第8話「正と邪の女神。」6つめですね。
迷宮の旅人である、ガーネと猫のトラが織りなす、別世界での旅のお話です。
第8話「正と邪の女神。」6つめですね。のお話です。
この回では、青の間で、屍人のオーガルと戦います。
第8話「正と邪の女神。」6つめですね。
今日はまだ陽も高かったので、再度、大広間の中央に戻りました。
「さて、いよいよ最後の出入り口じゃな。
出入り口が青色である事を考えると、多分青の間がある筈じゃ。
では、行こうとするかの。」
おじいさんはレイグルを走らせ、最後の出入り口の中へ向かいました。
予想通り、通路も青色です。
また他の間と同じように、幾らも経たないうちに別の広間に出る事が出来ました。
太陽の陽射しが、全く射しこまない真っ暗な部屋です。
「ここは、一番不気味な部屋だわ。」私は不安に駆られました。
私の言葉を聞いておじいさんは、レイグルのライトを、全部点灯させます。
部屋中がいきなり、明るくなりました。
「なるほど、確かに青の間ですね。」ガーネはうなずきました。
「見て、あれ。」私は思わず、ガーネの腕にすがってしまいました。
幾つかの石壇の中に、棺が1つ置いてあったのです。
「ここは、お墓なんでしょうか。」ガーネは首をかしげていました。
「ともかく、棺の中をあらためてみましょうか。」
ガーネはそう言って、棺に向かって進んで行きます。
私は、ガーネから離れてレイグルの傍に戻りました。
ガーネと、その肩に乗っているトラちゃんは、私の方を振り向きました。
「レミアお姉ちゃん、どうしたの?」トラちゃんが私に声をかけました。
「だって、それ棺でしょう。私、そう言うの苦手なのよ。」
私は、本音を言いました。
「大丈夫ですよ。出たってゾンビか吸血鬼ぐらいじゃないですか。」
ガーネは事もなげに言います。
「そうよ。大した事無いわ。」トラちゃんも恐ろしい事を言います。
私は今まで、仲間と思っていましたが、やはり少し違うようです。
何か周りにいる人全てが、怖くなってきました。
思わず後ずさりした私に、後ろから声がかかりました。
「おい。痛いじゃないか。」
「ギャアー。」
私は叫び声を上げ、咄嗟に逃げました。
ある程度、離れた後、恐る恐るその声のした方を振り向きました。
「何じゃ、人の足を踏んづけて。何をやっておる。」
私は、その姿を見て、ホッとしました。
それは、私が小さい頃から知っている年寄りでした。
「おじいさん、脅かさないで下さいよ。命が縮まるかと思いました。」
私は、安堵の胸を撫で下ろしました。
「そんな事は、どうでもいい。早く、ガーネたちのところへ行こうぞ。」
おじいさんは、私の背後から両肩に手を置いて、前へと押して行きました。
「ちょっと待って、おじいさん。お願いだから、押さないで。」
かわいい孫の言葉を聞く事も無く、嫌がる私を棺の前に連れて行きました。
「いらっしゃい。」「やっと来たのね。」
ガーネとトラちゃんが、それはにこやかな顔で、出迎えました。
「いやあ、孫が駄々をこねて申し訳ない。」
おじいさんが、わけの判らない謝り方をしていました。
この人たち、仲良すぎ。ひょっとしたら、ぐるなのでは。
もともと、悪魔に魅入られていたんじゃないかしら。
そして私を新しい生贄にして、自分たちの仲間にしようとたくらんでいるのでは。
私は、疑心暗鬼に見舞われました。
「じゃあ、開けますよ。」ガーネが張り切って、棺を開けようとしています。
私は逃げ出そうと、足を後退させました。
「おい、どこに行くのじゃ。」おじいさんが、私の肩をグッと押さえました。
もう駄目です。我慢にも限度があるんです。
私は、両手の拳を握りしめました。
と、その時です。
「あっ、青の小箱だ。」トラちゃんの嬉しそうな声が響きました。
「えっ。」私は思わず、ガーネが開けた棺の中をのぞき込みました。
「うっ。」次の瞬間、私は思わず、口を押さえました。
