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トラ・オブ・ラビリンス  作者: シード
第8話「正と邪の女神」
28/46

第8話「正と邪の女神。」7つめですね。

迷宮の旅人である、ガーネと猫のトラが織りなす、別世界での旅のお話です。

第8話「正と邪の女神。」7つめですね。のお話です。

この回では、大広間にて、ガーネとトラが、レミアさんのお話を聞きます。

そして、いよいよ、女神の間に向かうのです。


第8話「正と邪の女神。」7つめですね。


ガーネとトラちゃんは、大広間の右側の石壇の上にいました。

あの食肉植物アルゴラが植えてあった、花壇の手前です。

そこには、座ったり寝転んだり出来るスペースの石壇がありました。

壁に沿って、平行に幾つか並べてあったので、話し合う事も出来ます。

「今晩は。」私は寝間着姿に、枕と寝袋と水筒を抱えて近づきました。

「あっ、えっ、ええと、あのー、レミアさんですよね。」

何かガーネが戸惑った様子で、尋ねて来ました。

「そうですよ。何をびっくりなさっているんですか?」

「いつも、サファリジャケットの姿しか、見た事が無かったものですから。

ちょっと、驚きました。」

「そうね。あたしも最初、誰かと思って緊張しちゃった。

レミアお姉ちゃんにしては、可愛い格好だったし。」

ガーネとトラちゃんは、私の意表をついた格好に、見とれていました。

ねぇ、トラちゃん。やっぱり、いい女は違うでしょ。

私は内心、してやったりとほくそ笑みました。

私はガーネたちの向かい側に座り、水筒のお茶をコップに注いであげました。

「有難うございます。」「有難う、レミアお姉ちゃん。」

ガーネたちは、口々にお礼を言いました。

私もお茶を少し、口にしました。

「眠れなかったんですか?」とガーネ。

「ええ、何だか寝付かれなくって。」私はうなずきました。

「無理もありませんよ。いよいよ明日が本番みたいなもんですからね。」

「そうね。一体どうなるのかしら。あたしも楽しみ、楽しみ。」

そんな話を続けた後、私は決心しました。

私が今まで、気になってどうしょうも無かった事を、尋ねてみる事にしたのです。

「今更、こんな事を聞くのも何なんですけど。思い切って聞いちゃいますね。

一体、あなた方は、何者なんですか?

