閑話.結局、ヒロイン的立ち位置ってどうやって決まるのかな?作者の意思かな?読者の見方かな?
「日常じゃねえ!」
俺の部屋のパソコンを見ながら、彩が発狂した。
「なんだこの展開は! おかしいだろ! これまでの『日常的な日々』が完全に消え去ってるじゃねえか! 何あの凶悪な生徒会! 何この高校の黒歴史! 今後の展開はどうなんの!? 気になる! 続きはまだか!」
頭を抱えて身悶えしている。それはもう猛ったバイソンかと思うほどに。ツインテールが荒々しく振れる角にも尻尾にも見えた。
!マークの連射が痛々しいです。スネークさんだってこんなに浴びることないだろうに。
「って、人の部屋で何やってんだよ。ずかずか入り込んで我が物顔でパソコン開いたかと思いきや、急に絶叫しやがって。それ以前に、キャラが崩壊してんのは大丈夫なのか」
「知るかボケ! 最近私の出番が少なくなってきてると思ったら一年もストーリーほっぽり出しやがって。番外編で出したからってごますれると思うなよアホンダラぁ!」
「ちょっと待って! もうフォロー不可能な領域に来てるよ!? あんまり汚い言葉を吐くのはどうかと思うな。言葉を選ぼうぜ、言葉を」
これじゃ本編に影響を及ぼすぞ。実はこんなキャラを隠しながら生活してる、みたいになったら見方がまったく変わってくるじゃないか。
そうして見てみるとなんか納得いくじゃないか。今日はなんか赤いワンピース着てるし(その設定生きてたんだ)。
最初から暴れる気満々だったのかも。
「っていうか何? あの新キャラ。双子とかキャラ被りじゃん。男の子なのにかわいい顔しちゃって。ヒロイン的立ち位置の私がかすんでいくのが見えてるよ」
「いや、かすんでいく原因はお前の言動の数々だと思う」
立ち位置とか言うな。
っつか、お前ヒロインを気取ってたのか?
甘いわ幼児体型が。
「ヒロインってのはな、元気があって少しばかり厳しい態度をとるけど、心の奥では主人公のことを思っていて……。そうだな、成績は優秀な方がいいな。若くして赤服を着られるくらいの。のちのちインパルスを任されるなんてのは、恋人としては誇りだよな。出撃前にこう、口づけなんかしちゃって」
「確実にルナじゃん」
「名前出すなよ……」
「あんなのがいいの!? じゃあこの作品は今後どうなっていくの! DNAいじったりなんかしないよね? 髪とか目の色がカラフルになったりするの? あんなの反則じゃん! あれだけすれば誰でもかわいくなるよ! 不死身の主人公くらいでき上がるよ」
「反則とか言うな! それがいいんだろ。あの紅の髪色が美しいんだ。そこは譲れないね! 第二世代コーディネーター舐めんな」
不死身の主人公に関してはノーコメントだ。俺も彩の意見に賛成なもので。
「そんなこといったら私だって、シンみたいな人がよかったもん! ひたむきに頑張る姿と、一番最初の悲鳴がなんとも言えなかったもん! そうじゃなければ黒桐幹也でもいいけどね」
「なんでそこまで鈴村ボイス推し?」
結婚おめでとうございます、鈴村さんに坂本さん。
いやいや、話がずれすぎ……。
「それより陽ちゃん、前と好み変わったんだね。大人のお姉さん、って小学生の頃は言ってたのに」
彩はそこでさすがに冷静になってたようで、声のトーンとツインテールが下がってきた(生きてんのかあれ……)。
っつか、小学生の俺はそんなこと言ってたのか。どんだけマセてんだよ。
「へ! 見くびってくれるなよ。俺だって成長してるんだ。昔と今じゃ人間の『質』ってもんが違うんだ」
なぜか胸を張る俺。
好みのタイプが変わるのに成長も何もないと思うが。
「そうだよね。ウィキペディアの知識を丸暗記してた時代とは違うよね」
「やめろ! 俺の恥ずかしい過去を露呈すんな!」
そりゃウィキペディアが教科書であり聖書であった時期もあったよ。「ああ、俺が小学生の頃に知ってれば、ウィキペディアの内容をまる写しした自由研究ができる」と思ってた時期もあったよ。
しかし、今は違う!
そんなことをするような、思うような俺ではない!
