7.探検と探索②
オレンジ色に染まる草原を足取り軽く小屋へ戻る。
その手には肉もどき。
「大猟、大猟!」
その顔は笑顔だった。
草原の広さを確認するため、外周をぐるりと回っている途中、獣の死体を見つけたのだ。あの小屋の住人が仕掛けた罠にかかり、他の獣に食われたのだろう。
見つけた時は骨が見え、肉も少ししか残っていなかったが一人分には事足りる。
それにもう一つ嬉しい発見があった。
畑に植えてあった花が実は獣除けの効果があったのだ!
何故解ったのかというと
死んだ獣を罠から外していたら、獣にロックオンされる
↓
私、気づかず罠外し続行
↓
飛びかかろうと近づく狼もどき。鼻が花の香りをキャッチ!
↓
そのとたん雄叫びと共にすごいスピードで逃げる狼もどき
↓
雄叫びを聞いてようやく状況認識する馬鹿
あっぶない!九死に一生だったよ!
でも良く考えてみたら罠に獣がかかるってことは、あそこは森の領域ってことで…。そんな場所で気を抜いてた私が一番駄目ってことで…。ぶっちゃけ、草原という安全地帯に気を抜いてました。
うん、気を付けよう。注意一秒、怪我一生。用心はするに越した事は無い。
そうは言っても浮つく心はどうしようもなかった。
昨日に引き続きまともなご飯なのだから。左手に握られた兎だった肉に目を向ける。足とか皮とかプラプラしてて正直グロい。
が、死んで時間がたっているからか、血もあまり出ていないし匂いもそんなにしない。
(それに実際、食べてる場面見ちゃったらねぇ)
思い返すのは狼もどきにモグモグされていたお肉さん。我ながら短期間で随分たくましくなったものである。昔の自分はこんな未来を想像しただろうか。
平和な日本で生きていたころの自分を思い出す。何でもあって、自分の手を血で汚すなんてことはなかった。そんな日常が、過去の自分が、今は遠く感じる。
暗く沈みそうになる思考を切り替える。
この状況で嫌悪とか忌避とか恐怖とかは邪魔になるだけ。だって人間は食べなければ生きていけないのだから。
(そう、私は生きなきゃいけない。生きて―――)
小屋を目指す彼女の目は決意の色に染まっていた。
目標再認識、後は進むのみ!という理由でお料理のお時間です。
「食材よ~し、水よ~し、調理器具よ~し、マッチよ~し」
指さし確認よ~し!
幸い調理器具も見知った物が揃っていたし、調味料らしきものもあった。
ただピンクとか茶色とかだったから全部舐めて確認したよ!地味にロシアンルーレットだったよ!怖かったよ!
うん、ここまではいい。想定内で済んでる。問題はここからだ。
…コンロの使い方が良くわかりません。なんかシンクの隣に高さ10センチぐらいの穴が二個空いてる。それだけで薪をくべる所がない―――詳しく説明するなら30センチの煉瓦造りの台の上に20センチぐらい土が盛られて固めてある。その土に前述の穴が2つというぐあいだ。
煉瓦造りの台の中はオーブンみたいになっていて、さすがにここに薪をくべてもコンロは暖まらないと思う。
どれだけ見つめても解決方法は見えてこず、結局、穴の中に薪と枯葉を敷きそこにマッチで火をつけることにした。
(この方法が正しいかどうかは知らないけど、取り敢えず食べれるものが出来上がればいいや)
そして出来上がった、兎肉のスープ。
味はまぁまぁだ。でも温かい食べ物は味覚以上のものを私に与えてくれた。
(あったか~い、なんか安心する)
スープの入った器を両手で持ち汁をすする。大事に、大事に、ゆっくり味わう。
暖かさと共に幸せが行き渡りなんだか体がポカポカしていく。
食べ終わり、ホッと一息つく。送り出した息は白く染まっていた。このままの状態で眠りにつこうと、手早く寝る準備を済ませ、いそいそと布団に入る。
(あぁ、全身がぬくくって何だか幸せかも~)
ここに連れて来られてから初めて味わう感覚だ。このまま何事もなく朝になればもっと良い。そう願いながら眠りに落ちた。
夢の中、水の中、どこからかポーンという音がした。
――魔力が規定値に達したため、技能『異世界語自動翻訳』を取得しました。―――
いつもご覧いただきありがとうございます。
これからも頑張ります。