第8話「正と邪の女神。」3つめですね。
迷宮の旅人である、ガーネと猫のトラが織りなす、別世界での旅のお話です。
第8話「正と邪の女神。」3つめですね。のお話です。
この回では、大広間で、植物の魔物と戦います。
第8話「正と邪の女神。」3つめですね。
祭壇の間からは狭い通路でした。
ですので、私たちは相変わらずぶっ壊しながら、進んで行きました。
その結果、あっという間に大広間に着いてしまいました。
よく考えてみれば、ここは普通は歩いて通る道なので、当たり前でしたね。
大広間の中まで、戦闘用車両レイグルで入りました。
「何かすごくだだっ広い場所だわ。」
もちろん、今までの部屋も狭くはありませんでしたが、さすがは大広間です。
私の部屋の広さとは、比べようもありません。
私は、いつしか無意識の内に、空想の世界に突入していました。
こんなに広ければ、どんなに散らかしても、大丈夫なんじゃない?
ああ、でもその分、ごみが多くなってしまうわね。
出たごみは、どうやって片付けたらいいの?
誰に聞いたらいいかしら、悩んでしまう。
でも今はそれを考えるより、もっと考えなければならない事があるわ。
どの順番で、家具を並べたらいいの?
やっぱり、お人形台を先に並べる方がいいのかしら。
それとも、たんすや鏡台?ベッドはどこに置いたらいいのかしら。
あっ、いけない。絨毯を先に引かなくては。
でもその前に、箱から荷物を出して置くべきかしら。
最初の掃除は、どのタイミングでやったらいいの。
もちろん、窓のホコリを、最初に払わなければいけないわね。
それから床を...。
私は、いろいろな事を思い巡らせました。
とりあえず先に、箱から荷物を取り出してから考えよう。
そう思った時、私はここが自分の部屋では無い事に、気が付きました。
「あっ。」
ふと我に返った私は、周りで私をじっと見つめている複数の目に気が付きました。
「おじいさん。この人大丈夫でしょうか?」ガーネは心配そうに尋ねていました。
「レミアお姉ちゃんが、おかしくなっちゃったぁー。」
トラちゃんが泣き出しそうでした。(なんて失礼な。)
「いやあ、よくある事じゃよ。
何か興味があるものを見つけると、自分の空想の世界に入って行くのじゃ。
特にこの孫は、昔からそうじゃった。
こちらが、気が付かないでいるとな。いつの間にか、はぐれてしまっておる。
それで、慌てて後戻りしてみると、幾らも歩かないうちに、ボーっとしておった。
わしが、「どうしたかの。」と尋ねるとな。
「私はどうやって、あのお月さまに帰ったらよいの?」
などと言っておったわい。いやあ、懐かしい想い出じゃよ。」
おじいさんは、目を細めて昔を思い出していました。
「おお、そうじゃ。つい先だってもな。
珍しくわしと一緒に、買い物に行ったんじゃよ。
そうしたらな。あるポスターをじっと眺め出しての。
しばらくしたら、急にニタニタと笑いを浮かべおって...。」
「シャラップ!(お黙り)」
私は思わず、おじいさんの身体を動けないように固定しました。
そして、おじいさんの口を塞ぎ、頭の後ろに手を当てました。
後は、ねじのようにクルッと回すだけで、全ては終わります。
手に力を込めて回しにかかった時、私は肩をポンとたたかれました。
誰っ、と振り向くと、そこにガーネがいました。
「お嬢様。もうお目覚めのお時間ですよ。」
私は、その一言で、我に帰りました。
「お見事です。セバスチャン。」
現実の世界に戻って来た私は、フゥーッとため息をつきました。
そしてあらためて、自分がこの神殿ガルディの大広間にいる事を実感しました。
「さてと、もう地図は当てにならないし、目で確認するしかないわね。」
私たちは、大広間を調べる事にしました。
しかし、探索はすぐに終わってしまいました。
「この大広間の奥には、異なる3つの色の出入り口らしきものがあるのね。
左から、赤、緑、青で塗られているわ。
その他は、部屋の左右に、大きい植物が植えてある花壇ぐらいかなっと。
あっ、その花壇の手前にも、石壇が幾つかあるわね。
左右の壁に沿って、平行に並べられているわ。
あそこなら座ったり、寝転んだり、向き合って話をしたり出来るわね。
あとは、別にこれといった物は...、無いわね。」
私は、調査結果をみんなの前で、公表しました。
「赤、緑、青か。光の3原色じゃな。はてさて、どんな意味がある事やら。」
おじいさんは、首をかしげていました。
「まぁ、出入り口も謎なんですけどね。
それにしても、何でここはこんなに植物を植えているのでしょうね。
しかも、やたらと大きいものばかりです。
ほら、これなんて私たち3人が手と手をつなぎあって、やっと届くんですよ。
凄い太い植物ですね。」ガーネはそう言って、植物をたたいていました。
「確かにそうだけど...。
この大広間の大きさからすれば、大した事無いんじゃない?
