7話 宝石
豪華客船が出発してから10日が経っていた。
・「あー。暇だなぁ。トランプももう飽きたしさー。」
楽羅が雑にトランプをテーブルの上に投げ捨てる。
・「そう?私はこうやって3人で過ごすの好きだよ。」
小春がトランプを集めながら言った。
・「あっ、タバコ切れたわ。買ってくる。」
茜は今の生活に慣れてるかのように部屋から出て行く。
・「なんかさぁー、拍子抜けなんだよなぁ。もっと、こう、悪の組織とか、輩とかとさバチバチやるもんだと思ってたんだけど。スリルが足んないつーかー。」
・「平和が何よりだよ。」
・「はぁ。」
楽羅はでっかいため息をつく。
・「暇なら白雪さんのところ遊びに行く?」
・「いいよ。あいつ酒飲むとやたらベタベタしてくるし。」
少し飽き性なところがある楽羅がこうなるのも無理もなかった。豪華客船の中はたくさんの娯楽に溢れていたが、やはり海の上。世界最大の広大さの中にもかかわらず、世界一閉塞的だからだ。これら変わらぬ景色や変わらぬ状況が飽きや退屈さを加速させていた。
その日の夜。
屋外デッキ
夜風に当たりながら海の遠くを眺める楽羅と小春。
・「お?なにか見えね?」
・「ホントだ。光だね。」
それはニュージーランドの街を灯す光だった。
・「あれ?思ったより早く着いたね。あと4、5日はかかると思ってたのに。」
小春は少し不思議そうにそう言った。
・「あれがニュージーランドか?」
・「多分そうだと思う。」
しばらくして豪華客船がニュージーランドの港に到着した。
滞在時間は3時間程で補給だけを船員が済ます。ここで船を降りる者はいなかった。理由は明白である。船に乗っている者の全員の目的地が同じだからだ。
・「なー?たくさん人乗って来てね?」
・「あっ、ホントだ。」
楽羅はデッキから外を眺めながら小春に言った。
2人の見る先にはざっと数百人はいるであろう人々。それがどんどん船へと乗り込んでいた。
・「あれも私たちと同じよ。500人はいるらしいわ。」
水着姿の白雪が2人の後ろから話しかけてきた。
・「ん?あぁ、白雪。」
・「あぁ、ってなによ。こんな美女に話しかけられてるんだからもっと喜びなさいよ。」
・「寒くないんか?プールなんて入って。(ってか、胸でけぇな……。)」
・「大丈夫よ、温水だから。楽羅くんも一緒にどお?」
・「いや、俺はいいや。遠慮しとく。」
・「なんだ、連れないのね。」
・「それより、なんであれが500人もいるって知ってるんだ?」
・「簡単よ。この船の船長が言ってたの。」
・「船長?知り合いか?」
・「うふ♡一晩一緒に過ごしただけよ。」
白雪は妖艶な笑を浮かべる。
・「一晩って……」
楽羅は白雪の言葉にどんな反応をしていいか分からず気まずそうにする。
・「合ってるよ。」
白雪はニヤニヤとからかうような表情で楽羅を見る。
・「えっ?」
・「だから楽羅くんが想像してる通りだってこと。」
・「へっ、へー。別に好きにしたらいいんじゃね。」
・「楽羅くんもする?」
・「ちょっと白雪さんっ!!!」
たまらず小春が遮る。
・「はっ、はぁ?!!なんだそれ?」
・「あら、残念。ふふふ。…………冗談はさておき、この船の中で行先について1番詳しいのは誰だと思う?」
白雪は話を切り替えて、楽羅と小春に質問をする。
・「あのバチバチ装備してる奴らだろ?」
・「船長さん?」
・「小春ちゃん正解。」
・「だから……」
小春は少し恥ずかしそうに言葉を止めた。
・「そっ。だから私は船長に近づいたの。情報は武器になるわ。いくらあっても構わないから。」
・「でも、よく話してくれたな。」
・「ええ。ペラペラと話してくれたわ♡私にかかれば造作もないことよ。」
・「それで?俺らにもペラペラ喋ってくれるのか?」
・「もちろんよ。私たちお友達でしょ?(まぁ全部は言わないけどね……)」
・「別に友達じゃねぇだろ。」
・「楽羅くん、ひどーい!」
・「白雪さん、それじゃあ、やっぱり……」
・「ええ、間違いなくいると思うわ。CUBE持ちが。」
・「なるほどなぁ……ははっ!やっと楽しくなってきやがった!!」
・「もう!勘解由くんみたいに血の気が多い人ばかりじゃないんだからね!」
・「……でも小春ちゃん、楽羅くん、ここからは本当に気をつけた方がいいわ。ほら見て、明らかに危ないオーラを放ってるやつらがいるみたいよ。」
