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閑話.お待ちどう


「ねえようちゃん。こっち向いて」

 この21世紀に入ってからは恐らく初めてであろうムーミンのような呼ばれ方をした俺だったが、しかし素直に振り向いて見る。するとそこにいたのは、くりくりおめめのツインテ・姫宮ひめみやさやだった。

 休日のある日。

 トイレから自分の部屋に戻ろうとしたところで呼ばれたのだ。

 自分の部屋に戻るためにはどうしても共用スペースであるリビングを通らなくてはならないので、それはいいにしても。

 彩はソファに寝転がって、頭を手すり部分からぶら下げてこちらを見ていた。頭を逆さまにして向いてるので、彼女ご自慢のツインテールが床まで垂れ下がっていた。

「………………」

 こんな妖怪いそうだな。

 女子高生を見た際の感想としてはいかがなものだが、気味の悪さで言ったら妖怪に引けを取らないだろう。2本の髪の房が脚部みたいにひょこひょこしている。

 気持ち悪い。

「なんだよ、彩」

 別にどうとでもなさそうに、ただ呼ばれたから返事をしただけ、というように言葉を出した。

 すると彩は、

「どこに言ってたのさ」

 どことなく強い口調で、どこか俺を非難しているような顔つきで返してきた。

 ……いやいや。

 逆さまの顔でそんな顔されてもちっとも怖くないというか。

 逆に愉快なだけの顔になってるぞ。

 そろそろ顔も赤くなってきているし。

「あの……そんな20世紀の不良娘みたいな喋り方だっけ? お前」

「そんなことはどうでもいいよー。それより、どこに言ってたのかを訊いてるんだよ」

「どこって……今さっきトイレから出てきたばかりじゃんか。汚い話で申し訳ないけど」

「違う! 違う違うよ。全然違うよ。勘違いしないでよね」

 ツンデレ風な台詞を挟む要素がどこにあった。

「私が言いたいのは、この一ヶ月間、どこで何をやっていて、どうしてこの閑話まで1話も進んでいないのかってことだよ」

「………………」

 ………………。

 ………………………………。

 いや、俺(竜崎陽しゅじんこう)に言われても……。

「三点リーダで返したって納得しないよ。私はその理由を聞くまで、頑としてここから動かないよ」

 そう言いつつ、仰向けでソファに寝たまま、頭をだらんと垂れてこちらを見る。

 強そうにでも見せたいつもりなのか、腕組みもしていた。

 全然強そうじゃない。

 っつか、その状態のままでいると、頭に血が上って死ぬぞお前。

 だんだん顔色が青くなってきてんじゃん。

「そんなん、理由なんかないだろ。ただサボりがちだっただけなんじゃねえのか?」

「こちらとしての文句を言わせてもらうとだね、前シリーズなんか露原つゆはらさんの話でさ、私の出番がまったくと言っていいほどなかったじゃない? だから今回は、と思って気合入れたのに、未だ出演なし。新キャラが湯水のように出てきたのにさあ、私の出番はやっぱりなし。何これ。いじめ?」

 知るか。

 俺に言われても困るわ。

「新キャラわんさかパラダイスの最中、私たちメインキャラは『それは置いといて』の対象ですか」

「仕方ないだろ。話の進行上、新キャラの登場は避けられないことなんだから」

「陽ちゃんはそれでもいいよ。モノローグ担当なんだからいらないなんてことがないもん。常に語り部なんだから必要なことでしょ」

「でも、俺はお前たちが必要ないなんて言ったことないだろ」

「え……?」

 急に強い口調で言った俺に対し、彩が少し目を見開いた。

 ああそうかよ。

 聞こえなかったってんなら何度でも言ってやる。

 こういうとけしかけられたことに対しての逆ギレみたいに取られるかもしれないけれどな、そんな格好いいとか性格悪いとかそんなもん関係ない。

 必要か必要じゃないか。

 俺の周りで、そんなことで悩まれる筋合いなんかない。

 だって、俺は一度だってお前や他のやつら。

 けんだって智里ちさとだって、露原だって、これからどんどん出てくるであろう新キャラの面々だって。

 誰一人いらないやつなんかいないんだからな。

「俺はお前が必要なんだ。これまでだってこれからだって、いらなくなるなんてことはないし、ずっとそばにいて欲しいんだ」

「よ、陽ちゃん……」

「だから……だから、俺は……」

 しかし、言葉の続きを紡ぐことはできなかった。

 バタン、と。

 彩がソファの上から、床へと落ちたのである。

 ソファの上で一旦転がったときは、まるで自分の力で動いたかのように見えたが、そこからはただの落下だった。

 物理現象にのっとった自由落下である。

「さ、彩!」

 思わず叫んで、俺は彩のもとへと駆け寄った。

 そして、彼女の上体を抱きかかえる。

 軽い。

 まるで体重を感じさせないほどに軽い矮躯わいく

 抱き上げた彼女の顔はぐったりしていて、とても直視できないような、普段から見せる女子高生のかわいいそれとは遠くかけ離れてしまっていたが、それでも、俺は呼びかける。

「どうした? 落ちた時に頭でも打ったか!? 彩。俺がわかるか? 彩!?」

「よ、陽ちゃん……」

 薄く開けた、とろんとした目で、彩はこちらを見た。

 力なんてこもっていない。

 こめられない何かが、今の一瞬の内に、彼女の身に遭ったというのか。


「気持ち悪い……」


 まあ、あんだけ頭を逆さまにしてたらねえ。

 血も上るわな。


「もういらねーよ。こんなオチ」




 ご無沙汰とか言っていい期間かはわかりませんが、結構な月日を開けてしまいましたNOTEです。


 意味のない話から入りますと、どこかに『セレナさん』と『キューブさん』がいないかな、ッて思ってます。

「セレナです」

「NOTEです」

「キューブです」

 とか、

 一度やってみたい感じで。


 …………。

 すいません。

 現実逃避をしてしまいました。

 実際にいろいろ忙しかったというのもあるのですが、一時期はスランプ状態にも似たことがあったので、これだけご無沙汰してしまいました。

 元々あまりいい文章じゃないのにスランプも何もないとは思っておりますけれども、そこはそこで、寛大な皆様のご評価にお任せしたいと思います。


 さて、今回は閑話ということでお届けしましたが、近いうちに本編の方もお届けしたい次第ですので、できればご一読ください。


 この空白期間内、見限らずにお気に入り登録してくれていた皆さんに感謝の念をこめつつ。

 NOTEでした。



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