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トラ・オブ・ラビリンス  作者: シード
第4話「空を飛ぶガーネ」
4/46

第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。

迷宮の旅人である、ガーネと猫のトラが織りなす、別世界での旅のお話です。

第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。のお話です。

この回では、ガーネとトラは、空を飛ぶ事を夢見る博士と出会います。

そして、ガーネは空を飛ぶ挑戦する事になるのです。

第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。


ガーネとトラは、迷宮の道をただひたすら、歩いていました。

「なかなか、ドアは見つからないわね。」

「疲れる事も無く、お腹が空く事も無い。

とは言っても、道と階段しか、無いんですからね。

いささか、この眺めもうんざりしてきましたね...って。

おっと、これは!」

「まぁ、迷宮のドアよ。なんで倒れているのかしら。」

「まるで、飛びこめって言っているみたいですね。」

「そうかも。じゃあ、飛び込んでみるわね。えぃ。」

そう言って、トラは、ドアの中に飛び込んでしまいました。

「仕方がありません。では、私も飛び込んでみましょうか。」

トラに次いで、ガーネもジャンプして、ドアの中に飛び込みました。

次の瞬間。「ウワァーッ。」ガーネは、大声で叫んでしまいました。

自分が、かなり高い上空から、下へ落ちている事に気が付いたからでした。

下を見ると、先にここに来た、トラの姿が見えました。

「ああ、トラも私もこれでおしまいですね。」

ガーネは、覚悟をしました。そして気を失っていました。


ガーネは、目を覚ましました。

ガーネは、ボートの上で、横たわっている自分に気が付きました。

「えっ、ここは一体。」

ガーネが起きた事に気が付いた船員は、ガーネに声をかけてきました。

「大丈夫ですか。御気分は如何です?」

「えっ、ええと、とりあえず、何ともありません。」

「それはよかったです。あなたは本当に運の良い人だ。」

その船員は、感心していました。

「あの、私の連れがどうなったか、判りませんでしょうか?」

「お連れさんがいたんですか。で、それはどんな人ですか?」

「いや、人ではなく、これくらいの小さい猫なんですけれどね。」

「ああ、それでしたら、あちらの船に乗っていたと思いますよ。」

船員がその船を指さしました。

その先にある船の穂先に、見覚えのある小さい猫が、立っておりました。

「ああ、間違いありません。あの猫です。」

「随分、小さい猫ですね。そして可愛らしい。

あの船も、この船と同様、近くの港に向かいます。

そこで、合流出来るでしょう。」

船員はそう言いました。

「判りました。」ガーネはホッとしました。

それから、数十分後に、2つの船は、港に着きました。

ガーネが、船から降りると、トラが急いで、走って来ました。

「こんにちわ。ガーネ。また会えて嬉しいわ。

もう、駄目かと思ったわ。お互い生きていてよかったわね。」

「いきなりドアへ飛び込んだのは、誰でしたっけね。

おかげで、もう少しで、死と御対面でしたよ。

少しは、反省してくださいよ。」

「でも、あの場合、ドアに飛び込むしか無かったでしょう。

それとも、ドアを無視して、あてもなく迷宮をさまようつもりだったの?」

「まぁ、それはそうですけれどね。」

ふぅー。ガーネはため息を1つつきました。

「それにしても、かなり高いところから、落ちた筈ですよ。

よく私たちは、助かりましたね。」

「違うの。確かに途中までは、落ちていたのよ。

でもね。突然、ふわっと、体が浮くような感じになったの。

そして、その状態で、ゆっくりと海に落ちて、いや、降りていったの。

海につかる寸前、落下は停止して、そのままふわふわと浮かんでいたの。

その後、救助艇が駆けつけてくれたのよ。

あなたも、そうして助かったの。」

「空中に浮いていたって言うんですか。でもどうしてなんでしょう?」

