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27話.平和ボケ


 俺は車について、あまり詳しい方ではない。しかし、クラウンは好きな方に分類できるものだ。クールだし、座り心地がいい。

 特に、利家としやさんの『アスリート』はどこか爽快な気分さえした。

 まあ、それにはスピードメーターの振り切り具合も加味されていたのだろうけれど……。

 俺を乗せた黒塗りの車は、市街地の中心部へと向かった。

 久しぶりのシートに腰をうずめつつ、車内を満たすビートに耳を傾けていた。

「で、何の用事ですか? 利家さん。本当に、ただのドライヴってわけでもないんでしょう?」

「お、それに気づいた上で同行してくれるってことは、返事は否応いやおうなしにOKだと、そう思ってもいいんだな?」

 利家さんはサングラスの奥の目をニヤつかせて言う。

「いやあ、助かったよ。なんせ今回は、俺一人じゃあ面倒なことだったからな」

「いやいや。勝手に話を進めないでください。さっきの利家さんの言葉じゃないですけど、俺だって一応は丸くなったんです。またここいらで弾けるわけにはいきませんよ」

 否定の言葉で返した俺に、「ちっ。そうか」と皮肉そうに笑って運転を続ける利家さん。

「ま、そっちの方がいいのかもな、お前にとって。自分じゃわからんかも知れんが……今のお前、楽しそうだし」

「そう……ですかね」

「そうだろ。俺がインターホン連打した時の反応だって、ずっと高校生のガキくさかった。昔と違ってな」

 どんな反応だったかなんて覚えてないけど、確かに、昔とは違うのだろう。違っていなくては困る。

 俺は、昔に返るつもりはないのだから。

「――って、そうじゃなくてですね。俺が言いたいのは、手伝うも手伝わないも用件次第ってことですよ。弾けることのない単調作業ルーチンワークなら、俺も手伝いますし」

 俺が言うと、運転席ではぽかんと口を開けてこちらを見る大のオトナの姿があった。

 開いた口が塞がらない、って表情でこちらを見ている。

 うわー。こんなの初めて見た。人間って本当にこんな顔できるんだ。顎が外れる寸前だ。

「って、利家さん! 前! 見てください前! 信号! 赤ですって!」

 急ブレーキをかけた車は、停止線をギリギリはみ出して止まった。勢いが止まらずに、俺の上体はかなり前へと押し倒される。シートベルトで腹痛い……。

「何やってんですか!」

「いやー悪い悪い。まさかそこまでふぬけてるとは思わなかったからさー」

「はぁ……?」

単調作業ルーチンワークをお前に任せる程、俺はサボり魔じゃねえってこった。そんな考えにまで及んでる時点で、お前に頭脳戦ブレーンワークはやらせらんねえよ」

 結果、かなりなめられているらしい。

 俺の頭脳はあてにならないってか。

「まあ、平和ボケしたお前に仕事――いや、頼み事を持ちかけようとした俺も焼きが回ってたかもな」

「ったく、俺を罵倒しに来たんですか? だったらもっと暇の潰しようもあるでしょうに……」

「悪いな。今の俺、結構暇じゃなかったりする」

 青信号に変わったところで、発車する。

 どうやら、このまま市街地から出るらしい。

「引き返すのも面倒だし、このまま連れていくことにするけどいいか?」

「どの道、選択権なんかなかったんですね……」

 戦力の投入に積極的な人だなあ。昔と変わってない。

「いいんですか? 利家さんが言うところの平和ボケした今の俺じゃあ、足手まといになるかもしれませんよ?」

「まあ、大丈夫だ。そうは言っても、俺でもカバーできるだろ」

 自信満々にそう言って、車を停める利家さん。

 彼が停車したそこは、人通りも車通りもない広場だった。元は住宅建設の資材置場だったのか、材木などという建築資材がところどころに置かれている。

「何するんですか? こんなところで……」

 問うと、利家さんは道路を挟んだ少し奥にある廃ビルの方を見つめていた。

 いや、見つめていたのは人に忘れ去られたそれなんかじゃないだろう。建物とは地図で目的地を探す為の目印でしかない。そんなところに興味を持つ利家さんではない。

 彼が見ていたのは、その廃ビルの入口にたむろしている人物たちだろう。

「早速いたぜ、お目当てさんが」

 言うなり、彼はシートベルトを外した。




 早いくらいの更新頻度を誇っていますNOTEです。

 ここまで早くしてしまうと、逆に後書きで書く内容が薄くなってしまうような気がしますね(ってか、そもそもいらんものだよな、一話ごとって)。


 今回の新章はようの過去がちょろっと出てくるようなお話に仕上がる予定かとおもいます。

 これを機に一日一更新とかを狙っているわけではないので、今度の更新は遠くなる可能性があります。くれぐれも誤解ないようにお願いします。


 1ヶ月開いてしまっていたのですが、変わらず見ていて下さる読者様がいることを信じて……。

 NOTEでした。



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