第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。
迷宮の旅人である、ガーネと猫のトラが織りなす、別世界での旅のお話です。
第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。のお話です。
この回では、ガーネとトラは、空を飛ぶ事を夢見る博士と出会います。
そして、ガーネは空を飛ぶ挑戦する事になるのです。
第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。
ガーネとトラは、迷宮の道をただひたすら、歩いていました。
「なかなか、ドアは見つからないわね。」
「疲れる事も無く、お腹が空く事も無い。
とは言っても、道と階段しか、無いんですからね。
いささか、この眺めもうんざりしてきましたね...って。
おっと、これは!」
「まぁ、迷宮のドアよ。なんで倒れているのかしら。」
「まるで、飛びこめって言っているみたいですね。」
「そうかも。じゃあ、飛び込んでみるわね。えぃ。」
そう言って、トラは、ドアの中に飛び込んでしまいました。
「仕方がありません。では、私も飛び込んでみましょうか。」
トラに次いで、ガーネもジャンプして、ドアの中に飛び込みました。
次の瞬間。「ウワァーッ。」ガーネは、大声で叫んでしまいました。
自分が、かなり高い上空から、下へ落ちている事に気が付いたからでした。
下を見ると、先にここに来た、トラの姿が見えました。
「ああ、トラも私もこれでおしまいですね。」
ガーネは、覚悟をしました。そして気を失っていました。
ガーネは、目を覚ましました。
ガーネは、ボートの上で、横たわっている自分に気が付きました。
「えっ、ここは一体。」
ガーネが起きた事に気が付いた船員は、ガーネに声をかけてきました。
「大丈夫ですか。御気分は如何です?」
「えっ、ええと、とりあえず、何ともありません。」
「それはよかったです。あなたは本当に運の良い人だ。」
その船員は、感心していました。
「あの、私の連れがどうなったか、判りませんでしょうか?」
「お連れさんがいたんですか。で、それはどんな人ですか?」
「いや、人ではなく、これくらいの小さい猫なんですけれどね。」
「ああ、それでしたら、あちらの船に乗っていたと思いますよ。」
船員がその船を指さしました。
その先にある船の穂先に、見覚えのある小さい猫が、立っておりました。
「ああ、間違いありません。あの猫です。」
「随分、小さい猫ですね。そして可愛らしい。
あの船も、この船と同様、近くの港に向かいます。
そこで、合流出来るでしょう。」
船員はそう言いました。
「判りました。」ガーネはホッとしました。
それから、数十分後に、2つの船は、港に着きました。
ガーネが、船から降りると、トラが急いで、走って来ました。
「こんにちわ。ガーネ。また会えて嬉しいわ。
もう、駄目かと思ったわ。お互い生きていてよかったわね。」
「いきなりドアへ飛び込んだのは、誰でしたっけね。
おかげで、もう少しで、死と御対面でしたよ。
少しは、反省してくださいよ。」
「でも、あの場合、ドアに飛び込むしか無かったでしょう。
それとも、ドアを無視して、あてもなく迷宮をさまようつもりだったの?」
「まぁ、それはそうですけれどね。」
ふぅー。ガーネはため息を1つつきました。
「それにしても、かなり高いところから、落ちた筈ですよ。
よく私たちは、助かりましたね。」
「違うの。確かに途中までは、落ちていたのよ。
でもね。突然、ふわっと、体が浮くような感じになったの。
そして、その状態で、ゆっくりと海に落ちて、いや、降りていったの。
海につかる寸前、落下は停止して、そのままふわふわと浮かんでいたの。
その後、救助艇が駆けつけてくれたのよ。
あなたも、そうして助かったの。」
「空中に浮いていたって言うんですか。でもどうしてなんでしょう?」
「そこから先は、わしに説明させてもらいたいな。」
そう言って、現われたのは、白衣を来た、科学者っぽい人でした。
髪の毛に、白い物が多く混じったおじいさんでした。