「そこから先は、わしに説明させてもらいたいな。」

そう言って、現われたのは、白衣を来た、科学者っぽい人でした。

髪の毛に、白い物が多く混じったおじいさんでした。

「あなたは、どなたですか。」ガーネは尋ねました。

「わしは、カーマイン。航空機のエンジンなどを研究している工学博士じゃ。」

「そうですか。何か私たちに、御用でもおありになるんですか。」

「あるから、ここにいるのじゃ。」かなり、横柄な人でした。

「さきほど、私たちが助かった理由を、説明してくれるとか言っていましたね。

何故、私たちは助かったのでしょうか?」

「ここの海面にのみ起きる、特有の現象のせいなのじゃ。

1日のうち、数時間の間だけじゃが、無重力状態が発生する。

おまえたちが、この海面に落ちてきた時が、その時刻だったのじゃ。

判ったかな。」

「判りましたが。...地上近くで無重力状態が発生するのですか。

とても、不思議な話ですが、トラもそれを体験したと言っています。

私も、こうして助かっているわけですから、信じましょう。

それにしても、すぐ救助艇を出してくれて感謝します。

でも、何故、私たちが、あそこに落ちてきた事が、判ったのですか。」

ガーネはカーマイン博士に尋ねました。

コホンと咳払いして、少し赤らめた顔になってカーマイン博士は答えました。

「いや、わしたちが、救助艇を準備していたのは、君たちとは関係ないんだ。」

「と、言いますと。」

「ある実験をしていたのだ。

その実験の危険を回避するために、準備していたと言う訳だ。

君たちをすぐに、助けられたのは、偶然なんだよ。」

「ああ、そうだったんですか。

それじゃあ、私たちが助かったのは、単に運が良かっただけなんですね。」

「その通りだ。」

「それでも、助けられたことには、間違いありません。

私やトラを助けて頂き、有難うございました。

ところで、実験をしていたとお伺いしました。

差し使えなければ、何の実験をなさっていたんですか。」

カーマイン博士は、自慢するように話しました。

「いいとも。私たちがやっていた実験というのはだな。この大空を飛ぶ実験だ。」

「はぁ?」ガーネは一瞬、耳を疑いました。


ガーネは、大空を指さして、カーマイン博士に質問しました。

「大空を飛ぶと言われましても...。

先ほどから、たくさん、大空を、飛行機が飛んでいますよね。

あれは、違うんですか。」

「あれは、空を飛ぶ乗り物だ。わしの目指しているのは、空を飛ぶ人間だ。」

「と、言いますと、人間を改造して、羽でも付けるおつもりですか?」

「それは、SFの見過ぎじゃ。

わしはな、小型で、推進力が強いエンジンを、開発中なのじゃ。

それを用いた飛行装置を、人間の背中に装着して、空を飛ばせるのじゃ。」

「そんな事が出来るんですか?」

「現時点では、実用には、まだまだだがな。

そうじゃ、もし興味があるなら、わしの研究所に来んか。

いろいろ相談したい事もあるし、見せたいものもある。

おぬしも、そちらの猫も、体の調子は大丈夫かの?」

ガーネはトラを見ました。

「あたしは、元気よ。」トラがそう言いました。

「私も、大丈夫です。特にこれといった用事もありません。

博士さえ、ご迷惑でなければ、お伴させて頂きます。」

「そうか、ではついて来るがいい。」

カーマイン博士は、そう言うと、駐車場まで連れて行きました。

そこに止めてある自分の車にガーネとトラを便乗させて、走り出しました。


博士の研究所に着きました。

でも、そこは、ガーネが想像していたものと、大きく違っていました。

「これは、研究所というよりも、単に大きい家にしか見えないですね。」

「わしの研究には、街からの補助金が出なくての。

自腹でやっておるのじゃ。」

博士は、そう言って、玄関を開けて入りました。

ガーネとトラもその後に続きました。

ガーネは、博士にお願いして、雑巾を用意してもらいました。

それで、トラの足を拭いた後、一緒にその家にあがりました。

博士の後を追って、ある部屋に入りました。

そこは、広い部屋でした。エンジンやその関連機器が並べられていました。

機械部品を加工する台や、機材などもありました。

確かにこれなら、研究所と言えるのかもしれません。

