1話 CUBE
・「やっべっ、おいおい…これ100人はいるんじゃないか?流石にこの人数を相手にするのは骨が折れすぎるだろぉ!」
勘解由 楽羅は暗い講堂の中で、多人数のお面を付けた黒装束に詰め寄られていた。
黒装束は全員、声を発することもなくゆっくりと近づいてくる。
・「ちっ!俺が逃げるなんて……っとにだせーな。だせーのは楽しくねぇよ、まったく。」
講堂のステンドグラスに月の光が差し込む。
楽羅はステンドグラスに向かって大きくジャンプする。
楽羅の首に掛かっている立方体のネックレス。その立方体が淡く光った。
・「楽観のCUBE、楽しもうぜ。」
そう言いながら楽羅は大きく1回手を叩いた。
・「拍衝」
パンッ!!!
すると、手を叩いた音と共に衝撃波が広がる。
バリーーーン!!!
その衝撃波で大きな音をたてながらステンドグラスが豪快に割れた。
楽羅はそこから講堂の外へと飛び出た。
・「はぁ、ガラス割ることしかできなかった。やっぱ今は気分が乗んねぇーな。」
講堂の割れたステンドグラスに月の光が差し込み、その光は壇上を照らした。
壇上には髪の長い男が立っていた。
男の名前は、零。
・「君も僕から離れていくんだね、楽羅。楽しいこと教えてくれるって言ったのに……嘘つき。……でもいいんだ。僕は誰にも期待も興味も抱かないから。」
零の左耳に付いている立方体のピアスが月の光を反射してキラッと光る。
だがすぐに月は雲で隠れ、光は消える。同時に零の体は暗闇に包まれた。
外で、雲に隠れる月を見上げながら楽羅は呟いた。
「…………また遊んでやるよ零。」
そう言うと楽羅は暗い森の中へと消えて行った。
時は遡り、104年前。
西暦2040年
米国の宇宙開発局に1人の天才化学者がいた。
化学者の名前はフーベルト・シュタイン(40)。
通称シュタイン博士。
シュタイン博士は大規模な実験を成功させて高エネルギー吸収装置を完成させる。
この装置は人工衛星として宇宙へと打ち上げられた。
この発明は偉業である。
だがそんな発明を世間は知ることはなかった。なぜならこの実験も開発も全て秘密裏に行われていたからだ。
人工衛星は宇宙空間で更に開発が進み、超巨大な立方体へと姿を変貌させていた。
大きさ100㎥のこの超巨大立方体はこう名付けられた。
「CUBE」と。
存在感を放ちながら浮いているCUBE。これは宇宙の膨大なダークエネルギーを吸収し留めることができる装置であった。
ダークエネルギーとは宇宙の加速膨張を起こしている力である。このダークエネルギー、現在では解明されておらず
謎に包まれたままであり文字通り未知のエネルギーなのだ。ただ分かっているのは無尽蔵のエネルギーということ。
このシュタイン博士の発明により宇宙の解明と地球の発展が加速する。
そう思われていた。
だが現実は時に残酷である。
全ての成功とは裏腹に…………………………
地球は滅亡することになる。
奇跡はある。
それが良いことだとは限らないが。
地球ではとあるニュースで持ち切りだった。
そう超巨大隕石である。
何万何億何兆分の確率だろうか、超巨大隕石が火星に衝突することが予想されていたのだ。勿論これにより地球は大被害に見舞われることなぞ容易に想像できた。
人類は絶望感に苛まれた。
そして予想通りいや、呆気なく超巨大隕石と火星は衝突した。
火星と隕石の衝突の際に発せられた熱が地球を襲う。
地球の海は干上がり山は燃え上がる。
そうなるだろう。と…………人間達は皆死を覚悟した。
だが地球でただ1人だけ諦めていない人間がいた。
シュタイン博士である。
・「まだ研究は続けられそうだ。新しい理と共に。さあ!!新たな世界の幕開けだ!!!」
シュタイン博士の合図で、CUBEが溜め込んでいたエネルギーを放ったのだった。
これにより衝突の熱エネルギーとCUBEのエネルギーがぶつかり合う。
だがこれは相殺ではなく反転であった。
熱エネルギーは反転して冷気へと変わったのである。
なんと地球は一瞬にして氷ついた。
人間、動物、海、山、森、全ての命が瞬間冷凍された。
これが地球滅亡である。
否。
地球は眠ったのだった。
そして、100年後…………
地球が凍りつき眠ってから100年の月日が流れた。
西暦2140年
CUBEは今だなお宇宙を漂い続けていた。
奇跡はある。
100年後の奇跡は良い報せとなった。
隕石とCUBEが衝突したのだ。
CUBEは爆発を起こした。
それによりCUBEに100年もの間溜め込まれていたエネルギーがいっきに解き放たれた。
このエネルギーが熱の"ような"ものになり地球を包み込む。それは暖かい霧のようであった。
地球の氷がゆっくりと溶けていく。優しく。そんな表現をしたくなるようだった。
地球は生きていた。
生命の復活である。
生物は少しの変化と共に元に戻った。
・「はっはっはっはっ!!!!!!やはり私の研究は正しかった!!失敗なぞ過程に過ぎぬ!!お早う!!CUBEよ!!!!!!」
いつもクールなシュタイン博士は興奮した様子でそう叫んだ。