確かに青の小箱はありましたよ。ええ、ありましたとも。
でも、それと一緒に、死体も寝転んでいました。
心なしか、死臭を吸った気がしたので、思わず叫び声を上げてしまいました。
「ギャアー。」その部屋いっぱいに広がるぐらいの、大きな声でした。
「まずい、逃げるんじゃ。」
私を置き去りにして、全員がレイグルの方へ走って行きました。
「へぇ?」私は恐る恐る棺の方を、振り向きました。
何とそこには、死体が復活して、半身を起していたのです。
その身体は、見かけ上、土と骨に布切れが絡まっているぐらいにしか見えません。
目も潰れています。
そうか。みんなはこれを見て、逃げ出したんですね。私は納得しました。
それにしても、何という薄情な人たちでしょう。この私を身捨てるなんて。
まして、おじいさんは、私と血のつながった肉親だって言うのに。
私は息を、思いっ切り吸い込みました。そして。
「アンデッドだー、ゾンビだー。」
私も気が狂ったように叫びながら、レイグルに向かって走り出しました。
キキキーッ。しかし、私はその途中で、足を止めたのです。
「ガーネ。何をしているの?」私は尋ねました。
ガーネは、レイグルに戻らずに、ボーっと立ちすくんでいたからです。
あの死体に、気を取られているようでした。
「あのー、済みません。何か声みたいなものが聞こえませんでしたか。」
ガーネは私に、そう尋ねてきました。
「えっ、別に何も聞こえないけど、どうかしたの?」
「えっ、いや、別に何でもありません。
そうですね。それじゃあ、私たちもレイグルに戻りましょうか。」
何か、イマイチ判りにくい反応です。
でも、とりあえず、私たちはレイグルへと走り出しました。
ガーネの後に続いて、私もレイグルの中に入りました。
ガシン。私はレイグルのドアを閉めて、ホッとしました。
「ねぇ、これからどうするの。」トラちゃんが、誰ともなしに尋ねました。
「死体が眠っている間に、青い小箱が手に入ればよかったんですけどね。」
ガーネも残念そうでした。
「終わった事は仕方が無い、問題はこれからどうするかじゃな。」
「撤退と言う手もありますよ。
もう秘石だって2個手に入ったし、弓矢や剣もある。
ゾア博士だって、レイグルのテストを、かなりやる事が出来たんじゃないですか。
金銀財宝はこの際、諦めては?」ガーネはそう提案しました。
「そうね。これ以上、無理をして怪我してもつまらないし。」
トラちゃんもガーネの意見に、賛成のようです。
「まぁ、それもいいかもしれんな。」おじいさんも、その気になってきました。
残るは、私1人です。
「ちょっと、心残りな気もしますけれどね。これで終わりとしましょうか。」
私も、賛成する事にしました。
「あっそうそう、帰る前に、あの死体の名前を決めて置きたいんだけど。
今度は、トラちゃんね。決めてちょうだい。」
「えっ、あたしだっけ。そうね。それじゃあ、「オーガル」って事で。
もちろん、適当に付けた名前よ。」
「OK。「オーガル」ね。了解。」私はその名前にしました。
全員の確認を受けて、おじいさんは撤退を決めました。
「じゃあ、帰るとしようかの。」
おじいさんはそう言って、エンジンをかけた時でした。
レイグルが、いきなり停電状態になってしまったのです。
これでは、レイグルの武器が使えず、運転も出来ません。
近代兵器の弱点を、見事に突かれてしまいました。
「なになに。」私は恐る恐る窓から、オーガルの方を見ました。
「ウワァー。」あのオーガルの手には、剣が握られていました。
そして、狂ったように振り回し、電流が撒き散らされていたのです。
レイグルは、この電流をまともに浴びせられてしまったため、停電したのでした。
「いかん。レイグルが動かんぞ。どこかでショートしたらしい。」
おじいさんの焦った声が聞こえました。
オーガルの攻撃は、まだまだ続きます。
今度は電流では無く、突風を生み出していました。