「あなたは、どなたですか。」ガーネは尋ねました。
「わしは、カーマイン。航空機のエンジンなどを研究している工学博士じゃ。」
「そうですか。何か私たちに、御用でもおありになるんですか。」
「あるから、ここにいるのじゃ。」かなり、横柄な人でした。
「さきほど、私たちが助かった理由を、説明してくれるとか言っていましたね。
何故、私たちは助かったのでしょうか?」
「ここの海面にのみ起きる、特有の現象のせいなのじゃ。
1日のうち、数時間の間だけじゃが、無重力状態が発生する。
おまえたちが、この海面に落ちてきた時が、その時刻だったのじゃ。
判ったかな。」
「判りましたが。...地上近くで無重力状態が発生するのですか。
とても、不思議な話ですが、トラもそれを体験したと言っています。
私も、こうして助かっているわけですから、信じましょう。
それにしても、すぐ救助艇を出してくれて感謝します。
でも、何故、私たちが、あそこに落ちてきた事が、判ったのですか。」
ガーネはカーマイン博士に尋ねました。
コホンと咳払いして、少し赤らめた顔になってカーマイン博士は答えました。
「いや、わしたちが、救助艇を準備していたのは、君たちとは関係ないんだ。」
「と、言いますと。」
「ある実験をしていたのだ。
その実験の危険を回避するために、準備していたと言う訳だ。
君たちをすぐに、助けられたのは、偶然なんだよ。」
「ああ、そうだったんですか。
それじゃあ、私たちが助かったのは、単に運が良かっただけなんですね。」
「その通りだ。」
「それでも、助けられたことには、間違いありません。
私やトラを助けて頂き、有難うございました。
ところで、実験をしていたとお伺いしました。
差し使えなければ、何の実験をなさっていたんですか。」
カーマイン博士は、自慢するように話しました。
「いいとも。私たちがやっていた実験というのはだな。この大空を飛ぶ実験だ。」
「はぁ?」ガーネは一瞬、耳を疑いました。
ガーネは、大空を指さして、カーマイン博士に質問しました。
「大空を飛ぶと言われましても...。
先ほどから、たくさん、大空を、飛行機が飛んでいますよね。
あれは、違うんですか。」
「あれは、空を飛ぶ乗り物だ。わしの目指しているのは、空を飛ぶ人間だ。」
「と、言いますと、人間を改造して、羽でも付けるおつもりですか?」
「それは、SFの見過ぎじゃ。
わしはな、小型で、推進力が強いエンジンを、開発中なのじゃ。
それを用いた飛行装置を、人間の背中に装着して、空を飛ばせるのじゃ。」
「そんな事が出来るんですか?」
「現時点では、実用には、まだまだだがな。
そうじゃ、もし興味があるなら、わしの研究所に来んか。
いろいろ相談したい事もあるし、見せたいものもある。
おぬしも、そちらの猫も、体の調子は大丈夫かの?」
ガーネはトラを見ました。
「あたしは、元気よ。」トラがそう言いました。
「私も、大丈夫です。特にこれといった用事もありません。
博士さえ、ご迷惑でなければ、お伴させて頂きます。」
「そうか、ではついて来るがいい。」
カーマイン博士は、そう言うと、駐車場まで連れて行きました。
そこに止めてある自分の車にガーネとトラを便乗させて、走り出しました。
博士の研究所に着きました。
でも、そこは、ガーネが想像していたものと、大きく違っていました。
「これは、研究所というよりも、単に大きい家にしか見えないですね。」
「わしの研究には、街からの補助金が出なくての。
自腹でやっておるのじゃ。」
博士は、そう言って、玄関を開けて入りました。
ガーネとトラもその後に続きました。
ガーネは、博士にお願いして、雑巾を用意してもらいました。
それで、トラの足を拭いた後、一緒にその家にあがりました。
博士の後を追って、ある部屋に入りました。
そこは、広い部屋でした。エンジンやその関連機器が並べられていました。
機械部品を加工する台や、機材などもありました。
確かにこれなら、研究所と言えるのかもしれません。
しかし、その部屋は、他の部屋とあまりにも調和していませんでした。
「ここは、後から、改造した部屋なのですね。」