「俺は試験問題をネットに質問するようなことはしないさ!」
「でも隣の智里ちゃんに質問するのも問題じゃないかな」
……なんで知ってんだよ。
智里のやつか。あいつ俺の悪事に関しては口軽いからな。お目付役かよ。
「智里ちゃんが見張ってくれるなら、私としても安心だよ。陽ちゃんくらいのおてんばだと、いつ腐海に潜り込んでいくかわかったもんじゃないからね」
「さっきまで警戒色を露わにしてたお前に言われたくねえよ」
せめてワンパクって言ってくれ。おてんばって……どこぞの姫様じゃないんだから。
「それより、お前は昔とちっとも変わんないな、彩。ちゃんと年齢は進んでんだろうな」
「当たり前じゃない。これでも2センチ伸びたんだよ」
「そのワンピースも、いつ買ったやつだよ。だらしなくなってるわけでも色褪せてるわけでもないけど、だいぶ前から見たことあるぞ」
「これだって、小学生の時にはぶかぶかだったもん」
「お前本当に高校生かよ!」
いくらワンピースがあまりサイズを気にしなくていいからって……。小学生と大差ない体型の高校生がいていいのか。
なんかいたたまれなくなってきた。
俺はゆっくりとした動作で彩の両肩に手を置いた。
「お前にヒロイン役は回ってこないよ。でも安心してくれ。俺はお前のこと、妹のように大切だと思ってるからな」
目を瞑って頷く俺。やっぱり、気の回し方がさすがだな。悩んでいる子を見たら励ましてあげる。これこそが紳士たる竜崎陽の真価だ。これは決まった。
瞬間――轟音と共に、瞼の裏に火花が散った。
おでこに受けた衝撃で、俺の頭は後ろに飛んでいく。ぎりぎりのところで首が頑張ってくれたから良かったものの、危うく頭部と胴体が分裂するところだった。
「ってぇ! 何すんだよお前! ヘッドバットの威力にも程があるぞ! 全盛期の清原か! 場外まで吹っ飛ぶところだ!」
「陽ちゃんにはわかんないよッ。小さいのだってステータスなんだよ。手に入れようと思ってもできないチャームポイントだよ。最近じゃ、街中でワンピースみたいな薄着してると視線を感じて恥ずかしいんだから」
「お前そりゃ被害妄想、いや誇大妄想だって。実際にはそんなことねえよ。お前が望んでる世界を脳内で創り上げてるだけだ。少なくとも俺はチビぺったんに興味はな――げぶぁ!」
ヘッドバット二回目だった。二打数二安打だ。
「それ以上言わないで陽ちゃん。さもないとツインテールで首締めるよ」
「手の形にでもトランスできんのか!?」
どこの金色の闇だ。トラブルなんて言葉じゃ済まない事件だ。
「そんなに言うなら触りなさい! そうすれば私の魅力にもちょっとは気づくはずだよ陽ちゃん!」
そんなことを言いつつ、彩は俺を押し倒してきた。俺の上に乗っかり、手首をがっしり掴んでくる。自分の胸元に持っていく気だろう。
「やめろバカ野郎! 俺は番外編でこんなことしたくない! せめて本編でやれよ!」
本編が見向きもされなくなったらどうすんだ。
暴走する彩に抵抗する俺。上から抑えられると案外強いんだな、女の子でも。
「いいよ。こうなったら番外編の女王とでも呼ばれてみせるから!」
「どこまで貪欲だお前!」
バタバタと響く戦闘音(?)の中、部屋の扉が開いた。
俺と彩はいっぺんにそちらを向く。
そこには智里が立っていた。仁王立ちで眉をつり上げてるけど、なんでだろう。
しんと静まり返った空気に、智里の声が反響する。
「うるさい! もうちょっと静かにできないの、二人とも!」
……。
「…………」
「……………………」
気づけば、俺と彩はいつの間にか並んで土下座していた。やろうと思ったわけでもないのに、身体が勝手に動いていた。
「「…………ごめんなさい」」
まさかこの歳になって夜までお説教されるとは思わなかった。
全然成長してませんでした。
なんとか書けてますNOTEです。
このお話の更新を再開してから新たにお気に入り登録していただいた方がいるみたいです。本当にありがとうございます。
というより、一年も忘れ去っていたこの作品の設定を、思ったよりも自分が覚えていたことに驚きでした。それほど思い入れが強かったんでしょうか。それはわかりません。
しかし、この話が少しでも多くのみなさまのお気に入りになってくれれば幸いです。
個人的かつ適当な思いで始めたこの話ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、NOTEでした。