6話 忠告
・「てめぇこそなんでいんだよ!!!楽羅!!!」
茜は悪態をつく。
・「あぁ?こっちが先に聞いてんだろがっ!」
楽羅も同じように悪態をつく。
・「なんでって、あれに乗るからに決まってんだろがっ!!」
茜は巨大な豪華客船を指差す。
・「はっ!お前まさかCUBE集めに行くつもりか?だったらやめとけよ!弱ぇーんだからっ!」
・「おいおい、お前もしかしてあれ、勝ったつもりでいるわけじゃねぇよな?おめぇの攻撃なんて痛くも痒くもなかったんだがな!!!」
・「負け惜しみかよっ!」
・「はぁ?あん時、小春が邪魔しなけりゃお前死んでたからな!!」
・「ほぉ?じゃあやってみろよ!!!!」
・「ああ!いいぜ!その喧嘩買ってやるよ!!!!」
ガシッ!
ガシッ!
2人は胸ぐらを掴み合い、
・「俺をがっかりさせんなよ、茜!!!!!」
・「上等だ!楽羅!!!!!!」
拳を振り上げる。
・「ストッーーーーーーーープ!!!!!!!!!」
割り込んで来たのは小春だった。
・「ちょっと!!あんた達また喧嘩してんの?やめてよね!!!!」
・「だから、邪魔すんなよ!小春!!」
・「そうだよぉ!今からこのクソ楽羅の肋骨をもっかいボキボキにしてやんだから!!」
・「ぁんだとぉお?!!!」
・「や!!!め!!!て!!!!!!」
小春は大声を出す。
・「…………。」
・「…………。」
その声を聞いて2人はなんだかゾッとした感じがして黙り込んだ。
・「勘解由くん目的を見失わないで。今からこの船に乗らなくちゃいけないんだから。ほら周り見て、警備の人に怪しまれているから。それに茜くんもここにいるってことは同じ目的でしょ?」
・「ちっ、」
・「まぁ、そうだが……」
2人は小春に怒られて不貞腐れた態度をとった。
・「ほら、2人とも行くよ。」
小春は2人の手を引っ張りながら乗船口に向かう。
・「おいっ、小春、自分で歩けるって。」
・「いいから!」
小春は乗船口で感情の箱庭への招待状を見せる。
受付の端には装備を整えた警備兵がいる。
楽羅はそれを横目に豪華客船に入った。
・「うおっ、すげぇー。」
楽羅は船内を見て驚いた。煌びやかな装飾に沢山の人々、今まで関わりの無かった景色だ。
・「ふっ、田舎もんかよ。」
茜がそれを見て鼻で笑った。
・「んだこらぁあ!」
・「はいはい。」
小春が慣れたように宥める。
しばらくすると、
ブゥーーーー!!!!!!
豪華客船が大きな汽笛を鳴らしながら港を出発し始めた。
3人はその様子を屋外デッキで見ていた。
・「うぉ!すげ〜!!」
・「はぁ、こんなんで喜ぶなんて貧乏くせぇな……」
またしても楽羅を小馬鹿にする茜。
・「てめっ、また馬鹿にっ!ってかなんでお前も一緒にいんだよ!!どっか行けよ!!」
・「仕方ないだろ、知り合いがお前らしか居ないんだから。」
・「はははっ!!お前怒ってばっかだから友達少なそうだもんな!!俺が友達になってやろうかぁ?」
楽羅は最大限の嫌味を込めて言った。
・「(あっ、また…)」
小春がそれを見て、すかさず止めようとした。
・「ぁんだコラぁ!!……よろしくお願いします。」
スッ……
だが茜は予想外の言葉と共に手を差し出してきた。
・「おっ、おおぅ、…………。」
楽羅は思ってもみなかった答えに戸惑いながら茜の手を握った。
すると、
・「じゃあ……よろしくなぁ!!マイメン!!!」
茜はグッと力を込めて楽羅の手を握る。
楽羅はそれに対して、茜を睨めつけながら、
・「ああ!!よろしくぅ!!腐れ縁だけどなぁあ!!!」
強く握り返した。
小春はその様子をなんだか嬉しそうにニヤニヤしながら傍観していた。
・「それにしてもこの船どこに向かってんだ?」
楽羅が小春に聞いた。
ギクッ!