棺の周りにある石壇が、こちらへ飛ばされて来ます。
バン、ガシン。その幾つかがレイグルに直撃し、機体内部にも衝撃が走りました。
「これはたまらん。何とかしないと、レイグルはお陀仏じゃ。」
おじいさんが、不吉な事を言っています。
「でも、ここから出たら、それこそ大変じゃない。」
トラちゃんも頭を抱えて、しゃがみ込んでいました。
全員が、身体を低くして警戒している中。1人だけ突っ立っている人がいます。
ガーネです。やはりオーガルの方をじっと見ていました。
私が話しかけようとした途端、逆に質問されました。
「ねぇ、レミアさん。オーガルが持っているあの剣なんですけどね。
私たちが、地下洞で見つけた剣と同じじゃないでしょうか?」
「ええっ、そうなの?」
私とガーネは、保管場所から持って来たあの剣と見比べて見ました。
「本当ね。確かにそうだわ。」私も、ガーネの意見に賛成しました。
「どれどれ。」「よく見せてよ。」
おじいさんとトラちゃんも、寄って来て確認をします。
「間違いないな。」「うん。確かだわ。」
全員が、ガーネの意見に賛成しました。
「とすると、この剣なら、オーガルを倒す事が出来るかも知れませんね。」
ガーネはそう言いました。
「そうかも知れないけど、一体誰がやるのよ。」私は尋ねました。
「この中で剣を使える人は、1人もいませんよね。
だったら、やっぱり一番強い人って事になりますよ。」とガーネ。
「それなら、決まりじゃな。」「ええ決まりです。」
「そうね。間違いないわ。」「まぁ、1人しかいないわね。」
全員がうなずいたので、おじいさんは言いました。
「じゃあ、自分たちが推薦する人を、一斉に指さす事にしようかの。せーの。」
おじいさんのかけ声で、私以外、全員が同じ人を指さしました。
何故か、私を。
「何で、私なんですか?」ちなみに私は、ガーネを指さしたんですけどね。
「お前じゃ。」「あなたを置いて他にはいません。」
「レミアお姉えちゃんに、決まっているじゃない。」
全員が、さも、当然そうに私を決定しました。
明らかにこれは陰謀です。詐欺です。何らかの見えざる手が働いています。
「いいですか。私は女の子ですよ。」私は、改めてそう言いました。
「でも、強い。とても強い。」全員がハモリました。
私は、窓から外を見ました。相変わらず、オーガルは剣を振り回しています。
「あのー、もう一度考え直しませんか?」私は尋ねました。
それに対し、みんなはただ首を横に振るだけです。
駄目だ、こいつらとは付き合いきれん。
私は観念して、テーブルに置いてある魔法の剣に、手を伸ばそうとしました。
その私の手を止める者がいます。
それは、ガーネでした。
「なんて、冗談ですよ。私が行ってきます。」
なんだ、そうだったんだ。私はホッとしました。
でも、他の人の反応は、違っていました。
「いかん、危険じゃ。止めた方がいい。」
「そうよ、あなたにもしもの事があったら、あたし1匹ぼっちよ。」
おじいさんは、必死で止めるし、トラちゃんは、泣きそうになるし。
おかしい。何かおかしい。本来この反応は、私の時になされるべきものでは。
「ねぇ、レミアお姉えちゃんも、止めてよ。」
トラちゃんは、本当に涙ぐんで、私に哀願していました。
「ああっ、もうどうしたらいいのよ。」私は頭を抱えました。
「トラ、そしてみんな。有難う。でも、大丈夫だから、私を行かせてください。」
ガーネのその言葉はとても優しく、誰も何も言い返す言葉がありません。
「ガーネ。」トラちゃんはガーネの手に、鼻をこすっています。
ガーネはトラちゃんの頭を撫でて、大丈夫だよ、って言っていました。
その後、あの魔法の剣を携えて、レイグルを出て行ったのです。
「ガーネ。」追いかけようとするトラちゃんを、私は抱きかかえました。
「ガーネが言っていたでしょう、大丈夫だって。ガーネを信じましょう。」