しかし、その部屋は、他の部屋とあまりにも調和していませんでした。

「ここは、後から、改造した部屋なのですね。」

ガーネは聞いてみました。

「ああ、そうじゃ。

研究には、どうしても、これくらいのスペースが必要だったからのう。」

カーマイン博士は、認めました。

「わしが、今精魂込めて開発しているのは、これじゃ。」

そう言って、あるものをガーネやトラの前に置きました。

「黒いランドセルですか。今年お孫さんでも、入学なさるんですか。」

ガーネはそう尋ねました。

「馬鹿な事を言うでない。わしに、孫などおらんわい。

これが、わしが開発している、人間に大空を飛ばせる飛行装置じゃ。」

カーマイン博士は、ガーネに言いました。

「名前はスカイダーと付けた。どうじゃ、格好いいじゃろう。」

「はぁ、スカイダーですか。」

「このスカイダーの特筆すべきところは、やはり、エンジンじゃ。

液体水素と液体酸素」

「あっ、装置の説明は、要らないです。科学的なものは、うといんですよ。

要するに、空を飛べる装置という事ですね。はい、判りました。」

「そうなのじゃが...。

(小声で)最近の若い者は、年寄りの言う事を聞かなくて困る。

折角、判り易く説明してやろうと思っておったのに。

人の楽しみを、簡単に拒否しおって。ブツブツブツ。」

老人は、明らかに残念そうでした。

トラは、ガーネに、小声で喋りました。

「何か、このおじいさん。ショックを受けているみたいだわ。

話を聞いてあげた方が、よかったんじゃなくて?」

ガーネも、小声で、答えました。

「駄目ですよ。トラ。こういうじいさんは、甘やかすと癖になるんです。

一旦、喋り出したら、満足するまで止まらないんだから。

まっ、しばらく何もしないで、見守っててあげましょう。」


そのうち、カーマイン博士は、気を取り直して、話を続けました。

「おほん。つ、つまりじゃ、この装置を使って、空を飛ぶ実験をしておるのじゃ。

じゃがな、その被験者、つまりテスターが夏休みをとっておる。

彼が、帰ってくるまでは、満足な実験など何も出来ないのじゃ。

そこでじゃ、頼みというのはだな。おぬしに、その代りをやってもらいたいのじゃ。

引き受けてくれんかのう。

2~3日ぐらいでいいんじゃがのう。

もちろん、その間の宿泊費や飲食代は、全てこちら持ちで、構わん。」

これを聞いて、ガーネは、カーマイン博士の右手を、両手で握りしめました。

「判りました。空飛ぶ実験とは、実に画期的な実験です。

こんな私でも、お役に立つ事ができるなら、どうぞお使いください。」

「すまんのう。恩にきる。」

カーマイン博士も感動して、ガーネの右手を握り返しました。

その様子を、トラはただ呆れて見守っていました。

「どれ、まずはこれを装着してもらおうかの。」

カーマイン博士は、(ランドセルじゃなくて、)スカイダーをガーネに渡しました。

ガーネは、スカイダーを背負いました。

「そしたらのう、このボタンを押してごらん。」

ガーネは、カーマイン博士の指示通り、そのボタンを押しました。

すると、両肩と腰で、バンドが丁度良く、締まりました。

「どうじゃ。気分は?」

「はい。ビシッとランドセルが、背中に装着出来ましたね。」

「スカイダーじゃ。」カーマイン博士は、訂正しました。

「次には、これを装着するのじゃ。」

そう言って、前腕にも、金属機器を装着させました。

「両手のそばにハンドルのようなものがあって、握れるようになっていますね。

これは、何なのでしょうか。」

「これは、空を飛んだり、旋回したりするのに使う物じゃ。

ハンドルを両手でレバーごと握ると、空へと上昇する事が出来る。

その逆に少しずつその手を緩めれば、下降する事も可能じゃ。

また、空を飛んでいる間に、片方の手を緩めれば反対側へ旋回も出来る。

どうだ、割と簡単な操作じゃろ。」

「そうですね。ええと、片方をレバーごと握ると、ウワァー。」

いきなり、ガーネは倒れて、ぐるぐると回り始めました。

スカイダーの片方の噴射口から、白い煙が勢いよく流れています。

そのまま、止まらず壁に激突してしまいました。

「これっ、早くその手を離すんじゃ。」

カーマイン博士は慌てて、ガーネに言いました。

