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運命は変えるもの  作者: ひろぽんすけ
旅立つ者
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喪失

俺は親父の遺体を教会に寝かせ、フードを深くかぶり村の役場へと着いた。

役場の周りには、剣を持ったダークエルフ達が捕らえた村人達を見張っていた。


あれは…荷馬車か?


…牢屋付きの馬車が止まっている。

あれに乗せて村人を運ぶようだな…まだ入れられてはいないようだが…時間の問題だな。

…セラはいないようだが。


手に持った剣を握りしめながら、その光景を見ていると、村の南側からセラと馬に乗ったダークエルフがやってきた。


…あの野郎だ。


なにやら見張り番に指示しているようだ…

セラも無表情のまま、奴の後ろに立っている。

たしか…薬を使われていたんだっけな。

奴の意のままになってしまっているのだろうか?


…こうしていても始まらない…とりあえず隙を見てセラに近づいて正気に戻さねば。


俺は見張りのフリをしてセラに近づいた。

あの野郎は違う場所でダークエルフ達に指示をしている…今しかなさそうだ。


エイト

「……セラ!…俺だ…エイトだ」


無表情のまま立ち尽くしているセラに近づき、フードの中の顔を見せながら話かけた。


エイト

「おい…目を覚ませよ!…俺は生きてる…死んでなんかいないぞ……よく見ろ!」


無表情だったセラは、俺を見てニヤリと笑うと首を掴んで持ち上げ始めた。

…息が出来ない!掴んだ手は俺の頸動脈を締め上げていた…両手で振りほどこうとするが、ビクともしない。

セラは無造作に俺を地面に投げ捨てた。


「 …貴様は!?あの時の…」


投げ捨てられた勢いでフードが捲れてしまい、奴に素顔が見られてしまった。

周りにいたダークエルフ達も集まってくる。


…ハッタリをかますしかねぇか


エイト

「俺は死なないのさ…ある力を授かっている身でね。さぁ、どうする?殺しても生き返る俺に勝てると思うか?…不死身なんだぜ?」


ダークエルフ達も死んだ俺が目の前に傷1つ無く現れた事で動揺している。……本当は後9回死んだら終わりだけど…ハッタリは効果あったようだ 。


「……どうやら貴様も人間ではないようだな…では、君のお友達で相手をしてあげよう。セラ!遊んで欲しいそうだ…」


なに…!?ちょ…ちょっと待て!


奴の言葉にセラは頷くと「焔の型」で構える。

俺は必死に呼び掛けた。


エイト

「待てよっオイ!俺だよ!まだ分からないのか!?」



有無を言わさずセラは飛びかかってきた。

すかさず俺は伏せて攻撃を避ける。

セラは自分のスピードを抑えていなかったのか、役場の壁に突撃して壁をぶち抜いた。


エイト

「セラっ!!止めてくれ!」


崩れた役場の瓦礫から出てきたセラは、俺の言葉で一瞬動きが止まったが、すぐに走りだすと猛烈な勢いで飛び蹴りを放ってきた。

俺は、すかさず盾を構えて防いだがセラの蹴りの衝撃で盾は粉々に砕けてしまった。


「…無駄だよ。君のお友達は私の魅了の術に洗脳されているのでね。何を言おうが分からんよ」


エイト

「うるせぇっ!テメーは黙ってやがれ!…俺が正気に戻してやらぁ!!セラ…俺をよく見ろ!」


両手を広げて説得する俺の姿を見て、セラの動きが止まった。

やった…のか?


セラ

「…エ…イト?」


エイト

「そうだ!俺だよ!」


セラ

「嘘だ!違う…エイトは死んだ…お前じゃない!」


セラは叫びながら俺に飛びかかり馬乗りになった。

両手を捕まれて拘束され全く動けない。

虚しく抵抗する俺にダークエルフは近寄ってきた。


「だから言っただろう?…無駄だと。今の君のお友達は自分の育ての親ですら分からないのだから」


エイト

「親父を…セラにやらせたのか!テメェーっ!」


「ほう…君の育ての親でもあったのか、あの神父は。何度もお友達になぎ倒されながら必死に名前を呼んでいたな…フフフ」


エイト

「貴様ぁっ!…どけ!セラ!コイツだけは…コイツだけは許せねぇーーっ!」


セラは無表情のまま馬乗りになって俺を拘束している。俺の言葉は全く聞いていない。


「あぁ…そうそう、死ぬ前に教えてあげよう。お友達のセラ君の事は心配しなくていい。エルフ族に対しての交渉材料となるからな……なにせハイエルフは世界で、お友達を含め3人しかいない。」


男はフードを脱ぐと俺に素顔を見せた。

肌は灰色で無精髭を生やし、左目に刃物で斬られた傷がある。

…これが俺を殺したダークエルフの顔。


「君を殺したとなればセラ君は深く絶望するだろう。この後の調整がやり易くなる…わざわざ来てくれて礼を言っておかなければな」


ダークエルフは指を鳴らした…その合図を聞いたセラは頷くと、俺の首を両手で締め始めた。


エイト

「…セ…ラ……やめ…て…くれ… 」



…ゴキっ!



最後に聞いたのは俺の首の骨がへし折れた音だった


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