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トラ・オブ・ラビリンス  作者: シード
第8話「正と邪の女神」
27/46

第8話「正と邪の女神。」6つめですね。

迷宮の旅人である、ガーネと猫のトラが織りなす、別世界での旅のお話です。

第8話「正と邪の女神。」6つめですね。のお話です。

この回では、青の間で、屍人のオーガルと戦います。


第8話「正と邪の女神。」6つめですね。


今日はまだ陽も高かったので、再度、大広間の中央に戻りました。

「さて、いよいよ最後の出入り口じゃな。

出入り口が青色である事を考えると、多分青の間がある筈じゃ。

では、行こうとするかの。」

おじいさんはレイグルを走らせ、最後の出入り口の中へ向かいました。

予想通り、通路も青色です。

また他の間と同じように、幾らも経たないうちに別の広間に出る事が出来ました。

太陽の陽射しが、全く射しこまない真っ暗な部屋です。

「ここは、一番不気味な部屋だわ。」私は不安に駆られました。

私の言葉を聞いておじいさんは、レイグルのライトを、全部点灯させます。

部屋中がいきなり、明るくなりました。

「なるほど、確かに青の間ですね。」ガーネはうなずきました。

「見て、あれ。」私は思わず、ガーネの腕にすがってしまいました。

幾つかの石壇の中に、棺が1つ置いてあったのです。

「ここは、お墓なんでしょうか。」ガーネは首をかしげていました。

「ともかく、棺の中をあらためてみましょうか。」

ガーネはそう言って、棺に向かって進んで行きます。

私は、ガーネから離れてレイグルの傍に戻りました。

ガーネと、その肩に乗っているトラちゃんは、私の方を振り向きました。

「レミアお姉ちゃん、どうしたの?」トラちゃんが私に声をかけました。

「だって、それ棺でしょう。私、そう言うの苦手なのよ。」

私は、本音を言いました。

「大丈夫ですよ。出たってゾンビか吸血鬼ぐらいじゃないですか。」

ガーネは事もなげに言います。

「そうよ。大した事無いわ。」トラちゃんも恐ろしい事を言います。

私は今まで、仲間と思っていましたが、やはり少し違うようです。

何か周りにいる人全てが、怖くなってきました。

思わず後ずさりした私に、後ろから声がかかりました。

「おい。痛いじゃないか。」

「ギャアー。」

私は叫び声を上げ、咄嗟に逃げました。

ある程度、離れた後、恐る恐るその声のした方を振り向きました。

「何じゃ、人の足を踏んづけて。何をやっておる。」

私は、その姿を見て、ホッとしました。

それは、私が小さい頃から知っている年寄りでした。

「おじいさん、脅かさないで下さいよ。命が縮まるかと思いました。」

私は、安堵の胸を撫で下ろしました。

「そんな事は、どうでもいい。早く、ガーネたちのところへ行こうぞ。」

おじいさんは、私の背後から両肩に手を置いて、前へと押して行きました。

「ちょっと待って、おじいさん。お願いだから、押さないで。」

かわいい孫の言葉を聞く事も無く、嫌がる私を棺の前に連れて行きました。

「いらっしゃい。」「やっと来たのね。」

ガーネとトラちゃんが、それはにこやかな顔で、出迎えました。

「いやあ、孫が駄々をこねて申し訳ない。」

おじいさんが、わけの判らない謝り方をしていました。

この人たち、仲良すぎ。ひょっとしたら、ぐるなのでは。

もともと、悪魔に魅入られていたんじゃないかしら。

そして私を新しい生贄にして、自分たちの仲間にしようとたくらんでいるのでは。

私は、疑心暗鬼に見舞われました。

「じゃあ、開けますよ。」ガーネが張り切って、棺を開けようとしています。

私は逃げ出そうと、足を後退させました。

「おい、どこに行くのじゃ。」おじいさんが、私の肩をグッと押さえました。

もう駄目です。我慢にも限度があるんです。

私は、両手の拳を握りしめました。

と、その時です。

「あっ、青の小箱だ。」トラちゃんの嬉しそうな声が響きました。