3人は船の上から乗船口の方を覗き込む。するとたくさんの群衆の中に深くフードを被って顔を隠す者や、同じ衣装を着てグループを作っているだろう者達が、ここから見て分かった。
そして、
再び豪華客船が出発する。
・「おっ、出発みたいだな。で、人工衛星の墓場だっけか?そこまではどれくらいで到着するんだ?」
・「確か10日程って船長は言ってたわ。」
楽羅の質問に白雪が答える。
・「でもなんだかおかしいですよね?本来ならもっと日数がかかるはずなんですが……距離的に……。」
小春が首を傾げながら言った。
・「この船、特別な装置を使ってるみたい。速さは勿論、悪天候の日でもあまり揺れを感じないでしょ?船長ですらあまり詳しくは知らないみたいだったけど、おそらくCUBEに関する力だと私は思ってるわ。」
・「なるほど。それだとうなずけますね。」
・「ほーん。」
楽羅は2人の話に飽きてぼーっとしながら返事をした。
・「ねぇ、お兄さん。どうしてさっきからお姉さんのお胸ばっかり見てるのです?」
3人の所に突然女の子の声が聞こえてきた。
・「はっ!!はぁあ?!!!!!」
3人が声のする方を見ると、そこには黒のフリルのドレスを着て眼帯を付けているツインテールの小さな女の子と、その後ろに平凡でパッとしない顔立ちの男が立っていた。
・「はあ?!!おい!ガキ!!テキトーなこと抜かしてんじゃねぇぞ!!!」
・「テキトーではありませんわ。適当なのです。貴方の視線がこの水着のお姉さんのお胸に釘付けだったのです。これは事実です。」
・「あらあら♡」
白雪はニヤニヤしながら楽羅を見る。
・「ちっ、違ぇーよ!ガキっ!そんなん分かんねぇだろ?!!」
・「分かりますわ。」
楽羅と女の子の言い合いの中、後ろから男が、
・「麗華様。今はそのくらいで。」
止めるように割って入ってきた。
・「そうね。バルドリック。」
女の子は素直に男の言うことをきいた。
・「いきなりすみません。私はバルドリックと申します。そしてこちらは、ドイツのジュエル会社、ユヴェーレングランツの最高経営責任者 貴宝院 麗華 様でございます。」
・「えっ???」
3人は男の発言に驚き目を丸くしてお互いの顔を見合わせた。
そして再び少女を見る。
・「ゆっ、ユヴェーレングランツの最高責任者?まさかこんなに可愛らしい女の子がやってたなんて……信じられないわ。」
白雪が言う。
・「ユヴェーレン?なんだそりゃ?」
楽羅は分かっていないようだ。
・「ユヴェーレングランツ。世界でも有名で多くの希少な宝石を取り扱っている会社だよ。本社はドイツだけど日本人の貴宝院グループがやっている企業なの。勿論日本にも支社があるよ。」
そのようなことに疎い楽羅に小春が教えてあげた。
・「ふーん。このガキがねぇ。」
楽羅は麗華に顔を近づけてまじまじと見た。
3人が驚くのも無理もなかった。なぜならこの目の前に立っている可愛らしい少女が9歳という若さで会社のトップをやっているのだから。
麗華はじっと楽羅の目を見つめた。
・「なっ、なんだよ……」
すると麗華はいきなり楽羅の腰の辺りにぎゅっと抱きついた。
・「ん??」
その反動で楽羅の頭が少し下がる。
シュッ!!
楽羅の頭の上を何がが通った。
ガッ!!
それが何かは直ぐに分かった。楽羅の目線の先にはナイフが壁に刺さっていたのだった。
・「はぁ?!!」
楽羅が振り返ると深くフードを被った連中が楽羅達5人を取り囲んでいた。
そして、そいつ等が一斉にナイフを投げてきた。
・「おいおいっ!!(狙いはこのガキか?)」
パンッ!!!
その音共に、ナイフが弾け飛ぶ。
楽羅の 拍衝 だった。
拍手によって発せられた衝撃波がナイフを防いだのだった。
キンッ!キンッ!キンッ…………
ナイフが床に落ちる。
・「何が何だか分かんねぇがっ!!おっさん!!このクソガキ借りるぜ!!!」
そういうと楽羅は麗華を肩に担ぎあげた。
・「ちょっ!!!」
麗華は驚く。
・「しっかり掴まってろよ!!!!」
バッ!!!!
なんと楽羅は麗華を担いだまま、デッキから下の階へと飛び降りた。
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