ガーネは聞いてみました。
「ああ、そうじゃ。
研究には、どうしても、これくらいのスペースが必要だったからのう。」
カーマイン博士は、認めました。
「わしが、今精魂込めて開発しているのは、これじゃ。」
そう言って、あるものをガーネやトラの前に置きました。
「黒いランドセルですか。今年お孫さんでも、入学なさるんですか。」
ガーネはそう尋ねました。
「馬鹿な事を言うでない。わしに、孫などおらんわい。
これが、わしが開発している、人間に大空を飛ばせる飛行装置じゃ。」
カーマイン博士は、ガーネに言いました。
「名前はスカイダーと付けた。どうじゃ、格好いいじゃろう。」
「はぁ、スカイダーですか。」
「このスカイダーの特筆すべきところは、やはり、エンジンじゃ。
液体水素と液体酸素」
「あっ、装置の説明は、要らないです。科学的なものは、うといんですよ。
要するに、空を飛べる装置という事ですね。はい、判りました。」
「そうなのじゃが...。
(小声で)最近の若い者は、年寄りの言う事を聞かなくて困る。
折角、判り易く説明してやろうと思っておったのに。
人の楽しみを、簡単に拒否しおって。ブツブツブツ。」
老人は、明らかに残念そうでした。
トラは、ガーネに、小声で喋りました。
「何か、このおじいさん。ショックを受けているみたいだわ。
話を聞いてあげた方が、よかったんじゃなくて?」
ガーネも、小声で、答えました。
「駄目ですよ。トラ。こういうじいさんは、甘やかすと癖になるんです。
一旦、喋り出したら、満足するまで止まらないんだから。
まっ、しばらく何もしないで、見守っててあげましょう。」
そのうち、カーマイン博士は、気を取り直して、話を続けました。
「おほん。つ、つまりじゃ、この装置を使って、空を飛ぶ実験をしておるのじゃ。
じゃがな、その被験者、つまりテスターが夏休みをとっておる。
彼が、帰ってくるまでは、満足な実験など何も出来ないのじゃ。
そこでじゃ、頼みというのはだな。おぬしに、その代りをやってもらいたいのじゃ。
引き受けてくれんかのう。
2~3日ぐらいでいいんじゃがのう。
もちろん、その間の宿泊費や飲食代は、全てこちら持ちで、構わん。」
これを聞いて、ガーネは、カーマイン博士の右手を、両手で握りしめました。
「判りました。空飛ぶ実験とは、実に画期的な実験です。
こんな私でも、お役に立つ事ができるなら、どうぞお使いください。」
「すまんのう。恩にきる。」
カーマイン博士も感動して、ガーネの右手を握り返しました。
その様子を、トラはただ呆れて見守っていました。
「どれ、まずはこれを装着してもらおうかの。」
カーマイン博士は、(ランドセルじゃなくて、)スカイダーをガーネに渡しました。
ガーネは、スカイダーを背負いました。
「そしたらのう、このボタンを押してごらん。」
ガーネは、カーマイン博士の指示通り、そのボタンを押しました。
すると、両肩と腰で、バンドが丁度良く、締まりました。
「どうじゃ。気分は?」
「はい。ビシッとランドセルが、背中に装着出来ましたね。」
「スカイダーじゃ。」カーマイン博士は、訂正しました。
「次には、これを装着するのじゃ。」
そう言って、前腕にも、金属機器を装着させました。
「両手のそばにハンドルのようなものがあって、握れるようになっていますね。
これは、何なのでしょうか。」
「これは、空を飛んだり、旋回したりするのに使う物じゃ。
ハンドルを両手でレバーごと握ると、空へと上昇する事が出来る。
その逆に少しずつその手を緩めれば、下降する事も可能じゃ。
また、空を飛んでいる間に、片方の手を緩めれば反対側へ旋回も出来る。
どうだ、割と簡単な操作じゃろ。」
「そうですね。ええと、片方をレバーごと握ると、ウワァー。」
いきなり、ガーネは倒れて、ぐるぐると回り始めました。
スカイダーの片方の噴射口から、白い煙が勢いよく流れています。
そのまま、止まらず壁に激突してしまいました。
「これっ、早くその手を離すんじゃ。」
カーマイン博士は慌てて、ガーネに言いました。
ガーネは、ハンドルから手を離しました。
スカイダーは、その動作を停止しました。