どうしてそんな鉄の仮面を、被っているのですか?」

この私の単純かつ素朴な問いに、ガーネたちは、キョトンとした顔をしました。

「ねぇ、トラ。私たちは、この人たちに何も話さなかったんだっけ。」

ガーネは困惑気に、トラちゃんに尋ねていました。

「ええと、そうね。確かに話しをした記憶は無いわね。」

トラちゃんも、意外という感じで、記憶をたどっていました。

この後、ガーネは私にこう話したのです。

「済みません。てっきり、もう話していると勘違いしていました。

今まで、必ず最初に相手から聞かれていたものですから。」

「そうね。うっかりしていたわ。何も聞かれないんだもの。」

ガーネとトラちゃんの反応を見て、なんだか自分が情けなくなりました。

そうですよね。

普通の人なら、見ず知らずの人を、簡単に家に入れたりしませんよね。

レイグルは私たちにとっては、家のような存在です。

今考えれば、なんて不用心なんでしょう。

ガーネたちだったからよかったものの、まかり間違えば面倒な事に。

「世間知らず。」という言葉が、私の頭をぐるぐると回っていました。

「あの、大丈夫ですか?」

私が常識と言うものの重さに苦しんでいるのを見て、ガーネが心配してました。

「ええ、大丈夫です。これくらい、乗り越えて見せます。」

私は、気丈にも、そう言ったのです。

「はぁ?」ガーネは私の言葉の意味を、理解しかねているようでした。

ですが、まぁいいや。と思ったのでしょうね。話を始めました。

「実は私たちは、...。」

ガーネは、自分たちが迷宮の旅人であることや、迷宮についての話をしました。

トラちゃんも、その話の途中で、時々、相づちを打っています。

私は、信じられない思いで聞いていましたが、嘘を言っているとも思えません。

これまで、一緒に探検をした事もあり、とりあえず信じる事にしました。

意外だったのは彼ら自身も、自分たちの事についてよく知らなかった事です。

平気そうな様子ですが、内心、とても不安なんだろうなと思いました。

でも、それをあえて、口にはしませんでしたけどね。

ガーネの話は続きます。

「それで今、私が被っている鉄の仮面の事なんですけどね。実は、...。」



ガーネはいつものように、迷宮の道を歩いていました。

「ガーネ。早く来てよ。面白いものが見れるわよ。」

トラが、声をかけてきます。

「はいはい。今、行きますからね。ちょっと待ってて下さい。」

ガーネが今歩いている所は、道と言うよりは階段と言った方がいいでしょう。

高くそびえるその階段を、ガーネは一歩一歩、着実に歩んで行きました。

一方、トラの方はその俊敏性で、あっという間に頂上まで行ってしまったのです。

「それにしても、高い階段ですね。

まぁ、幾ら上っても疲れる事は無いんですが、飽きるんですよね。

この飽きるという感情は、迷宮と言えども消す事が出来ないようです。」

1人ぶつぶつ、つぶやきながら、相方の待っている頂上まで上がって行きました。


「やっと、着いたぞ!!」両腕を高く上げて、ガーネは喜んでいました。

「ねぇ、そんな事より、あれを見てよ。」

無情にもガーネの感動を無視して、トラは自分の気になるものを指さしました。

「あれ、あれは迷宮のドアですよね。

でも、なんでこの階段、下りが無いんでしょう。」

ガーネは首をかしげていました。

ガーネたちが歩いた階段の反対側には、階段がありませんでした。

垂直に切り取られたいたのです。

迷宮のドアはその途中に浮かんでおり、頂上から見ると真正面でした。

ドアは倒れた状態で、浮かんでいたわけです。

「つまり、私たちに高飛び込みをやれと言う事ですね。

確か前にも飛び込みは、やった気が。まぁ、いいですけどね。」

「じゃあ、あたしが先に行くわ。ゼッケン1番、トラ。飛び込みます。」

ヒューッ。トラは見事に吸い込まれるが如く、迷宮のドアへと消えました。

「ゼッケンって、そんな物ありませんけどね。まぁ、ノリなんでしょうね。

だったら、私も付き合いますか。

ゼッケン2番、ガーネ。飛び込みます。」

ガーネは手を上げてそう叫んだ後、トラの後に続きました。