ガーネは、ハンドルから手を離しました。

スカイダーは、その動作を停止しました。

「ああ、助かりました。死ぬかと思いましたよ。有難うございます」

ガーネは、カーマイン博士にお礼を言いました。

「いや、わしも悪かったのじゃ。

先ほども言ったように、まだ、実験段階のものでな。

安全装置など付けておらんのじゃよ。

装着させる前に、よく注意しておくべきだった。すまんすまん。」

カーマイン博士も、ガーネに頭を下げました。


ガーネは博士から、スカイダーの取扱方法や操作方法を教わりました。

外に出て、実際に操作して見る事になりました。

博士の家から、少し歩いたところに、広場がありました。

この時間、そこには誰もいませんでした。

「では、始めよう。手順はもう判っているのう。」

カーマイン博士は、念のため、ガーネに確認しました。

「大丈夫です。任せてください。」ガーネは答えました。

ガーネは、ヘルメットを装着していました。

それには、マイクとヘッドホンが内蔵されていました。

博士とトラは、ガーネから少し離れました。

「では、始めます。」ガーネは叫びました。

ガーネは両手で、ハンドルをレバーごと握りました。

スカイダーの噴射口から、白い煙が勢いよく流れました。

それと同時に、ガーネは上へ上へと上昇して行きました。

博士はマイクに向かって、喋りました。

「よし、そこら辺でよかろう。次は右旋回じゃ。」

ガーネは、ハンドルを操作して右旋回を行いました。

その後も、直進移動や旋回移動を繰り返しました。

全体的に、多少ぎこちない面はあったものの、なんとかやり遂げました。

一連の動作を終えると、博士はガーネに言いました。

「合格じゃ。テスターとして申し分ない。もう降りてきてもいいぞ。」

ガーネは、両手でゆっくりとハンドルを離したり、握ったりしました。

そして、無事に、地上に降り立つ事が出来ました。

「これは、すごい装置ですね。

操作方法さえマスターしていれば、自由自在に空を飛べるじゃないですか。

実験段階ではなく、既に完成しているのではないのですか?」

ガーネは博士に尋ねました。

カーマイン博士は苦笑いして、答えました。

「確かに、あの程度の高さでいいのであれば、完成していると言えるかもしれん。

じゃがな。わしは、このスカイダーを救難、救助用に使う事を想定している。

となれば、今より何倍も高い所でも、同じように操作が出来る必要がある。

残念ながら、今の段階では、それはまだ無理なのじゃ。

高くなればなるほど、推進力や姿勢制御が不安定になってしまうからの。

まだまだ、研究が必要なんじゃよ。」

「そうでしたか。この実験の大切さがよく判りました。

私が、この実験に参加できる事を、光栄に思っています。」

ガーネは、そう言って、カーマイン博士に手を差し出しました。

博士も、その手をしっかり握りました。

「うん。よろしく頼むぞ。

では、そろそろ、お昼にするか。家で食べていきなさい。

実験は、午後から始めるからの。」

博士とガーネ、そしてトラは、博士の家で、お昼を御馳走になりました。

その後、ガーネとトラは宿舎を案内してもらい、ひと休みしました。

「ねぇ、さっきスカイダーに乗って空を飛んだでしょ。どんな感じだった?」

トラは、興味しんしんと言った感じで、ガーネに尋ねました。

「すごく面白かったですよ。空が身近に感じられました。

もっと、自由自在に、飛び回れるようになったらいいですね。」

「へぇ、いいな。私も飛びたいな。」トラは羨ましがりました。


午後になり、ガーネたちは、空から落下した、あの場所まで戻って来ました。

救助艇の1つが、ガーネの発進場所でした。

「では、これから実験を始める。くれぐれも怪我の無いようにな。

このスカイダーは午前中に着けたものよりも、推進力が高いからの。

細心の注意を払って、操作するように。」

カーマイン博士は、厳かにいいました。

博士の合図とともに、ガーネは両手のハンドルをレバーごと握りました。

スカイダーの噴射口から、白い煙が勢いよく流れました。

それと同時に、ガーネは、上へ上へと上昇して行きました。

博士はマイクに向かって、喋りました。

「わしが、いいと言うまで両手はそのままの状態でいるんじゃ。」