「えっ。」私は思わず、ガーネが開けた棺の中をのぞき込みました。

「うっ。」次の瞬間、私は思わず、口を押さえました。

確かに青の小箱はありましたよ。ええ、ありましたとも。

でも、それと一緒に、死体も寝転んでいました。

心なしか、死臭を吸った気がしたので、思わず叫び声を上げてしまいました。

「ギャアー。」その部屋いっぱいに広がるぐらいの、大きな声でした。

「まずい、逃げるんじゃ。」

私を置き去りにして、全員がレイグルの方へ走って行きました。

「へぇ?」私は恐る恐る棺の方を、振り向きました。

何とそこには、死体が復活して、半身を起していたのです。

その身体は、見かけ上、土と骨に布切れが絡まっているぐらいにしか見えません。

目も潰れています。

そうか。みんなはこれを見て、逃げ出したんですね。私は納得しました。

それにしても、何という薄情な人たちでしょう。この私を身捨てるなんて。

まして、おじいさんは、私と血のつながった肉親だって言うのに。

私は息を、思いっ切り吸い込みました。そして。

「アンデッドだー、ゾンビだー。」

私も気が狂ったように叫びながら、レイグルに向かって走り出しました。

キキキーッ。しかし、私はその途中で、足を止めたのです。

「ガーネ。何をしているの?」私は尋ねました。

ガーネは、レイグルに戻らずに、ボーっと立ちすくんでいたからです。

あの死体に、気を取られているようでした。

「あのー、済みません。何か声みたいなものが聞こえませんでしたか。」

ガーネは私に、そう尋ねてきました。

「えっ、別に何も聞こえないけど、どうかしたの?」

「えっ、いや、別に何でもありません。

そうですね。それじゃあ、私たちもレイグルに戻りましょうか。」

何か、イマイチ判りにくい反応です。

でも、とりあえず、私たちはレイグルへと走り出しました。

ガーネの後に続いて、私もレイグルの中に入りました。

ガシン。私はレイグルのドアを閉めて、ホッとしました。


「ねぇ、これからどうするの。」トラちゃんが、誰ともなしに尋ねました。

「死体が眠っている間に、青い小箱が手に入ればよかったんですけどね。」

ガーネも残念そうでした。

「終わった事は仕方が無い、問題はこれからどうするかじゃな。」

「撤退と言う手もありますよ。

もう秘石だって2個手に入ったし、弓矢や剣もある。

ゾア博士だって、レイグルのテストを、かなりやる事が出来たんじゃないですか。

金銀財宝はこの際、諦めては?」ガーネはそう提案しました。

「そうね。これ以上、無理をして怪我してもつまらないし。」

トラちゃんもガーネの意見に、賛成のようです。

「まぁ、それもいいかもしれんな。」おじいさんも、その気になってきました。

残るは、私1人です。

「ちょっと、心残りな気もしますけれどね。これで終わりとしましょうか。」

私も、賛成する事にしました。

「あっそうそう、帰る前に、あの死体の名前を決めて置きたいんだけど。

今度は、トラちゃんね。決めてちょうだい。」

「えっ、あたしだっけ。そうね。それじゃあ、「オーガル」って事で。

もちろん、適当に付けた名前よ。」

「OK。「オーガル」ね。了解。」私はその名前にしました。

全員の確認を受けて、おじいさんは撤退を決めました。

「じゃあ、帰るとしようかの。」

おじいさんはそう言って、エンジンをかけた時でした。

レイグルが、いきなり停電状態になってしまったのです。

これでは、レイグルの武器が使えず、運転も出来ません。

近代兵器の弱点を、見事に突かれてしまいました。

「なになに。」私は恐る恐る窓から、オーガルの方を見ました。

「ウワァー。」あのオーガルの手には、剣が握られていました。

そして、狂ったように振り回し、電流が撒き散らされていたのです。

レイグルは、この電流をまともに浴びせられてしまったため、停電したのでした。

「いかん。レイグルが動かんぞ。どこかでショートしたらしい。」