ガーネはドアの中へ、入って行きました。

いつもであれば、周りの景色がすぐに見えてくるのですが、今回は違います。

黒っぽい雲の中をゆっくりと落ちて行きました。

「あれは、何なんでしょうか。」

ガーネの前方から白っぽい色の手が、迫って来ました。

その手はガーネの身体をそっくり包む事が出来るくらい、大きいものです。

ガーネは落下している最中なので、避けようにも、避けられません。

ガーネはその手が近づくにつれて、その真ん中に楕円形のものが見えて来ました。

どんどん近づくにつれて、それが何なのかがガーネにも判ってきました。

それは人の顔をかたどった、仮面の裏側だったのです。

それがガーネの顔まっしぐらに、迫って来ます。

そしてその仮面はガーネの顔に、くっ付いてしまったのです。


やがて黒い雲は消え去り、ガーネはゆっくりと大地に着地する事が出来ました。

先に着いていたトラが、こちらの方に走って来ます。

しかし、途中でその歩みを、止めてしまいました。

「ガーネ?ガーネなの?」トラは首をかしげながら、尋ねていました。

「そうですよ。さっきまで一緒にいた、ガーネです。」

ガーネは、そう答えました。

「ガーネ。何か変な鉄の仮面を被っているけど、どうしちゃったの?」

トラは驚いたように、尋ねました。

「判らないんですよ。

迷宮のドアを抜けて、ここに来るまでに付けられてしまったんです。」

「誰になの?」

「それも、判りません。

何か、大きな白い手が迫ってきて、その真ん中にこの仮面があったんです。

そして落ちて行く私の顔に、これが被さったんですよ。」

「そうだったんだ。大変な思いをしたのね。で、それは外せないの?」

ガーネはトラの言葉を受けて、その仮面を外そうとします。

「あっ、痛い。駄目ですね。これ、なんだか顔にくいこんでいます。

これじゃあ、外せません。」

「困ったわね。どうしたらいいのかしら。」

ガーネとトラは、それからも話し合いましたが、いいアイディアは浮かびません。

「仕方が無いですね。この仮面の件は後で、考える事にしましょう。

ここで、外せても外せなくても、迷宮に戻れば、無くなるんですから。

まぁ、私としては歯が磨ければ、当面は問題ないわけですし。」

「そうね。じゃあ、それはひとまず後回しにしましょう。

さて、これからどうするの。なんか砂嵐が多いとこだけど。」

「本当ですね。まるでトラと始めて出会った、あの世界みたいです。」

「ああ、そうだったわね。もう、あれからどのくらいの時間が経つのかしら。」

ガーネとトラは、ノスタルジックな気分に浸っていました。

と、そこへ1台の車両が走って来たのです。

なんか、いろいろくっ付けている、大きくて頑丈この上ない車両です。

「ねぇ、トラ。あれ、ひょっとしたら。」

「そうね。私たちにとって、救世主になるかもね。」

「じゃあ、行きましょうか?」「ええ、行きましょう。」

ガーネとトラは、砂嵐が舞う中、その車両に向かって行きました。



「と、言うわけなんですよ。レミアさん。」

ガーネは喋って喉が渇いたせいか、お茶を飲み始めました。

それにしても、何でこの人はこんなに、歯磨きにこだわるのでしょう。

1度、じっくり聞いてみた方がいいのかしら。

でも、プライバシーに関わる事なら、追及するのは止めた方がいいかもね。

特におしとやかで可憐な乙女である私としては。

まぁ、それはともかく。

「へぇ、あなた方の事も謎と言えば、謎だけど。その仮面も謎だらけね。

一体、どうすれば外せるのかしら。」

ガーネの顔が見てみたい私としては、とても残念な話でした。


私からの質問が途切れた頃、今度はガーネの方から尋ねて来ました。

「最初に会った頃、聞いたと思うんですが。

ほら、邪神となった魔女ルーディアと王女アイリスとの戦いについて。

ルーディアは、アイリスに刺された後、王子の魂を欲しがったんでしたよね。

確かカミーラって言う名前で、アイリスの許嫁の。」

「はい、そうです。それがどうかしましたか?」

「魔女って言うのは、人の魂を奪って、自分の物にする事が出来るのですか?

