習得できますよ。よってジョブ:『剣士』は統合され、消滅します。覚えた戦技はそのまま使用可能ですから、特に動きに影響はないかと。』


そうなのか。

なかなか便利なジョブを獲得できたものだなあと思う。


「なあ、アーティ?」

『はい、なんでしょう?』

「俺だけ妙にジョブが増えるなと思うんだけど、そこらへんどうなの?」

『ああ、マスターの種族は人間ですから!』


え?種族によってジョブの取得率が変わるってことか?

ガォとガゥは狼人ウェアウルブで身体能力が高く、嗅覚、聴覚も優れている。

ナタリーは魔法使いだ。説明不要だろう。

ミカはなんというかチート種族だ。

神とかなんだそれって感じ。

で、俺は人間。

異能は特になし、元は魔法も使えない・・・と。

『アナザ・ワールド』なりの人間という種族に対する救済措置みたいなものか。

とりま、俺はいっぱいジョブを獲得できると考えておこう。



皆が起きてきたので、"はじまりの平原"でいぶした飢餓狼(ガル)燻製くんせい肉を宝物庫(アイテムボックス)内から取り出して皆で食べた。

驚いたことに、減っていた俺のHPが食事をとることで回復しだした。

大けがじゃなければ、案外いろんな方法で回復可能なのかもしれないな。


ミニマップ上の光点に動きはない。

俺らは隊列フォーメーションを組んで、敵の懐へと歩き出した。




ステータス更新


タクム lv8  種族:人間

 サブジョブⅱ:剣士(ソードマン)lv3→魔法剣士(ソードキャスター)lv1


 戦技:『袈裟斬り(ダイアゴナル)』『転斬アラウスラッシュ


ナタリー lv9  種族:魔法使い

 ジョブ:魔法使い(マジックキャスター)lv8


 魔法:『焼却』


ミカ lv8  種族:unknown

 ジョブ:格闘家(ファイター)lv8


 戦技:???


ガォ lv5  種族:狼人

 ジョブ:盾使い(ガードマン)lv6


ガゥ lv5  種族:狼人

 ジョブ:槍使い(ランサー)lv6


 戦技:『乱突ディスアレイスピア



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