2.住む場所を見つけましょう①
問題→右も左もわからない森の中、ただ目の前の危機を乗り越えるため出鱈目に走るとどうなるか?
答え→迷います。
というわけで予想に違うことなく絶賛迷子中です。
どこを向いても木、木、木、時々草。色でいえば緑一色。
迷うなと言われる方が無茶な状況のなか。それでも生き残る道を模索するための何かを見つけるため目を皿にし、神経を尖らせる。食べるもの無し、水も無し、ついでに言うなら靴も無し。無い無い尽くしであるものといえばパジャマと命と生きる意志という…。
最初はこれだけで十分ですけど、いい加減無いものを埋めていかないと確実に死ぬ。贅沢言うなら手始めに水!全力疾走したから咽喉が渇いたし。
「水が飲みたい、ガブガブ飲みたい」
言うだけはタダなので川を探して歩いている間、大体五分に一回くらいは呟く。
「もうこの際、真水とか贅沢は言わん。泥水でいいから」
そう言いながら、フラフラの体を動かす。気力をエネルギー源として。
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森の中を水を求めてさまよう歩く。目を覚ました時、太陽は空高くあったのに今は西の空で赤く輝いている。時計がないのでよくわからないが、たぶん五時くらい?目を覚ましたのが昼の十時ぐらいだと仮定して、大体七時間ぐらいはぶっ通しで歩き続けているはずだ。おかげで足は棒のようにカチコチになり、それに比例するように現代人の柔らかな足は小石や鋭い草のおかげで傷だらけだ。
同様に体の方も異変を訴えていた。耳鳴りが絶えず、目の前の景色が霞み、体が重く感じ、できる事ならこのまま倒れてしまいたい。典型的な脱水の初期症状である。まぁ、七時間も飲まず食わずじゃあしょうがない。そう理解しているが、だからと言って現状が改善するわけでもない。私に体は素直に体調不良を叫び続けている。
足が痛い、咽喉が痛い、体がだるい、全身が重い。
休みなく歩き続ける私の頭のなかでこれらの言葉が回り続ける。だけど立ち止まるわけにはいかない。誘惑に負ければ、その先にあるのは“死”だけだ。
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月が中天に輝き葉の間を縫いながら柔らかな光が時折、私を照らす。あれから三時間ほどたったと思う。痛みを訴えていた足はもう何も感じなくなっていた。体の不調も同様に、もう何も感じない。すべてに薄い紗がかかったようで、なんだか何もかもが遠い。
「もう、駄目……かも」
体力、気力共に尽き、もはや惰性で足を動かす。しかし、それももう限界に近かった。
「うわ」
上がらなくなった足は容易に小石に躓く。そして私に倒れた体を起こすだけの力は残っていなかった。
(もう、死ぬのか。―――まぁ、でもやれるだけのことはやったよね)
心残りがないと言えば嘘になる。でもその時、私の胸を満たしたのは紛れもない安堵だった。