3話 「せっかく見つけた共通の趣味を持った人間だぜ?」
どうしてこうなった……
授業を終え、空返事で返してしまった『了解』という文字。
握りつぶしたい。あのルーズリーフ。
彼女は隣の席で美味しそうに弁当をつついてやがる。
呑気なもんだ。
そしてもちろん一人で飯を食ってるのだが。
ここで重大発表なのだが、俺は女性が苦手だ。
理由はまだ明かすことは出来ないが苦手だ。
あいつらは信用ならん。
容赦なく人を切り捨てるし、陰でどんなことを言ってるかもわからない。
まぁ男でも同じことは言えるが、方法が陰湿だ。
じろじろと隣人を観察していると不意に話しかけられた。
「何見てんだ? これが欲しいのか?」
そういいながら箸で自分の弁当を指す。
そういうわけではないが、呑気なもんだ(大事なことなので二回言いました)
こいつはほぼ初対面の異性と普通にVCできるのか?
ビッチっぽいと思っていたがまさかここまでとは。
コミュ力がないって? 気のせいだ。
「別に欲しいわけではない。 意図がハッキリしないから動揺してるんだ」
目を合わせずにそう答える。
「意図? 一緒にゲームするのにそんなもんが必要なのか?」
「だってほぼ初対面みたいなもんだぞ? ましてやVCを繋いでなんて、俺からすれば狂気の沙汰だぞ」
「大げさだな? お前ノンクランか?」
「んなわけあるか。 FPSなんて仲間がいてなんぼだろ。」
「ふぅ~ん。 だた単にコミュ障なだけか」
グサッと来ることを言いやがるな。
コミュ力がないって? 気のs
「だって、せっかく見つけた共通の趣味を持った人間だぜ? 同じ学校だし仲良くなりてぇじゃん」
予想外すぎる言葉に面喰っちまった。
正直女だし、クランなんて探せばいくらでもあるような気がする。
「私、女です~」なんて言えばAVA友ぐらい簡単に見つかるだろう。
いやこれは失礼だな。
訂正。だがそういう人種が少なからずいるのも確かだ。
それに昔そんな奴がいたのも事実。
クランに加盟して開口一番。
『え? 女の子いないんですか?』
という言葉の後に音速で切れる通話。
そして『○○さんがログアウトしました。』というチャットログ。
その後、リストから奴の名は消えた。
まぁそんな出会い厨こっちから願い下げだが。
かくしてそういう輩がいるのも事実。
こいつも苦労させられたのか。
とりあえず、話を戻すと正直そんなこと言われて「やっぱやめ」なんて言えない。
確かに俺も共通の趣味の人間を、やっとの思いで見つけたのにここで手放すわけにはいかない。
折角の初めての友人。 俺もちょっとばかり心を開いてみるか!!
「まぁ、確かに俺も共通の趣味を持つ友人が欲しかったところだ」
「だろ!? 学校でもAVAの話が出来るんだぜ!? やっとつまんねぇ学校生活ともおさらば出来るぜ!!」
ホントに豪快だな。
なんていうか見た目と素行で損してるタイプか。
まぁ俺が言えたことじゃないが。
「それに『友達』ってもんが欲しかったんだ。 確かに中学にもそういう奴がいたけど、こういう趣味持ってる奴もいなかったし」
まぁそんなFPS好きの女の子ばっかりな世の中なんて嫌だしな
「周りの男子もそういうのに興味ないみたいで、下手すりゃPCすら触らないような感じでよ。
だからお前のメモを見た瞬間に『やっと見つけた!!』って思ったんだよ。 だからさ、少しでいいから私に付き合ってくれねぇか?」
彼女の方に顔を向ける。
吸い込まれそうな真っ直ぐ力強い瞳だが、顔には少しばかり不安そうな表情。
間違いなく本心で言ってると解るほど彼女の気持ちがひしひしと伝わった。
そして、その彼女に見とれてしまった。
自分にはないものが沢山感じられた。
誰とでも打ち解けようとする姿勢。 相手の目を見て本心で言葉を伝えられる勇気。
何より、俺が今まで出会ったことのないこちらの気持ちをくんでくれる物言い。
とても嬉しかった。
「なぁどうしたんだ? 急に喋らなくなって…… やっぱ弁当が欲しいのか?」
そんな言葉につい、吹き出してしまう。
「んだよ!? 馬鹿にしてんのか!?」
「いや そうじゃないよ。 ただ単にみんなあんたのことよく理解してないんだなってさ。
勿論、今までの俺も含めてだけどさ」
「どういうことだ?」
「いや、なんていうか……
素直で自分に自信があるのに、そんな中身を見ないで素行だけで判断してたんだなってさ」
そういって彼女の目を見る。
いつもなら女性の目なんて見て話せないけど、不思議と今は彼女の目を見られた。
驚きを隠せない表情でこちらを見返している。
自分でもこんな臭いセリフがスッと出てきたことに驚きだったが、相手の正直な気持ちに応えたかった。
「なんか、んなむず痒いセリフ言われたことねぇからなんて返せばいいかわからんけど。素直に嬉しかったぞ?」
そう言って右手に持った箸を起き、その手を差し出してくる。
「これからよろしくな!!」
「こちらこそ」
その手に自分の右手を重ねる。
世間一般的な友人のでき方じゃないとは思うが、それでも似た者同士の辛い部分を分かち合えたのかもしれない。
こいつなら性別関係なしに仲良くなれるかもしれない。
楽しい高校生活になるかもしれない。
そう素直に思えた気がした。
だが今夜、その感情が嘘のように形を変えてしまうが、それは次のお話。
あぁ この時の自分を殴りたい!!
クラン:MMOでいう『ギルド』 ゲーム内で見つけた、もしくは現実世界の友人と同じチームを作り、大会などに参加するチームやグループ。
こんな風にドラマチックに友人作りたかった‼‼‼
ちなみに本文の話はリアル実話ですwwww
ご観覧ありがとうございます。 次回もお付き合いください。