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トラ・オブ・ラビリンス  作者: シード
第10話「ブリザード」
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第10話「ブリザード」①-1

迷宮の旅人である、ガーネと猫のトラが織りなす、別世界での旅のお話です。

第10話「ブリザード」①-1のお話です。

今回はブリザードが吹き荒れる大地での、物語です。


第10話「ブリザード」①-1


 いつものように、トラとガーネは迷宮をひたすら歩いています。

「なかなか迷宮のドアは現れませんね」

「本当、この前現れたのはいつだったか、もう忘れてしまったわ。一体どうなっているのかしら。ぷんぷん」

「まぁまぁ、イライラしても仕方が無いですよ。いつもの事ですからね。

 どうです。だいぶトラも歩いたようですし、ここらで休養されては?」

「うーん、そうね。今あたしたちが歩いているこの道は、ずっと平坦なまま延びているけど、見渡す限り、迷宮のドアなんて影も形も無いわ。起きていても無駄かもね。

 あーっ、あっと。じゃあ、眠ろうかしら」

 トラは欠伸をした後、ガーネの肩からポケットへと移ります。顔と前足をぴょこんと出した状態で、ガーネの顔を見上げました。

「じゃあ、あたし寝るから。うるさくしちゃ駄目よ」

「トラ。私は1人芝居をするタイプではないので、大丈夫ですよ。ゆっくりお休みなさい」

「うん。じゃあ、お休みなさい」

「はい、お休みなさい」

 トラはガーネの右ポケットでいつものように、眠りにつきました。

 スースースー、スースースー。

 何事も無く、穏やかに時が過ぎていきます。やがて十分な睡眠をとったトラは目を覚ましました。

「あーっ、あっ」トラは全ての足を伸ばしながら、欠伸をします。

「さて、どうなっているかな」半分寝ぼけ眼のまま、トラはポケットから這い出して来ます。

「お早う、ガーネ。ムニャムニャ」トラはガーネをよじ登ろうとしたのですが、何分、まだ意識が朦朧としている状態だったので、鉤爪を出すタイミングが狂って、ポケットから落ちて行きます。現在、ガーネが立っている道から逸れて、トラが黒い空間へ落ちて行こうとした時、その落下が急に止まりました。ガーネがかろうじて、腰をかがめながらトラの後ろ足を捕まえる事が出来たからです。

「大丈夫ですか? トラ」「フム? 何の事?」

 トラはまだ半分おつむが眠っているため、現状把握がなかなか困難なようです。

 やれやれ。ガーネは半分呆れながらも、トラを引き上げようとしました。

「あっ! 待ってよ、ガーネ」トラがはっきりした口調で、ガーネに声をかけます。

「どうしたんですか?」「あれよ、あれを見て」

 ガーネはかがんだ格好で、トラが前足で指す方向を見ます。ガーネが立っている道のはるか真下には、交差するような形で道が延びていました。そしてその脇にあるものに目を止めたのです。