少し大きめの観賞用植物ってとこかしらね。」
私はそれほど、奇妙だとは思いませんでした。
「だけど、このつるだって、太いし多いですよ。
このまま行くと、この大広間中に広がっちゃうんじゃないでしょうか?
今だって、床は歩きにくい個所もありますよ。」
ガーネは、なおも異論を唱えました。
「でも、まぁ、それはいいんじゃない。植物は、植物でしか無いんだし。
魔物みたいに、こちらに害を与えるってもんでも無さそうだし。」
私は、楽観的に考えていました。
「だと、いいんですけどね。」ガーネは納得いかないようでした。
そんな他愛も無い会話をしている最中に、次なる恐怖が襲って来ました。
「アレー。」「ウワァー。」
私とトラちゃんの背後から、植物のつるが忍び寄って来たのでした。
そのつるは、あっという間に私たちに巻きつきました。
そして天井高く、吊るし上げられてしまったのです。
トラちゃんは「ワァー、高い、高い。」と大喜びです。
一方、私は、こう叫びました。
「キャー、助けて。でも、スカートの中を見ないで。」
それに対して、ガーネはとても冷静でした。
「よく考えてみたんですが...。
なんで探検中なのに、スカートなんてはいて来るんですか?
それに確か、さっきはパンツ姿でしたよね。
はき替える必要なんて、無かったじゃありませんか。」
ガーネは腕を組んで、首をかしげていました。
「それは...、いろいろあったの。あなたには判らない事だわ。」
「...そうですか。まぁ、いいですけどね。」
この時、レイグルの拡声器から、おじいさんの声が聞こえました。
「今からレーザービーム砲で、つるを焼いてしまうからの。
心の準備をしといてくれ。」
その声の内容に、私は蒼ざめました。
「待って下さい。この高さから落ちたら私は...。」
私の必死の呼びかけにこたえる事無く、レーザービームが発射されました。
「ビシューッ。」お金をかけているとはいえ、大したものです。
レーザービームは、狙いたがわず、私たちのつるに命中しました。
私たちはつるが切れると同時に、真っ逆さまに落ちて行きました。
大変危険な状態ですが、ガーネが無事にキャッチしてくれる事を期待しました。
ところがです。
「トラーッ。」
ガーネは落ちて行くトラに向かって、大急ぎで駆けだして行きました。
トラは、器用にも落ちて行く最中に、何回か回転をしました。
その後、ガーネが伸ばしている両手の上に、ちょこんと乗る事が出来ました。
「トラ。怖い思いをさせて済みませんでした。さぞかし不安だったでしょう。
でも、無事でよかったです。本当によかったです。」
ガーネは涙ぐんでトラを抱きしめながら、何度も言いました。
「私はいいのよ。ガーネさえ無事なら。」
トラちゃんは、優しくガーネにそう告げていました。
「ドサッ。」これは私が落ちた音です。
危ない所でした。もし途中で、つるに引っかからなければ、重傷だったかも。
運がよかったんです。しかし、不思議な事も起こりました。
何故か頭からではなく、お尻から落ちたんです。
本来はあり得ない筈です。だって頭の方が重いのですから。
ねぇ、絶対にそうですよね。
多分、ここが異常な世界だから何でしょうね。
私は、そう納得しました。
ですが、真っ先に落ちたお尻が痛くて、すぐには動けませんでした。
「あの、大丈夫ですか?」ガーネが声をかけてきました。
一応、心配はしているようでした。
でもその態度は、同じ危険を体験したトラちゃんに比べると、格差がありました。
なので、普段は温厚な私も、ついに腹を立てました。
「あのね。普通こういう場合、私を先に助けるのが...。」
そう言いかけた私に、トラちゃんが答えました。
「ごめんね、レミアお姉ちゃん。ガーネはどんな時でも、あたし優先なの。」
その言葉を耳にして、私はガーネとトラを見上げました。
「クッ、ま、まぶしい!!」私は思わず、腕で自分の目を覆いました。
なんとトラちゃんから、溢れんばかりの優しい光の波が発せられていたのでした。
そして、それがあたり一面をを包んでいたのです。
ガーネに、しっかりと抱かれているトラちゃんは、気品さえ感じられました。
「もしや、これが!