「ああ、助かりました。死ぬかと思いましたよ。有難うございます」
ガーネは、カーマイン博士にお礼を言いました。
「いや、わしも悪かったのじゃ。
先ほども言ったように、まだ、実験段階のものでな。
安全装置など付けておらんのじゃよ。
装着させる前に、よく注意しておくべきだった。すまんすまん。」
カーマイン博士も、ガーネに頭を下げました。
ガーネは博士から、スカイダーの取扱方法や操作方法を教わりました。
外に出て、実際に操作して見る事になりました。
博士の家から、少し歩いたところに、広場がありました。
この時間、そこには誰もいませんでした。
「では、始めよう。手順はもう判っているのう。」
カーマイン博士は、念のため、ガーネに確認しました。
「大丈夫です。任せてください。」ガーネは答えました。
ガーネは、ヘルメットを装着していました。
それには、マイクとヘッドホンが内蔵されていました。
博士とトラは、ガーネから少し離れました。
「では、始めます。」ガーネは叫びました。
ガーネは両手で、ハンドルをレバーごと握りました。
スカイダーの噴射口から、白い煙が勢いよく流れました。
それと同時に、ガーネは上へ上へと上昇して行きました。
博士はマイクに向かって、喋りました。
「よし、そこら辺でよかろう。次は右旋回じゃ。」
ガーネは、ハンドルを操作して右旋回を行いました。
その後も、直進移動や旋回移動を繰り返しました。
全体的に、多少ぎこちない面はあったものの、なんとかやり遂げました。
一連の動作を終えると、博士はガーネに言いました。
「合格じゃ。テスターとして申し分ない。もう降りてきてもいいぞ。」
ガーネは、両手でゆっくりとハンドルを離したり、握ったりしました。
そして、無事に、地上に降り立つ事が出来ました。
「これは、すごい装置ですね。
操作方法さえマスターしていれば、自由自在に空を飛べるじゃないですか。
実験段階ではなく、既に完成しているのではないのですか?」
ガーネは博士に尋ねました。
カーマイン博士は苦笑いして、答えました。
「確かに、あの程度の高さでいいのであれば、完成していると言えるかもしれん。
じゃがな。わしは、このスカイダーを救難、救助用に使う事を想定している。
となれば、今より何倍も高い所でも、同じように操作が出来る必要がある。
残念ながら、今の段階では、それはまだ無理なのじゃ。
高くなればなるほど、推進力や姿勢制御が不安定になってしまうからの。
まだまだ、研究が必要なんじゃよ。」
「そうでしたか。この実験の大切さがよく判りました。
私が、この実験に参加できる事を、光栄に思っています。」
ガーネは、そう言って、カーマイン博士に手を差し出しました。
博士も、その手をしっかり握りました。
「うん。よろしく頼むぞ。
では、そろそろ、お昼にするか。家で食べていきなさい。
実験は、午後から始めるからの。」
博士とガーネ、そしてトラは、博士の家で、お昼を御馳走になりました。
その後、ガーネとトラは宿舎を案内してもらい、ひと休みしました。
「ねぇ、さっきスカイダーに乗って空を飛んだでしょ。どんな感じだった?」
トラは、興味しんしんと言った感じで、ガーネに尋ねました。
「すごく面白かったですよ。空が身近に感じられました。
もっと、自由自在に、飛び回れるようになったらいいですね。」
「へぇ、いいな。私も飛びたいな。」トラは羨ましがりました。
午後になり、ガーネたちは、空から落下した、あの場所まで戻って来ました。
救助艇の1つが、ガーネの発進場所でした。
「では、これから実験を始める。くれぐれも怪我の無いようにな。
このスカイダーは午前中に着けたものよりも、推進力が高いからの。
細心の注意を払って、操作するように。」
カーマイン博士は、厳かにいいました。
博士の合図とともに、ガーネは両手のハンドルをレバーごと握りました。
スカイダーの噴射口から、白い煙が勢いよく流れました。
それと同時に、ガーネは、上へ上へと上昇して行きました。
博士はマイクに向かって、喋りました。
「わしが、いいと言うまで両手はそのままの状態でいるんじゃ。」
ガーネは、更に上へと上昇して行きます。