自分が死にそうな場合、人の魂を使う事で死なずに済む事が出来るのですか?」

「私が今、借りて読んでいる本には、そう記してありますね。

ただその場合、リスク、つまり危険もあるそうですが。」

「そのリスクとは、一体、何なのでしょうか。」

「魂って言うのは、それを持っていた人の意志が込められているんですよ。

魔女が他人の魂を取り込む場合、まず、その意志を眠らせるんです。

それから自分の魂と融合させて、自分の物にしてしまうわけです。

ただ、この眠らせている筈の意志がですね。

ふとしたきっかけで、目覚める場合があるんですよ。

この場合、1つの身体に2つの意志が、存在してしまう事になります。

すると、その2つの意志のうち、強い意志の方が、弱い意志を押さえこむんです。

強い意志の方が、その身体を占有してしまうんです。

例えば、魔女が他人の魂を取り込んで、死なずに済んだとしますよね。

でも、何らかのきっかけで、その魂の意志が目覚めました。

そしてその意志は、魔女本来の意志より強いものでした。

この場合、魔女の身体は、その取り込んだ魂の意志に乗っ取られてしまうんです。

魔女は、自分を失くしてしまうんです。

それで魂を奪うのは魔女と言えども、慎重にならざるを得ないんです。」

「なるほど。人の魂を自分の物にするのは、魔女でもリスクが大きいと。

あと、1つ聞きたいんですが。魂を失った人間は、すぐに死ぬのでしょうか?」

「いいえ、命のかけらが残っている場合は、大丈夫らしいのです。」

「命のかけら?それって何なのですか?」

残滓ざんしという言い方も出来ます。

生きとし生ける者が、最初に生命が与えられた時、同時に肉体に発生する物。

そんな風に記されていました。

この命のかけらがまだ残っている間は、肉体は生きていると認識するんです。

だから、死後硬直などのような症状は起きず、肉体は保たれたままです。

心臓も脳も寝ている時と、何ら変わらないのです。

この状態でなら、魂を肉体に戻せば、元の状態に戻る事が出来ます。

つまり、普通に生きている状態に戻れるわけです。

ただ、この命のかけらは、非常にもろいものなんです。

魂が奪われてからしばらく経つと、泡のように消えてしまうんだそうです。

だから、元通りにするには、早く魂を戻さなければいけないんです。」

「それって、魂を奪われてから、どの位の時間までなら大丈夫なんでしょうか?」

「個人差があるとか。数分の場合もあるし、数時間の場合もあるそうです。

年齢、健康状態、様々な要因で、それは変わってくるんです。

だから、一概にこれくらいとは、言えないんですよ。」

「そうですか。いや、いろいろと判りました。有難うございます。」

ガーネは、私にお礼を言いました。

私も、いろいろ話せて、とても楽しいです。

もう話もこれくらいかなっと思っていた矢先、トラちゃんから声がかかりました。

「あたしも聞いていい?」「もちろんよ。」

「レミアお姉ちゃんは、以前、言ったよね。

この世界は昔、神族、人族、そして魔族が共存していたって。

でも、今は違う世界に分かれちゃっているって。

どうして、そんな風になっちゃったの?」

トラちゃんの質問は、なかなか鋭いです。

さすが、私が妹分と見込んだ子猫だと、感心しました。

そうですか、判りました。

そんなに知りたいと言うのであれば、このお姉さんがしっかり教えて上げます。

心して聞くように。

「これも、本の受け入れなんですが。

これらの種族が分かれた最大の理由は、「神魔大戦」にあるんです。」

「「神魔大戦」って何?」

「トラちゃん、よーく教えてあげるから、じっくりお聞きなさいね。

じゃあ、始めますよ。「神魔大戦」と言うのはね。」

私は、はるか昔に起きた、伝説とも言われる、神と悪魔の戦いを話し始めました。


神魔大戦じんまたいせん

今は昔。

その頃、地上には神族、人族、そして魔族が共存していました。

神族と魔族の領土の間に、人族の領土があったのです。

このように棲み分けはありましたが、互いに交流もあったのです。


神族と魔族の間には、協定がありました。

ですが人族は、その協定を決める交渉の場に、参加する事は出来なかったのです。

人族は力の無き者、あるいは弱きものであり、交渉する立場には無い。

それが、神族と魔族の共通する認識であり、考えだったからです。

でも、その先の考え方には、大きな隔たりがありました。

神族は、だからこそ、人族は庇護すべき者たちだと、考えたのです。

一方、魔族は、だからこそ、人族は自分たちの支配下に置くべき者たち。

すなわち、隷属であると、考えたのです。

神族と魔族による協定は、お互いの争いを回避するために、作られました。

そのため、人族に対する扱いが元で、争いになるのを避ける内容となったのです。


協定は大きく分けて、3つの条項より成り立っています。

1つ目は、自分たちの領土の確定。

これは、各種族の領土の確定のための線引きを、明確にするという内容でした。

人族に関しては、既に人族が使用している土地を、領土として確定したのです。

2つ目は、他の種族への不可侵条約の締結。

これは、他の種族の領土への侵入や迫害を、してはならないとの内容でした。

特に人族が、魔族に迫害を受けないようにと、配慮された項目だったのです。

3つ目は、神族と魔族の2族間における、相互不干渉条約の締結

神族と魔族との間で、必要以上の干渉をしてはならないという内容でした。


神族と魔族は、これらの協定を受け入れ、施行しました。

その結果、人族は、平和に暮らす事が出来たのです。

ですが、人族はその平和が、そんな協定によって、もたらされている。

そんな事など、知る由もありません。

当然、領土の線引きの事も、知らなかったのです。

ある日、人族の1人が魔族の所有する土地で、勝手に田畑を耕しました。

魔族の土地は、肥沃だったのです。

同じ面積の土地でも、たくさんの作物の収穫を、得る事が出来ました。