・「(あれ?もしかして私何も伝えてなかったっけ?)あのっ、えっと……、」
小春は楽羅にしっかりとした説明をしてないことに今更になって気づき焦りだした。
・「うふふ。あなたそんな事も知らずにこの船に乗っていたの?」
急に後ろから小春とは別の女の声が聞こえる。
・「??」
3人はその声の方を振り返る。
そこにはカジュアルなドレスを着た女が立っていた。
ドレスは胸元が空いていて、大きな胸が強調されている。
ほのかに香る香水の匂い。軽いウェーブのかかった長い髪。潤いのある艶やかな唇。その姿からは大人の色気を感じる。
・「割り込んじゃってごめんなさい。あまりにも面白いことを言うからつい。あなたお気楽さんなのね。」
・「あんた誰?(……でかいな。Gいや、それ以上か、)」
楽羅はつい胸元に目がいってしまう。
・「私は白雪 莉乃。そうね、これ見せたらわかるかしら……」
ググ……
白雪は空いた胸元の谷間からネックレスを引っ張り出した。
・「!!!」
それを見るや3人は身構えた。
なんとそのネックレスにはCUBEが付いていたのである。
・「うふ。そんなに身構えないで、何もしないわ。でもその反応は正解よ。……だけどあなた達そんなにCUBEを見せびらかしてたらダメじゃない。」
・「はっ!関係ねぇよ!もし襲ってくるやつがいたら正面から叩き潰す!」
茜が強気でそう返した。
・「あら、頼もしいのね。でもホントに気をつけた方がいいわ。あなた達2人……」
白雪は楽羅と茜を指差す。
・「あなた達招待状持ってないでしょ?なのに何故ここに入れたと思う?」
・「…………。」
・「…………。」
・「それはあなた達がCUBE持ちだと、ひと目で分かるから。……この船には約2000人が乗ってるわ。ほとんどはCUBEの事なんて知らない一般人。と言っても、感情の箱庭への招待状を持っているってことは何かしらの理由はあるはず。大企業の上層部、政府の要人、裏の組織、とかね。……つまり何が言いたいかと言うと、結構見られてるってこと。」
・「なんでそんな事教えてくれるんだ?」
楽羅の質問に白雪が答える。
・「なに、CUBE持ちのよしみで色々説明してあげようと思って。…………それにあなたの顔タイプなの。それだけじゃだめ?」
・「はっ、はぁ?何言ってんだ!」
・「ふふっ、意外とウブなのね。」
楽羅は顔を赤くしながら、
・「でっ、でっ!結局この船はどこに向かってるんだ?」
話を元に戻した。
・「人工衛星の墓場、ポイント・ネモ よ。」
・「人工衛星の墓場?」
・「そう。そこは最も陸地から離れた海の地点で人工衛星など、使用済みの宇宙機を捨てる場所として使われるの。文明から最も遠い場所。なんだか怪しいわよね。」
・「はーん。つまり未開の地ね。面白そうじゃねぇか。ん?…地?さっき海って言ったよな?ってことは海のど真ん中ってことだよな?そこに何かあんのか?」
・「そこまでは私も行ってみないと分からないわ。今分かっているのはそこが目的地ということだけ。……まぁ長旅になるのは間違いないから気長にこの豪華客船を楽しみましょ。」
・「長旅?」
・「ええ。まずはニュージーランドまで行って、そこで補給を行うわ。そしてそこから人工衛星の墓場まで行くのよ。多分1ヶ月くらいかしらね。」
・「1ヶ月!!!!」
楽羅はかなりの驚きを見せながら小春を見た。
・「………………。」
小春は気まずそうに下を見ている。
・「言うの忘れてた。ごめん。」
・「忘れてたって…………。」
・「ふふっ、ホントに何も知らされてなかったのね。あなた達面白いわ。どうせ顔を合わせることが多くなるんだから仲良くしましょ。そういえばまだ名前を聞いてなかったわね。」
・「楽羅だ。」
・「茜。」
・「美甘 小春です。」
3人は名前を名乗った。
・「みんな素敵な名前ね。歳はいくつなの?」
・「20。」
・「21。」
・「18です。」
・「なんだ、歳下かよ。ガキが。」
茜が楽羅に向かって言った。
・「あ?たった1歳しか変わんねぇだろが!!」
・「はいはい。」
小春も2人の扱いに慣れてきていた。
・「あんたは?」
・「??」
・「歳だよ、歳。」
・「楽羅くん。レディに歳を聞くなんて失礼よ。」
・「あんたが先に聞いてきたんだろが!」
白雪はグッと楽羅の顔に自分の顔を近づけ、
・「あなたよりお姉さんってことは教えてあげる。それ以上は秘密。だけどぉ、歳以外だったら色々教えてあげるわよ。色々。」
楽羅の胸の辺りをさすりながら言った。
・「はっ、はぁ?!!」
恥ずかしがる楽羅の姿を小春は無言で見ていた。
すると、
・「あれぇ?さっきから気になってたんだけど小春ちゃんもしかして、ヤキモチ妬いてたりする?」
次は小春の顔にグッと白雪は近寄った。
・「そっ、そんな事ないですっ!!」
・「小春ちゃん、安心して。私、女の子も好きだから。」
白雪は小春の唇に指で触れながらそう言った。
・「わっ、わたしっ、は、」
・「ふふっ、可愛い。まっ、からかうのはこれくらいにしてっと。ただ忠告しておきたかっただけよ。この船何が起こるか分からないわ。感情の箱庭に着く前に……、なんてことも有り得る話だから。………………それじゃあ私は行くね。水差してごめんね、BARでお酒飲んでることが多いと思うから寂しくなったらいつでもおいで。」
そう言い残して白雪は去って言った。
・「…………。」
・「…………。」
・「…………。」
3人は黙って白雪の背中を見送った。
確かに。と3人はそう思っていた。この煌びやかな豪華客船の非日常感のせいで忘れていたがこれから先何が起こるか分からないのだ。
・「って小春!!聞いてねぇぞ!!」
・「ごめんっ!ごめんって!!」
楽羅は小春の説明不足に文句を言う。
・「謝ってんだから、別にもういいだろ。それに何も知らない馬鹿が悪い。」
・「んだコラぁあ!!!」
・「わかった、わかった。ホントに2人は仲が良いよね!」
・「仲良くねぇ!!」
・「仲良くねぇ!!」
楽羅と茜は同時に言った。
・「はははは!」
喧嘩する2人。それを笑いながら眺める小春。
豪華客船は晴れた空の下を優雅に進む。
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