トラちゃんは私の方を振り向き、私の言葉にうなずきました。
ガーネはゆっくりと、オーガルの方へ向って行きました。
そのオーガルは相変わらず、突風を撒き散らしていたのです。
ですが、近づいてくるガーネの気配に気が付いたのでしょう。
剣を振り回すのを止めて、ガーネの方を振り向きました。
しばらく首をかしげたりしていましたが、やがて咆哮を上げました。
「グォーッ。」力のある咆哮です。部屋中が揺れる程でした。
ですが、ガーネは身じろぎする事無く、オーガルの方へ歩いて行きました。
そして、ある距離まで狭まったところで、足を止めたのです。
何故か、2人とも、対峙したままです。
そのうち、しびれを切らしたのか、オーガルが両手で魔法剣を振り上げました。
そして、ガーネに向って走り出したのです。
そんな状況でも、ガーネはただ、立ったままでした。
私たちは、その様子を瞬きするのも忘れ、見入っていました。
私はふと我にかえって、トラちゃんに声をかけようとしました。
しかし、トラちゃんも身体を微動だにする事無く、見守っています。
ガーネの方だけを、見つめていたのです。
「ガーネが、...命を賭けている。」
トラちゃんが放ったその言葉は、レイグルの中に響きました。
そして、私の心にも。
ものすごい緊張感が、このレイグルを包んでいました。
オーガルがガーネとの距離を半分ぐらいにまで縮めた時、それは起こりました。
ガーネが自分の持つ魔法剣の鞘を抜き、それを捨てたのです。
その瞬間、地下洞で見たときと同様、その刃が黄金色に輝きました。
しかし、今回はそれだけではありません。
その黄金色に輝く光は、更に大きく広がり、ガーネ自身すら包み込んだのです。
まるで、ガーネ自身が発光しているような、そんな不思議な光景でした。
この光の威圧感に押されたように、オーガルはその動きを止めました。
そして少しの間、対峙した後、またあの咆哮を上げたのです。
すると、オーガルの刃からも、銀の光が放たれました。
そしてガーネと同様、オーガルの身体もその光に包まれてしまいました。
やがて、オーガルは剣を頭上に振り上げました。
いわゆる上段の構えです。
一方、ガーネは剣を自分の右側に保持し、目の高さに刃を水平に構えました。
いわゆる霞の構えです。
2人は少しずつ、その間合いを詰めました。
まるで、円を描くように少しずつ、その間合いを狭めたのです。
そして2人はその動きを止めました。
2人が静止している中で、時が一刻一刻と、刻まれていきます。
やがて静から動に変わる時が来ました。
オーガルは咆哮を上げながら、助走をつけた後、飛び上がりました。
恐らく、ガーネの真上から斬りかかろうとしたのでしょう。
しかし、ガーネも油断をしていません。
その直後、ガーネもオーガルへ体当たりするように、懐深く飛び込んだのです。
ガーネの刃は、オーガルの心の臓あたりを、深く突き刺しました。
オーガルは振り上げた剣を降ろす事も出来ずに、串刺しにされたのでした。
ガーネは剣を手放し、床の上に降りました。
オーガルの手からは剣が離れて、床へと落ちました。
そして、オーガル自身も刺されたままで、後ろへと仰向けに倒れたのです。
床に落下したオーガルは、青白い炎に全身が包まれていました。
そして、跡形も無く、その姿を消したのです。
私、いや私たちは、この決着を見届けた後、レイグルから飛び降りました。
そして、大急ぎで、ガーネの元に駆け寄ったのでした。
「ガーネ。」トラちゃんはよほど、心配していたのでしょう。
涙ぐみながらも1番にガーネの元に駆け寄り、その胸に飛び込んで行きました。
私とおじいさんも駆けつけて、ガーネが無事な事が判り、ホッとしました。
「大丈夫ですよ。もう終わりました。」
ガーネはそう言って、トラちゃんの頭を優しく撫でました。
そして、誰ともなしにこう言いました。
「この人は何かに操られているように、暴れまわっていました。