それを見ていた他の人たちも、次々と魔族の土地の浸食を始めました。

最初は黙認していた魔族もその横暴さに耐えきれず、人族に対し抗議をしました。

それに対し人族は、土地は既に自分たちの所有であると、引きませんでした。

そして何とか、対話の中で事を納めようとしたのです。

人族は、自分たちを、神族や魔族と対等の立場であると思っていたからです。

それに対し魔族は、人族を交渉相手として、認めていません。

魔族は、自分たちの領地に侵入してきた人間を、力で追い払いました。

そして、誰が支配者であるかを判らせるため、人族の領土に侵入したのです。

そして迫害を始めました。


そんな状況下でも神族は、中立を守っていました。

魔族との協定の中にある、相互不干渉条約を守りたかったからです。

しかし、魔族の迫害で、人族の死者が増えていきます。

そのため、ただ見ているだけでは、済まされなくなったのです。

神族は不可侵条約を破ったと言う理由で、人を援護し保護するようになりました。

これに対し、魔族は抗議しました。

先に侵入したのは人間であり、それをこらしめるためにやったと。

そして神族こそ、協定を破って、魔族へ干渉を始めたと。

かくして神族と魔族の間で、いさかいや争いが始まりました。

そして、双方に死者が出始めたのです。

その結果、魔族が宣戦布告を宣告し、神族もこれに応じました。


世に言う、「神魔大戦」の始まりです。


双方に、多数の犠牲者が出ました。

力で言えば、魔族の方が少し上であり、神族は押され気味だったのです。


ここにアスラムとカインという、2人の人間がいました。

それぞれ異なる村のおさの長男です。

彼らは、魔族の力の象徴とも呼べる、魔殿に侵入しました。

苦労の末、ある大きな広間の中へ、入る事が出来たのです。

そこには赤々と燃えさかる大きな炎が、ゆらめいていました。

「よくここまで来れたね。アスラム。」

「しっ、カイン、もっと小さい声で喋ってくれ。

今、神魔大戦で、双方が全力を出し切っている。

それで警備が、手薄になっているんだ。

それに奴らが警戒しているのは、神族だけだ。

人間なんて、歯牙にもかけていないんだろう。」

「それで、アスラム。これから、どうするんだい。」

「聞いてくれ、カイン。

この大戦の戦場は、人族の領土で行なわれている。

このままではこの戦争のあおりを食らって、人族は全滅だ。

僕は何としても、それは食い止めたい。

聞けばこのアルフレオの炎は、魔族に力を与えるため魔力を放出していると言う。

それは純粋な力のため、他の生命体との干渉を嫌うそうだ。

だから、僕は自分の身をこの炎に投じて、その放出を少しでも防ごうと思う。

魔族の力が弱まれば、神族は勝てる。

神族は人間に対し、好意的だ。きっと、味方になってくれると思う。

カイン、君とはここでお別れだ。よくここまでついて来てくれた。有難う。

君はこのまま帰って、僕たち人族を守って欲しい。」

アスラムはそう言って、炎の中に身を投じました。

「アスラム!!」涙ながらに、カインは叫びました。

「君とは小さい頃からの仲良しで親友だ。それはいつまでも変わらない。

君が人族を守るため、命を投じるなら、僕もそうしよう。

どちらにしても、このままでは人族は全滅だ。

だったら僕も君と同様、少しでもみんなのお役に立ちたい。

僕も行くよ、アスラム。君1人でなんて行かせはしない。

僕らはいつまでも親友だ。」

カインはそう言って、アスラムと同様、その炎の中に身を投じました。


アスラム達の思惑通り、アルフレオの炎からの魔力の放出は、半減されました。

そしてそれは、前線で戦う魔族たちの力を、弱めていったのです。

神族はこの機を逃さずに勢いを盛り返し、魔族を徹底的に攻撃しました。

その結果、魔族は降伏し、神族はこの大戦の勝者となったのです。


大戦後、神族は事の起こりの発端が、不可侵条約の違反によるものとしました。

その結果、神族は天上の神界へ、魔族は地の底の魔界へと分かれました。

何の力も無い人間には大地の恵みが必要だと、地上に住まわせる事にしたのです。

神族は勝利のきっかけとなった、2人の勇者の行動を褒めたたえました。

そして、2人の魂と肉体を復活させたのです。

神族は2人に、神の力を少しずつ分け与えました。

後に2人はそれぞれ王国を建国し、王族となりました。

そして子々孫々に至るまで、その力は受け継がれていったのです。

また最初に投身したアスラムには、神族はその勇気に対し、敬意を表しました。

神族はアスラムの王国グライアに対し、特別の御加護を与える事にしたのです。

そこで神剣を持つ2人の女神が、グライアに遣わされました。

それが、正神のザイドとラムダです。

大戦後、アルフレオの炎は魔族のものだとして、そのまま魔界へ返還されました。

ですが、地の底は魔族と言えども、厳しい環境でした。

返還されたアルフレオの炎を持ってしても、魔族の弱体化を抑えられません。

そのため、大戦後も、力ある魔族は、地上に姿を現していたのです。

2人の女神は、これらの魔族から、王国や世界を守るため戦いました。

やがて、魔族の力が弱まり、世界に平和が戻って来ました。

2人の女神は、それを見届け、自分たちの役目を終えたとしたのです。

ただ、まだ魔族が、全て滅びたわけではありません。

そのため、自分たちの力の一部や剣をこの王国に残し、天上界にに戻ったのです。



「その力を宿しているのが、女神の石像というわけですね。

いやあ、興味深い話が聞けてよかったですよ。」

「なるほどね。そんな歴史があったんだ。すごいすごい。」

ガーネとトラちゃんが、感激しています。

私が思った以上の反応です。調べたり、話した甲斐がありました。

あのまま、寝ないでよかったなぁ。

「でも、それが真実だとするとよ。

一番悪いのは、最初に魔族の土地に田畑を作った、人族って事になるのね。

許しを得ないで、勝手によそ様の土地を荒らしたわけだし。」

