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感情CUBE  作者: 刻咲 造花
9/27

9話 大人になったら



・「ちょっと!もっと揺らさないように歩いてよ!」

・「うるせー!ガキは黙ってろ!!」

船内のロビーで楽羅と麗華の口喧嘩が聞こえてくる。


・「あっ!いたいた!」

2人の元に小春が走ってやって来る。

・「やっと見つけた。勘解由くん大丈夫だったの?」

・「ああ。あんな奴ら大したことねぇよ。」

・「まぁ私の作戦のおかげだけどね!」

麗華がひょこっと顔を出しながら話に割り込む。

・「はぁ?あんな作戦なくてもよかったんだが!俺がぶん殴ればそれでしまいだったのに。回りくどいことさせやがって。」

・「考えが脳筋ね。らっくんは後の事何も考えてないでしょ。頭の良い私に嫉妬してるんだ?」

・「はぁあ?!!!!」


・「ちょっと待って待って!!」

小春がたまらず2人の口喧嘩に割って入った。

・「勘解由くん、なんでそんなにしおらしくいたいけな少女相手にムキになってんの?」

・「はっ、しおらしい?いたいけ?こいつがか?」

・「何よ!!私は可愛いし完璧よ!!」

2人の口喧嘩は終わらない。

・「はぁ。これじゃどっちが子供なんだか……。」

小春は呆れた顔で頭を抱える。

・「(それにしてもこの子、さっきとはまるで別人だな。第一印象は品のある聡明なお嬢様という感じだったけど、今はどこにでもいる元気な女の子って感じ……。)」


そんな3人の元に、

・「ここにおられましたか。麗華様。」

バルドリックが現れた。

・「あっ!バルドリック!」

・「バルドリックさん!」


麗華は楽羅の背中から降りてバルドリックに駆け寄った。

・「無事で何よりです。」

いつも無表情のバルドリックが安堵の表情を見せたのが見て取れた。内心ではかなり心配していたのだった。

・「勿論よ。」

麗華もそれが分かっていたからあえていつも通りに振舞った。

 

・「私とは入れ違いだったみたいです。船内に大きな音が響いたのを聞いてそちらに向かったら、既に追っ手が倒れていて警備兵に連れて行かれてました。」

・「あっ!その音私も聞いたわ!」

小春が言う。

・「ほらぁー、みんなに聞かれてるよ。らっくんのせいだからね。」

・「ちっ、知らねぇよ。」


・「それはそうと、勘解由さん麗華様を守って頂きありがとうございます。」

バルドリックは深々と頭を下げた。

・「いっ、いやっ大したことねぇって。まぁこのクソガキのおもりは大変だったがな。」

・「むぅ……」

麗華は可愛らしく楽羅を睨む。

 

・「んで、クソガキ。なんで追われてたんだよ。後で教えるって言ったよな?」

・「それは私から説明します。ここではなんなんで場所を変えましょう。」

楽羅と小春はバルドリックについて行った。



 

客室


・「うわぁー広ーい!」

・「なんだか俺らの部屋とは大違いだな。」

2人は麗華とバルドリックが泊まっている部屋へと案内された。

・「当たり前よ!私は凄いんだから!えっへん!!」


 

・「それでは巻き込んでしまったお2人に説明させて頂きます。先程のフードを被った連中は、麗華様の座を狙っている者達です。つまりユヴェーレングランツの経営権を奪うために麗華様を狙っていたのです。」

・「経営権を?それをする為にあんな派手な動きをするものなんですか?」

小春が聞き返す。

・「いえ。今までも麗華様の邪魔をしてくる輩はたくさんいましたが、ここまであからさまに命を狙って来たのは初めてですね。」

・「何故急に?」

・「恐らく麗華様がドイツを離れると言う情報が漏れてしまったのでしょう。この船はもう既に治外法権ですからね。相手が大胆な行動をしてきたのもこれが理由でしょうね。」

・「…………。」

・「…………。」

2人はバルドリックのこの言葉に非日常であることを改めて突きつけられた。

・「んで?なんでこんなガキがそんなでっけぇ会社の大将やってんだ?」

・「……麗華様のご両親はもうこの世にいないのです。これは世間には公表しておりませんが関係者のなかでは周知の事実です。ご両親は………不慮の事故で、」

・「バルドリック。別に隠さなくていいわ。殺されたの。お父様もお母様も。」

・「!!!…………。」

・「!!!…………。」

麗華のその衝撃的な一言に楽羅と小春は言葉が出なかった。

 

・「だから私が守るの。お父様とお母様が残したものを。悲しくないって言ったら嘘になるわ。だって私まだ子供よ。でも私にはバルドリックもついてるから。絶対に負けない!」

