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LOG.11 ー ミカ ≠ メイ ー MIKA ≠ MEI

——実話。

俺と、現役モデルと、不倫と…。


こんな人生で、マトモは無理。


たった一度の出会いで、人生が壊れた。


これは、その記録。

————








撮影の日になった。


時間ぴったりに、

店の前へ白いワンボックスが

滑るように止まった。


スライドドアが開く。


ミカが降りてきた。



ミカ……だけじゃない。






その後ろから、


・カメラマン

・照明

・メイク

・レフ板を持ったアシスタント

・機材持ち




“プロの現場そのもの”

みたいな集団が

次々と降りてきた。




金属の三脚が広がる音が、

店の空気を一瞬で“現場”に変えた。






シン

「えっ……」





ミカ

「撮影の人たちです。」

「アタシが呼びました。」

「請求の料金は変わりません。」

「ご安心ください。」





ヒールの音を

コツ、コツと響かせて

俺の横を素通りする。



モデル料なんざ、

高くなっても どうでいい。


ただ、ミカとの間に

唐突に“壁”ができた気がした。



そっちのほうが気になる。






クルーたちが一斉に会釈してくる。



その瞬間、

俺の店は完全に

“メイの現場”になった。







ーーー






『メイ』

というのはミカのモデル名だ。


占い師につけてもらったらしい。


本名の“ミカ”は

限られた人間しか知らない。


ミカは表向き、

SNSも仕事も全部、

“メイ”でやっている。



レンズを向けられた瞬間、

“メイ”が全てを乗っ取り、

“ミカ”が姿を消した。



港で牡蠣を食べてた少女と

同じ人間とは思えない。





ミカはクルーに囲まれ、

メイクされ、

ライトを当てられた。



その一瞬で、


目の温度が“ゼロ”になった。



表情は綺麗。

動きは優雅。

声も柔らかい。



なのに、

人間味が全部消えている。


まるで

“違う生き物”みたいだった。






クルー

「じゃあ来店シーンからー!」

「メイちゃん、次はこっちねー!」

「はい可愛い、メイちゃんそのままー!」






撮影は容赦ないテンポで進む。


ミカは俺にほとんど話さない。

必要な確認だけ。





ミカ

「ここ使っていいですか。」

「背景はこちらの壁、借ります。」

「施術シーンは照明 どうしますか?」





声は丁寧なのに、

温度がまったくない。







でも…俺は知っていた。


ミカがクルーを呼んだ理由は、

プロ意識だけじゃない…。






それくらいは、伝わる。






ーーー







撮影が終わった。





クルー

「ありがとうございました!」

「もし他にもお仕事あれば、」

「今後ともよろしくお願いします!」






と、電話番号を交換した。










クルーが車に荷物をまとめ始める頃。


俺はミカを引き止めた。





シン

「あの…ミカ、ちょっとだけ…」






ミカ

「メイ。です。」




目すら合わせてくれない。


氷製の槍みたいな声だった。





シン

「あ……ごめ……俺……その……」






ミカは、

ほんの一瞬だけ横目で俺を見た。


その一瞬で

呆れた様子は十分読み取れた。



すぐに視線を逸らす。


その0.5秒の揺れに、

ミカの全部が詰まってた。





くるっと振り返るミカ。





クルー

「メイちゃーん、荷物積みますねー!」

「もう出ますよー!」




車のほうからクルーが呼びかける。





ミカ

「はーい!」





顔だけ、こちらに向けて

横目で俺を見るミカ。





ミカ

「じゃ、また。」





淡々。

氷製の槍を突き刺してくる。





クルーの車へ向かい、

"ミカの香り"が薄くなった。




ミカは車に乗ってすぐ、

俺にLINEを送ってきた。



ポン、と通知が鳴いた。









ミカ

『フォレスト来て。』









前と同じホテル。





この日、俺が、

不倫の神様になるキッカケの、

"最大の武器"をゲットする日になる。

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