でも時々、この人から「助けてくれ。」って言う言葉を聞いたんです。
耳からではなく、心で。
だから、ひょっとして、この人はまだ自分の意思を持っているんじゃないか。
そんな風に思えたんです。
だから、彼の魂を閉じ込めているこの屍体から、開放してあげたかったんです。
それで私は命がけで、戦ったんです。
本当にそれが出来たかどうかは、確認する術はありません。
でも、そう信じたいです。」
ガーネは悲しそうな声で、そう言いました。
私は、オーガルが消えた跡を見ました。
そこには、あの魔法剣が2つあるだけでした。
でも、その刃からは、光が消えていたのです。
そしてその剣自体が、赤さびて古びたものに変化していました。
「魔法力が、無くなってしまったんですね。」
鞘も同様でした。手に取ると、割れてボロボロになってしまいました。
どちらの魔法剣も同じ状態です。
1つの戦いが終わったんですね。私は、そう思いました。
それから私たちは、吹き飛ばされた石壇の中を歩きました。
オーガルが眠っていた棺は、かろうじて元の位置にありました。
幸い、ふたは閉まった状態です。これなら小箱も飛ばされていないでしょう。
ガーネがふたを開けると、思った通り、そこに青の小箱が鎮座していました。
この時ふと、私の頭にこんな考えがよぎりました。
もしあの時、私が叫び声を上げなかったら、どうだったでしょう。
多分、オーガルは眠ったままだったんじゃないでしょうか?
そして、青の小箱もとっくに、そして楽に手に入っていたのでは?
ガーネも、決死の覚悟で戦う必要が無かったのでは?
いけない、いけませんね。これはマイナス思考というものでしょう。
自分を暗くするだけです。
ここは1つ、考え方を変えて見ましょう。
私が叫び声を上げた事で、オーガルが目を覚ましたのは事実でしょう。
でも、そのおかげでガーネと戦って、魂は成仏出来たのです。
ガーネも英雄になれました。
私たちも、青い小箱を手に入れる事が出来ました。
苦労はありましたが、それは私たちの結束を更に高めた筈です。
手に入れた宝物にしても、より有り難味が、感じられた筈です。
なんだ、いい事ばかりじゃありませんか。
さっき、少し落ち込みかけていた私は、一体何だったんでしょうか?
私は、えへんと胸を張りたくなりました。
そんな私を、他の人たちが噂しています。
「ゾア博士、あそこに暗くなったり、明るくなったりしている人がいますね。
ひょっとして、お知り合いでは?」とガーネ。まるっきり、他人の振りです。
「いやあ、わしは知らんよ。一体どこから来たのかの。」
こちらもです。おじいさんは、何故かとぼけています。
冗談のつもりなんでしょうか。それともボケが進んだとか。
最後はトラちゃんですね。どんなフォローをしてくれるのでしょうか。
「...。」
あれ、何も言いませんね。それどころか何故か私の視線を避けているような。
...まぁ、気のせいでしょうね。
その後も探索しましたが、特に宝物も、新たな出入り口も発見出来ませんでした。
まぁ、いろいろありましたが、無事にレイグルに戻りました。
いつものように、私の秘密兵器の針金で、青の小箱を開けました。
そこには、私たちが想像していた通り、青の秘石が入っていました。
私はそれを手に持って、みんなに言いました。
「はい、3個目。
これであの大広間につながっている出入り口の秘石は、全部揃った筈です。」
そう言って、その青の秘石を取り出して、みんなに見せました。
「これからどうしましょうか。」ガーネが誰ともなしに尋ねました。
「判らんな。探せるところは探した筈なんじゃがな。
まだ女神の間がどこにあるのか、皆目検討もつかん。」
おじいさんは、そうこぼしていました。
私は、青い秘石を箱に戻した後、みんなに言いました。
「それじゃあ、いつまでも、このお墓の間みたいな所にいるのは止めない?