・「…………(なんて、強い子。)」

小春は痛ましい気持ちになった。


・「そっか。お前はいいクソガキだな。」

楽羅はそう言いながらわしゃわしゃと麗華の頭をなでた。

・「もぅ!もっとマシな褒め言葉はないの!」

麗華は強い言葉とは裏腹に、隠していたが嬉しそうな表情をしていた。


・「でもなんでこの船に?危険なことは分かっていたはずじゃないの?」

・「ビジネスよ!もっと会社を大きくするの!ビジネスには嗅覚が大事なの!この先の事は必ず役に立つわ!」

・「ふーん。ガキが立派なことを。ガキは公園で遊ぶのが仕事だろうに。……あっ、そう言えばもうひとつ。なんでお前、追っ手から逃げてる時あいつらの場所が分かってたんだ?」


・「いっひひひひ。」

楽羅の質問に麗華は笑みを浮かべる。

そして、

 

・「じゃーーん!!」

そう言いながら自分の眼帯をめくった。


・「え?!!!」

・「あっ!!!」

2人は驚いた。


・「CUBE!!!!!」


そう麗華の眼帯の下にはCUBEが埋め込まれていたのだ。

・「貴方達と同じよ。私もCUBE持ちなの。これはCUBEの義眼。隠しているだけで勿論見えてるわ。」

それは、立方体の変わった形の義眼であった。

・「なるほどな。これで合点がいった。」

 

・「そう、私は半径200m圏内の人間の視力を共有できるの。これが「同情のCUBE」の力、「貴方と同じ景色を見て(ノゾキミ)いたい」よ!!」

 

・「へー。だから敵の居場所が常に分かっていたのか。…………ん?あっ!!ってことはてめぇ!!!」

・「ふふふ。だから言ったでしょ!お胸の好きなお兄さん。」

・「俺の視力を共有してやがったな!!!まぁいい!この際だから言っといてやる!男はなぁ!全員、胸のでけぇ女が好きなんだよ!!!」

・「全員って……それ暴論よ。勘解由くん。」

・「……らっくんのえっち。」

・「ははーんだ!男は皆変態だ!!なぁ?バルドリックさん??」

・「ええ。少なからず単純ではありますね。」

・「バルドリックさんまで。はぁ、まったく大人気ないんだから。」


・「まぁ何はともあれ、麗華ちゃんとバルドリックさんのことが少しわかりました。……通りでバルドリックさんも強いはずですね。」

・「あ、私はCUBE持ちではありませんよ。」

・「えっ?………………あんなに強かったのに?」

小春はポカンと驚いた。


・「まっ、一件落着ってことで。気になってた事も分かったし、俺はもう行くわ。」

・「勘解由さん改めてお礼を言わせてもらいます。ありがとうございました。この先何かお困り事などありましたら言ってください。少なからず力になれると思います。」

・「おーけー、おーけー。そんときゃよろしくなぁー。」

楽羅は振り返りバルドリックに背を向けて手を振りながら答えた。

・「じゃあ私もこれで失礼します。麗華ちゃんまたね!」

小春も楽羅を追いかけた。


・「……………………。」


歩いている楽羅の服がぐっと下に引っ張られた。

・「んぁ?」

振り返るとそこにはもじもじした姿の麗華がいた。

・「…………。」

・「なんだ?」

・「らっくんは……」

・「あ?なんて?」

楽羅はしゃがみ混み麗華の目線に合わせる。


・「らっくんはやっぱりおっ、お胸が大きい人が好きなの?」

・「はぁ、まだ言ってんのか。」

楽羅は呆れた顔をする。

・「もっ、もし私が大人になって……お胸も大きくなったら…………私のことすっ、す……、」

・「何馬鹿なこと言ってんだ。まだ大人になんてならなくていい。ガキはガキらしくしとけ。」

楽羅はスッと立ち上がり麗華に背を向けて歩きだした。


麗華はその後ろ姿を見つめながら切なそうな顔をする。

・「(麗華様のあんな子供っぽい表情久しぶりに見ました。ずっと、早く大人になろうとしてましたからね。それだけ勘解由さんに心を許したという事なのでしょうか。)」


 

楽羅はピタっと立ち止まる。


・「麗華。」

・「…………。」


・「また遊んでやるよ。」


楽羅のその一言で麗華の表情はパァっと明るくなった。

・「絶対!!絶対だよ!!!!」

・「はいはい。じゃあな〜クソガキー。」


楽羅は少し怠そうに再び歩き出した。

麗華は嬉しそうにバルドリックの元に走った。



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