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異種族趣味の管理者【アドミニストレータ】  作者: てんとん
1章 導入:メンテナンス
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2話 一日→終了!

「あーれま、見事に粉々ですねぇ。」


 この惨状を見るなり警官Aが言い放った一言がそれである。そうだよ!!粉々だよ!!家がな!!

 なぜ俺は無事だったのだろうか??マジで意味が分からん。

 ……ああ、日差しが強いなぁ。家に入って暗い部屋でクーラー付けてゲームしたい。


「まあ、気を落としなさんなぁ!! 家なんて焼けるか倒れるかなんだから!! 隕石で壊れるなんて逆に名誉なことだろう!? はははは!!」


 彼はそう言いつつ、むっちゃ背中をバンバン叩いてくる。できることなら事故死でなく天寿を全うしてほしかった。二階級特進はさしも嬉しくない。


「はあ、まあ、そうですかね?」


 おざなりな返答をこぼしておく。ポリスメンAは愉快そうに豪快な笑い声を上げた。人の不幸を笑うのはやめてくれ……。てか、zipファイル開いたら魔法使いが空から降ってきて家が壊れましたって何だ!!何言ってんだ!?ホントのことだよチクショウめ!!


「とりあえずちょっと署まで来てくれるかな? 隕石が落ちただなんて事例がなくてね。あと隕石落下時の状況を詳しく聞きたいから」

「分かりました」


 「とり署」を現実で初めて聞いた。とりあえずここから動こう、そして落ち着きたい。白黒のツートーンカラー車に乗せられて、俺は連れていかれた。



 帰ってきたら、人がいた。町の人たちが集っていた。うちは公民館か何かですかね??


「あの!すみません、家財の回収とかいろいろしたいので、通してもらえませんかね!」


 言うやいなや、ちみっ子どもが騒ぎ出す。


「おい!!来たぞ!!」

「こいつがこの町にメテオを落としたんだ……!! なんて野郎だ!!」

「隕石って高く売れるんだって!! おっさん、くれよ!!」


 三人組に囲まれた。いやぁ、人気者だ、ははは。……はぁ。


「ごめんね~、ちょっとそれどころじゃないんだ~、また今度ね~」


「うわっ!? おっさんが切れた!!」

「あれ絶対怒ってるよ……」

「ねぇ、隕石は~?」


「隕石は落ちてこなかったよ。悪い魔法使いが家を消し去っちゃったんだ……。君らもゲームのし過ぎはダメだよ? 奴は突然やってくるから……。」


「嘘だ!」「大人はいっつも嘘ばかり、はぁ」「そんなことより隕石さがそうぜ!」


「誰が悪い魔法使いなのですか!?」


 本当のことなんだけどな……。まあ、俺だって他人からこんなこと言われても信じないけどさぁ。


「瓦礫の下に何か埋もれてるものがないか調べるかぁ……」


「おい、ナタリーは悪くないのです!」


 諸悪の根源が、子供に紛れて立っていた。



 ナタリーは魔物におびえて逃げたものの、寄る辺もなかったので、おいて逃げてしまったという後ろめたさを抱えながらも旧巧宅へ戻ってきていた。すると人が集まってきたので、目立たない隅っこのほうで何事かと観察をしていたところに、帰ってきた巧を見つけたのだ。


