LAST ー ユモレスク ー Humoresque
——実話。
俺と、現役モデルと、不倫と…。
こんな人生で、マトモは無理。
たった一度の出会いで、人生が壊れた。
これは、その記録。
————
帰りの車内でもミカは
少しだけウトウトしていた。
よほど疲れたのだろうと思って、
俺は気を利かせて、
ほとんど話しかけなかった。
そして、
ミカをコインパーキングまで送り届けた。
シン
「ミカ、着いたよ。」
ミカ
「ん…ふぁぁ。ありがと。」
「ごめん、また寝ちゃった。」
シン
「なぁミカ。」
「あのさ……。」
「我慢したから、次も会えるよね?」
ミカ
「え?」
「無理。会えないよ?」
喉が詰まった。
シン
「な、なんで!?」
「だって俺、ガマンしたじゃんか!!」
ミカは笑う。
ミカ
「あのさぁ。」
「彼氏いるって言ったでしょ。」
「“我慢できなかったら会わない”
って言っただけで、」
「“我慢したら会ってあげる”
なんて一言も言ってないよ?」
そして、
冷たく、美しく、残酷に微笑んだ。
ミカ
「可哀想ね、わんちゃん。」
「今度こそ、ほんとのサヨナラだよ。」
両手で俺の頬を包むミカ。
ミカ
「ぜーったい忘れないでね?」
「ミカのキスも、ハグも、S※Xも。」
「他の女と会うたびに思い出して、
ミカを一生トラウマにして?」
「でもミカはすぐ忘れるからね。」
「じゃ、元気で。」
軽くポンと俺の頭を撫で、
ひょいっと車から降り、
ニコニコと手を振るミカ。
その姿は、
綺麗、すぎて、残酷、だった。
ーーー
その後
本当にミカは俺を切った。
番号は着拒。
LINEは消去。
SNSは全て繋がらない。
マスターに聞こうかと、
一瞬よぎったが、
関係を隠していたし、
ストーカー扱いされる未来が
手に取るように見えたから、
何も言えなかった。
ミカは今どこで、
何をしているのか。
結婚したのか、
独身なのか。
子供がいるのか、
どこに住んでるのか。
幸せなのか、
不幸なのか。
何も分からない。
元気かどうか、
確認ができるのは
ミカがモデル用のSNSを
更新した時だけだった。
ただ…この数年後、
そのモデル用のSNSと
事務所の宣材写真は消えていた。
頼みの綱も
なくなってしまった。
濃厚な数ヶ月は
こんなにも あっさりと、
一瞬で消えて無くなってしまった。
ーーー
俺は今、独身だ。
これのせい、
とまでは言わない。
だが
ミカの思い通りにはなっている。
他の女性と関わっても、
ミカとのすべてがちらついて集中できない。
刺激が足りない。
雑になる。
比べてしまう。
一時期は、
息子が機能しなくなったこともあった。
頭からつま先まで、
ミカに全部持っていかれた。
一度、
ちゃんと忘れるために引っ越した。
この悲しい住宅街から、
物理的に距離を取って
メンタルを回復しようとした。
同じ市内ではあるが、
マスターの店から
少しでも遠くなる場所を選んだ。
歩いて呑みに行けない距離にした。
職場も遠くなったが、
心が穏やかでいられるなら問題ない。
ただ…
フォレストの看板を見ると、
今でも鼓動が一気に早くなる。
ミカの首を絞めた感触が、
鮮明に よみがえる。
手がミカの喉元を求めて、
握力が こもる。
後遺症だ。
ーーー
この一件から、
一切 人妻には手を出していない。
遊ぼうとも思わない。
興味すら無い。
俺がこれから、
幸せになれるかどうかは、
もうどうでもいい。
ただ、どこかに吐き出さないと
やってられなかった。
これを書いたら、
少しだけ、ほんの少しだけ、
スッキリした。
婚活、頑張る。
お前らも
遊びすぎには気をつけろよ。
俺は、あの日…
ラブホで
4時間我慢していれば、
普通に生きれたのかもしれない。
あそこで
理性に負けずに
ミカの試練を乗り越えていたら
ハッピーエンドだったはずだ。
そんな世界線があるなら、
是非ともコンテニューしたい。
ミカは、
俺と、
これを読んだお前らの中で、
永遠に、生き続ける。
こんな人生で、マトモは、無理。
不倫の神様 ー ー 完 ー ー