おじいさんの焦った声が聞こえました。

オーガルの攻撃は、まだまだ続きます。

今度は電流では無く、突風を生み出していました。

棺の周りにある石壇が、こちらへ飛ばされて来ます。

バン、ガシン。その幾つかがレイグルに直撃し、機体内部にも衝撃が走りました。

「これはたまらん。何とかしないと、レイグルはお陀仏じゃ。」

おじいさんが、不吉な事を言っています。

「でも、ここから出たら、それこそ大変じゃない。」

トラちゃんも頭を抱えて、しゃがみ込んでいました。

全員が、身体を低くして警戒している中。1人だけ突っ立っている人がいます。

ガーネです。やはりオーガルの方をじっと見ていました。

私が話しかけようとした途端、逆に質問されました。

「ねぇ、レミアさん。オーガルが持っているあの剣なんですけどね。

私たちが、地下洞で見つけた剣と同じじゃないでしょうか?」

「ええっ、そうなの?」

私とガーネは、保管場所から持って来たあの剣と見比べて見ました。

「本当ね。確かにそうだわ。」私も、ガーネの意見に賛成しました。

「どれどれ。」「よく見せてよ。」

おじいさんとトラちゃんも、寄って来て確認をします。

「間違いないな。」「うん。確かだわ。」

全員が、ガーネの意見に賛成しました。

「とすると、この剣なら、オーガルを倒す事が出来るかも知れませんね。」

ガーネはそう言いました。

「そうかも知れないけど、一体誰がやるのよ。」私は尋ねました。

「この中で剣を使える人は、1人もいませんよね。

だったら、やっぱり一番強い人って事になりますよ。」とガーネ。

「それなら、決まりじゃな。」「ええ決まりです。」

「そうね。間違いないわ。」「まぁ、1人しかいないわね。」

全員がうなずいたので、おじいさんは言いました。

「じゃあ、自分たちが推薦する人を、一斉に指さす事にしようかの。せーの。」

おじいさんのかけ声で、私以外、全員が同じ人を指さしました。

何故か、私を。

「何で、私なんですか?」ちなみに私は、ガーネを指さしたんですけどね。

「お前じゃ。」「あなたを置いて他にはいません。」

「レミアお姉えちゃんに、決まっているじゃない。」

全員が、さも、当然そうに私を決定しました。

明らかにこれは陰謀です。詐欺です。何らかの見えざる手が働いています。

「いいですか。私は女の子ですよ。」私は、改めてそう言いました。

「でも、強い。とても強い。」全員がハモリました。

私は、窓から外を見ました。相変わらず、オーガルは剣を振り回しています。

「あのー、もう一度考え直しませんか?」私は尋ねました。

それに対し、みんなはただ首を横に振るだけです。

駄目だ、こいつらとは付き合いきれん。

私は観念して、テーブルに置いてある魔法の剣に、手を伸ばそうとしました。

その私の手を止める者がいます。

それは、ガーネでした。

「なんて、冗談ですよ。私が行ってきます。」

なんだ、そうだったんだ。私はホッとしました。

でも、他の人の反応は、違っていました。

「いかん、危険じゃ。止めた方がいい。」

「そうよ、あなたにもしもの事があったら、あたし1ひとりぼっちよ。」

おじいさんは、必死で止めるし、トラちゃんは、泣きそうになるし。

おかしい。何かおかしい。本来この反応は、私の時になされるべきものでは。

「ねぇ、レミアお姉えちゃんも、止めてよ。」

トラちゃんは、本当に涙ぐんで、私に哀願していました。

「ああっ、もうどうしたらいいのよ。」私は頭を抱えました。


「トラ、そしてみんな。有難う。でも、大丈夫だから、私を行かせてください。」

ガーネのその言葉はとても優しく、誰も何も言い返す言葉がありません。

「ガーネ。」トラちゃんはガーネの手に、鼻をこすっています。

ガーネはトラちゃんの頭を撫でて、大丈夫だよ、って言っていました。

その後、あの魔法の剣を携えて、レイグルを出て行ったのです。

「ガーネ。」追いかけようとするトラちゃんを、私は抱きかかえました。

