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魔王子様の人間界エンジョイ計画!  作者: もちごめ
3:まあのんびりしよや! な!
53/74

50:僕の力? そんなんええから手紙書くで

 肉と玉ねぎを炒め、ハーブを少々加えて香りを出す。


 肉に火が通ったらジャガイモとにんじんを入れ、軽く炒めて水を入れた。


 アクシャが調理している様子をベルが興味津々で眺めているが、当のアクシャはその調理をしながらずっと思考を続けている。


(ミカエルが来るっていう事は取り敢えず、キレイめなカッコして、どっか適当に……いや待てよ?)


 黙々と灰汁取りをしていたアクシャの手が止まった。


(僕、やっぱ天才やわ、最高にええ所あるやん、相手は小賢かろうと幼女やったわ)


 さすがアクシャである。悪知恵はよく働くのだ。









「それが魔界の文字なんですか……」


「うーん……文字っていうか記号に近いんよなあ……僕ら大体戦いで解決しとるから、あんまこういうとこ発達してないんよな。文献も幾つかあるけど、物好きが勝手に字考えて記してあるとか、そういう類が多いからな。エリクスはそういうん詳しいけど、一般的なのはこれなんよ」


 そういえば魔界にいる時のエリクスはよく本を読んでいた。


「エリクスくん、賢そうですもんね! 燃えた文献の内容も覚えてるって言ってましたものね」


 ベルが魔界での話を思い出す。エリクスは自分の父親が殺される際、一緒に燃えた文献の内容を覚えていると言っていた。


「アイツは魔猫族っていう種族なんやけど、アイツらは魔界の書物を扱う種族や。結構凶暴で、集めた本から攻撃魔法を好んで覚える奴らやで。あそこの魔王は“頭はキレるけど使えん”感じやったな、魔法も僕には大した事無かったし。でもまあエリクスは元々読むのが好きみたいやから知識量はあるで」


 そう言いながら魔界流の手紙を書いているアクシャが言った。


 なるほど、それで彼は猫のような目と猫のような口元をしているのか。


 そこでベルは前々から思っていた疑問をアクシャに聞いてみる。


「その、アクシャ様の使う“ご都合魔法”って何なんですか? 便利そうですけど」


「何って、僕の都合の良いようにする力やけど? 便利で当たり前やで?」


「ええ……?」


 玄関の開く音がして、そこにエリクスが帰ってきた。外はもう暗い。リビングで話している2人を見る。


「ただまーっす。何してんすかー?」


 エリクスは本当に何気なく尋ねたのだが。


「おかえり。聖界に手紙出すで」


「アクシャ様のご都合魔法の事聞いてました」


「ええ? 話のメインはどっちすか?」


 アクシャとベル、それぞれが違う事を言うものだから困惑したエリクスだった。


「王子、ウチのコンビニ、新しいハイボール入荷したんで買ったっす。冷蔵庫に入れとくっすね」


「マジ? ありがとう」


 ガサゴソと袋から500mlのハイボール缶を取り出して冷蔵庫に突っ込んでいる。割と大きめの冷蔵庫の一部が酒の缶でいっぱいだった。


「んで? 聖界に手紙っすか?」


「おん。だるい」


 エリクスがリビングに戻ってアクシャの様子を見る。魔界の記号の羅列を見ながらまた口を開いた。


「ほんっと、王子って字が硬いっすよねえ〜。あ、オレ、聖界の文字覚えてるんで、翻訳して書いとくっすか?」


「あっええん? お前僕の部下になって良かったなあ〜」


「っしょ〜? オレ有能なんすよ〜?」


 そんな適当な会話をしながらアクシャがカリカリと手紙の内容を書き進める。


 因みに鍋は現在進行形で煮込まれているが、電気コンロのタイマーがセットされているので安心だ。


「そんで? ベルは王子のご都合魔法知りたいっすか?」


 エリクスが風呂の湯を張るスイッチを入れながらベルに尋ねた。そういえばベルもそれを口に出していた。


「そうなんです! でもアクシャ様が、自分の都合が良くなるようにする魔法としか教えてくれなくて」


「まあ大体そうなんすけどね」


 不満げなベルに買ってきていたジュースを渡したエリクスが答えた。ちゃんと補足しようとソファに座る。


「王子のそれは、魔法っていうか能力って感じっすね。サイスと話している時に聞いたと思うんすけど、捻じ曲げる系っす。事実を捻じ曲げるっていうか」


 そして手で何かを捻るようなジェスチャーをした。


「へぇ……」


「例えばっすけど、ここに存在して欲しい物がない、それを“捻じ曲げて”あったようにする。相手の魔法が邪魔だな、だから“捻じ曲げて”無かったことにする。こういう状態になっているのは嫌だな、だから“捻じ曲げて”好きな状態に変える。そんな感じっす。あとは規格外の念動力っすね」


「へぇぇ……! じゃあ何でも出来ちゃうんじゃ……」


 驚いた顔のベルが羨むような声で言うが、それをエリクスが更に補足する。


「そうでもねっすよ。相手の意思の強さが王子の意思より強かったりするとダメだったり、そういう状態じゃないとダメ、みたいなのは捻じ曲げられないらしいっす。コレばっかりは王子にも試さないと分からないみたいっすよ。ベルの翼もそうっすよね?」


 確かに、アクシャはベルの翼の色が変わってしまった時に一度ご都合魔法で治そうとした事がある。結果としては治らなかった。その時のベルは眠っていて知らないが、エリクスが言うのだからそうだろう。


 ベルがなるほど〜といった風に相槌を打っていると、アクシャの声がした。


「出来た! ほなエリクス、あとは頼んだで。僕はカレーの続きに取り掛かる」


「うーっす」


「やったー!! カレー!!」


 適当に返事をするエリクスと、大喜びのベル。


 取り敢えず、アクシャが帰ってきた時の機嫌も元に戻ったようで何よりだ。これでカレーにありつける。


 エリクスが手紙の内容を確認し……。


「えっ?? 王子?? コレ……」


「ん?」


 アクシャがルーを割りながら返事をする。


「みんなでどっか行こな!!」


 そう答えたアクシャはまたイタズラっぽい笑顔だった。


 

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