ヒロインからしか発する事の出来ないと言われる、伝説の光のオーラ!!」
出来ない。私にはこんなオーラは出す事など出来ない。
私は、くちびるをかみしめて、ただ現実を受け入れるしかありませんでした。
結局、何のかんの言いながら、少しお尻が痛いです。
誤解の無いように言っておきますが、お尻から床にぶつかったので痛いだけです。
他の理由では、決してありません。
私にも、プライドがありますので、そこのところよろしく。
そんな症状もあり、私はガーネに肩を貸してもらって、レイグルに戻りました。
ヒヤッとする痛み止めの絆創膏を貼ってもらった時は、ホッとしました。
でも、あざは、しばらく残るんでしょうね。
もしも、あざが消える前に人前にさらす事があったら、どうしましょうか。
そんな時が来たら恥ずかしいですね。
まぁ、縁遠い私です。心配する必要は無いと思います。
「ところで、おじいさん。あの植物は何て、名前を付けましょうか?」
私はそう尋ねました。
「そうか、今回はわしが名前を付けるんじゃったの。
それじゃあ...。「アルゴラ」とでもしようかの。もちろん、意味は無い。」
「有難うございます。ではあの植物は「アルゴラ」とします。
みなさん、よろしいですね。」
「はい。」全員で、ハモリました。
「それにしても、ほれ、あれを見てみい。さっきの騒ぎに反応したのかの。
植物のつるが、異常分裂を起こしてあの3つの出入り口を覆ってしまったぞよ。」
「本当ですね。さっきとは比べようも無いくらい、多くなっています。
やっぱり、レーザーで、一網打尽といきますか?」
「それがじゃの。お主ら、先ほどレーザーで切ったつるを、よく確認したかの?」
「いいえ。」全員が否定しました。
「実はの。確かに一度は切れたんじゃよ。じゃが、その後、すぐに再生しおった。
全く、信じられぬわい。」おじいさんは、困ったような顔をしました。
「とすると、レーザーを使っても、効果は一時的だと。」ガーネは尋ねました。
「恐らくその通りじゃ。」おじいさんは、うなずきました。
「だったら、「火」を使ったら?」私は、ここぞとばかり話に突っ込みました。
「およそ草木など、植物を片付けるのは、昔から「火」と決まっているわ。」
「なるほど、さすがはレミアさん、私たちとは目の付けどころが違いますね。」
ガーネが拍手を送りました。
「本当、そんな事にすぐ気が付くなんて、ひょっとしたら天才かも。」
トラちゃんも拍手喝采です。
「いやあ、わしの孫なもんで。血は争えないの。」
何故か、おじいさんが手を頭の後ろに当てて、照れていました。
「いやあ、それほどでも。」私も、結局同じでした。
こうして、「火」を使う事が満場一致で決まりました。
「じゃが、とりあえず、火炎放射器で試してみたらどうかの。
それで、本当に有効だと判れば、このレイグルで放火してみようと思うが。」
「レイグル自体に、火炎放射器が装備されているんですか?」
「正確には、ロボットアームのオプションとしてあるのじゃ。
これをアームに取り付けて、放火するという次第でな。
左右両方のアームで、一緒に放火すれば、たちどころに燃え尽きるじゃろうて。」
全員が、この作戦にうなずき、実行される事になりました。
私とガーネが最初に、火炎放射器で試し打ちをします。
その後、効果があれば、おじいさんがレイグルから放火するというわけです。
「ねぇ、私はどうする?」トラちゃんが身体を揺らせて尋ねました。
「済みませんね、トラ。今回は下手をすると、火ダルマになる危険もあります。
だから、レイグルに残っていて下さい。
拡声器で、適切なアドバイスなどして頂けると、有難いです。」
そのガーネの言葉に、トラはうなずきました。
「判った。あたしはここでガーネたちを見守っているわ。」
私たちは、火炎放射器を手にしました。
思っていたよりも、ポータブルです。カートリッジを装填して使うタイプでした。
片手で持ち運び可能ですが、放火の際は、両手で支えるようになっています。
