世界
モニカ
「まず…世界の始まりについて話すわね。人間達がまだ下界にいない時代…地上にはエルフ達がいたの。エルフは神々の模造品……この下界において最も我々に近い存在ね。」
……神に近い存在なら人間なんかいらなかったんじゃないか?
モニカ
「エルフ達は自分達が神に近い存在だと自覚していたわ。だからこそ神を崇めなくなった。神々は自分達を崇拝してくれなければ力は得られない…私達悪魔は負の感情や魂を喰らうことで力を得るけれど」
…それで人間を作ったわけか
モニカ
「そう…人間には魔力をもたせず能力も並にすれば、絶対者である神を崇めると思ったのでしょうね。最初は神々の思惑通りだったけど……人間は他種族であるエルフ達に嫉妬し始めたのよ。そして自分達とエルフを交配させれば神の能力を貰えると考えたわけ」
……そこでダークエルフとハーフエルフが生まれた訳か。
モニカ
「ダークエルフとハーフエルフは共に魔力を持つけれど寿命は人間と同じ。だけど違う点があるの……ハーフエルフは心臓の他に魔硝石と呼ばれる魔力の源があるわ。この魔硝石のおかけでハーフエルフの方がダークエルフより魔力が高いの……でも」
……でも?
モニカ
「ダークエルフ達は自分達と生まれる過程は一緒なのに魔硝石があり、魔力が高いハーフエルフ達を憎んだわ。そこで人間達に魔硝石の(使い方)を教えたの。……魔硝石をハーフエルフから取り出し人間に移植する事によって人間にも魔力を持たせるやり方をね」
…ちょっとまて。取り出されたハーフエルフはどうなるんだ?
モニカ
「死ぬわ。生きながら取り出さないと魔硝石は効果が無くなるの。これにより人間達とダークエルフ達によるハーフエルフ狩り及びハーフエルフを産み出す交配が盛んになったの。ダークエルフ同士は交配しても子を作る事が出来ないから彼らとしても都合が良かったのでしょうね。」
……ハーフエルフ達は材料扱いか。
モニカ
「けれど神と同格と思っていたエルフ達が人間達に戦争を仕掛けたの。エルフとしては劣等種の人間が自分達の種を使ってダークエルフやハーフエルフを産み出しているのが我慢ならなかったようね。人間達はダークエルフと手を組み対抗した……大魔大戦と呼ばれた戦いね。」
……大魔大戦?どっかで聞いた覚えがあるな
モニカ
「この戦いのおかげで天界の戦いにも終止符が打たれる事になったの。戦争は我々悪魔にとって最高の糧になったから。」
モニカはウットリとした表情で舌を出して口唇をなめた。たしかに戦争をすれば互いに憎み合い殺し合うだろう…負の感情や魂を喰らう悪魔にとっては最高の食事だ。まして欲望が強い人間がいるのでは。
モニカ
「天界での戦いに勝利した我々は人間達に加勢をしたわ。エルフ達は下界の物とはいえ神々の模造品……数は少ないとはいえ人間達には荷が重かったから。」
…悪魔が加勢したなら勝負は呆気なくついただろう。
モニカ
「我々が加勢するといっても直接戦う事は出来ないの。天界が下界に干渉するのは間接的にしか出来ないのよ。君に生き返る力を与えたようにね。」
……思い出した!大魔大戦……親父に聞かされた事があった。たしか、聖騎士マルクが指揮する騎士団がエルフ達を追い払って人間達が勝利したとかなんとか…
モニカ
「フフ…そのマルク達に我々悪魔が魔具や加護を与えたのよ。私もマルクには君と同じに生き返る力を与えたわ。彼の持つ剣は聖剣スルトなんて呼ばれてるけど……悪魔の力が宿ってるなんて皮肉よね」
……おいおい。神は崇める事によって力を増すんじゃなかったのか?聖騎士とか呼ばれてるんじゃ当時は神への信仰は結構あったんじゃないか?
モニカ
「崇める神が本当の神じゃなかったら?」
……どういうことだ?
モニカ
「ちょっと話疲れたわ。少し休憩しましょう」
モニカはパチンと指を鳴らす…と真っ白な空間に座り心地がよさそうな椅子が現れた。
モニカ
「ベッドの方がよかったかしら?一緒に寝ながら話した方がいい?」
モニカは色っぽい目つきで俺を見てくる。
この悪魔は、やたら色仕掛けをしてくるな
モニカ
「あら…貴方はマルクとは違うのね。彼は私に抱きついてきたのに…フフフ」
…成る程。マルクが馬鹿野郎だってことは理解したよ