19話 勢力図
・「じゃあ説明すっか。」
竜胆が話し始める。
・「まずは俺らについてだな。俺らはこの国で自警団をやっている。その名も「正道組」だ。」
・「自警団?警察じゃないのか?」
楽羅が聞き返す。
・「そうだ。この国には警察がいねぇ。訳は後で説明すっが、警察がいねぇと国はどうなる?」
・「まるで無法地帯だな。」
茜が答える。
・「その通り。……でだ、無法地帯のこの国にもたったひとつだけ法律が存在するんだが。」
・「ひとつ?確かにここに来る前に独自の法律があるとは言われたけど……それがひとつだけなのですか?」
小春が質問をする。
・「そうだ。それが…………」
・「感情の儘に。」
・「感情の儘に?」
・「これが唯一の法律だ。……つまり全ての感情が等しく同価値に扱われる。どういう気持ちを抱こうが、どんなことをしようが罰せられることは無い。」
・「なるほどそれなら法律はほぼ無いに等しい。だから法律を守る警察がいないということか。」
茜は頷く。
・「正解だ。この国には犯罪という概念が存在しない。例え物を奪おうと人を殺めようともな。国が警察を用意する必要が無いんだ。」
・「だったらなんでこんなにも発達した国になってるんだ?」
楽羅は疑問に思う。
・「おっ、いいところに目をつけたな。それはだな、8割の人間がある程度の秩序や仕事、通貨などの文化的な生活を望んでいるからだ。俺らもそうだ。警察がいないなら勝手に守ろう。そういう想いの奴らが集まってできたのが我ら正道組なんだ。悪や正義は人それぞれ、まさに十人十色なんだ。」
・「ルールなんて守んだな。みんな好き勝手にやりそうなもんだけど。」
・「ルールあっての自由だ。」
・「国の成り立ちなんてどこもそんなもんだ。こんな時代だ。歴史なんて腐るほどある。お手本があれば形にするのなんて容易い。」
・「賢いな茜は。」
・「別に誰でもわかる事だ。それよりも悪と正義は人それぞれと言ったが、世間一般的に悪とされる定義を正義と主張する者がいるな。」
・「そうだな。今回楽羅を襲ったグループ「乱雑なオモチャ箱」もその部類になる。」
・「チグハグの野郎か。クソっ!……あいつは今どうしてるんだ?」
楽羅は悔しそうな顔をしながら聞いた。
・「チグハグとその仲間は正道組が管理している牢屋にぶち込んでいる。」
・「いつかやり返してやらねぇと気がすまねぇな。」
・「まぁその気持ちも分かるが、今回楽羅は大手柄だったんだぞ。」
・「大手柄?俺が?」
・「ああ。覚えてるか分からないが、俺はチグハグをずっと追っていたって言ったよな?」
・「うーん。そんなこと言ってたような……」
・「覚えてなくても仕方ない。死にかけだったんだからな。そんなチグハグだが強いくせに逃げ足が速くてな。アイツらが事件を起こす度に駆けつけていたんだがいっつも逃げられていたんだ。それで、だ。今回楽羅がチグハグを足止めしていてくれたお陰で捕まえることができたんだ!ありがとな!」
・「お礼言われても……負けは負けだから。」
・「ははっ!そう落ち込むな。チグハグのグループはこの国でも結構でかい組織だったんだ。まぁ、なんつーかチンピラ達の集まりっていうか、でも意外と統率の取れた組織だったんだ。まだ残党は残っているがボスがいなくなった。組織の壊滅まで時間の問題だ。それからさっき部下から報告があったばかりなんだが、その乱雑なオモチャ箱の幹部のシャタードって奴の遺体が別の場所で見つかったそうだ。原因はまだ究明中なんだが、シャタードは頭が切れる奴でな、コイツの不在も組織にとってかなりの痛手だろう。」
・「…………………………。」
茜は表情を曇らせて視線を逸らす。
・「ん?お前どうかしたか?茜?」
楽羅が茜のそのちょっとした異変に気づいた。
・「んあ?別に?」
茜はぶっきらぼうに答えた。
・「そうか。なんもねぇーなら良いけど。」
・「(ちっ、こいつこういう時鋭いよな。)」
茜は無自覚な楽羅の心配に何故か少しイラッとしてしまった。
・「それで他にもこのような組織はあるのですか?」
小春が質問を投げかける。
・「そうだな。その話をするにはまずこの国についてから説明しないとな。この国には8つの区域が存在する。」
・「8つの区域?」
・「ああ。それは太陽系惑星にちなんで名付けられたもので。水星区域、金星区域、地球区域、火星区域、木星区域、土星区域、天王星区域、海王星区域の8つに分けられる。簡単に言ったら州や県や市なんかと思ってもらったらいいよ。」
・「なるほど。」
・「勿論区域が別けられているが、そんなの関係なしに交流している地域はある。だが反対にだ、全く別の思想を持っており敵対関係の地域もあるんだ。」