「では、行きましょうか。」
ガーネのかけ声で、私は一緒にレイグルから出て行きました。
アルゴラに近付く前に、ガーネは私に尋ねました。
「先ほどは、どうも済みませんでした。あの、お怪我は如何ですか?」
「えっ、ああ、もう大丈夫よ。走り回るのはちょっとだけどね。
まぁ、今回はテストだけだもの、問題無いと思うわ。
いざとなれば、このレイグルに逃げ込めばいいだけだし。」
「そうですね。でも、本当に無理はなさらないで下さい。」
やっぱり、優しい人です。私はそう思いました。
時と場所さえ違えば、やっぱり私がヒロインだったかも。
そんな考えが、私の頭をよぎっていました。
それにしても、この人は一体。
私は、鉄の仮面を被っているこの人の素顔が、とても知りたくなっていました。
私たちは、レイグルから出て、アルゴラと名付けた植物の方に向いました。
前回と違い、私たちはマスクキャップを被っていました。
まぁ、ヘルメットのすごい版だと思っていただければ、幸いです。
これは火を放った場合でも、マスクカバーを覆って顔を防御する事が出来ます。
またマイクとイヤホーンも内蔵されていますので、連絡もバッチシでした。
その他にも、ガーネは知りませんでしたが、私にはもう1つ切り札がありました。
「じゃあ、始めるわよ。」「はい、いつでも構いません。」
私とガーネは顔を見合わせ、うなずき合いました。
「放射!」
私の合図で一斉に、部屋の片側に生えているアルゴラへ、火を放ちました。
外側の一部は、燃えているようです。
ですが、なかなか全体にまでは回っていきません。
私たちが苦戦している間に、アルゴラのつるが、また私の身体に巻きつきました。
「そうはさせないわ。」私は、つるに向けて、火を放ちました。
火炎放射器から放射された炎は、あっという間につるに燃え広がりました。
その結果、わたしは、拘束を解く事が出来たのです。
私の放った炎は、つるを伝わって、上の方にまで燃え広がっていました。
このまま燃え広がれば、アルゴラ本体にまで及ぶ事は間違いありません。
「ひょっとしたら、これでアルゴラを焼く事が出来るかも。」
私はそう期待しました。
ですがその時、思いもかけない事が起こりました。
私の炎がアルゴラの最上部に届く前に、そのつるがプツリと切れたのでした。
そのつるは、炎と一緒に床の上に落ちていきました。
まるでアルゴラ自身が自分が燃えるのを防ぐ為、わざと切断したみたいに。
その後も、驚く事が起こりました。
その切断したところから、2つのつるが分裂したかの如く、生えてきたのでした。
「ウワァ。」そのつるどもが再び、私を襲ってきました。
片方を何とか焼いて止めたものの、もう1つが私を巻き付けてしまいました。
最初のように、天井近くまで吊るし上げられた私は、しかし余裕でした。
切り札をポケットに、入れておいたからです。
私はポケット中の物を、アルゴラの真上に放り投げました。それは生肉でした。
するとアルゴラは、それを別なつるで、捕まえました。
その後、そのつるは生肉を、アルゴラの真上に持って行って落としたのでした。
生肉は、アルゴラの体内に入ったようでした。アルゴラ全体が揺れ動いています。
まるで、消化しているかのようでした。
「やっぱり、食肉植物だったんですね。食べちゃうんだ。」
私は、あれが自分だったらと思い、背筋がヒヤッと冷たくなるのを感じました。
その時でした。私を絡めていたつるが緩み、高さも地上近くに下ろしていました。
私はこの機を逃さず、火炎放射器を使って、火を放ちました。
あっという間につるは切れ、私は地上に降り立つ事が出来ました。
その後、私は自分に絡まっているつるを、大急ぎで外したのでした。
私が苦戦している最中、ガーネもアルゴラに手こずっていました。
ガーネはつるをかわしながら、懸命にアルゴラ本体に火を放っていたのです。
あと、もう少しで、本体が燃えるのが判りました。
私は急いでガーネの元に駆け寄り、アルゴラの同じ場所に火を放ちました。
