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魔王子様の人間界エンジョイ計画!  作者: もちごめ
2:さ、色々おもろい事始めよやないかい!
33/74

30:まあ、服装はTPO考えた方がええよな

 程なくしてアクシャが玉座の間に戻ると、アコードの他にアクトが参戦してベルを囲んでいた。


 中心にいるベルは困った様子である。


「お姉様? 女子は可憐さも必要ですのよ? この綺麗な翼を活かしたドレスにしませんと!」


「いいや、アコードは分かっていない! この聖族は戦士なのだぞ、勇ましい姿こそ誉れとは思わんのか!」


「まあ! ベル様にお姉様のようになれと仰いますの!? お兄様のオモチャですのよ? 可愛らしくしてあげませんと」


「何を言う! 兄上のオモチャだからこそだぞ、兄上に打たれてもピンピンしている、そんなオモチャの姿が理想だ!」


 どうもベルの姿を魔界風にコーディネートしようとしているらしい。


 そもそも、ベルにアコードを紹介したのは聖族の生態調査の為ではある。それと同時に、種族は違えど女同士であれば放り込んでおいて問題はないかな、と思ったのだ。


 当のベル本人は囲まれてオモチャオモチャと連呼され、不服なような困惑したような表情である。


「あの、大丈夫ですので……」


 やっと口を開いたベルの発言だが、それは一旦聞いてくれた。聞いてくれたのだが。


「いや、魔界の戦士として相応しい格好にしたい」


「いいえ、魔界のレディとして相応しい格好にしたいのですわ」


 これである。


 エリクスはというと、玉座の間には居ない。どこかに本でも読みに行ったか。


 取り敢えず見かねたアクシャが声を掛けることにした。


「おい、どうしても魔界っぽい服にしたいんやったら、何着かベルに見せたらええやん。お前らもドレスか何かぐらいあるやろ」


「兄上!」


「お兄様!」


 服の変更を中止する方には提案しなかった。なぜなら、どうせ魔界の慣れない食事で服を汚す可能性があるからだ。


「あっ!? アクシャ様!? 助けてはくれないのですか!?」


「僕の部下だったらちゃんと上司の言うこと聞いとけよー」


 ベルが今着ている薄いグリーンのドレスワンピースはアクシャが人間(レイ)に変身し、働いて稼いだもの。簡単に汚されてはたまらない。


 どうせこの妹2人には大して着ない服がある。肥やしにするよりは汚して使う方が良い場合もある……はずだ。


「……」


「……」


 2人が顔を見合わせ、そしてベルは引き摺られていった。


 1人になった玉座の間で静かに黙り込む。


(さて……そろそろ昼飯やろかー?)










 サドキエルがエルヴィエルに話し掛ける。


「宿命の子はまだなのですか?」


「それが……」


 紅く美しい瞳を伏せ、エルヴィエルは悲しそうな素振りを見せる。


 月光が眩く入る建物は神殿と言って差し支えない見た目。


 ここは上級でも一部しか入れない……サドキエルの傘下に居る者しか立ち入りを許されない建物だ。


「宿命の子は……あのアクシャと共に居るようなのです」


 それを聞いたサドキエルは、美しい赤髪を大きく波打たせて驚いた。


「堕ちたというのですか……!? 宿命の子が……」


「はい、恐らく翼もそのように変化した物と思われます」


「そんな……そんな事が……」


 そう、こう言っておけばヴェルディエルの捕獲、もしくは討伐と称して彼女の肉体を手に入れやすくなる。


 だからこそ、わざわざ堕天させる為の名前を与えたのだ。万が一ヴェルディエルが帰ってきた、その時に魔族の魔法を受けていれば堕天扱いにできる。


(用意していた“万が一”が上手い言い訳になった」


 ヴェルディエルが一度聖界に帰ってきた時、攻撃の手を緩めたエルヴィエルが少し彼女の姿を確認した。


 それは、彼女の翼の色が変化しているかどうかを確認したかったからだ。


 変化していれば、聖界から落とさずとも「堕天だ!」と言ってその場で殺すことが出来たのだが、生憎当時の翼の色は白いままだった。


 だから聖界から落とすしかなかったのだ。


「このエルヴィエル、自身の不始末として宿命の子の討伐に向かいたく思います。どうか、ご命令を」


 深々を頭を下げる。その下げて隠した顔からは、何一つ悪気など読み取れない。


 月明かりも彼の思惑までは暴けないようだ。


「宿命の子を作り直すためにも、迅速な動きを行う必要があります。……なんと卑劣な男でしょう、宿命の子をも抱き込んでしまうなど……!」


 サドキエルまでもが歯噛みしている。


「心中ご察し致します。私も信頼していた部下がそうなるなどと……」


「ああ、エルヴィエル、あなたが最もツラく、悲しいでしょう……許します、一刻も早く魔族の手から救い出し、その肉体を終わらせて差し上げなさい」


 上手くいっている。エルヴィエルが動きやすいように全てが。


「なんとお優しい……ご配慮、痛み入ります。このエルヴィエル、必ずや宿命の子を救って見せます」


 我ながら感動的な芝居だ。だが、彼らは見抜けない。


 何なら“宿命の子”と呼ばれる存在などない。生まれ変わりも存在しない。


 エルヴィエルが適当にその辺の無名の下級聖族を選び出しているだけの事だ。


 では何故そんな単純なやり口が500年に渡ってバレずにいるのか。


 これがエルヴィエルの力の1つ。


 洗脳。


 力を発している最中のエルヴィエルの瞳を直視した者達は、エルヴィエルの良いように行動や考えを捻じ曲げられ、疑問にも思わない。


 だからこそ、ヴェルディエルに会っても戦闘もせずに彼女をアクシャから引き剥がして連れ帰る自信がある。


 アクシャにこんな力は全く効かなかったが、それ以外に効果の出なかった者は居ない。


(お陰様で……腑抜けばかりに出来て助かるよ)


 そう思いながら、誓いを立てるかのような表情でサドキエルに言った。


「このエルヴィエルにお任せください」


 そして紅い瞳が妖しく光った。


 

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