14話 脳裏に
・「あー。テーブルボロボロにしちまった。後で謝んねぇーとな。」
茜は少し申し訳なさそうにそう言った。
・「うっ、」
倒れているシャタードの呻き声。
・「おーい。生きてるかぁ。」
茜がシャタードに声をかける。
シャタードはよろよろと立ち上がりながら、
・「殺せよ。」
張り詰めた声で言う。
・「はっ?」
・「早く殺せよ!!!」
・「…………別に俺はそこまでするつもりは、」
・「はあ?僕は君を殺そうとしたんだよ!!それに、まだ分かってないようだね。」
・「何だよ?」
・「この国は、感情の箱庭はそういう場所なんだよ。負けた奴に居場所は無い。ほらっ……。」
・「……………………。」
茜はなんと答えていいか分からずに黙り込む。
確かに殺されそうになった。そう殺されそうに。
相手が返り討ちに合うなんて有り得る話だ。
だが、だが、なにかモヤモヤした気持ちが心にへばりつく。
・「くそっ!!!情なんてかけんじゃねぇよ!!!!」
バッ!!
シャタードは懐から火炎瓶を取り出した。
・「おいっ!何するつもりだっ!!!」
・「何する?燃やすんだよ。ここをな。そして僕も一緒に死ぬ。」
・「やめろ!!!ここには価値のある文献が山ほどあんだよ!!!」
・「ふふふっ。君には残念だよ、まったく。」
ポイッ……
・「やめろぉおおお!!!!!」
茜は必死に手を伸ばす。
しかし、
ボワァ……
茜の抵抗も虚しく、火炎瓶は本棚の本に火をつけた。
ボワァアアアアア!!!!!!
火はメラメラと一気に燃え上がる。
炎に包まれる2人。
・「てめぇ。」
・「ははっ、ははははははははははっ!!!!!!ねぇ君?君、まだ人殺した事無いでしょ?」
・「………………。」
・「あはっ!!図星だぁ。殺す殺す言う奴程、人を殺めたことも無いんだよねっ!僕は有るよ!!何人もね!!ムカつく奴は殺してきた。手を汚すこともなく、陰からこっそりとね。うふふ。そして死ぬ間際にそいつの目の前に現れるんだ。するとねそいつの苦痛と怒りに満ちた顔を拝めるんだ。」
・「黙れ!!!!」
・「ん?どうして怒るの?君だってっ、」
ゴンッ!!
茜がシャタードを殴り倒す。
茜はそのシャタードに馬乗りになり、
・「黙れ!!!」
胸ぐらを掴んだ。
・「滑稽だね、君。………………ほらっ、殺せよ。……殺せよ!!!殺せ!!殺せ!!殺せ!!殺せ!!殺せ!!」
・「くっ……」
茜はまだ躊躇っている。
それもそのはず。そもそもこんなに簡単に命のやり取りが行われていいものなのか。
この国の異常性に戸惑いを隠せない。
・「どうしたんだい?僕が君の初めてを貰ってあげるって言ってるんだよ。……大丈夫。すぐ慣れるよ。ここでは簡単に人が死ぬ。そこら辺の蟻が踏み潰されるようにね。…………ぶはっ!!まだ怖気付いてんだ!!だからもう終わりなんだって!!ここまで来てしまったんだから!!安心して!怖くないよ!!ねぇ!!チェリー君!!!」
茜はそのシャタードの迫力に恐怖を感じて、
・「うぁあああああ!!!!!黙れ!黙れ!!黙れ!!!黙れ!!!!」
ドガッ!ドガッ!ドガッ!
気づくと何度も拳を振り上げては、シャタードの顔を殴りつけていた。
何故だろう?そうするつもりは無かった。なのに何故か茜の体は勝手に動いた。どこにぶつけていいか分からない「怒り」。ただその感情だけが膨れ上がっていた。
・「はぁはぁはぁはぁ…………。」
茜は殴っていた手を止める。
すると、
シャタードがこちらを振り向く。
腫れ上がった顔面。
血だらけの姿。
まっすぐと突き刺すような視線。
目と目が合う。
そしてシャタードは最後にニヤリと笑った。
・「……………………………………。」
ぐったりとしたその姿を見て、シャタードの意識が途絶えたのがわかった。
ブゥヲォオオオオオ!!!!!
燃え上がる炎。
館内は火の海だった。
茜は立ち上がり、シャタードを見下ろす。
もう火の手はそこまで迫ってきていた。
・「…………。」
茜は数秒シャタードを見つめた後、何も言わずにその場を後にした。
パチパチと火の粉が舞い、天井が焼け落ちる。
ガラガラ……ドシャッ!!!
シャタードの体は燃える瓦礫に埋もれていく。
図書館の外に脱出した茜は、その場から離れるようにゆっくりと歩く。
燃え上がる炎と黒煙を背にして。
・「ちっ、」
茜は苛立っていた。
シャタードは何故あんなに簡単に死を選んだのだろう?
もう終わらせたかったのか?
早く逃げたかったのか?
生きることに疲れたのか?
謎は永遠に分からないままになってしまった。
・「くそっ!!!!」
茜の脳裏にチラつくのだ。
最後にニヤリと笑うシャタードの顔が。
読んで頂きありがとうございます!!
ブックマークや評価★で応援して貰えるととても励みになります!!(↓↓↓からできます。)
これからも作品をよろしくお願いいたします!!




