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”僕”の芽生え

作者: 月桂樹
掲載日:2016/03/25

最初、自分は暖かい小さな”欠片”だった。

トクン、トクン、と心臓のように音をたてる。

ぼんやりとした、塊だった。


《…………》


思考も、感情もなかった。

ただ、暖かいな、と。

ぼんやりと感じていた。


聞こえてきたのは、音。


ざわざわと、さわさわと。

複数人が話している声。


(楽しい!)


誰かの思考が、大きな感情が流れ込んできた。

多分、その時に頭があったのなら、自分の頭が力強く殴られたような衝撃だっただろう。


ドクン、と、大きく鼓動する。


《……タノ…シ……?》


わからなかった。

言葉の意味も。

この感情も。


なのに、理解できないのに。

感情はどんどん降ってくる。

避けられない隕石のように。


(楽しい!)

(楽しい!)

(楽しい!)


(もっと、喋り合っていたい!!)


ガツン、と、衝撃。

その度にドクン、と。

大きく、揺れる。


《…タ…ノシイ…》

《たのしい……》

《たのしい…!》


(もっと、遊びたい)


《…もっと…》


(もっと、一緒にいたい。遊んでほしい!)


《……もっと…ほし、い…》

《もっと、ほしい…!》


スポンジが水を吸うように。

肺が酸素を求めるように。


この大きな感情を求めた。


無意識に。


取り込めば取り込むほど、自分の存在は膨らんだ。

ぼんやりとした塊ではあったけど。


そして、”自分”が知らない内に、自分はどんどんと膨らんでいた。


身の内に巣食っていた。



”自分”は、なんとなく、気づいていたのかもしれない。



でも、その時にはもう。

自分は、大きく育っていた。



(………私の、中にいるアナタは誰?)



《…自分は、”僕”だ》



答えた。


自分が、はっきりした瞬間。

僕が生まれた瞬間。


名前はもう、決まっていた。


だって、この身体の名前をもらえばよかったから。



《僕は、僕だ》



僕の中にある、暖かい光。


この光がある限り。

僕は、きっと、”僕”でいられるんだろう。



この光こそ。




僕が生まれた、理由なのだから。

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