しかし、ある程度の高さに達した時、急に推進力がゼロになりました。
ガーネは、真っ逆さまの状態になって、そのまま落ちてきました。
「ああ、スカイダーを装着している以外は、ここに来た時と同じです。」
ガーネは、無重力状態になっている事を期待しました。
そのガーネの願いはかなえられました。
落ちるスピードは、だんだん遅くなりました。
そして、海面より少し上で浮いている状態になったのです。
「そうか、午前中もこうだったんですね。」ガーネはそう思いました。
救助艇が近くに来てくれたので、それに乗り込みました。
それには、トラが乗っていました。
「ねぇ、怖かった?」トラは尋ねました。
「初めてここに来た時は、そうでしたね。
でも、今は違います。何て言ったらいいのかな。
そうだ、バンジージャンプみたいな面白さがありましたね。
実際、こっちの方が、あれよりももっとリアルで迫力がありますね。
そう、リアルバンジーとでもしておきましょうか。
あの高さから落ちるスリルや迫力は、並ではありません。
すごく楽しいし、面白いと思います。」
ガーネのワクワクした感じが、トラにも伝わって来ました。
「ガーネはずるい。いいな。いいな。私もやってみたいな。」
トラは、心の底からそう思いました。
実験は、海面の無重力状態が、消えると同時に終了しました。
特に怪我をする事もなく、終える事が出来ました。
ガーネは、最高の気分でした。
そんなガーネを、トラは羨ましくて仕方がありませんでした。
ガーネとトラは、宿舎に帰りました。
太陽も沈み、夜になりました。
ガーネとトラは、お風呂やに入った後、食事をしました。
そして少し休憩をした後、夜の散歩に出かけました。
ガーネとトラは、夜道を散歩していました。
お風呂上りの散歩は、気持ちのいい風が吹いている事もあり、快適でした。
「アイスでも、買いましょう。」
近くの食料品店に入り、アイスキャンディーを購入しました。
「お金なんて、よく持っていたわね。」トラが言いました。
「ああ、昼間のテスターの日当が、手に入ったんですよ。
帰りがけに、博士から手渡されました。」
ガーネは、アイスキャンディーを舐めながら、街のあちこちを見回しました。
トラも欲しがったので、時々舐めさせてあげました。
「昼間は、それなりに暑かったけど今は快適ね。湿度もちょうどいいわ。」
「そうですね。とても気持ちがいいです。歩きながらでも眠くなってきました。」
「じゃあ、あの公園のベンチで、休みましょうか。」
「いいですね。そうしましょう。」
ガーネとトラは、公園に入りました。
ゴミ箱に、食べ終わったアイスキャンディーの棒を捨てました。
「残念でしたよ。」「何がなの?」
「このアイスは、当たり付きだったんですけどね。」
「じゃあ、外れたのね。」「はい。」
1人と一匹は、ベンチに腰掛けました。
「ねぇねぇ。」「何でしょうか。」
「午前と午後で、あのスカイダーに乗ったわよね。どんな感じだったの。」
「博士も言ってたし、私も言ってたと思うけど。
午前中に広場で飛行したタイプは、ほとんど実用レベルに達していましたよ。
僅かな時間で私が一応の飛行が出来たのが、その証拠です。
博士は飛行高度に、不満があるみたいでしたね。
でも、今のレベルでも使い方次第で、十分利用価値はあるんじゃないでしょうか。
あと、午後からあの海上で飛行したタイプは、確かにずば抜けた推進力でしたね。
あんなに高いところまで飛べるとは、思ってもいませんでした。
午前のとは、段違いの性能でした。
でも、博士の目標の飛行高度には、届かないみたいだったようです。
姿勢制御もうまくいきませんでした。
でも、あれはあれで既に使いみちがあるような気がします。」
「というと?」
「アトラクションとして使うんですよ。
ショーとしても使えるでしょうし、バンジージャンプ用に使う手もあります。
実際に、あれを使用しましたけど、すごいスリルと迫力でした。
安全性さえ確保出来れば、爆発的にヒットするかもしれませんね。」
「そうか。いいな。私も空を飛びたいな。」
「うーん。トラがあれを操縦出来るようにするのは、難しいでしょうね。
