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4話.伸長


 今一度、この四人の相互関係、相関関係をはっきり明示しておく。


 篠森しのもり智里ちさとは、俺こと竜崎りゅうざきようの幼馴染である。

 俺の幼馴染であるということは、俺の双子の兄――竜崎(けん)の幼馴染でもあるということだ。親がもともと知り合いで、家がご近所さんだったというご縁もあり、毎日のように遊び暮らしたように感じる。

 彼女のことを今ここではっきりとしておく必要性も、あまりないことだとは思う。

 特殊な女の子ばかりが出揃っているこのご時世で(活字上とはいえ)、彼女のような女の子が出るような幕は、はっきり言って望まれてはいないのだと思う。

 篠森智里は、簡単に処理してしまうと、普通の女の子だ。

 ちょっとだけ男勝りな面がある、今ではめっきり珍しくもなんともなくなった人種である。

 しかし、どこまで男勝りかと言われると、それはそれで悩みどころだ。中途半端な感じなのだ。

 喧嘩が強いというわけでなく、強引で傍若無人な態度をとるというわけでもない。

 今時どこにでもいる口調の、どこにでもいる風貌の、どこにでもいる女子高生だ。

 俺と同じクラスに所属中。

 1年C組。

 だったのだが。

 春休み中ということで、無事に進級できていられれば、今は1年生でも2年生でもない、ただの私立彩桜学園生徒、でしかないはずだ。

 進級できていればの話。

 なにせ俺と同じ程度だから。

 中の中ぐらい。

 いや、あいつは上の下くらいか。

 なんか羨ましい。

 ……話を進める。

 彼女はむしろ普通だ。

 しかし、普通じゃないのはむしろ彼女の周りの人間と言ってもいい。

 具体的に言うと、彼女の家族だ。

 核家族で、今は両親と共に住んでいる。

 前にも示したと思うが、彼女の両親のやることはどでかい。

 スケールも、規模も。

 それに大胆なのだ。

 娘の登校を楽にさせようと家を移動したり、肉が大好物の娘のためにデロデロの肉弁当をこしらえたり、もう親バカのレベルをとうに超えている。

 娘としては、そんな親の愛を複雑にしか受け止められないわけで……。

 愛情の裏返し。

 恨んだり憎んだりはしていないものの、はっきり言って迷惑なのだろう。

 180度、愛情の注ぎ方が間違っている。

 そんな親の下で育ったが故の不幸か、彼女ほどの普通娘が生まれた。

 俺たちの相関と言ったのだが、なんだか単なる人物紹介のようになってしまっているが、続ける。

 姫宮ひまみやさや

 一言で言うなれば、ロリ少女。

 ロリな少女。

 救いようもないくらい幼い。

 幼女だ。

 幼児か?

 幼稚だ。

 こども。

 そんな感じ。

 昔からの幼馴染だ。

 俺と賢、智里といつも遊んでいた。

 彼女の明るい性格からか、生まれ持っての性質か、彼女には友人が多い。

 中心的存在というわけでも、リーダーシップが取れるというわけでもない。

 むしろ、その手のタイプに可愛がられる感じだ。

 そんな立ち位置だから、彼女自身は同年代とはあまりつるまない。俺たちと遊んでいた。

 年が一つ違うだけだ。明確なジェネレーションギャップなんて存在しない。

 言葉(づか)いが子供っぽいせいもあるのか、数年前から成長をしている感覚がない。

 当然、相対的に俺も成長しているため、単に気づかないだけだと思うのだが。いや、そうであってほしい。兄的存在としては。

 兄的存在。

 そういえば、前から「兄ちゃん」と呼ばれていたのはなぜだったっけ?