ガーネは、更に上へと上昇して行きます。

しかし、ある程度の高さに達した時、急に推進力がゼロになりました。

ガーネは、真っ逆さまの状態になって、そのまま落ちてきました。

「ああ、スカイダーを装着している以外は、ここに来た時と同じです。」

ガーネは、無重力状態になっている事を期待しました。

そのガーネの願いはかなえられました。

落ちるスピードは、だんだん遅くなりました。

そして、海面より少し上で浮いている状態になったのです。

「そうか、午前中もこうだったんですね。」ガーネはそう思いました。

救助艇が近くに来てくれたので、それに乗り込みました。

それには、トラが乗っていました。

「ねぇ、怖かった?」トラは尋ねました。

「初めてここに来た時は、そうでしたね。

でも、今は違います。何て言ったらいいのかな。

そうだ、バンジージャンプみたいな面白さがありましたね。

実際、こっちの方が、あれよりももっとリアルで迫力がありますね。

そう、リアルバンジーとでもしておきましょうか。

あの高さから落ちるスリルや迫力は、並ではありません。

すごく楽しいし、面白いと思います。」

ガーネのワクワクした感じが、トラにも伝わって来ました。

「ガーネはずるい。いいな。いいな。私もやってみたいな。」

トラは、心の底からそう思いました。

実験は、海面の無重力状態が、消えると同時に終了しました。

特に怪我をする事もなく、終える事が出来ました。

ガーネは、最高の気分でした。

そんなガーネを、トラは羨ましくて仕方がありませんでした。


ガーネとトラは、宿舎に帰りました。

太陽も沈み、夜になりました。

ガーネとトラは、お風呂やに入った後、食事をしました。

そして少し休憩をした後、夜の散歩に出かけました。


ガーネとトラは、夜道を散歩していました。

お風呂上りの散歩は、気持ちのいい風が吹いている事もあり、快適でした。

「アイスでも、買いましょう。」

近くの食料品店に入り、アイスキャンディーを購入しました。

「お金なんて、よく持っていたわね。」トラが言いました。

「ああ、昼間のテスターの日当が、手に入ったんですよ。

帰りがけに、博士から手渡されました。」

ガーネは、アイスキャンディーを舐めながら、街のあちこちを見回しました。

トラも欲しがったので、時々舐めさせてあげました。

「昼間は、それなりに暑かったけど今は快適ね。湿度もちょうどいいわ。」

「そうですね。とても気持ちがいいです。歩きながらでも眠くなってきました。」

「じゃあ、あの公園のベンチで、休みましょうか。」

「いいですね。そうしましょう。」

ガーネとトラは、公園に入りました。

ゴミ箱に、食べ終わったアイスキャンディーの棒を捨てました。

「残念でしたよ。」「何がなの?」

「このアイスは、当たり付きだったんですけどね。」

「じゃあ、外れたのね。」「はい。」

1人と一匹ふたりは、ベンチに腰掛けました。

「ねぇねぇ。」「何でしょうか。」

「午前と午後で、あのスカイダーに乗ったわよね。どんな感じだったの。」

「博士も言ってたし、私も言ってたと思うけど。

午前中に広場で飛行したタイプは、ほとんど実用レベルに達していましたよ。

僅かな時間で私が一応の飛行が出来たのが、その証拠です。

博士は飛行高度に、不満があるみたいでしたね。

でも、今のレベルでも使い方次第で、十分利用価値はあるんじゃないでしょうか。

あと、午後からあの海上で飛行したタイプは、確かにずば抜けた推進力でしたね。

あんなに高いところまで飛べるとは、思ってもいませんでした。

午前のとは、段違いの性能でした。

でも、博士の目標の飛行高度には、届かないみたいだったようです。

姿勢制御もうまくいきませんでした。

でも、あれはあれで既に使いみちがあるような気がします。」

「というと?」

「アトラクションとして使うんですよ。

ショーとしても使えるでしょうし、バンジージャンプ用に使う手もあります。

実際に、あれを使用しましたけど、すごいスリルと迫力でした。

安全性さえ確保出来れば、爆発的にヒットするかもしれませんね。」

「そうか。いいな。私も空を飛びたいな。」

「うーん。トラがあれを操縦出来るようにするのは、難しいでしょうね。