「おう、さっきぶりだな、悪魔よ」

「悪魔が見えるのですか? 残念でしたね……。もう先が長くない証拠ですよ」


「お前のことだけどな?」

「タクムにはこの魔女服が見えないのです? 残念視力なのですね」


「見えないな、真っ裸だぞ、お前」

「えっ!?」


 ナタリーが両腕で胸を隠すように体を抱く。当然彼女は服を着ている。異世界では見えないのかもと真面目に考えての行動だ。巧はしてやったりというような顔をしていたが、


「やだ、中学生くらいの子にコスプレさせてるわ……」

「おかあさーん、あの服なにー? 魔女の宅〇便のキキちゃんー!?」

「見ちゃいけません!!」


 周囲の、巧に向けられた視線は侮蔑ぶべつの交じった冷ややかなものであった。程度の低い口喧嘩に勝って社会性を失った。人生とはかくも厳しいか。


 巧が瓦礫をどかし始めると、集まった人は帰っていった。落下物をたかりに来たと思われるのが嫌だったのだろう。


 最後に町の代表が、隕石なんかが見つかったら連絡してくれと巧に詰め寄った。



「あぁ……」


 疲れた。

 家が直らないなら引っ越そうと考える。ロリコン変態野郎の烙印を押されてしまっては住めない。おそらくちみっ子どもに広まるだろう。奴らの情報網は侮れない。


「タクム? これからどうするのですか? ナタリーはおなかがすいたのです」


 落下物が話しかけてきた。


「うん? ああ、瓦礫でも食ってろ」

「がーっ!!」


「うわぁ!! 噛むなこら!! 子供かお前は!? わかったから!!」

「……とりあえず飯を買って、泊まるとこ探さないとな」


「おら、瓦礫どけるの手伝えナタリー! 飯買ってやるから!」

「しょうがないですね……。やってあげるのですよ!」


 ナタリーは腰に手を当てて、今だ成長が見られないその胸を張った。


 不思議なことに、巧のいた部屋は原型が残っていた。二階の一室をストンと地上に下ろした感じだ。ほかの部屋はなんというか空間が抉られたように無くなってしまっている。残っていたのが財布、スマホ、通帳と印鑑、あとノートpc。まぁ何とかなるかといった感じかな。

 とりあえずスマホで上司に連絡した。隕石が落ちたというと、ふざけるなとかえってきて切られた。世界は過酷だ。

 俺は現在土日を入れて6日の夏季休暇を取っている。上司は休暇を取らなかったようで、現在会社に一人だそうだ。この人もこの人で辛そうである。


「で、お前は何が食いたいの?」

「お肉食べるです」


「生で?」

「生肉なら魔法で焼いて食べるです」


 おお、魔法要素がでたか。


「よし、じゃあファミレス行くか」

「ふぁみれす?」


「飯屋だよ」

「分かったです!」



「なんですかこれ!! おいしすぎですか!?」


 思わず声を上げてしまったです!!いやでも、この『はんばーぐ』なる代物はやばいのです。

 そうか。今までナタリーが食べてきたものは腐ってたのです。なんかもうどうでもいいや。帰れるとか帰れないとか。はんばーぐだけ食べて生きていたい。


「はふぇ……」

「お、おい、やばい顔してるぞ!? 大丈夫か!?」


「永久にはんばーぐを食していたいです……」

「最初にファミレスは失敗だったか……!!」



 俺は今、非常に頭を悩ませている。というのも、宿泊場所を探してホテルに来たのだが、考えると状況がやばい。絵面が女子中学生を連れ込もうとしてるおじさんだからだ。それにナタリーの服がもうコスプレでしかない。

