プロローグ
ども、はじめまして。
よろしければ読んでってくださいな。
2016年7月7日。
天気は雨のち晴れ。
世界が傾いた。
急速にかしいでいく視界は半分が暗闇、もう半分は赤色だ。
世界はスローモーションだった。
反比例して、モーションカメラをスロー再生しているように、だんだんと世界は動きを止めていく。
あわや完全にストップするのではなかろうか。
そんな考えが脳裏によぎる。
ドサッと乾いた音が耳を叩いた。
――あぁ、そうか。
ぼんやりとした思考が遅れて追いついてくる。
視界の左半分が潰れ、右目の焦点も定まらないまま俺は何とか視線だけを上にずらす。
そこにいるのは覆面で顔を隠し、レインコートで体をすっぽりと覆っている人間だ。
「~~ッ!? ぐぉッ、あぁああああ!?」
ビキィィッとそれまで麻痺していた痛みが、思い出したかのように顔面から全身を駆け巡る。
――いきなり押し入ってきたこいつに、俺はアイスピックで左目を抉られた――。
大学生になって初めての一人暮らしで浮かれていたのがまずかった。
家の施錠をするのを怠っていたのが、まさかこんな事になろうとは……。
後悔したところですでに後のまつりだ。
「…………、ハンマー」
抑揚のない声でその一言だけが囁かれ、
そして、
――ドグシャッ
現在の時刻、夜23時59分。
時計の秒針が頂点を指すのを見届けることなく、俺の世界は完全に暗転した。