とりあえず、大広間に戻りましょうよ。」
私のこの提案に、みんなは賛成しました。
数分後、私たちはレイグルを走らせ、大広間の中央に戻って来ました。
「もう、何回ここに来たんでしょうか。
ここはすっかり、私たちにとって、ベースキャンプになっていますね。」
安心と言うわけではありませんが、何かホッとしている自分がいます。
私たちは、レイグルを降りて、大広間を歩いてみました。
特に何もありません。私たちはあの3つの出入り口にも行ってみたのです。
一つ一つ見て回りましたが、そのうちおじいさんが、こう言い出しました。
「なぁ、変だとは思わんか。
この左から2番目と3番目の間が、何故か不自然に広がっておる。
まるで、もう1つ出入り口があるようにな。」
私たち全員で、その場所を調べてみました。
すると、今まで気が付かなかった事が判りました。
2番目の出入り口の右側に、縦に小さい溝があったのです。
それは2つで、上の方の溝の周りには、赤の模様が描かれていました。
一方、下の方は、緑の模様でした。
3番目の出入り口の左側にも、小さい溝が1つありました。
その溝の周りには、青の模様が描かれていたのでした。
「もしかしたら。」
私はレイグルから、あの3つの秘石を持ち出しました。
それを横にして、その溝に入れてみます。
すると、ちゃんと最後まで、挿入する事が出来たのです。
3つ目の秘石を挿入した時点で、異変が起こりました。
大広場全体に揺れが始まり、それはだんだん大きくなっていったのです。
そして、急に秘石を挿入した壁の内側に亀裂が走りました。
「ダダーン。」突然、壁が崩れました。
大きな音とともに、噴煙が四方に散らばったのです。
しばらくして、その噴煙は納まりました。
私はそこにもう1つ、新たな出入り口が姿を現しているのに、気付きました。
なんだ。この秘石はこの出入り口を開ける鍵だったんですね。
私は、そう思いました。私たちの苦労は、無駄では無かったのです。
その出入り口は、白い色でした。
白の間にでも、つながっているのでしょうか。それとも。
私たちは、期待に胸を躍らせました。
私は、挿入した秘石3個を、引き抜いてみました。
大丈夫。もう、元のように戻る事は無さそうです。
折角、苦労して手に入れた秘石です。手放したく無かったのです。
その頃、すっかりあたりは暗くなっていました。多分、もう夜なのでしょう。
「どうやら、本命の出入り口が見つかったようじゃな。
にしても、もう夜になってしまったようじゃ。
今日の探検は、これぐらいにしておきたいが、どうかな。」
そう言うおじいさんも、今日は疲れ果てた顔をしています。
また、私を含めて全員も同じだったらしく、その意見に賛成しました。
こうして私たちは、ここでもう1泊する事にしたのです。
私たちはレイグルに戻り、夕食として、いつものビスケットを食べました。
ガーネたちは歯を磨いた後、お風呂に入りました。
そしてお風呂から上がった後は、レイグルの外に出て行ったのです。
今夜は大広間で眠ってみたいと、寝袋を借りていきました。
そんなわけで、今夜は久しぶりに、おじいさんと家族水入らずです。
と言っても、おじいさんはめったにベッドでは眠りません。
運転席のリクライニングシートで、180度倒して寝ています。
多分、私の来る前から、こんな感じだったのでしょうね。
寝顔は穏やかです。随分、しわも多くなっています。
たまには、家に帰ればいいのに。私は少し、心配しました。
まぁ、そんなこんなで、ベッドルームは私1人です。
今夜は誰にも気がねする事無く、のんびり出来るというものです。
私は、ベッドに置いてある小箱から、赤の秘石を取り出しました。
他の秘石も、決して悪くはありません。
ですが、やっぱり一番最初に見つけた、この秘石が好きです。
この赤く輝く色に、どうしても魅了されます。
私は、赤やワイン色が好きです。服装も、もちろんそうです。
この探検では、典型的なサファリジャケットなので、色はカーキ色です。
茶色がかった黄色と言ったところでしょうか。目立たない、地味な色です。
まぁ、探検にファッションを要求するのは、ちと無理ですかね。
明日はどんな日になるんでしょうか。
金銀財宝を手に入れて、有頂天になっているんでしょうか。
それとも、見つからずにがっかりするだけなんでしょうか。
未来を知りたいと思う事ってありません?