「ガーネが言っていたでしょう、大丈夫だって。ガーネを信じましょう。」

トラちゃんは私の方を振り向き、私の言葉にうなずきました。


ガーネはゆっくりと、オーガルの方へ向って行きました。

そのオーガルは相変わらず、突風を撒き散らしていたのです。

ですが、近づいてくるガーネの気配に気が付いたのでしょう。

剣を振り回すのを止めて、ガーネの方を振り向きました。

しばらく首をかしげたりしていましたが、やがて咆哮を上げました。

「グォーッ。」力のある咆哮です。部屋中が揺れる程でした。

ですが、ガーネは身じろぎする事無く、オーガルの方へ歩いて行きました。

そして、ある距離まで狭まったところで、足を止めたのです。

何故か、2人とも、対峙したままです。

そのうち、しびれを切らしたのか、オーガルが両手で魔法剣を振り上げました。

そして、ガーネに向って走り出したのです。

そんな状況でも、ガーネはただ、立ったままでした。

私たちは、その様子を瞬きするのも忘れ、見入っていました。

私はふと我にかえって、トラちゃんに声をかけようとしました。

しかし、トラちゃんも身体を微動だにする事無く、見守っています。

ガーネの方だけを、見つめていたのです。

「ガーネが、...命を賭けている。」

トラちゃんが放ったその言葉は、レイグルの中に響きました。

そして、私の心にも。

ものすごい緊張感が、このレイグルを包んでいました。


オーガルがガーネとの距離を半分ぐらいにまで縮めた時、それは起こりました。

ガーネが自分の持つ魔法剣の鞘を抜き、それを捨てたのです。

その瞬間、地下洞で見たときと同様、その刃が黄金色に輝きました。

しかし、今回はそれだけではありません。

その黄金色に輝く光は、更に大きく広がり、ガーネ自身すら包み込んだのです。

まるで、ガーネ自身が発光しているような、そんな不思議な光景でした。

この光の威圧感に押されたように、オーガルはその動きを止めました。

そして少しの間、対峙した後、またあの咆哮を上げたのです。

すると、オーガルの刃からも、銀の光が放たれました。

そしてガーネと同様、オーガルの身体もその光に包まれてしまいました。

やがて、オーガルは剣を頭上に振り上げました。

いわゆる上段の構えです。

一方、ガーネは剣を自分の右側に保持し、目の高さに刃を水平に構えました。

いわゆる霞の構えです。

2人は少しずつ、その間合いを詰めました。

まるで、円を描くように少しずつ、その間合いを狭めたのです。

そして2人はその動きを止めました。

2人が静止している中で、時が一刻一刻と、刻まれていきます。

やがて静から動に変わる時が来ました。

オーガルは咆哮を上げながら、助走をつけた後、飛び上がりました。

恐らく、ガーネの真上から斬りかかろうとしたのでしょう。

しかし、ガーネも油断をしていません。

その直後、ガーネもオーガルへ体当たりするように、懐深く飛び込んだのです。

ガーネの刃は、オーガルの心の臓あたりを、深く突き刺しました。

オーガルは振り上げた剣を降ろす事も出来ずに、串刺しにされたのでした。

ガーネは剣を手放し、床の上に降りました。

オーガルの手からは剣が離れて、床へと落ちました。

そして、オーガル自身も刺されたままで、後ろへと仰向けに倒れたのです。

床に落下したオーガルは、青白い炎に全身が包まれていました。

そして、跡形も無く、その姿を消したのです。

私、いや私たちは、この決着を見届けた後、レイグルから飛び降りました。

そして、大急ぎで、ガーネの元に駆け寄ったのでした。

「ガーネ。」トラちゃんはよほど、心配していたのでしょう。

涙ぐみながらも1番にガーネの元に駆け寄り、その胸に飛び込んで行きました。

私とおじいさんも駆けつけて、ガーネが無事な事が判り、ホッとしました。

「大丈夫ですよ。もう終わりました。」

ガーネはそう言って、トラちゃんの頭を優しく撫でました。

そして、誰ともなしにこう言いました。