 まぁ、その話はいいか。

 結局、そんなところだ。

 この女子二人には明確な差がありすぎる。

 智里は男勝りな感じ。

 彩は幼女のような感じ。

 智里は引っ張る側。

 彩はついていく側。

 智里はお節介。

 彩は甘えん坊。

 そんな感じだ。


 昼時。

 俺たち高校生三人組は、公園で偶然出会ったワンピースの少女――彩を巻き込んでの昼食へと洒落込んだ。

 と言っても、まだファミレスに着いたばかりなのだが。

 窓際の席。

 俺と彩、賢と智里ということで向かい合う。

 別に深い意味はない。

 幼い幼馴染という小動物になつかれてしまったお兄ちゃんとしては、隣にいるのが義務のようになってしまっているのだ。

 そういうことで、理解のある2人は向こう側へ、というわけだ。

 まぁいいか。

「陽ちゃん」

 隣から声がした。

 彩だ。

「私、お金持ってきてないけど……」

「まぁ、仕方ない。俺がおごってやるよ」

「ほんとぉ?」

「ああ。誘った言いだしっぺは俺だし」

「やたー」

「ただし、今回だけだぞ」

 俺が釘を刺すと、賢が急に割り込んできた。

「血の繋がりがある僕にでさえ、そんなに優しくしないのに……」

「血の繋がりがあるからこそ、だろ? 普通家族はそんなもんだ。智里の家が特殊なんだよ」

「悪かったわね。いまどき、男兄弟二人揃って同じアパートの同じ部屋よりよっぽどましでしょ」

 智里の悪態に、俺はおどけて答える。

「なんなら一緒に住むか?」

「お・こ・と・わ・り!」

 強い口調を浴びたからか、賢がしょんぼりとうつむいた。

「きっと楽しいのにぃ……」

「賢。お前な、いろいろ問題とか考えないのか……?」

「なにが? 陽だってむさいとかボヤいてたじゃないか」

「ここで女子を本気で巻き込もうとするなよ……」

 どこまでも純粋で誇れる兄の賢くんだった。

 いつまでも雑談タイムを取っているわけにもいかず、ランチタイムへと入ることにした。

 定員さんからの営業的挨拶に、メニューを広げながら悩みこむ4人。テーブルいっぱいに広がるメニューを、我が物顔でほぼ我が物として独占しているのが彩だ。一番年下(と言っても一つ違い)が、こういうときは優先されるのだろう。

「んじゃあ、えとえとねー……和風ハンバーグセットのご飯味噌汁バージョンと、クリームソーダと、チョコバニラのスパイラルアイスと、抹茶パフェと、アップルパイと――」

 彩がまだまだ口を動かす中、定員さんが手持ちの品物を入力する機械を早打ちする中、俺は彩の口と定員さんの腕の両方をふさいだ。

「おいおい彩ちゃん。そりゃどういう嫌がらせかな? それとも新手のジョークかな? この優しい陽ちゃんが受け持ってあげることを利用して、どこまで自分の食欲を満たそうとしているんだよ?」

「え? でも、これは陽ちゃんの分も含んであるしぃ……」

「そんな苦しい言い訳があるか!」

 俺にはデザートだらけの甘ったるい昼食しか与えられないわけか?

 まだ獄中の方が栄養取れるよ。

「彩、せめてデザートは一つにしてくれ。ドリンクバーくらいは取ってやるから……」

「はぁい……」

 明らかに落ち込んだ表情で、彩がうつむきながらうなずく。本当に図々しいやつだな。

 ふと見ると、目の前の2人はやけにこちらをにやにやと見ていた。

 俺が訝しげな表情をしていたのだろう。説明するように賢は、

「いやね、陽はいいお兄さんになるだろうなぁって……」

「いや、今からじゃさすがに無理だろ」

 ていうか、お前がしっかりしてくれよお兄ちゃん……。

 食事。

 やっと本来の目的へと辿りつけた俺たちだった。

 俺と賢はラーメン、彩はおいしそうにハンバーグを頬張っている。智里はマーボー定食を食べているらしかった。

 というか、昼からハンバーグはどうなのよ実際。

 これだけ食い意地はっていて、なぜここまで身体的成長が見られないのかが不思議で、その上不安で仕方がない。

 本人曰く、「太らないだけまだマシ」らしいが……。

 思い切って智里に訊いてみる。いきなりの話題提示なので、内容を遠回せば俺の真意が彩に伝わることもないだろう。

「なぁ、智里。女子ってさあ、体形維持が何よりも優先されるわけ?」

「それ、私が太ってるとでも言いたいの?」

 急に変な方向に勘違いされてしまった。

「陽ちゃんひどい。女の子にそんなこと言うなんて」

「そうだよ、陽。智里ちゃんって言ったって女の子なんだから、その言い方は失礼だよ」

 彩はいいとして、賢は言い回しのおかげで智里に頬を引っ張られている。口は災いのもとだな……。口がなければ災いどころかなにも発展しないのも事実だけど。

「違う。俺が言いたいのは、上下の肉付きよりも左右の肉付きの方がそんなに重要なのか、ってことだ」

「そりゃそうでしょ。確かに、背の高いモデル体形は羨ましいけど、あそこまで背が高くなくてもいいんじゃないかとも思うわよ。それに、女の子はヒールだって履くし、身長の方はあまり気にしないものだよ」