人々は混乱していた。それもそのはず100年もの間氷漬けにされていたのだから。
この事実ととある変化に適応するのに時間が掛かった。
地球滅亡からの復活。
人々は新たに年を数えることにし、西暦から「氷暦」へと呼び名が変えられた。
それから4年が経ち、現在氷暦4年。
東京
ドンッ、
楽羅は前から歩いてくる男にわざとぶつかった。
・「あっ、わりー。前見てなかったわ。」
そう平謝りをして何事も無かったかのように過ぎ去って行く。
・「へへっ、いくら入ってかなぁー?」
楽羅はぶつかった際に男のポケットから財布を抜き取っていたのである。
・「はぁ?たったの2千円だけかよ!!しけてんな!……まぁ今の時代現金持ち歩いている方が珍しいか。」
楽羅はその場にしゃがみこんで気を落としていた。
・「はぁ……」
すると、
・「ちょっとお兄さん!ダメだよ!」
急に上から声が聞こえてきた。
・「あ?」
楽羅が上を見上げるとそこには綺麗な顔立ちをした白いワンピース姿の女がこっちを見ていた。
三つ編みハーフアップで清楚系を体現したような見ためだ。
・「盗ったでしょ!」
・「盗ったぁ?」
・「そーれっ!その、さ、い、ふ!」
・「あー、これ?…………欲しいならやるよ。」
楽羅はそう言いながら女に財布をポイッと投げた。
女は財布をキャッチして、
・「んっ!」
更に手を伸ばしてきた。
・「なんだよ?」
・「中身も!」
・「はぁ……」
楽羅はだるそうにポケットにしまった2千円を女に渡した。
すると女は満面の笑みで、
・「ありがとっ!」
と言って、直ぐに走り去った。
女は楽羅がぶつかった男を追いかけて財布を渡していた。
それを楽羅は遠くから見ていた。おおかた「落としましたよ。」とでも言っているのだろうと楽羅は思った。
楽羅は振り返り、だるそうに歩き出し、
・「………………ってか、アイツ誰だよ。」
文句をこぼした。
・「私?」
・「うおっ!……えっ、なんだよ?」
女は楽羅について来ていた。
・「私は美甘 小春!小春って呼んでねっ!」
・「……呼んでねって……だから、誰だよ。」
楽羅はボソッと言う。
・「あなたを探していたの。」
・「俺を?」
・「うん。あなたのお名前教えてっ。」
・「……勘解由 楽羅だけど。」
・「勘解由くん……よろしくね!」
・「よろ…しく?…………ってか探してたのに名前は知らないのかよ。」
・「そうだね。だって探してたのはそれだからっ。」
小春はそう言って、楽羅の首元に指をさした。
・「……………………こいつをなんで知ってんだ?」
楽羅はCUBEのネックレスに触れながら聞いた。
・「だって、ほら、私も。」
小春は左手首を楽羅見せた。
・「あっ、」
左手首にはCUBEのブレスレットが着いていた。
・「ふふふ。お揃いだねっ!」
小春はニコッと可愛らしく笑った。
・「……………………。」
・「……………………。」
バッ!!!
楽羅は小春の話を聞くなりいきなり走り出した。
・「ちょっ、…………勘解由くん?」
5分後。
・「よし、ここまで来たら大丈夫だろ。ってか俺以外にCUBE持ってる奴初めて見たな。どうせこれ持ってる奴はろくでもない奴だろうから逃げて正解だな。」
楽羅はドサッとベンチに腰を掛けた。
・「(……そう言えば、このCUBEこれを手にしたのは4年前だっけ。地球滅亡から目を覚ました時に首元にぶらさがってたんだよな。気持ち悪いから捨てようとしたけど、捨てたらいつの間にか首元に戻ってくるんだよな。……それからなんか変な力を使えるようになったし、いったいなんだこれは?あー、あいつに聞いてみたら良かったか……。)」
楽羅はCUBEを見つめながら心の中で考え事をしていた。
すると、
・「見つけた。」
・「!!!!!!!」
そう声が聞こえた瞬間、楽羅は後ろから首に手を回されて抱きつかれていた。
・「(なんだ?動けない?!)」
楽羅の体はなぜだか硬直して動かない。
・「ふふ。動けないでしょ?」
声の招待はなんと小春だった。
・「愛情のCUBE。勘解由くん、逃げちゃうから能力使っちゃった。ごめんね。こうやってハグしている間は動けないと思う。」
・「…………。」
・「私のCUBEは、好きな人や愛情を持って接する相手に対して効果があるの。」
・「好き?愛情?……じゃあなんで俺に?」
・「うーん。………………なんでだろ?」
小春は楽羅の耳元で優しくそう呟いた。
楽羅はその言葉に少し恥ずかしく思い顔を赤くした。
・「わっ、わかったから、もう逃げない。取り敢えず離してくれ。」
・「そっか。残念……」
小春はそう言いながらスっと腕を外した。
・「っで?俺とお前がっ、」
・「小春っ!私小春。」
・「…………俺とこっ、小春がCUBEを持ってることは分かった。でもだからって俺に何の用があんだ?」
小春はベンチの後ろから回り込み、楽羅の前にしゃがみこんだ。そして下から楽羅の目を真っ直ぐ見ながら、
・「勘解由くん、あなた死ぬかもしれないよ。」
・「え?」
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