6.探検と探索①
地平線の向こうから、ゆっくりと朝日が顔をのぞかせる。同時に空から鳥の声が降ってくる。
(でも、肝心の鳴き声がゲキョグキョーだから全然爽やかじゃない)
今までの疲れから治療が終わると、その場で気絶するように眠ってしまい床の上で朝を迎える羽目になった。おかげで節々が痛むし、寒い。
(それにしても結局この家の人帰ってこなかったな)
固まってしまった体を解しつつ、全ての部屋を覗いたが影も形もなかった。ついでとばかりに途中で見つけた木靴を拝借する。
「あとで了承取れば大丈夫だよね?」
深夜ンションから一転、冷静さを取り戻した私はびくびくしながら誰もいない空間に小声で確認を取る。もちろん返答はない。独り言だけがむなしく響くだけ。
「たぶん大丈夫だよね!」
無理やり自分を納得させると腹ごしらえの為、台所へと足を向けた。
「ごちそうさまでした!」
久しぶりのまともな食事に感謝の気持ちで手を合わせる。メニューは固すぎる黒パン、干し果実、水である。飽食の時代に生まれた人間からしたら物足りないレベルだが、この前のものに比べればマシになった。だって人の手が入った物が食卓に並んでいる。それだけで天と地ほどの差がある。
(今の私、勝ち組!ブラボー!)
思わず調子に乗ってしまう。だって少なくともお腹を壊す心配はしなくていい。それだけで調子に乗ってしまうというものでだ。たとえ黒パンが固すぎて歯が立たなくても、干し果実が甘くも酸っぱくもなくてもだ。安心して食べられるだけで充分。
(でも、ここら辺で止めておこう。興奮しすぎるとろくなことないし)
住人と食べ物に心からの感謝を再度手を合わせ次の行動を開始する。平たく言うと草原の探検だ。水瓶の大きさと満たされている水の鮮度から言って小屋の近く―――この草原の中に水源があるのは間違いないと思う。
それに、昨日小屋に向かう途中で不自然に草が刈られている場所があった。予想だが、そこに畑らしきものがあると思う。
何故かって?
森の中で採取するよりも取ってきたものを栽培して増やす方が危険は遥かに少ない。肉などに関しては森に入って取ってくるしかないけど。
今日の予定は井戸と畑、そして草原の範囲の確認。足もまだ痛むし、無理せず行こう。頭の中で簡単にやるべきことを挙げ、行動に移す。時は金なりだ。ぐずぐずしてる暇はない。
******
太陽は中天、遮蔽物がないので陽光が惜しげなく降り注ぐ。
小屋から歩いて五分、目的の物を発見した。畑と井戸そして農具を収めてある物置小屋。
「ふぉぉ、本当にあった!」
井戸はポンプ式ではなく、釣瓶落しだったけ?時代劇とかでよく見るやつ。その隣に畑がある。大きさはだいたい四畳くらい。植えてあるものは昨日使った薬草?と人参?とほうれん草?とトマト?と花?
(見かけは私の知ってるソレっぽいけど、どうなんだろ?)
薬草は正しく薬草だった。
(ちゃんと傷が治ってたし。匂いも薬っぽかった。ただ、その治り具合が異常だったけど)
あの傷の具合では、完全に治るのに一か月以上くらいかかるかなと覚悟はしていた。ひざ下は草で切れたのか切り傷だらけ、足の裏に至っては肉が見えていて全体的にズタボロだった。それが今朝、包帯を変えた時には完治とはいかないまでも肉が盛り上がって傷がふさがりかけていた。
(まぁ、いいか。効き目は確かってことで)
畑から今晩のおかずになりそうなほうれん草とトマトをいくつか拝借し、ついでにテーブルに飾るために花を手折る。
「どなたかは知りませんが本当にありがとうございます。おかげで人間らしく生きていけてます」
両手がふさがっているため、心の中で手を合わせる。本当に感謝してもしきれない。
手元に目を落とす。とても豪華になりそうな食卓に思いをはせ、探索を再開させた。
気が付けば2,697PV、798ユニークになってました。
皆さん、拙作をご覧になっていただき本当にありがとうございます。
たぶん再来週ぐらいには魔王がちょっとだけ出てくると思うので
あともう少しだけお待ちください。