「この人は何かに操られているように、暴れまわっていました。

でも時々、この人から「助けてくれ。」って言う言葉を聞いたんです。

耳からではなく、心で。

だから、ひょっとして、この人はまだ自分の意思を持っているんじゃないか。

そんな風に思えたんです。

だから、彼の魂を閉じ込めているこの屍体から、開放してあげたかったんです。

それで私は命がけで、戦ったんです。

本当にそれが出来たかどうかは、確認するすべはありません。

でも、そう信じたいです。」

ガーネは悲しそうな声で、そう言いました。

私は、オーガルが消えた跡を見ました。

そこには、あの魔法剣が2つあるだけでした。

でも、その刃からは、光が消えていたのです。

そしてその剣自体が、赤さびて古びたものに変化していました。

「魔法力が、無くなってしまったんですね。」

鞘も同様でした。手に取ると、割れてボロボロになってしまいました。

どちらの魔法剣も同じ状態です。

1つの戦いが終わったんですね。私は、そう思いました。


それから私たちは、吹き飛ばされた石壇の中を歩きました。

オーガルが眠っていた棺は、かろうじて元の位置にありました。

幸い、ふたは閉まった状態です。これなら小箱も飛ばされていないでしょう。

ガーネがふたを開けると、思った通り、そこに青の小箱が鎮座していました。


この時ふと、私の頭にこんな考えがよぎりました。

もしあの時、私が叫び声を上げなかったら、どうだったでしょう。

多分、オーガルは眠ったままだったんじゃないでしょうか?

そして、青の小箱もとっくに、そして楽に手に入っていたのでは?

ガーネも、決死の覚悟で戦う必要が無かったのでは?

いけない、いけませんね。これはマイナス思考というものでしょう。

自分を暗くするだけです。

ここは1つ、考え方を変えて見ましょう。

私が叫び声を上げた事で、オーガルが目を覚ましたのは事実でしょう。

でも、そのおかげでガーネと戦って、魂は成仏出来たのです。

ガーネも英雄になれました。

私たちも、青い小箱を手に入れる事が出来ました。

苦労はありましたが、それは私たちの結束を更に高めた筈です。

手に入れた宝物にしても、より有り難味が、感じられた筈です。

なんだ、いい事ばかりじゃありませんか。

さっき、少し落ち込みかけていた私は、一体何だったんでしょうか?

私は、えへんと胸を張りたくなりました。

そんな私を、他の人たちが噂しています。

「ゾア博士、あそこに暗くなったり、明るくなったりしている人がいますね。

ひょっとして、お知り合いでは?」とガーネ。まるっきり、他人の振りです。

「いやあ、わしは知らんよ。一体どこから来たのかの。」

こちらもです。おじいさんは、何故かとぼけています。

冗談のつもりなんでしょうか。それともボケが進んだとか。

最後はトラちゃんですね。どんなフォローをしてくれるのでしょうか。

「...。」

あれ、何も言いませんね。それどころか何故か私の視線を避けているような。

...まぁ、気のせいでしょうね。


その後も探索しましたが、特に宝物も、新たな出入り口も発見出来ませんでした。

まぁ、いろいろありましたが、無事にレイグルに戻りました。

いつものように、私の秘密兵器の針金で、青の小箱を開けました。

そこには、私たちが想像していた通り、青の秘石が入っていました。

私はそれを手に持って、みんなに言いました。

「はい、3個目。

これであの大広間につながっている出入り口の秘石は、全部揃った筈です。」

そう言って、その青の秘石を取り出して、みんなに見せました。

「これからどうしましょうか。」ガーネが誰ともなしに尋ねました。

「判らんな。探せるところは探した筈なんじゃがな。

まだ女神の間がどこにあるのか、皆目検討もつかん。」

おじいさんは、そうこぼしていました。

私は、青い秘石を箱に戻した後、みんなに言いました。

「それじゃあ、いつまでも、このお墓の間みたいな所にいるのは止めない?

