9話 出会い
「……どなたですか?」
ジュリアは男から見えないようにさり気なく、ハンドバックに付けている防犯用のブザーを握った。
「ジュリアさん、落ち着いてください。私は決して怪しい者ではありません。」
ジュリアの行動を読んだかのように男は慌てた様子でジュリアに自分の事を話しを始めた。
「今晩は。初めまして。僕はスーヴェル=アル=フォンスといいます。以前から貴方の…ジュリアさんのことを見ていまして………先日、見た週刊誌にジュリアさんの離婚の記事が載っていたので、それで心配になり此方を訪ねさせて頂きました。ジュリアさんにとってご迷惑な事は重々承知の上ですが………僕は貴方が心配なんです。」
そう言って男は自分の事の様に悲しそうな顔をした。
「ファンの方が心配してくださっていることは大変ありがたいですけど。自宅まで来られるのは困ります。」ですから帰ってくださいと暗に伝えた。
男もそれを察したようだったがドアの前から引く様子は見せず、ただ静かにジュリアを見ては何かを言いたそうにしては口を噤んだ。
「いいかげん、ドアの前から退いて頂けますか。」
ジュリアがはぁとため息を吐きながら言うと男は何かを決心した様子で「ジュリアさん!」と男の容姿からは考えられないような大きな声を出した。
「……なんですか?。」
「あっ…ああっ…あのっあ…。」
「はい?」
「あっ…あの、ですね。」
「……はい。」
「お願いがあります!」
そう言って男は頭を下げた。