10話 箱庭
・「うぁあああああ!!!!!暇だぁあ!!!!」
・「うるせーぞ!!茜ぇ!!!!!」
豪華客船が出発してから20日が経っていた。
茜はあまりの暇さに叫び出した。それに楽羅がキレる。
・「なぁ?楽羅ぁー暇だし殴り合わねぇか?」
・「はっはっはっ!遂に真の馬鹿になっちまったんだなぁ!でもおもろそうだし、いいぜ雑魚!!相手してやるよぉ!!」
・「あん?雑魚はてめぇだろ!このひよっこがぁ!!」
2人は意味もなく胸ぐらを掴みあった。
・「はぁ、やめてよね。あんた達何度言ったらわかるの?次無意味な喧嘩したら、ケツから手つっこんで内蔵引きずり出すわよ。」
小春が静かにそう言った。
・「えっ、…………。」
・「へっ、…………。」
2人は清楚でおしとやかな小春の口から発せられた品の欠片もないただただ真っ直ぐな嫌味を聞いて、口が開いて塞がらなかった。
2人はお互いを見合った後、震えながら小春の方を向いて、
・「すっ、すまねぇ。」
・「ごごご、ごめんなさい。」
謝った。
この時2人は思った。1番怖いのは小春なのかもしれないと。
ピンポンパンポーン!!
凍りついた場に救世主のように船内アナウンスが鳴り響いた。
・「豪華客船にお乗りの皆様。大変長らくお待たせ致しました。まもなく目的地へと到着致します。」
・「キター!!!!!!」
楽羅と茜は子供のように目を輝かせて部屋から走って出ていった。それを小春が追いかける。
ガンッ!!
2人はデッキから身を乗り出しながら辺りを見渡した。
・「ん?」
・「ん?」
だがそこには何も無かった。
晴天の空。
凪のように静かな水面。
何処までも続く終わりの見えない水平線。
その光景は余りにも不気味であった。この世界にはこの船1隻しかないのではと錯覚させるほどに。
期待を裏切られた。そう思ったその時、茜が何かを見つける。
・「おい、なんか浮いてるぞ。」
少し遠くに大きなブイがポツンとひとつだけ浮いていたのだ。
そして、再びアナウンスが鳴る。
・「人工衛星の墓場に到着致しました。これから感情の箱庭へと入国いたします。」
・「え?何も無いけど…………。」
そして、豪華客船がブイの隣を横切る。
ジリジリジリジリ…………
船は変な音をたてながら透明な膜の様なものを突き抜けだした。
するとそこには、
・「うぉおおおおお!!!!!!!」
・「すげぇええええ!!!!!!!」
・「こんなことが、驚きだわ!!!」
なんと、さっきまでは見えなかった大きな大きな島が目の前に突然現れたのだった。島にはたくさんの建造物が建ち並んでいるのが遠くからでも分かる。
そう、これは国である。
・「皆様感情の箱庭へようこそ。驚きでしょうか?先程通り抜けた膜は光学迷彩を使用して、島から5km先の海までをドーム状に包んでおります。つまり外から、宇宙からでさえ、この場所を視認することはできません。これが世界が認知することが出来なかった所以でございます。そしてなんてことでしょう。このドーム状の膜のなかでは全ての言語が統一して聞こえるようになります。つまりアメリカにお住いだったそこのあなた、もし話し相手がロシア語だったとしても、ポルトガル語、日本語、中国語だったとしても、なんとなんと自国の英語に聞こえちゃうんです。このシステムの名はその名も「相互理解のお供」。あっ、ちなみにお供するの供と友達の友、賢いと言う意味の智、トリプルミーニングでございます。実はこの船内アナウンスのみこのシステムが使われていたんですよ。気づいた方はいらっしゃいましたか?でもなんでこんなことが可能かって?それは企業秘密でございます。未来技術の様なわくわくする話しが続きましたがここで注意点でございます。感情の箱庭では独自の法律を制定しておりますので、今までの常識はお捨てください。そして入国の際は携帯電話、スマートフォン、パソコンなどの全ての電子機器は持ち込む事ができませんので入る前に全て破棄させて頂きます。情報統制のため持ち込むと罪になることがあります。それから例え持ち込んだとしても、この国では全ての道具、機材は特殊なエネルギーを使用して動いているため使う事ができません。隠して持ち込まないようにお願いいたします。それではまもなく到着いたします。長旅お疲れ様でした。ここ感情の箱庭で、豊かな感情を育み発散してください。それでは、良いエモーショナルライフをご堪能あれ〜。」
・「なんか最後テーマパークみてぇだったな。」
・「楽しくなってきたぁ!!!」
・「確かに……各国の人達が乗ってるのに船内アナウンスがなぜ日本語なんだろうと思ってたけど、そういう事だったのね。」
3人のテンションは最高潮だった。
数分後。
豪華客船は港に着いた。
港では念入りな身体検査が行われ、次々と乗客が降りていく。
楽羅と小春、茜の3人も港へと降り立った。
・「ちょっと!どこ触ってんのよ!!!」
検査場から女の大きな声が聞こえてきた。
・「あのうるせぇ声、白雪だろ。」
・「ああ、きっとあのババアだな。」
楽羅と茜は息をするように悪口を言った。
・「白雪さん待たなくていいの?」
小春が聞いた。
・「なんで待たなきゃなんねえーんだよ。」
楽羅が答える。
・「そうだな。さっさと行こーぜ。」
・「……ってか茜、なんでお前も一緒に行く流れになってんだ?」
・「あ?別にいいだろが!」
・「なら言うことあんじゃねぇか?」
・「……確かに挨拶は大事だな。……じゃあよろしくなぁああ!!!!」
茜はガシッと楽羅の手を掴んで思いっきり力を込めて握手をした。
楽羅も負けじと握り返しながら、
・「よろしくお願いしますだろぉおお!!!!」
・「はいはい。仲良くねー。2人ともさっさと行くよー。」
小春は慣れたようにそう言いながら歩きだした。
3人はタクシーを見つけて乗り込む。とりあえず街の中心を目指すことにした。
30分程タクシーに揺られていると、街の入口らしき所に着いた。
・「運転手さんここで止まってください。…………ええと、確かこのカードに電子マネーが。」
小春がお支払いを済ませて、3人はタクシーを降りた。
この国には紙幣や硬貨といったものは存在せず、全て電子マネーである。港で一枚のカードをもらいそのカードの中に持っていたお金をチャージしたのだった。
3人は上を見る。
・「それにしてもすげぇーなこの街。」
・「ああ、港からでさえデカいのがわかったもんな。」
・「まるで20年後の東京って感じがするね。」
目前にあるのは巨大な街。高層ビルが立ち並び、煌びやかな電光掲示板が無数に輝いている。今まで住んでいた所とは文明レベルが違うのがひと目でわかった。
この国の国土面積は約80000km²ありオーストリアと同じくらいの大きさである。人口は600万人程。
なぜこんなにもの多くの人が暮らしているにも関わらず世界に知られる事がなかったのか…………
世界の年間の行方不明者数は数百万人に上ると言われている。勿論見つかった者も多く存在する。しかし、行方不明者数に数えられることすらない者の方が多いと言う声もあるのだ。西暦から氷暦に代わり4年。つまり4年間で600万人が世界から消えていたとしても何らおかしくはないのであった。
3人は街に足を踏み入れた。
期待に胸を膨らまして。
まるで観光気分だった。
だが楽羅はまだ知らない。これから起こることを。
ジリ……
不穏な影が楽羅達に近づいていた。
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