13話 スタイリッシュに
・「(あっ、見つけた。「感情とエネルギーの関係性」。)」
箱庭図書館。ここはこの国唯一の図書館である。そう、この国 感情の箱庭 には図書館がひとつしか存在しないのだ。しかし、本の数は1億2千万冊。情報過多と言っていい程、文献で溢れている。
広大な土地に大きな建物。館内はゆとりのある空間で落ち着いた雰囲気。空調は整い、綺麗に整頓された本。木と紙の香りが漂い、天井まで届く本棚は圧巻である。
利用者は多く、皆夢中で本を読んでいる。だがそこはまるで深海かと錯覚するほど静寂に包まれていた。
茜は何冊か本を手に取る。
・「(こんなにシュタイン博士の書いた本があるなんて驚きだな。世に出ているものは全て読んでいたと思ってたんだけどな……。)」
フラッ……
・「??」
茜はなぜだか急に目眩がして倒れそうになる。
ガッ、
だが咄嗟に本棚に掴まり倒れずに済んだ。
・「(なんだ?長旅でつかれてんか?)」
茜は目頭を指で揉みながら呼吸を整えた。
すると突然、
・「やあ、お兄さん。」
後ろから男の声が聞こえてきた。
・「あん?」
茜が振り返るとそこには、ベレー帽にチェーンの付いた丸眼鏡、茶色のチェック柄のインバネスコートを着た男が立っていた。
・「誰だてめぇ?」
・「僕は シャタード 。皆からはそう呼ばれてるよ。」
・「誰だよ?なんの用だ?」
・「酷いよ。いきなりそんな荒い口調なんてさ。茜君。」
・「??(コイツなんで俺の名前を……。)」
茜はシャタードのちょっとスカした鼻につくような話し方にイライラしていた。
・「今、なんで俺の名前を知ってんだって思ったでっ、」
・「だまれ。」
・「え?まだ話の途中なんだけっ、」
・「だから黙れって。図書館では静かにしろ。マナーだろうが!」
・「へ〜。君チャラチャラした見た目なのにマナーとか気にするんだ。」
・「あ?!!さっきからてめぇなんなんだよ?表出ろよ!ここじゃ周りの迷惑になるだろ、」
茜は静かに言った。
・「大丈夫だよ!!ほらっ!!!こんなに大きな声で話したって大丈夫!!だってこのフロアに居るのは僕と君だけなんだから。」
・「はぁ?」
茜は周りを見渡した。すると確かにさっきまでいたたくさんの人達が誰1人居なくなっていた。
・「ねっ?だからお話ししようよ。」
・「うぜぇな!!!その回りくどい喋り方も!要領得ない会話も!!!」
茜はテンポの悪い会話にイライラの限界がきて声を荒らげた。
・「はははっ!もっと余裕を持とうよ!もっとスタイリッシュにね!」
・「だぁ、かぁ、らぁ……。」
・「……ふふっ。この国でいきなり声を掛けられるのはね、道を尋ねたいか、ナンパ目的か、…………CUBEを奪うかだよ。」
シャタードはニヤリと笑みを浮かべた。
・「CUBE。まぁ、そうだろうな。」
・「うん!この国に来たばかりの君達みたいな初心者は格好の的だよ。」
・「君達?」
・「そう。今頃きっと君のお友達も僕の仲間が初狩りしてると思うよ!」
・「(楽羅か?……小春か?……)」
茜は2人を心配する。
・「だったらよぉ……」
・「ん?なに?」
・「だったら最初から言えよ。喧嘩売りに来ましたってなぁ。そんならお前の望み通りに高値で買ってやるからよぉ!!」
・「破壊の腕」
ビキビキ……
茜の右腕に血管が浮かび上がり、そこから湯気が立ち上がる。
・「すぐ殺してやるよ。」
・「まあまあ、落ち着いてよ。そのCUBEの力、見た目からして腕力が上昇するとかそんなんでしょ。ありきたりで面白みも無いね。ふふっ。」
・「だったら何だよ?」
・「いやなに、野蛮だなって。」
・「野蛮?」
・「そう!殴り合いなんて低レベルな戦いはしたくないんだ。僕は痛いの嫌いだしね。」
・「ははっ、そうかでも俺はお前を力いっぱいぶん殴るつもっ……、」
クラッ……
茜は話の途中でまた目眩がして倒れそうになる。
・「あはっ!効いてきたようだね!!!」
・「何をしやがった?」
・「僕の「疲弊のCUBE」の能力だよ!!」
・「疲弊のCUBE?」
・「教えてあげる。この能力はね僕からの距離6m以内にいる人の「疲れ」を蓄積させることがてぎるんだ。」
・「疲れだと?」
・「あれ、もしかして疲れを甘く見てる?人間が極限まで疲れるとどうなると思う?それはね。……過労死。そう!!死んじゃうんだ!!!」
・「………………。」
・「さっきからなんかおかしいと思わなかった?目眩や動悸が急に来て意識が朦朧としてるでしょ?このフロアに人がいないのも僕がこの能力で人払いをしておいたからさ!!」
・「……なんだ……それだけかよ。」
茜は少し呼吸がしづらそうにそう言った。
・「なんだって、心外だな。君のその単純な能力に比べてとても知的でしょ。なんていったって自分で手を下さないで済むんだから。これこそスタイリッシュだよねー!」
・「……お前周りの奴らに……お前の傍にいると…疲れるわってよく言われるだろ?」
・「……何?どういう事?そりゃこんな能力だからっ、」
・「CUBEに目覚める以前からって事だよっ。」
茜はニヤリと馬鹿するような笑みを浮かべながら言った。
・「はっ?はぁ?別に、」
・「はははっ!!図星かよ!!……まぁだったらその能力はお前にお似合いだわなぁ!!」
・「……ムカつくね、君。」
・「滲み出てんだよ。……その頭良さそうに見せたい丸眼鏡。足首にチラッとだけ見えるタトゥー。スカした喋り方。スタイリッシュ?お洒落に見せたいただのミーハーだろーが!!」
・「…………もういいよ。君みたいな頭悪そうな人間とは関わらない方が良さそうだ。どうせもう動けないでしょ。何を言ったって君の負けだよ。(そろそろ身体が限界なはず。)」
・「……教えといてやるよ。」
・「ん?」
フッ……
シャタードは驚いた。
それは目の前から茜の姿が消えたからだ。
一瞬だった。
・「(なんで?動けっ、)」
気づいた頃には茜がシャタードの懐に潜り込んでいた。
ズンッ!!!
茜の振り上げた拳がシャタードの腹部にめり込む。
・「くはっ!!」
シャタードはその勢いで宙を舞う。
シュッ!
そして、更に追いかけて空中で思いっきり拳を振り下ろした。
ドゴーン!!!!
バキバキ……
シャタードは大きなテーブルの上に叩き付けられた。
テーブルはバキバキに割れシャタードの体は床にめり込んだ。
スタッ…と茜はシャタードの横に着地する。
この時、茜のさっきまであった疲労感や倦怠感は無くなっていた。
・「教えといてやるよ!喧嘩に必要なのはなぁ!頭の良さでもなければ、ましてやスタイリッシュさでもねぇ!根性と腕力だ!!!!!!!」
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