その結果、幾らも経たない内に、アルゴラ本体が炎上しました。
アルゴラはその燃える炎の中、灰1つ残さず、ゆっくりとその姿を消しました。
「やったー。」私は、ガーネと手をたたき合って、勝利を祝いました。
しかしすぐに、その喜びは消えました。
残りのアルゴラから一斉に、私たちに、つるが伸びてきたからでした。
私たちは、急いでレイグルへと引き返しました。
すると、私たちのイヤホーンに声が届きました。
「こちらの準備は既に出来おる。お前たちはレイグルの中に入りなさい。」
おじいさんの声でした。私たちは急いで、レイグルの中に飛び込みました。
「では、行くぞ。」
おじいさんは、火炎放射器を付けたロボットアームを、動かそうとしていました。
ですが、なかなか動きません。
「どうしたんです。」私は、おじいさんに尋ねました。
「いかん。レイグルがつるに絡まれた。これではロボットアームが動かせん。」
おじいさんがそう叫んでいました。
どうしたらいいの。そう思った私の肩に、ガーネがそっと手を置きました。
「大丈夫ですよ。私が焼いてきましょう。
みんなは、ここに残っていてください。」
そう言って外に出ようとしたガーネに、おじいさんは声をかけました。
「頼むぞ、ガーネ。
あと、その火炎放射器の炎は遠慮なく、このレイグルに当てて構わん。
このレイグルの耐防火機能は、そんな炎ではびくともせん。
熱さも内部までは伝わってこんから、心配する事はないぞ。」
「有難うございます。その言葉を聞いて安心しました。」
ガーネはそう言って、レイグルの外に飛び出しました。
「なるほど。これは大変です。」
イヤホーンからガーネの声が聞こえたので、私とトラちゃんは窓の外を見ました。
部屋の左右の生えている全てのアルゴラから、つるが伸びていました。
そしてそのつるは、レイグル全体に絡んでいました。
ガーネは、左右のロボットアームに絡んでいるつるを、全て焼き切りました。
「おじいさん。ロボットアームは動かせます。火炎放射器を使用して下さい。」
「判った、直ぐに動かそう。ガーネ、おぬしは直ちに戻ってくるんじゃ。」
ガーネの連絡を受けて、おじいさんは、ロボットアームを操作しました。
大丈夫です。今度はちゃんと動き出しました。
ガーネは、それを確認した後、レイグルに戻ってきました。
「お疲れ様。」「ガーネ。無事でよかったわ。」
私とトラちゃんは、ガーネの苦労をねぎらいました。
「よし、準備は全て整った。火炎放射器で、一気にかたをつけるぞ。発射!」
レイグルの大型火炎放射器から、炎が部屋の左右のアルゴラに放射されました。
その炎の勢いは、絶大でした。
全てのアルゴラが、あっという間に炎に包まれ、燃え上がりました。
アルゴラから伸びていたつるも同様です。
レイグルの周囲が一時、火だるまとなっていました。
それでも少し時間が経つと、全てのアルゴラの姿が幻のように消えていきました。
私たちはそれを確認した後、少し経ってからレイグルの外に出ました。
大広間は、ガラーンとしてしまいました。
アルゴラが植えてあった花壇の手前に、くつろげる石壇があるくらいでした。
レイグルの炎で、壁にすすが幾らか付いたいました。
3つの入り口も、今はぽっかり空いています。
「やったわね。」私たちは、満足感に浸りました。
その後、アルゴラが生えていた花壇?をのぞいてみました。
私は、そこにあるものを見つけました。
「これは何。まるで、弓矢の弓みたいなんだけど。」
私は、声を張り上げて、その弓らしきものを高々と持ち上げました。
「こちらにも、ありますよ。」
ガーネとトラちゃんも、反対側の花壇で何かを見つけたようでした。
私たちはレイグルに戻って、見つけたものを検証しました。
私のは、先ほど言ったように、弓のようなものです。
一方、ガーネたちが見つけたのは、明らかに矢の方でした。
「なるほど。弓矢というわけじゃな。
それにしてもこの矢の先端は、なんじゃろ。
