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運命は変えるもの  作者: ひろぽんすけ
旅立つ者
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日常

アレックス

「エイト…私は不正を許さないぞ」


懐疑的な目で親父は俺を見てくる…過去に奉仕を何度もサボッた俺に対して疑念を抱くのは当然だ。

俺は適当に相づちをうち、朝食をサッサッと終わらせて台所へと逃げ込んだ。 


食器の片づけをしながら、どうにか上手くサボる方法は無いものかと考えていた時、俺の肩を掴みながらセラが小声で話してきた。


セラ

「今度、サボッたらどうなるか…わかっているんでしょうね?」


……………はい…存じています。  


前回の「ドブさらい」を逃げた時には、親父にセラが帰ってくるまで説教され…コイツからは「組手」の罰を受けた。

そう…思い出したくもない地獄の組手を


セラから睨まれながら食事の片づけが終わり、俺とセラは教会を出て奉仕に向かった。


今日の奉仕先である役場は村の中心にある。

セラの向かう畑は役場を越えて村の南側の外れにあった。

役場までは一緒の道を通る為、俺達は雑談をしながら並んで歩いていた。


ふと畑に目をやると、途中で幾人もの村人が野良仕事に精を出していた。


この村には通貨と言うものが無い。

基本的に自給自足で酒等の嗜好品や調味料は、この村で採れる特産品の薬草を街から定期的に来る馴染みの行商人と物々交換する。

何でも、この村の薬草は街では中々手に入らないモノらしい…


街ではクロムと言う通貨で品物を買うと言っていたが…俺は見た事がない。


親父もトール神への祈りが終わったら自分の畑で野良仕事をして俺達は奉仕する。


コレが毎日の暮らしだ。

俺は街に行った事が無いし、比較する事も出来ないが…この村の若い女は美人揃いらしい。


これは馴染みの行商人から聞いた話だ。


幼なじみの俺が言うのもなんだが…この村で最もイケてるのは、間違いなく横で歩いているセラだろう。


金髪ショートで瞳は茶色 。体格は華奢ではあるが抜群のスタイルだ。


……特に胸がな


村には若い男は俺以外にもいるが…有難い事にセラに言い寄るものはいない。


まぁ…俺にはその理由が分かっている。


…ちょっと前に村の祭りの余興で腕相撲大会があった。

普段、野良仕事で鍛えた男ばかり参加したが

飛び込みで参加したセラが、何の苦もなく優勝してしまったのだ。

あの時、参加した男達の落胆ぶりと言ったらなかったな…


怪力少女セラを口説こうとする物好きはいないだろう。

コッチとしては好都合で助かる。

最近、妙にコイツの事が気になってしょうがない。


…色んな意味で


そうこうしているうちに役場に着いた俺は、セラと別れる。


セラからは念を押されたが…まだ俺は諦めてはいない


要はやったフリをすればいいのだからな。


役場の外壁を見上げると、屋根に近い一部分が剥がれ落ちて穴が空いている。

なるほどなぁ…だが、ココを修復するのは苦労しそうだ。


剥がれた外壁の位置が問題だ…通常、泥土で埋めて乾かす事を何度もしなければならないが……高い位置に修復する場所があるため、梯子を使って何往復もしなければならない。


俺がそんな面倒くさい事を真面目にやると思うか?


答えは決まっている…俺は泥土を作ると、かなりいい加減に外壁に塗り込み作業を終了した。


とりあえず乾くのを待つために暇潰しをしようと思い、役場の中へと入る。

修復作業する事になっていたので役場には人がいないからな。


この役場は村の人間が交代で管理をしている。

村の人間は真面目な奴が多い…役場の中は綺麗に整頓されていた。

役場の机には村の予定表が置いてあった……どれどれ


…ほー。明後日に行商人が来るのか…また色んな話が聞けそうだな。


…腕相撲大会…またやんのか。

セラにボロ負けしたのが野郎のプライドに火をつけたらしいな。


あぁ…なるほど。道理で身体を無駄に鍛えている奴がいると思った。こりないなぁ



……ん……そろそろ泥が固まったかな?



俺は外に出て修復した外壁を見る…

軽く叩けばボロボロ落ちそうだが、遠めからは分からないだろう。


…よし!昼寝でもすっか

こんないい天気に昼寝しないなんてバチがあたる。


俺は作業道具を持って、お気に入りの昼寝ポイントまで移動する事にした。

勿論、セラがいる村の南側を避けてだが



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