4話 「SkypeIDを教えてもらってないじゃん!!」
その後の事はあんまり覚えていない。
親をテスト期間中でもゲームすることの了承つまり、最低限の成績を収めるためにいつもは真面目に聞いている授業もあの後からは上の空だった。
気が付けばもう放課後。
クラスメイトはもう疎らで掃除班が掃除に取り掛かろうとしている。
「なぁ」
ふと横から声をかけられる。
間違いなく中村 瑞穂である。
「なんだ?」
「帰んねぇのかよ?」
「あぁ、今帰る」
そう言って帰り支度を始めるがまたしても疑問が過る。
なぜ、こいつは俺が帰るか聞いてきたのか。
過去の俺なら「こいつ気があるんじゃねぇか?」なんて思っていたが今の俺は違う。
正直不安で押し殺されそうだが、もう一つ不可解なことがある。
前回も話したが、俺は女性が苦手なのだ。
それも会話が出来ない、どころか目も見られないほどだ。
だが何故かこいつとは会話が出来る。
まぁ、目は見られないが。こいつ風貌怖いし。
スタンド使いも惹かれあうものがあるらしいが、ボッチも惹かれあうのか?
心理だな。まさに心理だ。
てれってってー、優太はレベルアップ~。
なんて下らない思想をしてるうちに横の人はオコらしいです。
また殴られました。
あっ。オコだぁ~。 「えんもち屋」面白いよね。
「何ボケェ~っとしてんだよ。夢の国に連れていかれたか?」
「またニッチなネタを…… お前こそなんで先に帰らないんだ?」
「お前馬鹿か?」
そのセリフを言って可愛い奴はアスカだけだぞ。
「SkypeIDを教えてもらってないじゃん!!」
遊ぶことにはやたらと積極的なヤンキーだな。
なんで今までボッチだったんだよ。
風貌か。
これ以上絡まれても迷惑、というより周りの目が痛いのでルーズリーフにIDを書いて手渡す。
「ヤンキーとオタクってミスマッチじゃない?」
「むしろ二人ともボッチだったしいいコンビジャン」
そこ!!! 陰口は本人に聞こえないように言えよ!!!
居てもたっても居られなくなって柄にもなく走って教室を飛び出す。
奴が何か言ってた気もするが、何かあればSkypeで聞いてくるだろう。
それよりも、昇降口まで走っただけで息切れしているあたり体力が落ちているだろう。
俺も2ch筋トレスレ始めるか。
とりあえず下駄箱から靴を取り出し、MP3プレーヤと外靴を装着。
お気に入りの曲を音量大きめで流し、歩く。
勿論俺は「お家へ歩いて帰ろう部」だ。
通称、帰宅部。
青春に汗を流す古臭い思考は持ってないし、楽器は家で弾くだけで十分だ。
誰かと弾こうとは思わない。
いやまぁ一緒にする奴もいないけどさ。
なんか悲しくなってきた。 何も考えない様にしよう。
繁華街を抜けて、住宅街へと差し掛かる。
もう我が家に到着だ。
歩いて15分。 朝が弱く、遅くまで起きている俺にとっては最高の条件。
ギリギリまで寝られ、遅刻する確率も少ない。
最高の立地条件だ。
さぁ愛しき我が家の門を開けるとしよう。
自宅のドアを開け二回に上がりPCを立ち上げる。
ルーチンワークだ。
デスクトップの画面に表示されるSkypeの画面。
自分のクランの会議窓にチャットを打ち込む。
『こんばんわ~』
『お! ゆ~くん。 今日も早いねぇ~』
おめぇに言われたくねぇよ。
この昼間っから音速の返信をしてくれる男こそ、我がクランのマスターだ。
ちなみにニート。
『マスターに言われたくないです』
『俺は勝ち組だからな!!!!』
『とりあえず今日は自分クラン活動行かないです』
『流されたし重大発言|д゜;) うちの司令塔がいなくなったらどうするの!?』
『すまない!!!』
そう書き込み終えるとSkypeの「最近のイベント」の横に1のマークが出る。
新しいチャットが飛んできたりするとこのマークが飛び出してくるが、今日はお誘いが多い日なのか?
そう思い「最近のイベント」をクリックする。
そこに表示された名前が。
『MZH』
うん。 そういえば今日はお誘いが多い日でしたね。
安直なネーミングセンスだ。
Skypeのログイン表示が「?」
そしてチャット欄に書かれた。
『MZHさんがSkypeの連絡先リストへの追加を希望しています』の文字。
まぁ奴だろうな。
とりあえず確認の返信をしよう。
『2年2組の中村さんですか?』
『なんだよへりくだってwwww キメェwwww』
速攻でSkype名を「きめぇ丸」に変えてっやったわ。
『うん。中村だな』
『どういう意味だよ』
Skypeですら威圧感があるって最強じゃね? もうパワプロの世界に飛び込んじまえよ。
そして帰ってこないでください。
学校で感じた好感はどこへ消えていったのか。
『深い意味はない』
『深い意味があったら明日殺してやるところだった』
『お巡りさんコイツです!!!』
『wwwwwwwwwwwww』
草生やしすぎだろ。 誰か芝刈り機持ってきて!!!
『なんかお前、学校じゃつまんない奴だったけど面白いんだな』
ホントこういうのは反則だと思う。
照れんだろ///
『ユーモアを忘れないからな』
『くだらねぇ』
前言撤回
『とりあえず飯食ったらまた連絡するわ』
『おk』
こんな短いやり取り。 いつものメンバーとは毎回なのに学校の人間としてると考えるとやっぱり、少しワクワクした。
早く連絡来ないかな、なんて思ってるあたりやはりまだ好感を持ってることを自覚させられた。
ちょろいかもしれないわ。 俺。
今回は特殊な単語はなかった希ガス。
すいません。 大分お待たせしました。
イカ達がインクを塗りあうゲームをしてたらこんな体たらくに。
次回は早めに更新します。
それとまだまだ数は少ないですがブックマークありがとうございます。
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それでは次回もよろしければお付き合いください。