第13話:宦官の秘密と、揺れる信頼
静寂の夜、玲玲は自室の窓辺で薬草の葉を一枚一枚丁寧に調べていた。月明かりが窓ガラスを淡く照らし、影を揺らす。
ここ数日、後宮内で奇妙な動きがあった。侍医や女官たちの間で、宦官の一人が不審な行動をしているとの噂が囁かれていたのだ。
「毒に関わる何かを隠している……それは見過ごせない」
玲玲はそう感じ、密かにその宦官、張の調査を始めていた。
翌日、玲玲は薬局で薬草の調合をしながら、張の動きを思い返していた。
張は普段から目立たず、物静かだが、時折見せる冷たい視線が不気味だった。
「彼は後宮の闇の一端を握っているのかもしれない」
玲玲は心中で警戒を強める。
ある夜、玲玲は後宮の裏路地で張と鉢合わせた。
「玲玲か……お前の動きはよく見ている」
張は冷たい笑みを浮かべ、彼女に近づいた。
「だが、お前も危険だ。このまま深入りすれば、ただでは済まぬ」
玲玲は怯むことなく答えた。
「私は真実を追うだけ。後宮の毒を断つために」
張は少し黙り込み、静かに言った。
「ならば、これを受け取れ」
彼は玲玲に小さな包みを手渡した。
包みの中には、古びた文書と小瓶が入っていた。
文書は後宮の秘密を記したもので、小瓶には不明な薬液が入っている。
「これは何ですか?」
玲玲は慎重に尋ねた。
「これは私の“証”だ。後宮の陰謀と毒の繋がりを示すものだが、お前にはこれを守り抜いてほしい」
玲玲は包みを握り締め、決意を新たにした。
「この後宮に蔓延る闇を、私は必ず解き明かしてみせる」
翌朝、玲玲は薬局で配合した解毒薬を見つめながら、ふと気づく。
「誰も信じられない。だが、信じるべき人を見極めねば」
薬草の淡い香りが部屋を満たす中、玲玲の瞳は強く輝いていた。