まるで、何かをここに差し込んで欲しいかのようじゃな。」
おじいさんのその言葉に、私ははっと、気が付きました。
そして、ある物を持って急いで戻ってきました。
それはあの、ガルガンの消えた跡地に、残っていたものでした。
私は、その溝の部分を矢の先端に差し込みました。
その結果、まるであつらえたように、ぴったりと収まりました。
「なるほど、これはやじりだっだんじゃな。」
おじいさんは感心しながら、そう言いました。
用途は、判ったものの、いつ使ったらよいのか皆目検討がつきません。
とりあえず、また弓矢とともに、レイグルで保管する事になりました。
さてと、日も暮れて、神殿の中は暗くなって来ました。
大広間は、ただでさえだだっぴろいです。
それがこの暗さも加わる事で、不気味さが一層広がりました。
私はレイグルがあってよかったと、今更のようにホッとしました。
「そろそろ、食事にしましょう。」
私がそう告げると、賛成する声が広がりました。
「いいですね。」「では食べようかの。」「お腹空いた。」
私はお母さんでもあるかのように、テーブルにビスケットと飲み物を置きました。
「さぁ、召し上がれ。」
最初の頃は、グズグズぼやいていたのですが、最近は慣れてきたようです。
今日の戦闘で、疲れたせいもあるのでしょうね。
みんな、美味しい美味しいと残さず、食べ終えました。
「では、歯磨きに行って来ます。」「じゃあね。」
ガーネとトラは、洗面所へと行きました。
本当に、歯磨きが好きな人たちだなと、感心しました。
食器類を片付け終わると、他にする事が無くなりました。
後で、明日の予定を決めるミーティングをやるそうですが、時間はまだあります。
それまで、私は読書を楽しむ事にしました。
みなさん。想像がつきますでしょうか。
気持ちの良い天気の、昼下がりの公園にて。
1人の乙女がテーブルに置いた文学書を、ひたすら読んでいます。
1ページずつめくりながら、その内容の展開に我も忘れて読みふけっています。
その乙女は、陽射しを避けるためか、白くてツバの大きい帽子を被っています。
そして暑さを和らげるためでしょうか、白いふわっとした服装を着ています。
その乙女の傍らには、ちょっと洒落たティーカップが置いてあります。
時折、乙女は休憩でもするかのように、そのティーカップの紅茶を啜ります。
その後も目を輝かせ、期待に胸を弾ませながら、続きを読み続けるのです。
私はこんなイメージというか、空想の乙女になっていました。
そして、時が経つのも忘れていたのです。
「ねぇねぇ、レミアお姉ちゃん。何を読んでいるの。」
気が付くとトラちゃんが、私の手に鼻をこすりつけていました
「どうしたの。」私は尋ねました。
「だってさっきから話しかけてるのに、全然返事してもらえないんだもの。」
「あっ、そうだったの。ごめん、ごめん。」
「別に謝る必要は無いんだけど...。それで、どんなご本を読んでいたの?」
「まぁ、ズバリ言うと、オカルトとか超常現象とか言ったようなお話ね。」
「何だ。文学全集とかそう言うんじゃないんだ。」
この猫ったら、私の心の中を、読んだのかしら。
まぁ、別にいいけど...。
「トラちゃん。そんなものはねぇ、もう私ぐらいの年...。」
「どうしたの?」「えっ、別に何でも無いのよ。」
アハハハハ。笑ってごまかせ、私はレミア。
私は、トラちゃんの悪気は無いであろう言葉を、さらりとかわしました。
「で、何か面白いネタでも、ありましたか。」
いつの間にか、ガーネが隣に座っていました。
「えっ、まぁ、少しは。」「是非、お聞かせ下さい。」
「わしも聞いておきたいの。」おじいさんもそう言いました。
「ねぇ、ガーネ。どうしたの。」
「トラ。これからレミアお姉ちゃんが、面白いお話を聞かせてくれるんだよ。」
「へぇ、楽しみ。」
パチパチパチ。いつの間にか、私は拍手で迎えられました。
「えっ、何。みんな急に集まって、どうしたんですか?」私は、そう尋ねました。