 いやいや、まだ俺は24歳。おじさんではない。女子中学生を連れ込もうとしているお兄さんだ。


 ダメだ!?状況が何も変わらねぇ!?かといって金の無駄遣いはできない。

 結局ナタリーを中学生として扱ってもらってダブルベットの部屋を取るのが安くつく。


「ナタリー様、いいですか? これから俺が何を言っても声を上げてはなりません。これを約束してもらわないと今日君は野宿だ」

「う……わかったのです。何も言わないのですよ」


「よし、約束な」


「あ、一応聞いておきたいんだけどお前年いくつ?」

「218歳です」


「……は?」

「218歳なのです」


 もう骸じゃん。合法ロリってレベルじゃねえぞ……。


「わかった。その、すまなかったな」

「え? 何がです?」


「いや、その、女性に年を聞くのは失礼だったなと思ってな」

「そうなのですか? ナタリーの世界では年の分だけ偉さというか知力が増すので、強い魔法が使えるようになるのです。だからみんな年はこぞって公表しているのですよ」


「でも、ありがとです。気遣ってくれて」


 ああ、はにかんだような笑顔が胸に来る。ごめんよ……。俺は今から君を少女扱いしないといけないんだ……。

 さってと。


「すみません、二人なんですけど、ダブルの部屋あいてますか?」

「はい、空いております。お名前をどうぞ」


「青木様、はい、確かに。ええと、お連れ様が……」

「……箒に帽子に銀髪?」


「あー、この子ハーフなんですよ。私のいとこです。……中学生ならだれもがかかる病気にかかってまして、地毛がこの色なこともあってすっかりその気になってしまって」


 受付のお姉さんは苦笑を浮かべていた。


「それでは、218号室になります」

「は、はい、ありがとうございます……」


 震える手でカギを受け取った。ナタリーの歳知ってんのかこのお姉さん……?噴き出すところだったじゃないか!?



 エレベーターで2階に上がる。途中ナタリーがおなかのあたりを押さえて、


「なんだかキュウっとするのです」


 と俺を見上げながらいってきた。潤んだ瞳と不安そうな声のトーンがなんだか庇護欲ひごよくをくすぐる。

 もし俺がロリコンだったならやばかっただろう。腐っても218歳の女か。男をたぶらかす自分の武器は熟知していると。同じ部屋はミスだったか……?



「ベットがふっかふかなのです!!」


 ミスじゃなかった。ベットの上でぴょんぴょんしてる。コイツはちみっ子だ、間違いない。

 夕飯はカップ麺がホテルの部屋にあったのでそれだ。コイツはうまいもの食わせたらダメなタイプだろう。ファミレスの一件で理解した。

 ……あの目は世界の向こう側を見ていた。


「はふぇ……」


「ええ!? カップ麺でそうなるのか!?」


「ここに住むです」

「は?」


「ここに、住むです。そして、おいしいものを、食べ続けるです」


 や、やばい……目がイっちまってる……!!触らぬ神に祟り無しだ、ほおっておいてやろう。


 ノートpcを開く。『アナザ・ワールド』を結局することができなかったので、今からでもやりたい。寝台についているデジタル時計を見ると、夜8時だ。

 明日は不動産屋に行かなければ。今日は疲れたから、12時くらいには寝ようかな。と、考えているとナタリーが肩に顎を乗せてきた。どうやら俺が操作しているpcに興味がある様子。


「なんなのです? それ」

「パソコンだよ、パソコン。一つあればいろんなことができる便利なものだ」


「へぇ~、あっ! 光ったのです!」

「うん? なんか動作が遅いな?」


 OSオペレーティングシステムを立ち上げるのにかなり時間がかかってしまった。


「あれ、なんだこれ?」


 俺が起動した『アナザ・ワールド』のアプリケーションのほかに、ナタリー.exeというのが動いているようだ。ついでにソースコードと呼ばれる、『ナタリー』というソフトを動かすためのパソコンへの命令文が書かれているファイルも開かれていた。普通.exeとソースコードは一緒に開いたりしないんだけどな。

 ナタリー.exeを画面上に表示する。


「あれ? ナタリーが画面の中にいるのです?」


 そこには、現実とうり二つのナタリーが映っていた。


********** **********


 う~ん、全然争わないなぁ。どの種族も戦ってきた結果で安寧を勝ち得ているのに。不思議だなぁ。

 あ、あれ!?なんか地球への操作が利かないんだけど……。やばい、バグってる……?


 やっぱりあれだよね……?ナタリーちゃん送りこんだ拍子にどっかしら致命的なエラーが生じたっぽい。現にナタリーちゃん送り返そうと思ってるのに何も干渉できないし。あ!あの人間が、ええと……そう!タクムくんが持ってるpc!あれに権限が移ってるっぽい・・・!

 やっばいなぁ。回収しないとどやされる……。あー、しょうがないか。


 地球、行きますか。とりあえずキャラを作って…。

 名前……名前……。『ミカ』でいいや。逆から読んだら神ね。

 よし!


 こうして、地上に神様が降り立つのだった。

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