トラちゃんが、私にそう尋ねました。

「そうとは、言えないんですよ。

先ほど説明したように、この協定は神族と魔族しか知らないんです。

人族は一切、関与していないから、全く知らないんです。

もちろん、自分たちの領土が、線引きされている事もです。

だから領土を侵したとは、決して言えないんです。

私が考えるには、この協定作成の際に、人族を同席させなかった。

その事が一番の悪い事だったんじゃないか。そんな風に思えてならないんです。」

私は持論を、ガーネやトラちゃんに話しました。

「協定の際に必要なのは、その影響を受ける当事者が全員揃う事です。

また、あいまいな点を残しておくと、当事者間で解釈が違ってきてしまいます。

これらが、後でトラブルの元になるんですよ。

と言っても、これらを徹底的にやると、協定がいつまで経っても出来ない。

そんな状況が生まれる可能性もあるから、難しいところですね。」

ガーネは私の持論に対し、そんな見解を述べました。

確かにそうね。ガーネの言う通りかも。

魔族や神族に限らず、複数の人たちからなる合意って難しいと思うわ。

だって人によって、置かれた立場が違うし。本当、大変だわね。

「本当、難しい問題なのね。」トラちゃんは、ため息をついていました。

猫の場合はどうなのかしら。わたしはそんな疑問をふと抱きました。

まぁ、今、トラちゃんは1匹狼みたいなものだから。

きっと、聞いても判らないんでしょうね。

「で、この話の後日談みたいなものは、あるんですか?」

ガーネは、身を乗り出して尋ねていました。

「魔族は、地の底に追放された後、そこを魔界と呼ぶ事にしました。

でも、そこは、魔族にとっても、厳しい環境だったらしいんですよ。

アルフレオの炎が返還されていなければ、全滅だったかも知れません。

そういった環境で、生活をしているうちに、魔族に変化が現れたんです。

魔族の数が、次第にに減っていったそうです。

特に強い魔族が、その死を早めたらしい。

また、新たに生まれた魔族も、弱い魔族ばっかりだったとか。

地上にいた時は何でも無かった、陽の光や炎、そして水。

これらが、自分たちの命すら、脅かす存在になったという事です。


前にこの世を支配しようとした、魔女ルーディアのお話をしましたよね。

あの魔女は、国王であるグライアを刺し殺したり、邪神になったりしました。

きっと、それは神族と人族に、恨みを晴らしたいという思いもあったんでしょう。

また魔族を今の状況から、一刻も早く脱出させたかったんでしょうね。

また元のように、魔族が力を揮える世界を望んだに違いないと思うんです。」

「魔族も大変だったわけね。それだけ聞いちゃうと、同情しちゃうな。」

トラちゃんがしみじみと、そう言いました。


「あと、これは余談になるんですけど。

この神魔大戦という呼び名は、神族と人族のものです。

魔族は、魔神大戦まじんたいせんという呼び名を、使っているとの事です。」

「へぇ、それは何故なの?」

この質問には、ガーネが答えました。

「トラ、2つの部族又は国の間で、協定なり戦争が起こるとするよね。

この場合、当事者はその名前に、自分の部族名や国名を上に持ってくる。

それがまぁ、不文律とされているんだよ。

プライドからくるものだと言ってもいいと思う。」

「ふーん。そうなんだ。」トラちゃんは納得したようでした。


私は、十分語り尽くしたと言う思いもあって、眠気が出て来ました。

みんなも、うつらうつらし始めています。

今日もいろいろあって、疲れていたのでしょうね。

いつの間にか、私たちは、深い眠りに陥っていきました。



私たちが目を覚ましたときには、もう翌朝になっていました。

朝日が射し込めていて、とてもまぶしいです。

丁度同じぐらいに、やっぱり、朝日に起こされたのでしょう。

ガーネとトラちゃんも、起きてきました。

目をこすったり、欠伸をしたりと、同じような行動をとっています。

「お早う、ガーネ、トラちゃん。」私は朝の恒例の挨拶をしました。

「あー、ええと、あっ、はい、お早うございます。」

「あー、ええ、ええ、あっ、お早う、レミアお姉ちゃん。」

似たような、反応です。

やっぱり、長く一緒にいると、似てくるものなのかしら。

「人間と動物の依存関係の実態」なんて論文、書こうかしらん。

でも、私は考古学専門だからな。きっと却下されるに決まっています。

まぁ、それはそれとして。

「さぁ、今日は待ちに待った記念すべき日なのよ。

張り切って行きましょう。」

私はそう言って、彼らの前に人差し指をビシッとおっ立てていました。

「レミアさんは、いつも元気そうですね。あーあーあっ。」

「そうね。でも朝からよくあんなにハイテンションになれるわね。

大したもんだわ。あーあーあっ。」

まだまだ、ガーネたちは、睡魔から逃れられないようです。

私は彼らのために、レイグルの洗面所に、無理矢理連れて行きました。

水をいっぱい溜めて、そこに顔を突っ込ませました。

「ううむ、ううむ。」「ワブワブワブ。」

何かわけの判らない言葉を、口走っていました。

まぁ、良い頃合では無いかと、ガーネたちの顔を外に引っ張り出しました。

「どう?目が覚めた?」私はそう尋ねました。

「びどびびゃばいでぶか。ぼぶぶぼびでびぶぼぼぼべびだ。」

「ぼうぼ、ぼうぼ。」

何か言っているようですが、さっぱり判りません。

多分、「有難う。」って言っているのでしょうね。

「いえいえ、そんな、お礼には及びません。」

私はそう言って、ガーネたちに親切にもタオルを手渡し、そばを離れました。


私がテーブルについた時、おじいさんは既にそこにいました。

本当に年寄りって、朝早いんですね。

もっとも、昼寝はしっかりとっているので、まぁ、安心ですけどね。

「お早うございます。おじいさん。」

「ああ、お早う。」

おじいさんは、新聞から顔をあげて、挨拶を返してくれます。

「前から、気になってたんですけど、その新聞どこから手に入れるのですか?