とりあえず、大広間に戻りましょうよ。」

私のこの提案に、みんなは賛成しました。


数分後、私たちはレイグルを走らせ、大広間の中央に戻って来ました。

「もう、何回ここに来たんでしょうか。

ここはすっかり、私たちにとって、ベースキャンプになっていますね。」

安心と言うわけではありませんが、何かホッとしている自分がいます。

私たちは、レイグルを降りて、大広間を歩いてみました。

特に何もありません。私たちはあの3つの出入り口にも行ってみたのです。

一つ一つ見て回りましたが、そのうちおじいさんが、こう言い出しました。

「なぁ、変だとは思わんか。

この左から2番目と3番目の間が、何故か不自然に広がっておる。

まるで、もう1つ出入り口があるようにな。」

私たち全員で、その場所を調べてみました。

すると、今まで気が付かなかった事が判りました。

2番目の出入り口の右側に、縦に小さい溝があったのです。

それは2つで、上の方の溝の周りには、赤の模様が描かれていました。

一方、下の方は、緑の模様でした。

3番目の出入り口の左側にも、小さい溝が1つありました。

その溝の周りには、青の模様が描かれていたのでした。

「もしかしたら。」

私はレイグルから、あの3つの秘石を持ち出しました。

それを横にして、その溝に入れてみます。

すると、ちゃんと最後まで、挿入する事が出来たのです。

3つ目の秘石を挿入した時点で、異変が起こりました。

大広場全体に揺れが始まり、それはだんだん大きくなっていったのです。

そして、急に秘石を挿入した壁の内側に亀裂が走りました。

「ダダーン。」突然、壁が崩れました。

大きな音とともに、噴煙が四方に散らばったのです。

しばらくして、その噴煙は納まりました。

私はそこにもう1つ、新たな出入り口が姿を現しているのに、気付きました。

なんだ。この秘石はこの出入り口を開ける鍵だったんですね。

私は、そう思いました。私たちの苦労は、無駄では無かったのです。

その出入り口は、白い色でした。

白の間にでも、つながっているのでしょうか。それとも。

私たちは、期待に胸を躍らせました。

私は、挿入した秘石3個を、引き抜いてみました。

大丈夫。もう、元のように戻る事は無さそうです。

折角、苦労して手に入れた秘石です。手放したく無かったのです。


その頃、すっかりあたりは暗くなっていました。多分、もう夜なのでしょう。

「どうやら、本命の出入り口が見つかったようじゃな。

にしても、もう夜になってしまったようじゃ。

今日の探検は、これぐらいにしておきたいが、どうかな。」

そう言うおじいさんも、今日は疲れ果てた顔をしています。

また、私を含めて全員も同じだったらしく、その意見に賛成しました。

こうして私たちは、ここでもう1泊する事にしたのです。


私たちはレイグルに戻り、夕食として、いつものビスケットを食べました。

ガーネたちは歯を磨いた後、お風呂に入りました。

そしてお風呂から上がった後は、レイグルの外に出て行ったのです。

今夜は大広間で眠ってみたいと、寝袋を借りていきました。

そんなわけで、今夜は久しぶりに、おじいさんと家族水入らずです。

と言っても、おじいさんはめったにベッドでは眠りません。

運転席のリクライニングシートで、180度倒して寝ています。

多分、私の来る前から、こんな感じだったのでしょうね。

寝顔は穏やかです。随分、しわも多くなっています。

たまには、家に帰ればいいのに。私は少し、心配しました。

まぁ、そんなこんなで、ベッドルームは私1人です。

今夜は誰にも気がねする事無く、のんびり出来るというものです。

私は、ベッドに置いてある小箱から、赤の秘石を取り出しました。

他の秘石も、決して悪くはありません。

ですが、やっぱり一番最初に見つけた、この秘石が好きです。

