プロローグ 2
暗闇だった。
無音だった。
どれだけの時間そこにいたのか分からない。
そもそも自分がなんなのか。
こんなことを考えている自分は果たして存在しているのか。
何もかもが分からない。
分からないことが分からない。
分からない……。
ただ唯一、無限に引き伸ばされ、延々と流されていくような奇妙な感覚だけが辛うじてある。
それが刹那の瞬間だったのか、あるいは悠久の時を流されて引き伸ばされていたのかは分からない。
唐突に光が差した。
微粒子のようなその光は、知らぬ間に虹色に発光し、明滅を繰り返し、世界を包み込んでしまっていた。
「――あら、めずらしい。私までたどりつくなんて、まぁ~ずありえないんだけどねぇ。世界崩壊の前兆か天変地異の前触れかしら? あっ、はたまたグランドクロスかハイパーノヴァの虫の知らせ的なヤツだったりするのかな?」
そんな声がどこからともなく響いてくる。
「さて、どうするべきかしらねぇ~。――って、あら。この子」
声は何かに気づくと、思案気にうぅぅぅん、と唸り声を上げて、
「よしっ、きーめた! あなた面白いからターンレフトねっ♪」
まるで玩具を見つけた子供のような、無邪気な声でそう言ったのだった。
そして次の瞬間、
世界は白に包まれて、
「…………は?」
見知らぬ天井だった。
俺はなぜか、藁の上に寝転がっていたのだ。