日付も今日のようですね。」

「うん。ああ、これか。日付は確かに今日じゃな。だが、西暦は去年だ。

つまり、1年前の今日の新聞を見ているのじゃよ。」

「なるほどねって、一体いつ頃から溜め込んでいるんですか?」

「もう、かれこれ10年分ぐらいには...。」

「判りました。

捨ててあげますので、この探検から帰ったら、置き場所を教えてください。」

「そんな。年寄りの数少ない楽しみを。」

おじいさんは朝から何故か、憤慨しています。

もうお年なのに、血圧が高くなっちゃうじゃありませんか。

私は心配してしまいました。

そんな身内同士の心温まる会話の後、ガーネたちがやって来ました。

「お早うございます。ゾア博士。」「お早う、おじいちゃん。」

そう言ってガーネたちも席に着いたので、朝食にすることにしました。

いつも通りのビスケット朝食を済ませた後、ガーネたちは歯を磨きました。

いつもの朝の恒例行事ですが、これも今日までかもしれません。

なんか感慨深いです。ちょっとセンチメンタルな気分になりますね。


「では行くぞ。よいな。」おじいさんはレイグルを走らせました。

レイグルは、昨日開いた白色の出入り口の中へと入って行きます。

これまでとは違い、長い通路で、その途中にいろいろな部屋があります。

私は、古文書に書かれてあった部屋の絵柄と、見比べて行きました。

その結果、ここは謁見の間、ここは剣の間と察することが出来たのです。

「間違いありません。私たちは確実に女神の間に向かっていますよ。」

私はみんなにそう告げました。その私の声も嬉しさに震えています。

そして、ついに最後の部屋に到達する事が出来たのです。

おじいさんはレイグルを、その部屋の外に停めました。

私が降りようとすると、ガーネが声をかけてきました。

「おや、その弓矢も持って行くんですか?」

「ええ、そうする事にしたわ。

この弓矢も多分、魔法の力を備えていると思うから。

ラドムア以降の魔物って、ほら、私たちの攻撃を跳ね返しちゃうじゃない。

だからこれなら、通用するんじゃないかなと思ったってわけ。

それに、ここが私たちの入る最後の部屋になるかも知れない。

魔物も多分、現れるんじゃないかと思うわ。警戒しなくちゃ。」


実は、この弓矢が手に入ってから、遊び半分に使ってたんです。

でも、なかなか飛ばないんですよね。これが。

最近は少しは飛ばせるようになってきました。

だけどね、狙った所にちゃんと飛んでくれないんですよ。

ある日、トラちゃんに「狙っちゃうぞ。」って冗談半分に矢を射る格好をしたの。

そうしたら、じっとして動こうとしないわけ。

怖がっているのかなって思って、聞いてみたわ。

そうしたら、「お姉ちゃんは、動いている方が当たっちゃう。」

なーんて言われたの。ふん、妹分の猫にまで、私の腕前は見放されちゃったわ。


私たちは歩いて、その部屋の中に入りました。

その部屋は大広間ほどではありませんでしたが、広い部屋です。

その中央には、もう1つ小さい部屋のようなものがあります。

その正面には石の扉があり、その左右には石像が立っています。

私たちは、その石像を見ました。

いずれも女人が鎧を装着しており、剣を身に着けておりました。

「女神の像です。やっぱりここは女神の間なんですね。」

私たちは今、前人未到の場所にたどり着いたわけです。

やっと来た。その思いがみんなの心に感動をもたらしていました。


さて、いつまでも感動に浸っているわけにはいきません。

私たちは、行動を起こす事にしました。

この探検の最大の目的である、金銀財宝を見つけるため、石の扉を見ました。

「ここは隠し部屋になっているそうです。この中に宝物があるんでしょう。」

私たちは石の扉を開けようと、手をかけました。

が、駄目です。ピクリとも動きません。

レイグルから、マシンガンやレーザーガンも持ち出していました。

そして、石の扉に向かって、発射したのです。

ところが、あのラドムアのように赤く輝き、跳ね返されてしまいました。

「あっ、危ない。」

私たちは、跳ね返ったビームや弾をかろうじてよける事が出来ました。

「もう、武器を使うのは止めましょう。」

私たちは、かなづちとのみを持って、扉の石を割ろうとしました。

しかし力を込めてたたくと、やはり赤く輝き出してしまいます。

どうしても、割る事が出来ませんでした。

「一体、どうしたらいいんでしょう。」

私たちは、途方にくれました。それで私たちはその扉の周りを見回したのです。

その扉の左右の壁には、妙な出っ張りがありました。

よく見てみると、明らかに壁と同じタイプの石を接着しています。

まるで、何かを隠しているようです。

私はかなづちとのみで、その石を砕いてみました。

すると、その中から、見覚えのあるものが姿を現したのです。

それは白い出入り口の左右にあった、秘石を挿入する溝と同じ物でした。

左側には2個、右側には1個の溝があり、違う色の模様が描かれています。

私は、白い出入り口の時と同じように、そこに秘石を3つ挿入してみました。

「ガクリ。」物々しい響きを立てて、石の扉が左右に開いたのです。

私たちは大急ぎで、扉の中に入って行きました。


「ああ、やっと見つけた。」

そこには、かなり大きい箱がありました。

鮮やかな模様が施されており、いかにも宝箱っていう感じです。

多分、この中に私たちが探していた金銀財宝が入っているのでしょう。

私は、その箱を開けようとしました。

ですが、駄目です。

秘石の入った小箱同様、そのままでは開ける事が出来ません。

いつものように、私の針金で開けたいのですが、鍵穴の大きさが全然違います。

手が出せません。

すると、おじいさんが、レーザーガンをふたの部分に向けていました。

「大丈夫なんですか?もし跳ね返ったら危ないですよ。」

私がそう忠告すると、おじいさんは首を横に振りました。

「多分、大丈夫じゃろ。

実は秘石の入った小箱にも、レーザービームを放射してみたんじゃ。

じゃが、何の反応も示さず、鍵を壊す事が出来た。

宝箱自体には、魔力は込められてはおらぬようじゃ。」