この赤く輝く色に、どうしても魅了されます。

私は、赤やワイン色が好きです。服装も、もちろんそうです。

この探検では、典型的なサファリジャケットなので、色はカーキ色です。

茶色がかった黄色と言ったところでしょうか。目立たない、地味な色です。

まぁ、探検にファッションを要求するのは、ちと無理ですかね。

明日はどんな日になるんでしょうか。

金銀財宝を手に入れて、有頂天になっているんでしょうか。

それとも、見つからずにがっかりするだけなんでしょうか。


未来を知りたいと思う事ってありません?

私は時々、ありますよ。

でも、それを知ってしまったら、どうなるんでしょう。

その未来が、自分にとって明るい未来なら、いいかも知れません。

すぐにも、その日が来て欲しいと思うかもしれません。

でも、不幸だとして、それが逃れられないとしたら、どうでしょう。

生きて行くのが辛くなるだけかもしれません。

未来を知ると言う事は、それを確定してしまう事になります。

それは人にとって、大切なものを奪ってしまいます。

その名は「希望」。

希望という言葉を知っていますよね。

この言葉は、未来が判らないからこそ、使える言葉なんじゃないでしょうか。

確定していない未来、どうなるか誰にも判らない未来。

そんな未来だからこそ、不安もあるけど、希望も生まれるような気がするんです。

未来への可能性というものを、どこまでも追及出来るんじゃないでしょうか。

そしてその結果から生まれる、新たな喜びを信じられるんじゃないでしょうか。

だから、私は思うんです。知りたいけど、知りたくないって。

あなたはどう思いますか?


私は、赤い秘石を見ながら、これまで起きたいろいろな事を思い出していました。

楽しかった事もあったし、怖かった事もありました。

でも、全ていい思い出です。

この赤い秘石は、そんな想い出を、いちいち思い出させてくれます。

ここを去った後でも、いつまでもこの探検の事を思い出せるでしょう。

私はこの秘石だけは、いつまでも持っていよう。そう思いました。


明日も早いでしょうから、そろそろ眠りましょうか。

みんなにとっても、大事な日になるかも知れませんし。

寝ぼけまなこで、探検するのは避けましょう。

私はそう思って、赤い秘石を小箱に戻し、眠る事にしました。

私が目を閉じました。

静かな時が、少しずつ流れて行きます。

私は目を開けました。駄目です。眠る事が出来ません。

いよいよ、明日がこの探検の最後かも知れないので、興奮しているのでしょう。

このままでも、いずれ時は過ぎて行きます。

でも何か、すごくもったいないような気がしてなりません。

誰かと、語り合いたいと思い始めました。

おじいさんの運転席へ行ってみます。でも、おじいさんは既に眠っていました。

今日はあのゴーレムに追いかけられて、ずっと逃げ回っていましたからね。

疲れもするでしょう。私は起こさずに、そっとその場を離れました。

私は、窓の外に目をやりました。

ガーネとトラは起きていて、何か話し合ったりしています。

「よし、行こう。」私も寝袋持参で、レイグルの外に出ました。

そして、ガーネたちの元に向かって歩き出したのです。


第8話「正と邪の女神。」6つめですね。(終)


今回のお話は、第8話「正と邪の女神。」の第6回です。

今回も、戦いが中心のお話です。


みなさん、体調は如何でしょうか?

こちらは熱中症にもならず、何とか生きていますので、ご安心下さい。


なるだけ、1週間に1回ぐらいは、投稿したいのですがね。

今度はいつ頃になるのでしょうね。


気が向いたら、また続きを書いてみたいと思います。

では、また会える日を。See You Again.


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