・「じゃあその乱雑なオモチャ箱というのは敵対関係だったてことですね?」
・「そうだ。乱雑なオモチャ箱は主に海王星区域を根城にしていた。」
竜胆は話を続ける。
・「遠回りしたが小春ちゃん。さっきの質問に答えるな。この国の勢力図についてだ。大きく分けて4大勢力と言われる。」
・「4大勢力?」
・「まずは、俺ら「正道組」。平和を重んじる組織だ。人数は約3000人。今いる場所、1番大きな木星区域とその隣の土星区域をメインに管轄としている。この国の人口の7割は木星区域と土星区域に住んでいる。まぁ、首都って感じかな。……んで次は「自然愛好家」名前の通り都心から離れた田舎、天王星区域で暮らしいてるグループだ。この発展した街に見向きもしない変わり者や芸術家が多いイメージだな。………次はもうみんな知ってるが乱雑なオモチャ箱だ。さっきも言ったが根城は海王星区域でインフラ整備はある程度されているが街中落書きなどが多くスラム街の様な雰囲気だ。チンピラも多いし不良文化みたいなのを楽しんでいるんだろ。組織の人数は200人くらいだが都心に来ては悪さをする厄介な連中だった。…………そして最後、こいつらが1番やばい。その名も「死屍累々の偏愛」。人間の「生」そのものを嫌う、カルト集団だ。とにかく残虐で乱雑なオモチャ箱が可愛く思えるほどイカれた奴らの集まりだ。この国の暗黙の了解だ、まともに死にたければ水星区域には近づくな。つまり1度こいつらに捕まってしまうと死ぬより辛いことが待っているということだ。…………以上が4大勢力だ。」
・「死屍累々の偏愛、聞くだけでおっかないですね。すごく怖いです。」
小春が声を震わせる。
・「ああ、絶対に近づくな。俺らでも守れるかわからん。」
・「自分らも生きてるくせに、生きてる人間が嫌いなんて間抜けだな。」
・「ああホントだよ。茜、今度ピンポンダッシュしに行こーぜ!」
茜と楽羅は笑って冗談を言っていた。
・「ちょっと、2人とも……」
小春はその2人の態度に不安になった。
・「色々説明してくれてありがとうございます。もうひとつ気になってるのですが、地球区域はなんなのですか?」
・「そこはだな、一言で言えば運営みたいな感じだ。強固に鎖されていて地球区域には入ることもできねぇ。他の区域に干渉してくることは殆どない。傍観者気取ってんだよ。この国感情の箱庭って言うだろ?まるで俺らを観察して実験しているようにも思えるんだよな。イケすかねぇよな。だがまあ、ライフライン全てとエネルギー供給なんかを管理してくれてるからあまり文句は言えねぇんだなこれが。それとあそこにはフーベルト・シュタインが居るんじゃねぇかって噂されてんだよな。」
・「シュタイン博士が?」
茜が反応する。
・「噂、だがな。」
・「………………。」
・「ってな感じだ。後の区域はここと似たようなもんだな。…………あっ、そう言えばシュタイン博士で思い出した。博士が世間にメッセージを発表した後から火星区域で妙な動きがあるらしんだよな。なんだかきな臭いが……、まあそれは今はいっか。」
・「あー。情報量が多くてバカになりそうだ。」
楽羅は話に少し飽きていた。
・「バカは元からだろ。」
茜がテキトーに突っ込みを入れる。
・「うるせーぞー茜ー。」
更にテキトーに返事をする。
・「ははっ、みんなお疲れみたいだな。初日に事件に巻き込まれるなんて災難だったな。……じゃあ今日はもう遅いしみんなゆっくり休むんだ。」
・「竜胆さんサンキュー。ふぁあ……」
楽羅はあくびをしながら部屋から出た。
楽羅達はこの国について知る事ができた。
だがそれもほんの一部に過ぎない…………。
入国怒涛の1日目が終えた。
感情の箱庭 勢力図資料
【水星区域】「死屍累々の偏愛」カルト集団の集落があり、近づく者は少ない。
【金星区域】一般人が多く住むありふれた街。
【地球区域】国の行く末に干渉をしない。ライフラインを運営、統括している。
【火星区域】一般区画だが、なんだか最近怪しい動きがあるようだ。
【木星区域】首都。面積、人口共に1番の大きさである。「正道組」の管轄。
【土星区域】一般区画。木星区域との交流が多い。こちらも「正道組」の管轄。
【天王星区域】「自然愛好家」が好んで住んでいる場所。都心から離れた田舎にあり自然が豊かである。
【海王星区域】荒れた街並みをしており、乱雑なオモチャ箱の根城。
※正道組の管轄は主に人の多い木星区域と土星区域だが、金星区域、火星区域、天王星区域の見回りも行なっている。
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