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婚約破棄された地味な結界調整士ですが、追放先の辺境で静かに暮らしたらなぜか感謝され続けています  作者: 篠宮しずく


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第37話 届いた手紙

 数日後、リーナ宛に一通の手紙が届いた。


 差出人は、隣の隣村に嫁いだ幼なじみの名だった。


 封を切る前から、内容は察せられた。


 宿の裏で、リーナは静かに読み進める。


 ――結界を薄くした。

 ――夜は早く切り上げている。

 ――でも、なんだか落ち着かない。

 ――そちらは、どうやっているの?


 助けて、とは書かれていない。

 責める言葉もない。


 ただ、分からないとだけ、書かれている。


 リーナは手紙を折り直し、しばらく膝の上に置いた。


「……アリアさん」


 呼ばれて、アリアは隣に座る。


「読んでも?」


「はい」


 短く目を通し、すぐに返す。


「どう思いますか」


 リーナは、すぐに答えられなかった。


「形は、似せています。でも……」


「でも?」


「急いでいます」


 自分の言葉に、少し驚く。


「薄くすることが目的になっている」


 アリアは、否定しなかった。


「教えた方が、いいでしょうか」


 迷いが混じる声だった。


「教えれば、早くなります」


「……早く?」


「答えを、急ぎます」


 リーナは黙り込む。


 手紙の向こうにいる幼なじみの顔が浮かぶ。

 困っているわけではない。

 ただ、不安なのだ。


「……返事は、出します」


「ええ」


「でも、やり方は書きません」


 それが、答えだった。


 夕方、リーナは便箋を広げる。


 ――夜は、少しずつ変えたよ。

 ――昼の無理を減らした。

 ――急がなかった。

 ――それだけ。


 短い手紙だった。


 夜、結界は静かだった。

 外からの圧もなく、灯りは内側に寄っている。


 リーナは、便箋を封じながら呟く。


「……教えない」


 アリアは答えない。


 教えないことが、冷たいわけではない。


 結界は今日も、薄く村を包んでいる。

 急がせないまま。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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