私は時々、ありますよ。
でも、それを知ってしまったら、どうなるんでしょう。
その未来が、自分にとって明るい未来なら、いいかも知れません。
すぐにも、その日が来て欲しいと思うかもしれません。
でも、不幸だとして、それが逃れられないとしたら、どうでしょう。
生きて行くのが辛くなるだけかもしれません。
未来を知ると言う事は、それを確定してしまう事になります。
それは人にとって、大切なものを奪ってしまいます。
その名は「希望」。
希望という言葉を知っていますよね。
この言葉は、未来が判らないからこそ、使える言葉なんじゃないでしょうか。
確定していない未来、どうなるか誰にも判らない未来。
そんな未来だからこそ、不安もあるけど、希望も生まれるような気がするんです。
未来への可能性というものを、どこまでも追及出来るんじゃないでしょうか。
そしてその結果から生まれる、新たな喜びを信じられるんじゃないでしょうか。
だから、私は思うんです。知りたいけど、知りたくないって。
あなたはどう思いますか?
私は、赤い秘石を見ながら、これまで起きたいろいろな事を思い出していました。
楽しかった事もあったし、怖かった事もありました。
でも、全ていい思い出です。
この赤い秘石は、そんな想い出を、いちいち思い出させてくれます。
ここを去った後でも、いつまでもこの探検の事を思い出せるでしょう。
私はこの秘石だけは、いつまでも持っていよう。そう思いました。
明日も早いでしょうから、そろそろ眠りましょうか。
みんなにとっても、大事な日になるかも知れませんし。
寝ぼけまなこで、探検するのは避けましょう。
私はそう思って、赤い秘石を小箱に戻し、眠る事にしました。
私が目を閉じました。
静かな時が、少しずつ流れて行きます。
私は目を開けました。駄目です。眠る事が出来ません。
いよいよ、明日がこの探検の最後かも知れないので、興奮しているのでしょう。
このままでも、いずれ時は過ぎて行きます。
でも何か、すごくもったいないような気がしてなりません。
誰かと、語り合いたいと思い始めました。
おじいさんの運転席へ行ってみます。でも、おじいさんは既に眠っていました。
今日はあのゴーレムに追いかけられて、ずっと逃げ回っていましたからね。
疲れもするでしょう。私は起こさずに、そっとその場を離れました。
私は、窓の外に目をやりました。
ガーネとトラは起きていて、何か話し合ったりしています。
「よし、行こう。」私も寝袋持参で、レイグルの外に出ました。
そして、ガーネたちの元に向かって歩き出したのです。
第8話「正と邪の女神。」6つめですね。(終)
今回のお話は、第8話「正と邪の女神。」の第6回です。
今回も、戦いが中心のお話です。
みなさん、体調は如何でしょうか?
こちらは熱中症にもならず、何とか生きていますので、ご安心下さい。
なるだけ、1週間に1回ぐらいは、投稿したいのですがね。
今度はいつ頃になるのでしょうね。
気が向いたら、また続きを書いてみたいと思います。
では、また会える日を。See You Again.