今のスカイダーを完成させるより、はるかに困難かもしれませんよ。」

「じゃあ、自分で操縦するのは諦めるわ。

でも、せめて私もガーネと一緒に、空を飛ぶことは出来ないのかしら。」

「あとで、博士に聞いてみましょうよ。」ガーネはそう言いました。


夜ではありましたが、街灯が街のあちらこちらにあり、明るさがありました。

「ねぇ、公園のあそこは高台になっているわね。上がってみない?」

「そうですね。夜景が綺麗かもしれません。」

ガーネとトラは、高台に続く階段を上りました。

高台に着くと、そこからは街全体が一望する事が出来ました。

「ウワァー。」トラが驚いていました。

「なんて、綺麗な眺めなんでしょう。それに風も心地いいわ。」

「そうですね。こんな場所があったんですね。」

ガーネもトラと同じように感動していました。

眼下に広がる街並みは、もう暗くてよく判りませんでした。

ですが、これらから放たれる灯りは、線の様に連なっていました。

その線は、何本もありました。

1つに集約していたり、または広がっていたりしてました。

暗くなった街全体をキャンバスとして、綺麗な模様を描いていました。

ガーネとトラは、その夜景を十分堪能しました。

帰ろうとしたガーネたちは、同じ高台に人が1人いるのに気が付きました。

どこかで見たシルエットでした。

ガーネたちは、近づいてみました。

「あっ、博士。」

「なんだ、ガーネ君とトラ君だったのか。」

カーマイン博士でした。

「博士も、この夜景が好きなんですか。」

「ああ、この公園が出来てからわな。

まぁ、わしよりも奥さんの方が、好きではあったがの。」

「奥さんですか。確かお宅にお邪魔していた時、誰もいませんでしたね。」

「もう、亡くなっておる。」

「それは...。どうも、ご愁傷さまです。」

「いや、もう亡くなって、数年経つからの。

そんなに気にかけてくれなくても、結構じゃよ。」

「はぁ。」何か、気まずいような雰囲気になってしまいました。

「ところで、ガーネ君。明日の事なのじゃが。」

「はい。何でしょうか。」

「午前中は、今日と同じように実験をしてもらうがの。

午後からは、出かけなければならないのじゃ。

だからの。明日は午後の実験は休みとしたいが、いいかの。」

「はい。構いません。どうぞ、ゆっくりお出かけ下さい。」

「実は、最新のエンジンが完成したので、それを取りに行くつもりじゃ。

帰ってから、スカイダーのエンジンと交換して明後日の実験に備えたい。」

「そうでしたか。判りました。ところで先生にお願いがあるのです。」

「何じゃな。」

「実は、うちのトラも空を飛びたいらしいのです。

何とか、私と一緒に空が飛べるように出来ませんか。」

「何。トラ君もなのか。」博士は、トラの方を向きました。

「はい。お願いします。」トラは、博士に訴えました。

博士は、しばらく考え込んでいました。やがて口を開きました。

「判った。考えておこう。

それじゃあ、涼しくなってきたし、わしはそろそろ帰るとするか。」

カーマイン博士はこう言って手を振り、その場を立ち去って行きました。

「どうなるのかしら。」トラはガーネに尋ねました。

「さぁね。明日に期待しましょうよ。

私たちが、期待出来るのは、常に未来にですからね。

それじゃあ、私たちも帰りましょう。」

ガーネとトラも、宿泊所へ帰っていきました。

自分たちの部屋の畳の上に、布団を引きました。

ガーネは、トラにもタオルで可愛い布団を作ってあげました。

布団に入ると、いろいろあったせいでしょう。ガーネは直ぐに眠りに付きました。

一方、トラは布団の中で一心にお願いをしていました。

「明日は、空が飛べますように。」

そして、いつしかトラも眠ってしまいました。


第4話「空を飛ぶガーネ。」最初です。(終)


今回のお話は、ガーネが別世界で空を飛ぶ挑戦をする、第1日目を書いています。

博士との出会いから、空へ挑戦するまでの経緯が書かれています。

今回のお話は、ちょっと長くなるかなと思われたので、話を分ける事にしました。

次回も、この話の続きです。

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