LOG.6 — 牡蠣が好き。ー Loves Oysters
——実話。
俺と、現役モデルと、不倫と…。
こんな人生で、マトモは無理。
たった一度の出会いで、人生が壊れた。
これは、その記録。
————
港に着いた瞬間、
潮の匂いと、
魚の焼ける香りが混ざった、
独特の“海の空気”が広がっていた。
車から降りて、
海風を浴びた瞬間、
ミカの髪がひと筋だけ光って揺れた。
初めての場所なのに、
風景のほうが
ミカに合わせて後ろへ下がっていく。
ミカは
まるでこの港の
主役みたいにそこに馴染んだ。
ミカが来てから、
港の稼働が、
一気に止まった感覚があった。
最初の牡蠣の屋台で...
「お嬢ちゃん、美人だなぁ!」
「今1番 いい牡蠣サービスだ!」
ミカ
「え〜!ありがと〜♡」
「よかった〜!美人に生まれて♡」
隣の店でも...
「可愛いねぇ!ビールサービス!」
ミカ
「わ〜い♡そうなんです~!」
「アタシ可愛いんです〜!」
おっちゃん達、鼻の下デロデロ。
ミカは歩くだけで
“物価を下げる女”だった。
牡蠣を食った瞬間だけ、
ミカは子供みたいに無邪気になった。
ミカ
「やば……うまっ……!」
それが可愛すぎて、
胸がギュッと掴まれた。
ミカ、
永遠に俺ん家で牡蠣食ってていいよ。
俺が働くから…!
屋台をいくつか回り、
ミカは袖をちょこんと掴みつつ歩く。
港のざわざわが次々と、
ミカの背景になっていった。
ーーー
牡蠣も食べ終わって、
屋台をいくつか回り、
俺たちは車に戻ろうと歩き出した。
シン
「よーし、ぼちぼち帰るかぁ~」
その時だった。
ミカ
「……やだ。」
シン
「え?」
ミカ
「帰りたくない…」
「シン、海行きたい」
「海が見たい。」
「今日、まだ終わりたくない。」
港の、
ざわざわした空気の中で
まっすぐ、届く、響く、声だった。
ささやくような、
小さい声のはずなのに、
港の音が遠くなった気がした。
子供がデパートで、
親の袖を掴むみたいに、
小さく俺の腕を引く。
ミカ
「ねぇ、海行こ?」
「近くで波の音聞きたい。」
その言い方があまりに自然で、
わがままというより、
“本音が溢れた瞬間”に聞こえた。
シン
「……分かったよ。行こう。」
ミカ
「やった〜!」
ミカは
子供みたいにバンザイした。
その笑顔が無邪気すぎて、
港の喧騒が一瞬でどうでもよくなる。
そうして俺たちは、
港から少し離れた海へ向かった。
そして俺は海で、
ミカの本心と向き合うことになる。
この日の海は、
ただの青じゃなかった。