今のスカイダーを完成させるより、はるかに困難かもしれませんよ。」
「じゃあ、自分で操縦するのは諦めるわ。
でも、せめて私もガーネと一緒に、空を飛ぶことは出来ないのかしら。」
「あとで、博士に聞いてみましょうよ。」ガーネはそう言いました。
夜ではありましたが、街灯が街のあちらこちらにあり、明るさがありました。
「ねぇ、公園のあそこは高台になっているわね。上がってみない?」
「そうですね。夜景が綺麗かもしれません。」
ガーネとトラは、高台に続く階段を上りました。
高台に着くと、そこからは街全体が一望する事が出来ました。
「ウワァー。」トラが驚いていました。
「なんて、綺麗な眺めなんでしょう。それに風も心地いいわ。」
「そうですね。こんな場所があったんですね。」
ガーネもトラと同じように感動していました。
眼下に広がる街並みは、もう暗くてよく判りませんでした。
ですが、これらから放たれる灯りは、線の様に連なっていました。
その線は、何本もありました。
1つに集約していたり、または広がっていたりしてました。
暗くなった街全体をキャンバスとして、綺麗な模様を描いていました。
ガーネとトラは、その夜景を十分堪能しました。
帰ろうとしたガーネたちは、同じ高台に人が1人いるのに気が付きました。
どこかで見たシルエットでした。
ガーネたちは、近づいてみました。
「あっ、博士。」
「なんだ、ガーネ君とトラ君だったのか。」
カーマイン博士でした。
「博士も、この夜景が好きなんですか。」
「ああ、この公園が出来てからわな。
まぁ、わしよりも奥さんの方が、好きではあったがの。」
「奥さんですか。確かお宅にお邪魔していた時、誰もいませんでしたね。」
「もう、亡くなっておる。」
「それは...。どうも、ご愁傷さまです。」
「いや、もう亡くなって、数年経つからの。
そんなに気にかけてくれなくても、結構じゃよ。」
「はぁ。」何か、気まずいような雰囲気になってしまいました。
「ところで、ガーネ君。明日の事なのじゃが。」
「はい。何でしょうか。」
「午前中は、今日と同じように実験をしてもらうがの。
午後からは、出かけなければならないのじゃ。
だからの。明日は午後の実験は休みとしたいが、いいかの。」
「はい。構いません。どうぞ、ゆっくりお出かけ下さい。」
「実は、最新のエンジンが完成したので、それを取りに行くつもりじゃ。
帰ってから、スカイダーのエンジンと交換して明後日の実験に備えたい。」
「そうでしたか。判りました。ところで先生にお願いがあるのです。」
「何じゃな。」
「実は、うちのトラも空を飛びたいらしいのです。
何とか、私と一緒に空が飛べるように出来ませんか。」
「何。トラ君もなのか。」博士は、トラの方を向きました。
「はい。お願いします。」トラは、博士に訴えました。
博士は、しばらく考え込んでいました。やがて口を開きました。
「判った。考えておこう。
それじゃあ、涼しくなってきたし、わしはそろそろ帰るとするか。」
カーマイン博士はこう言って手を振り、その場を立ち去って行きました。
「どうなるのかしら。」トラはガーネに尋ねました。
「さぁね。明日に期待しましょうよ。
私たちが、期待出来るのは、常に未来にですからね。
それじゃあ、私たちも帰りましょう。」
ガーネとトラも、宿泊所へ帰っていきました。
自分たちの部屋の畳の上に、布団を引きました。
ガーネは、トラにもタオルで可愛い布団を作ってあげました。
布団に入ると、いろいろあったせいでしょう。ガーネは直ぐに眠りに付きました。
一方、トラは布団の中で一心にお願いをしていました。
「明日は、空が飛べますように。」
そして、いつしかトラも眠ってしまいました。
第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。(終)
今回のお話は、ガーネが別世界で空を飛ぶ挑戦をする、第1日目を書いています。
博士との出会いから、空へ挑戦するまでの経緯が書かれています。
今回のお話は、ちょっと長くなるかなと思われたので、話を分ける事にしました。
次回も、この話の続きです。