「うん? あれって迷宮のドアじゃありませんか?」

 トラはそれをじっくりと確認するかのように見つめます。

「本当ね、間違いないわ。じゃあ、あそこまで飛び降りましょう」

「でも、いいんでしょうか?」「何が?」

「この道では無く、あそこに現れていると言う事はいずれ、あそこに誰かが来るから、現れたんじゃないでしょうか? 果たして私たちが行っていいものなんでしょうかね」

「いいんじゃない? 速いもん勝ちって事で。それとも、あれを無視して、この道を歩き続けるつもりなの?」

「まぁ、それは考える余地がありますね。でも、何か良く無い気がするんですが」

「あたしは行くつもりよ。ガーネも行きましょう。この道ではいつまで経っても、現れないような気がするの」

「そうですね、行きましょうか」

 トラとガーネは今いる階段から下へと飛び降ります。ゆっくりと下降し、無事に下の階段に降り立つ事が出来たのです。

「やりましたね。見てください、迷宮のドアですよ」「ああ、やっと会えたのね」

 ガーネとトラは勢い込んでドアのノブを開き、中へと入って行きました。


 ヒュー、ヒュー。 雪が吹き荒れています。ブリザードでした。

「さ、さ、寒いですね」「ええ、寒いわ。このままなら確実に凍死するしかないわね」

 迷宮のドアを開けてから、すぐにガーネとトラは雪に埋もれてしまいました。

「うわぁ、ぶるぶるぶる」ガーネは慌てて身体に溜まった雪を払い除けます。

「ふぅー、どんなに雪を払ってもまた溜まってきますよ。一体どうしたらいいんでしょうかって、あれ、トラはどこに行ったんでしょうね。どこにも見えませんが」

 ガーネがきょろきょろしていると、どこからか声が聞こえてきます。

「あたしはここよ」ガーネは自分のポケットからの声だと気が付きました。

「いつの間に潜り込んだんですか? まぁ、それはどうでもいいですけど。どうです、ポケットの中は暖かいですか?」

「うー、寒い。寒くてたまらないわ。なんでこんな薄い生地を使用しているのよ」

「別に防寒服ではありませんしね。仕方がありませんよ。それにしてもここで突っ立ってても仕方がありませんね。雪をしのげるところを探しましょうか」

 ガーネは意を決して歩き出しました。


 ヒュー、ヒュー。あてもなく、ただ当てずっぽうに歩いていきます。

「ガーネ、大丈夫なの。ちゃんと人のいる場所までたどり着けるの?」トラは心配です。

「さぁ?」ガーネの回答は簡単明瞭でした。

 トラは気が気で無く、ポケットから顔を出します。ですが、あっという間にトラの顔に雪が積もってしまいました。

「うわぁー!」トラは前足で顔の雪を払い除けて、慌ててポケットの中に潜ります。

「ガーネ、前言撤回。まだこの中のほうがましだわ。あたし、身体を抱きかかえているから、早く暖かい場所に連れてってね」

「私もさっきから、それを願っているんですけどね。現実はなかなかこちらが思ったようにはいかないものです」

 ガーネはぼやきながらも、何とかこの場所から逃れる為、歩き続けます。しかし。

 ズボッ。雪の中に身体半分が埋まってしまいました。ガーネはクレパスの中に挟まれた事を知ります。

「ねぇ、ガーネ。どうしたのよ。なんかすごい揺れがあったけど。あれ、でもなんかポケットがガタガタ言わないわ。雪をしのぐ事が出来たの?」

「いえ、違います。クレパスの割れ目に挟まって、ポケットの部分が塞がった状態になっているだけです。それにしても危なかったですよ。もし、このクレパスがもっと大きければ、私はこのまま落ちて死ぬところです。足元にはもっと注意しないといけないって事なんですね」

ガーネは両手に力を込めて、身体を持ち上げ、クレパスから這い出しました。

「ふぅー」やれやれと安心する間も無く、激しい雪がガーネを襲います。雪が顔を直撃しないように下向きになりながら、腕で雪を払い、ひたすら歩いて行きました。

 


 こんな苦労の甲斐もあってか、ガーネの前方に小屋が見えてきました。

「はぁ、はぁ、やっと小屋が見つかりました。トラ、トラ。ほら、小屋ですよ」

 ガーネはそう言って、ポケットを叩きましたが反応がありません。

「これはまずいかも知れませんね」ガーネは大急ぎで小屋にたどり着きました。

 小屋の入り口には鍵がかけられていたので、ガーネは近くにあった大きな石で鍵を壊し、中に入ったのです。

 小屋の簡易ベッドに毛布が紐で縛って丸まっていたので、それを解いて広げ、トラをくるんで暖めました。

 有り難い事にその小屋は暖をとるのに必要な物が揃っています。ストーブに薪を入れ、着火剤用であろう植物の茎をその上に並べました。

「さてと、火を付けるにはどうしたら」

 ガーネはそう言いながらストーブの近くを探すと、床に小石が2つ落ちていました。

「ひょっとして」その小石を互いに打ち合わせてみると、火花が起きます。

「有り難い。火打ち石ですね」

 ガーネはストーブの中にある薪の上で火打ち石を打ち合わせます。すると薪の上に載せてあった植物の茎に引火し、薪に火が燃え移ったのです。

 しばらく時間が経つと、薪全体に火が回り、小屋中が暖かくなってきました。

 ストーブの上に乗っていたポットに雪を入れて、沸かします。しばらくすると、湯気が立ち上ってきました。

 ガーネがそのお湯を小屋に備えられていたコップについでいると、毛布がごそごそ動き出しました。

「あら、あたし、まだ生きているのね」トラはそう言いながらストーブに近づいて来ます。

「暖かいわぁ」トラは近くにある椅子に腰を降ろして、前足をストーブ内の赤々と燃える火の近くに差し出し、身体ごと暖まっています。トラの姿はストーブの炎に照らされて、オレンジ色に染まっていました。

