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魔王子アクシャの人間界エンジョイライフ  作者: もちごめ
1:新しいオモチャ、僕がもーろた!
4/66

ほな、今日も仕事するかぁ〜

名前のルビを修正しました。

 エリクスはアイドルのライブに出掛けて今は居ない。早朝から飛行機に乗るとの事であった。

 早起きは嫌いとのことだが、こういう時はさっさと出て行っている辺り、彼の狡さの端くれが出ているような気がする。


 今、人間界では朝の7時である。


「んぁあーーぁああああああーーーー……」


 長ったらしい背伸びをする。人間界では割と一般的なベッドを使用している。寝心地は普通。


 アクシャは薄紅の頭をぐしゃぐしゃと掻いた。次にゴシゴシと瞼を擦る。


「んーーーー、仕事行くか……」


 そしてそう言った男は黒い髪に赤い目、血の気のない白い肌をしていた。







「おはようございます、レイさん!」


「おはようございます。 あれっ、可愛い色のマスクですね、似合ってますよ!」


「もう! レイさんたらお上手なんだから!」


 女性社員に愛想良く挨拶を返すレイと呼ばれた男。

 黒い髪、暗く赤い瞳。顔は間違いなく美形であり、肌の白さがそれを生々しく妖美に見せていた。


「今日もお仕事頑張りましょうね!」


 そんな彼が柔く懐っこそうに微笑むと、その場の女性の殆どが頬を赤らめる。


(人間て、単純やなあ……ま、そこもオモロいけど)


 考えながら秘書室に入った。




 射小路(しゃこうじ) (れい)

 彼は秘書として働く三十路の男だ。

 趣味は人間観察。


(人間観察が趣味って口で言うと、何かコミュ障みたいやんな。人に絡まれへんヤツが苦し紛れに言う趣味みたいや)


 とは言え、実際に彼は観察しているのだ。

 何故なら、それが彼の本来の目的の1つだから。


 そう、この男の正体こそ魔界の王子、アクシャが人間に扮した姿である。


 何故か変身しても身長と声、口元にあるホクロだけは変化がない。本人も驚く他ない姿だ。


 ツノは人間に変身すれば完全に消せるのだが、その分魔族として必要なエネルギーの吸収が出来ない。そのため、エネルギーの消費や循環などが絡んだ小難しい話があるのだが、端的に表現すると“ずっと人間のままで居ると体調が悪くなる”。


 人間界に来ているアクシャだが、何もただ楽しみのためだけに来ているわけではない。

 勿論、人間界の食事や酒は魔界にない楽しみであり、特に酒などは多種族の住まう魔界には珍しい物だ。


 それはそれとして、アクシャは人間界で仕事をしつつ人間の楽しみや幸せは何かを観察している。

 それがもしかすると、魔界のエネルギー過多の改善に繋がるかも知れないのだ。

 勿論、仕事は人間界での活動費用……引いては酒代の捻出の為でもある。


 その為であれば人当たりの良い人間として演技し、好まれやすい態度や発言で人間達と打ち解けやすくするのも、アクシャにとっては何ら難しい事ではない。


「社長、おはようございます! 先日ご紹介頂いた旅館、とても良かったですよ、お酒も美味しくて景色も最高でした!」


 笑顔で自身の上司に話し掛ける。

 社長と呼ばれた男は恰幅の良い身体とヒゲを揺らして笑った。


「はっはっは、おはよう! 早速行ったのかね、あそこの温泉は入ったかい?」


 人懐こく話すレイは、周囲から“社長のご機嫌取り名人”と呼ばれている。実際、話し掛けられた社長も朝から機嫌が良さそうだ。


「ええ、ゆっくり浸からせて頂きました! お陰様で今日の仕事も順調にこなせそうですよ!」


 レイの話を聞いてうんうんと嬉しそうに頷く社長。

 それもそうだ、自身が薦めた場所を気に入って楽しんでもらえたとなれば、自身の見る目は間違いなかったのだと自己肯定感も上がる。


 ただ、流石にその部下が笑顔の裏で(クッソチョロいなあ〜)と思っている事など知る由もない。


「という訳で社長、こちらが本日の予定一覧です」


 朝の雑談はキリよく手短に。


 レイは人懐こい笑顔のまま、自身の上司へと仕事の発破を掛けた。


「さあ、始めましょう!」


 人間界、引いては魔界の世直しも小さな一歩からである。


(仕事終わったあとの酒も最高やしな!!!!!!)


 レイ……というよりはアクシャの心の中の声の方が、使命よりも大きい気がするのは気のせい……のはずだ。


 

【レイ】

有能で人当たりが良くて優しい人間。

……を演じているアクシャくんだ!

挿絵(By みてみん)

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