「少し前に、後で、明日のためのミーティングをするって言ったと思うがの。」
おじいさんはそう答えました。
「えっ、もうそんな時間ですか?」
私は慌てて、時間を確認しました。確かにもうそんな時間でした。
「じゃあ、ミーティングを始めましょう。」
私がそう言うと、クレームがあちらこちらで、起こりました。
「私は、本の話を聞きたいです。」「わしもじゃ。」
「レミアお姉ちゃん、お願い。」
私は、みんなの要望をかわし切れませんでした。
なので、私は話を始める事にしました。
「実は、魔女についての話なんですが。
魔女って言うのは魔族で、神よりもむしろ悪魔に近い存在なんだそうです。
順番から言えば神:神族→王族→人族→魔族:悪魔の順なんです。
王族は人族よりも、神族に近い存在として定義されています。
多分、遠い昔、神と王族は何等かの関係があったからとの事でした。」
「フムフム。それがどうかしたかの。」おじいさんは尋ねました。
「この説が正しいとするとですね。
アイリスを正神ラムダが受け入れたのは、極めて有りそうな話なんですよ。
アイリスは、王女。つまり、王族ですから。
神に最も近い存在なため、受け入れられたと考えても、不自然じゃないんです。
過去にも、そんな事例が古文書の中には、あるらしいのです。
ところが、魔女ルーディアの場合は違います。
魔女は、魔族です。神にもっとも遠い存在なんです。
その彼女が命を捧げたからといって、正神ザイドが受け入れるんでしょうか?」
「なるほど。確かにそう言われてみれば、不自然ですね。
で、それに対して、レミアさんは何か答えがお有りになるんでしょうか?」
ガーネのこの問いに、私は思わず苦笑しました。
「いえ、まだ何も。ただそうじゃないかと疑問に思っただけです。」
それからも話は続けましたが、やがてだいぶ時間が経ってしまいました。
「まぁ、神と悪魔の話は、これくらいにしておこう。
みんなも疲れておるだろうから、ミーティングをさっさと済ませてしまおう。
と言っても、明日からの行動について、1つ決めて置きたい事があるだけじゃ。
じゃから、すぐ終わる。心配せんでよい。」
このおじいさんの提案により、話題は変わって行きました。
「さてと、あの大広間には、3つの出入り口があるがの。
どこから行ったらよいと思う?」
おじいさんは、誰ともなしに尋ねました。
ですが、全員、これといった意見はありませんでした。
「では、レイグルの運転手でもある、わしが勝手に決めようと思う。
明日は、あの赤い出入り口を、くぐるとしよう。それでよいかの?」
「異議なし。」全員が賛成しました。
「決定じゃな。では、簡単だが、今日はこれでミーティングを終わるとしょう。
みんな、今日1日、本当に御苦労じゃった。」
ミーティングを終え、私はガーネとトラを、レイグルの寝床に案内しました。
「おじいさんと私は、こちらの2階建てのベッドを使う事にするわ。
だから、ガーネたちは、反対側のベッドを使って欲しいの。
もちろん、寝袋もあるから、あの大広間で寝たいなら、それもいいけど。」
私は、ガーネとトラちゃんにそう言いました。
「トラ。どうしましょうか?」
「うーん。あそこは特に何も無いし。やっぱりレイグルで寝るわ。」
「では、そうしましょう。」
ガーネたちの今夜の寝床も決まり、私はテーブルに戻りました。
そして読みかけていた本の続きを、また読み始めました。
第8話「正と邪の女神。」3つめですね。(終)
今回のお話は、第8話「正と邪の女神。」の第3話です。
まぁ、面白いと思って頂ければ、幸いです。
皆さん、連日連夜、蒸し暑い日が続きますが、体調は如何でしょうか?
こちらは何とか生きていますので、ご安心下さい。
涼しい日が来るといいのですが。
なるだけ、1週間に1回ぐらいは、投稿したいのですがね。
今度はいつ頃になるのでしょうね。
気が向いたら、また続きを書いてみたいと思います。
では、また会える日を。See You Again.




