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魔王子様の人間界エンジョイ計画!  作者: もちごめ
2:さ、色々おもろい事始めよやないかい!
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25:外は堂々と歩けよ?

「ほら、魔界行く前にゴミ集めるでー、自分の部屋にゴミあるんやったら今持ってこいよー」


 日曜の朝早くにアクシャがベルとエリクスの2人に声を掛ける。


「燃えるゴミだけやで」


「アクシャ様、コレは燃えますか?」


「そらプラゴミや。燃えるゴミとは別やから分けて置いとけ」


 大きなゴミ袋を持ったアクシャがベルとやり取りしている。エリクスがその袋の中に自室から出たゴミを入れた。


「オレ、外のゴミ箱に持っていってくるっすよ」


 エリクスがアクシャからゴミ袋を受け取ろうとしたが、アクシャは譲らなかった。


「いや、ベルにやらせる。ベル、ウチの外にゴミ置いとくデカい箱があんねん。車置いとるやん、その向こう側にあるから、そこに持って行ってくれ」


「あっ、はい!」


 今日は日曜日。ゴミの収集日ではないため、自分の敷地内でゴミをストックしておくのだ。

 魔界から戻ったらちょうどゴミ出しの曜日だろう。


「重いで」


「大丈夫です!」


 気を付けながらベルにゴミ袋を渡した。


 意外にもベルはそれをヒョイと持ち上げ、言われた通りの場所に向かっていく。


「割と力あるんすね、ベル」


 エリクスが正直な感想を口にする。


「まあ僕の討伐を命令されとったぐらいやしな。それなりに強いんちゃう? 知らんけど」


 関西弁お得意の“知らんけど”を最後に付け足してカーテンを閉めた。留守中に家の中を覗かれるのは気分が良くないからだ。


 程なくしてベルが家に戻り、それぞれの準備をする。


 アクシャとエリクスはツノを生やし、ベルは背の大きく開いた服から翼を生やし、額に(ニンブス)を装着した。


「ほな。行こかー」


 1つ、今日の目標はこれで達成できただろう。上手く行ったようで気分が良い。


「ほら早よ入りやー」


 アクシャが黒く禍々しいゲートを開き、笑った。









 エルヴィエルは、捕虜か何かになっているかも知れないヴェルディエルの行方を探していた。


 これでもう何日目だろうか。流石に疲弊してきている。


 聖界に帰る度にサドキエルに「新しい宿命の子は出来ましたか?」と訊かれ、言葉を濁すこちらの身にもなって欲しい。


 今はアクシャが人間(レイ)として出現する地域の周辺を飛び回っているところだ。


 あの男は500年前ぐらいから人間界に出入りしている。


 流石に普通の人間と違って歳の重ね方が大幅に違うせいか、何年経とうと見た目がほぼ変わらない。


 だからアクシャは大体20年前後で滞在する場所も身分も、そこに居たという事実すら捨て、別の場所へ移ってしまう。


 そうされる度にエルヴィエルはまた新しくアクシャの居場所を探さなければならないのだ。


 それがちょうど新しいヴェルディエルを送り込むタイミングと上手くハマっており、ヴェルディエルの育成とアクシャの捜索で骨を折っている。


 ……今は失ったヴェルディエルの捜索に骨を折っているのだが。


 幸い、人間が集まっている地域に現れるのは分かっている。


 また、アクシャが人間になっている時の姿は1つしかなく、他の姿にはなれないようだ。それもこちらにとっては都合が良い。


 そして何度か羽ばたいて空を飛び、何かが目を引いた。


「あれは……!」


 見覚えのある金髪。背が大きく開いた薄いグリーンのドレスワンピースを着た女が大きめの袋を軽々持って何やら箱に入れている。こちらからでは背しか見えないが、あんな金髪はこの国……地域にそう沢山いるわけではない。


 エルヴィエルは空に静止し、モノクルに触れた。


 魔法の掛かったモノクルを、その女がよく見えるように調節する。


 袋を箱に入れ終わった女は家の中に戻るつもりだろう。振り返って玄関の方に歩いて行く。


 今度こそよく見えた。


 金の髪に紫色の瞳。


 間違いない、ヴェルディエルだ。


「み、見つけた……!! 見つけた、見つけたぞ!! ようやくだ!!」


 良かった、死んではいないが肉体がそのまま完璧に存在する。


「は、はは……! 運命は私を見放さなかった、はは、はははは!!!!」


 この数日の焦りと苦労が全て払拭された気分だった。


「というかアイツ、普通に生活している様子ではないか!! 聖界を裏切りおって……」


 聖界から堕とすような名前を与えておきながら、そうのたまう。


 どうもこのエルヴィエル、自分の事は棚に上げておく癖があるらしい。


 そんな上級聖族、エルヴィエルはそのままヴェルディエル……ベルを観察し……その姿が玄関の付近で不自然に消えるのを確認した。


「……なるほど、なるほどな……結界か……」


 それなら納得もいく。今のエルヴィエルも人間や魔族から視認されないよう、障壁を張って行動している。


 聖族なら必須の魔法。規模は違えど、あの魔王子にも同じような事が出来て当たり前だ。


 しかしここからどうするか。それが一番の問題ではある。


「急な襲撃では普通に返り討ちだ。どうにかしてあのグズの身体だけ手に入れる方法はないか……」


 そう考えてすぐに思い当たる。


「ヴェルディエルだけが外出するか、アクシャのいない時を狙うか……」


 正直、アクシャの従者のエリクスぐらいなら、居たとしても何とか出来るとは思うのだ。あの小柄な少年の事も調べてはいるが、魔法が得意程度だったら勝てそうではある。


 エルヴィエルも魔法に関しては自信がある。その自信も一度は折られたのだが、今はその力を存分に発揮して聖界でも立場ある存在になっている。


 因みに一度その自信を折ったのはアクシャだ。あのような規格外は自分など相手にならないだろう。というかそうだった。


 思い起こされる、エルヴィエルの昔の記憶。


 それは何百年経とうと、非常に苦い物だ。


 

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