26話.訪問客からの招待
俺はソファに、所在なさげに座る。だだっ広い部屋に、他者の姿はない。
「っつか、今日はみんな、また意味もなくお寝坊さんだな……」
いいとも増刊号も始まりそうな頃になっても(チャンネルを変えた)、誰一人、起床してくることはなかった。
あの賢でさえも、である。
「せっかく、用事が舞い込んだってのに……」
意味もなく、先程受け取った封筒を手に取る。
あのあたふた娘――九一咲苗さん、だっけ――が持って来た、大きいサイズの封筒である。生徒会執行部とか言ってたっけ……。
生活部(いわゆる風紀委員だ……改名すりゃいいのに)に所属している賢に用事とは――近々、学校で大きなイベントでもあったかな?
いや、学校行事に生活部の出番はないから、もしかしたら事件でもあったのかも。
「事件ねえ……」
ま、そのことはいいか。俺には関係のない話だ。
封筒をテーブルの上に戻したところで、
ピンポーン
と、再びチャイムの音。
「今日は客が多いな……。今度は誰だ?」
また新キャラ登場じゃねえだろうな、などと考えつつ、玄関へと向かう。もしかしたら、あの娘が戻ってきた可能性も考えられる。封筒以外にも渡すものがあった、とか。ここであの娘が積極的にフラグを立てることもないだろうが……。
ピンポンピンポンピンポン~
「あー、はいはい!」
こんなにインターホン連打する人間がいるのか。あの娘ではおよそ考えられない事態だな。
けたたましく奏でられるチャイムに、スコープを覗く暇もなく、扉を開ける。
「本当に引っ越してたんだなあ、賢……ん? ああ、陽の方か」
姿を現したのは、スタイリッシュなサングラスをかけた男性だった。髪を赤く染め、無造作に乱している。黒い革ジャンにジーンズ……いかにも軽薄そうな服装と態度の人間だ。
「利家さん!」
見覚えのある人物だった。
始閣利家。
俺の知り合いの中で、一番アクティブでデンジャラスな人間だ。『人は見た目じゃない』とか言うけど、この人ほどその言葉が適用されない人間はいない。
言うのならば……やんちゃ時代の俺を、一番かわいがってくれていた人、ということだ。
「久しぶりだな、陽。おーおー、まったく丸くなっちまってまあ。出家でもしたのか?」
「頭を丸めたつもりもないし、仏門に入った記憶もありませんよ」
「いやいや。そんなことになったら、お前ほどの破戒僧もいないだろうよ。なあ、生臭坊主」
「だから、坊主じゃありませんって」
ここに来たということは、一応、客として来たのだろうから、中へと招き入れようとしたところ、
「いや、今日はお邪魔をしに来たわけじゃねえ。ただ、ちょっとドライヴといかねえか?」
と、俺を彼の車へと、逆に招待した。
文字数を減らしたら結構早く更新できるようになりました、NOTEです。
次々と矢継ぎ早に新キャラが出てくるこの頃ですが、新シリーズへと突入ということなので、結構展開が転々としていきます。
一話を短くしているので、これまで以上に気軽に読んでいただければと思います。
シーンごとに区切るというのもおもしろいものがあると気づかされました。
だからなんだって話ですが。
今回も新キャラに触れずに行こうと思いましたが……
『始閣利家』
字面から戦国武将を連想する方もいると思いますが、ただのアナグラムで考えた名前です。
視角と視野。
つまんねえ。
よっぽど無駄なことに頭を使っているNOTEでした。