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感情CUBE  作者: 刻咲 造花
14/27

14話 脳裏に



・「あー。テーブルボロボロにしちまった。後で謝んねぇーとな。」

茜は少し申し訳なさそうにそう言った。


・「うっ、」

倒れているシャタードの呻き声。

・「おーい。生きてるかぁ。」

茜がシャタードに声をかける。


シャタードはよろよろと立ち上がりながら、

・「殺せよ。」

張り詰めた声で言う。


・「はっ?」

・「早く殺せよ!!!」


・「…………別に俺はそこまでするつもりは、」

・「はあ?僕は君を殺そうとしたんだよ!!それに、まだ分かってないようだね。」

・「何だよ?」

・「この国は、感情の箱庭エモーショナル・ボックスはそういう場所なんだよ。負けた奴に居場所は無い。ほらっ……。」

・「……………………。」

茜はなんと答えていいか分からずに黙り込む。

確かに殺されそうになった。そう殺されそうに。

相手が返り討ちに合うなんて有り得る話だ。

だが、だが、なにかモヤモヤした気持ちが心にへばりつく。


 

・「くそっ!!!情なんてかけんじゃねぇよ!!!!」

バッ!!

シャタードは懐から火炎瓶を取り出した。


・「おいっ!何するつもりだっ!!!」

・「何する?燃やすんだよ。ここをな。そして僕も一緒に死ぬ。」

・「やめろ!!!ここには価値のある文献が山ほどあんだよ!!!」

・「ふふふっ。君には残念だよ、まったく。」

ポイッ……


・「やめろぉおおお!!!!!」

茜は必死に手を伸ばす。

しかし、


ボワァ……


茜の抵抗も虚しく、火炎瓶は本棚の本に火をつけた。

ボワァアアアアア!!!!!!

火はメラメラと一気に燃え上がる。

炎に包まれる2人。


・「てめぇ。」

・「ははっ、ははははははははははっ!!!!!!ねぇ君?君、まだ人殺した事無いでしょ?」

・「………………。」

 

・「あはっ!!図星だぁ。殺す殺す言う奴程、人を殺めたことも無いんだよねっ!僕は有るよ!!何人もね!!ムカつく奴は殺してきた。手を汚すこともなく、陰からこっそりとね。うふふ。そして死ぬ間際にそいつの目の前に現れるんだ。するとねそいつの苦痛と怒りに満ちた顔を拝めるんだ。」

・「黙れ!!!!」


・「ん?どうして怒るの?君だってっ、」

ゴンッ!!

茜がシャタードを殴り倒す。


茜はそのシャタードに馬乗りになり、

・「黙れ!!!」

胸ぐらを掴んだ。

・「滑稽だね、君。………………ほらっ、殺せよ。……殺せよ!!!殺せ!!殺せ!!殺せ!!殺せ!!殺せ!!」


・「くっ……」

茜はまだ躊躇っている。

それもそのはず。そもそもこんなに簡単に命のやり取りが行われていいものなのか。

この国の異常性に戸惑いを隠せない。


・「どうしたんだい?僕が君の初めてを貰ってあげるって言ってるんだよ。……大丈夫。すぐ慣れるよ。ここでは簡単に人が死ぬ。そこら辺の蟻が踏み潰されるようにね。…………ぶはっ!!まだ怖気付いてんだ!!だからもう終わりなんだって!!ここまで来てしまったんだから!!安心して!怖くないよ!!ねぇ!!チェリー君!!!」

 

茜はそのシャタードの迫力に恐怖を感じて、

 

・「うぁあああああ!!!!!黙れ!黙れ!!黙れ!!!黙れ!!!!」

 

ドガッ!ドガッ!ドガッ!

気づくと何度も拳を振り上げては、シャタードの顔を殴りつけていた。


何故だろう?そうするつもりは無かった。なのに何故か茜の体は勝手に動いた。どこにぶつけていいか分からない「怒り」。ただその感情だけが膨れ上がっていた。


・「はぁはぁはぁはぁ…………。」

茜は殴っていた手を止める。

すると、


シャタードがこちらを振り向く。

腫れ上がった顔面。

血だらけの姿。

まっすぐと突き刺すような視線。

目と目が合う。


 

そしてシャタードは最後にニヤリと笑った。


 

・「……………………………………。」

 

ぐったりとしたその姿を見て、シャタードの意識が途絶えたのがわかった。


ブゥヲォオオオオオ!!!!!

燃え上がる炎。

館内は火の海だった。


茜は立ち上がり、シャタードを見下ろす。

もう火の手はそこまで迫ってきていた。

・「…………。」

茜は数秒シャタードを見つめた後、何も言わずにその場を後にした。

パチパチと火の粉が舞い、天井が焼け落ちる。

ガラガラ……ドシャッ!!!

シャタードの体は燃える瓦礫に埋もれていく。



図書館の外に脱出した茜は、その場から離れるようにゆっくりと歩く。

燃え上がる炎と黒煙を背にして。

 

・「ちっ、」

茜は苛立っていた。

シャタードは何故あんなに簡単に死を選んだのだろう?

もう終わらせたかったのか?

早く逃げたかったのか?

生きることに疲れたのか?

謎は永遠に分からないままになってしまった。

 

・「くそっ!!!!」

 

茜の脳裏にチラつくのだ。

最後にニヤリと笑うシャタードの顔が。



読んで頂きありがとうございます!!

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