再会
……この空間は?
俺は見覚えがある真っ白な空間にいた。
ここは夢の中で、甲冑姿の美人に会った場所だ。
あれは…夢じゃなかったのか…?
…アイツに斬られた傷が無くなっている。
一体全体どうなっているんだ?
「また会えて嬉しいわ…坊や」
この声は…!聞き覚えがあるぞ…あの美人さんの声だ
とすると…俺は彼女の予言通りに死んで、この空間に来たのか?
「話が早くて助かるわね…君は、これから生き返る事が出来るわ…私との契約ですもの」
目の前の空間が黒く歪むと、甲冑姿の女が現れた…相変わらず美人である事に変わりはない。
「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私の名は……そう…モニカと呼んでくれればいいわ」
モニカだって?…なんだか人間みたいな名前だな。
悪魔と言うからには、長ったらしい名前でもあるのかと思ったが。
モニカ
「我々のような存在に名前は意味が無いもの…でも名無しだと呼びにくいでしょ?…だからモニカと名乗っておくわ」
まぁ…呼びにくい名前を言われても困るからな…モニカでいいや。
そんな事より、なぜ神じゃなく悪魔が人間を助けるのかを聞きたいな。
モニカ
「…君達の崇める神と呼ばれる者は、もういないの。完全には消滅していないけど、君達のいる下界には干渉出来ないわ」
いない…つまりは死んだって事か?
モニカ
「我々の存在に死ぬという言葉は適切ではないわね… 封印された…と言えばいいかしら?」
「天界では私達悪魔と神が長い戦争をしていたわ。それこそ気が遠くなる年月をね… でも、ある時に状況が変わったの。…君達人間のおかげで」
…どういうことだ?
モニカ
「悪魔は死んだ下界の魂を喰らう以外にも、絶望や欲望等の負の感情を喰らうの…そしてその欲望がもっとも大きい種族が人間。人間は常に欲望の為に争い、殺し合うわ。そして欲望を満たす事はせず…さらに欲を求める…悪魔にとっては最高の糧になったわけ」
…なるほどね。
モニカ
「私達は人間の欲を糧に天界で勝利したわ…皮肉なのは、その人間を作ったのは他ならぬ神々だった…と言うことね。自分達が創造した者に封印されたものも同然なんだから」
たしかに…そう言われてみれば、神々は自分達が作った人間に封印されたのも同然だな…人間の欲…か。
たしかに俺自身にも欲はある。
主に恥ずかしい欲だったりするが…そんな物も悪魔は糧にしていたりするのだろうか?
モニカ
「フフ…心配しないで。君が考えている性欲は私達の糧にならないわ。私達が糧とするのは、殺意や嫉妬…人間の闇と呼ばれるものよ」
ふーん………あっ!?
そういえば、俺が死んだ後はどうなったんだ?
モニカ
「それはアナタが、これから生き返って見てくるべきだと思うわ。…それと、生き返るだけで特別に貴方が強くなっているなんて事は期待しないでね」
う……それは少し期待していた。
モニカ
「ダメよ…自分の運命なんだから自分で何とかしなさい。私は少しだけ貴方の手助けをしているだけよ」
まぁ…確かに言われてみれば、そうだな…
しかし、アイツらが言っていたが…俺の村はハーフエルフの村とは本当なのか?
モニカ
「そうよ。君の村の人達は全員ハーフエルフね。君とセラちゃんを除いてね…あの子はハーフエルフでも人間でも無いの」
何…セラが人間じゃないだと!?
モニカ
「あの子はハイエルフよ。エルフの長たる器を生まれ持っている希少種なの…完全には覚醒していないようだけれど」
ハイエルフだって!?…とりあえず驚いてみたが。
何だそれは?
モニカ
「現世に戻ったらイヤと言う程わかる事になるわ…さあ、お話しはこれまでにしましょう。生き返らせるわよ」
モニカは腕から黒い霧を出すと俺を包みこむ…
以前と同じように頭が掻き回されるような、不快な感覚に襲われた。
戻る前に、これだけは聞いておきたい…何故、俺を生き返らせようとする?
モニカ
「前にも言ったでしょ?…私は楽しみたいだけなの。私は運命の女神だから…ね?フフフ」