 ガーネはコップのお湯を傍にあったお皿に注ぎます。そのままでは熱かったので、小屋の外で雪を幾らかそのお皿に入れて、温度調整をしました。

「うん、これならいいでしょう」指で温度を確認した後、ガーネはそのお皿をトラの前に差し出します。

「さぁ、飲んでください」「うん、有難う」

 トラはそのお湯をペロペロと舐めながら、飲んでいます。

「どうです。熱いですか?」「少し熱いけど、今日はこれくらいの方がいいかも」

 どうやら大丈夫なようです。ガーネも安心して、コップのお湯を飲み始めました。

 改めて周りを見回すと、ランプやロープがあるくらいで、他に目ぼしいものはありません。


 人心地がついた頃、ガーネとトラはガタガタ揺れる窓から外を眺めます。

「相変わらず、激しい降りですね」「本当ね、いつ止むのかしら」

 ふぅー。 ガーネはため息をつくと、トラと一緒にまたストーブの元に戻りました。

「ねぇ、ガーネ」「はい、何でしょうか?」

「身体は暖まってきたけど、食事はどうなっているの?」

「じゃあ、そろそろ探してみましょうか? 非常食ぐらいあればいいのですが」

 ガーネとトラは小屋の至るところを探して見ましたが、食料は見つかりません。

「ありませんね。このままじゃあ、お湯を飲むのが精一杯ですよ」

 ガーネはそうぼやきながら、床を見ていると、そこに四角い仕切りがあります。

「これは」

「あたしたちが初めて出会った建物にあったのと同じね。多分、地下室に続くハッチじゃないかしら」「はい、私もそう思います」

 ガーネがそのハッチを開くと、案の定、そこには地下室らしき、暗い空間があります。ガーネは灯りが欲しいと思い、先程見つけたランプを手に取ります。それはオイルランプでオイルも少し残っていた為、ガーネは火を灯す事が出来ました。その後、そのランプを持ってトラと一緒に、その中へと降りて行ったのです。

 地下室はランプの灯りの色に染められて、ぼんやりと明るくなっています。ガーネは棚の上にランプを置いて、あたりを探した見ましたが、何もありません。

「トラ、駄目ですね。どうやら食料は無いようです」「本当、がっかりね」

 ガーネも落胆したように、背中を木壁に押し付けようとしました。

「うん?」ガーネは慌てて、壁から離れました。

「どうしたの? ガーネ」「この壁、なんかおかしいですね」

 ガーネは周りの木壁を叩いて見ます。

「やっぱり、この壁だけは音がおかしい。中は空洞になっているのかも知れません」

 ガーネがその木壁の周りを見てみると、壁と壁の繋ぎ目がずれていて、少し浮き上がっています。ガーネはその隙間に両手の指を差し込んで、片方を引っ張ってみました。

 バリバリバリ 音を立ててその木壁が外れました。中は案の定、空洞になっており、その中には何かがあります。

「これは何でしょう」ガーネが取り出すと、それは大き目のリュックサックでした。

「うわぁ。何かいい物が入っているといいわね」

「ええ、期待しましょうか」ガーネはそれとランプを持って、トラと共に地上へと戻ったのです。


「何が入っているの?」トラは期待しました。

 ガーネは中を開けて、次々と取り出します。

「これはライト、これはタオルと…… ああ、いいものがありましたよ」

 ガーネが取り出したのは、地図と何か丸いものです。

「方位磁石ですね。これで現在位置が判るかもしれません。後は……」

 中には簡易キャンプ道具一式と、暖かい衣類がありました。

 ガーネは一束の箱が透明な包装に包まれている物を幾つか取り出します。その1つを破って、箱の中身を空けてみました。

「トラ、見てください。携帯食料ですよ」

 銀紙の包装を破って取り出したのは、ビスケットのようです。

「どうやら、これは栄養価がかなり高いみたいですね。一個食べればかなりのカロリーが摂れると思いますよ」

 ガーネはリュックサックにあった携帯皿に中身を出して、トラの前に差し出します。

「ちょっと柔らかくした方がいいですか?」

 トラは食べてみます。外はカリカリ、中はぐにゃっとしています。噛めば噛むほど美味しい。そんな風に思いました。

「大丈夫よ。でも、喉が渇くわね」

 ガーネはそれを聞くと、お皿に、ポットのお湯と雪で温度調整したものを注ぎます。

「有難う、ガーネ」トラはそれを飲みながら、携帯食料をゆっくりと味わいました。

 ガーネもコップのお湯を飲みながら、そのビスケットをかじっています。ガーネたちはとりあえず、二個ずつ食べました。

 しばらくすると、お腹が膨れてきます。

「これはすごい。体力が回復してくるような感じですね」「本当、食事って大切ね」

「節約して食べれば、一週間分ぐらいにはなるでしょうね。いいものが入っていました」

 ガーネたちは満足して、食事を終えたのです。


第10話「ブリザード」①-1(終)


今回のお話は第10話「ブリザード」の第1話前編となります。

いよいよ、新シリーズ開始です。

今回から行数が今までの半分以下になっています。

前書きは省略します。後書きは何か書きたい事が出来た時だけとします。

また出来れば、週一ぐらいのタイミングで出したいと思っています。

この第10話が終わるのは、来年となる予定です。

ご了承下さい。


お気付きの方もいるかも知れませんが、前回投稿したのは第8話です。

実は今回のお話の前に第9話「湖のある街」(全12話)があります。

ですが終わって見ると、半分最終回っぽいような内容になってしまったのです。

その他にも諸々の事情により、この作品の投稿は見合わせる事にしました。

いつか投稿する事がありましたら、その時は第9話として投稿したいと思います。



気が向いたら、また続きを書いてみたいと思います。

では、また会える日を。See You Again.


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