 なるほど。

 モデルの人なんかは、背が高い上にヒール履くからどこまでも大きくなっちゃうもんな。しかも、その上で理想の男性を挙げると、「私より背が高い人――」とか言い出すから困るし(俺が困ることもないけど)。

「あれ?」

 俺は変な違和感に気付く。

「でも、そうなるとおかしくないか?」

「何が?」

 マーボーをすくう手を止めて、智里が耳を傾ける。

「モデルの人は、みんなにファッションのポイントだったり商品である服の販売促進だったりを担ってるわけだろ?」

「そうだけど?」

「でもさ、女の子は別にあそこまでの慎重になりたいわけじゃない。ファッションって、体型もそうだけど、服でサイズが変わる方が大きい気もするよな? だったら、モデル稼業を営んでる人たちの仕事は本末転倒なんじゃないか?」

 俺の一言に説得力があったのか、智里はうーん……、と首を傾げる。

「でもさ、モデル専門で活動してる人もいるけど、あの人たちもタレントと大差ないんじゃないかな?」

 智里の意見。

「生まれ持ったものを才能って言うならさ、自分の体なんか立派な才能タレントなわけじゃない? だったらさ、それを活かした職業に就くのなんかタレントと呼べるものだよ」

「うぅん、そうかぁ……」

 そんなこと言うのは、ここだけにしといた方がいいのかもな。

 変な人に聞かれでもしたら、「じゃあ体を使ったご奉仕もタレントかい?」なんて言われそうな会話だ。そこまで怪しいセンテンスなんか一つもなかったけど。

「うーん……」

 智里とだべっていると、横から唸り声がするのに気がついた。

 見てみると、チョコパフェを一気にたいらげた彩が腕を組んで目を閉じていた。ハンバーグは半分冷めてしまっている。

「どうしたの? そんなに思い詰めたようにして……」

 まだ頬を赤くしている賢が、彩に問うた。

 賢は他人の様子に対してあまり感化される方ではないが、知人、特に幼馴染が悩んでいるようにしているのを放っておける人間ではない。

 彩は、腕組みを続けて、

「いや、私はどうやったら理想的な体形になれるのかなぁ……」

「理想的って……?」

 賢が問い続けると彩はしばし沈黙を置いて……

「押切もえちゃん」

 その瞬間、沈黙が走った。

 まるでこのテーブル周辺だけが現実世界と切り離されたかのような、そんな隔絶された疎外感。

 こいつは……そんな大物モデルに理想を定めていたのか……。

「やっぱねー、エビちゃんはよきライバルとして見るべきだよね。二人の女王が業界に名を馳せているけど、一歩だけくらいの高い存在。そこに追いつこうともがく方が、かっこいいじゃない?」

「押切もえちゃんはともかく、お前までそんなに高い存在をライバルに設定するんじゃねえ」

 彩の身長を案じての会話だったが、無用な気遣いどころかどこまでも疎遠の話題だった。



 どうも、休日更新のNOTEです。

 私自身、身長はあまり高くない方なのですが、コンプレックスとまで感じているかどうかと訊かれれば、まぁ気にしない方向の人物です。

 才能やら努力やら、私は常に現実逃避なもんですから。

 彼ら彼女らには頑張ってほしいのです。


 さて、物語中の休日モードもそろそろ終わりたいと考えている今日この頃なのですが、なかなかうまいこと進みませんね。

 かつて書いてきた作品は、まあまあうまいこと進むようだったのですが……。

 やっぱり、ぶっちゃけるとストーリーを何も考えないままに書いているのがいけないのでしょうね……ははは。

 しかし、次回ではいよいよ彩桜高校へと入りたいと思います。

 今までのは長いプロローグとでも思ってください。

 ま、確実なお約束はできませんけど、こんな私の趣味に付き合っていただければ幸いです。


 評価や簡素などをいただければなお幸福です。

 どうぞよろしくです。

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