おじいさんはそう言って、レーザービームを放射します。

しばらく放射した後、おじいさんはビームを止めて、ふたに手をかけました。

すると、鍵が壊れたのでしょう。簡単に開ける事が出来たのです。

「やったー。」私たちは、その箱の周りに集まりました。

そして、期待に胸を膨らませて、中をのぞき込んだのです。


「ええっ!!」私たちの間で、驚きと落胆の声が聞こえました。

その大きい箱の中は、空っぽだったのです。

私は、箱の中身をよく調べてみました。

本体は金属で出来ていますが、内部はビロードの厚い布が敷き詰められています。

そしてそこには、擦り切れた跡が多少なりとも付いていました。

だから、確かに何か入っていたのは間違いないと思います。

でも今はありません。そしてそれが、現実でした。


全員、「はぁーっ。」とため息をついたのは、言うまでもありません。

私はしばらく、その現実に呆然としていました。

多分、おじいさんも同じだったんでしょう。あっけにとられた表情です。

一気に年をとったようにも、見えます。

やはり、楽しみだったんでしょうね。お疲れ様でした。

ガーネは、お宝の有無は関係無いと言っていました。

でも、いざ本当に無いとなると、がっかりした様子です。

まぁ、命張って、戦った事もありましたから。

せめて、どんな物なのか、見たかったんでしょうね。

トラちゃんも、ため息をついて落ち込んでいます。

私だって、私だって。

「考古学の母」と呼ばれる計画が消えたのです。

へなへなと床に座り込んでしまいました。

希望が消えた者たちが集まったその隠し部屋で、時が空しく流れて行きました。


でも、こうして事実を知った以上、いつまでもここにいるわけにはいきません。

「夢は終わりました。さぁ、帰りましょう。」私はそう言いました。

全員が私の言葉にうなずき、その隠し部屋を出ました。

そして、女神の間を去ろうとしていたのです。


「えっ。」私たちは驚いてしまいました。

いつの間にか、開いていた女神の間の出入り口が、消えていたのです。

私たちは、部屋の周りを見ました。どこにも出入り口なんてありません。

いきなりの緊急事態で戸惑う私たちに、どこからとも無く咆哮が聞こえました。

すると出入り口があった場所に、黒いシルエットが浮かび上がったのです。

そしてそれは、姿を現しました。

4つ足の動物で、顔の周りにはたてがみが生えています。

その目は赤く光り、その身体全体には炎をまとっていたのです。

明らかに、魔物です。

おじいさんは、レーザーを放射しようとしました。

「止めて。おじいさん。」私は慌てて、止めました。

「あれも、ラドムアと同じだと思います。

ビームを放っても、こちらに跳ね返ってくるだけなんじゃないでしょうか。」

「確かに、そうかもしれんな。じゃが、それならどうすればいいのじゃ。」

「私はあの弓矢を持っています。いざとなれば、これを使いましょう。」

私がおじいさんと話し合っている最中、ガーネが声をかけてきました。

「どうでしょう。とりあえず、隠し部屋の中に戻っては?」

私たちは、ガーネのこの提案に、賛成しました。

そして、先ほど出てきた隠し部屋に、戻る事にしたのです。

私は隠し部屋に身体を隠した状態で、あの魔物に弓を射るつもりでした。

私とおじいさんがその中に飛び込んだ後、ガーネも中に入ろうとします。

ですが突然、ガーネの動きが止まりました。

「どうしたの。」私はそう聞いて、ガーネの顔を見ました。

すると、今まで鉄の色をしていた仮面が、赤く輝いていたのです。

「駄目です。身体が動きません。

というか、身体が自分の意思とは関係無しに、動こうとしているんです。」

ガーネはそう訴えています。

私たちは、もう1つ、赤く輝いている物を見つけました。

あの魔物の額の中央が、縦に細長い楕円形にパックリと割れていました。

そして、その中から赤く輝く魔石が現れたのです。

その魔石の輝きは、ガーネの鉄の仮面の輝きと連動しているかのようでした。

「トラ、済みません。

私の肩から降りて、レミアさんの所へ行ってください。

このままでは、多分、あなたも危険に巻き込まれてしまいます。」

「ガーネ。私も一緒にいる。」

トラちゃんは、ガーネにしがみついて、そばから離れようとしませんでした。

「レミアさん。トラをよろしくお願いします。」

ガーネは、私にトラちゃんの事を頼みました。

私はその言葉にうなずいた後、隠し部屋から飛び出しました。

そして、ガーネの肩にうずくまっている、トラちゃんを剥がしたのです。

「有難うございます。レミアさん。

ごめんね、トラ。あなたを守る事が出来なくなってしまいました。」

私は嫌がるトラちゃんを抱きかかえて、隠し部屋へと戻りました。

ガーネは鉄の仮面に導かれるまま、歩いて行きます。

そして魔物の前で立ち止まり、両腕を広げたのです。

「グォー。」魔物は咆哮を上げて、ガーネに飛びかかりました。

そして、その身体を突き抜けたのです。

私たちがガーネを見た時、一見、その身体には何事も起きていないようでした。

怪我をしている様子も無く、服も破れていません。

ですが次の瞬間、ガーネは何を言う事も無く、崩れるように倒れていきました。


私たちはガーネの近くに降り立った、魔物の口の中を見ました。

その上下の牙には青白い炎に包まれた、白く輝く光の玉が咥えられていたのです。


それはガーネのたましいでした。


第8話「正と邪の女神。」7つめですね。(終)


今回のお話は、第8話「正と邪の女神。」の第7回です。

今回は、レミアさんのお話がメインです。


みなさん、体調は如何でしょうか?

暑さも湿気も、本格的になりました。

こちらは熱中症にもならず、何とか生きていますので、ご安心下さい。


なるだけ、1週間に1回ぐらいは、投稿したいのですがね。

今度はいつ頃になるのでしょうね。


気が向いたら、また続きを書いてみたいと思います。

では、また会える日を。See You Again.


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