25話.日曜日の訪問客
日曜日。
朝食を作らなければならない人間にとっては地獄のような日常である。朝早くから起きて全員分を作って待つという重労働だ。
「母親って偉大だなあ……」
平日には、これに加えて弁当も作っているってんだから、ほんと、頭が上がらない。
テレビを見ると、朝の子供向け番組が放送されていた。
アニメ(バトスピって何?)、戦隊もの(カードダスが喋ってる!?)、仮面ライダー(二人で一人は完全に都合悪いだろ)、プリキュア(ナナっほぅ!)。
小さな子供だったらいいだろうけど、この歳になるとこの時間まで起きられないもんなあ。どうして子供の時にはこの時間帯に起きられたんだろう……。
ま、早く寝てたからだよな。
俺は軽く目玉焼きでも作ってテーブルに置いておいた。
「あれ!? 日本菜発見が終わってる!」
日曜の朝は石ちゃんのダジャレから始めるのが定石だろうに!
俺がそんな程度のことで頭を抱えている最中、
ピンポーン
と、響き渡った。
「ん? 誰だろう?」
俺は駆け足で出ていき、扉を開けた。
「あぅ。あ、あ、あ、あのあの……」
開けた先にいたのは、隣の部屋に住んでいる女の子だった。
同じクラスじゃなかった気が……。
「あ、私、あのあの……私は……」
「…………」
「あの、私です!」
「いや、そりゃそうでしょうけど……」
あなたが俺だったら大変です。
「とりあえず落ち着いて下さいよ。確かあなた……」
「はいっ。隣に住んでます、九一咲苗って言われてます!」
「じゃあ、俺もそう言います……」
「あ、はい! ガンガン言っちゃってください!」
「いえ、用事がある時だけにします……」
なんだ、この人?
普段は九一だけど本当は違うみたいな……。
まあ、いいか。何やら知らんけど、気が動転してるみたいだし。言い間違えたってことで。
「あの! 竜崎賢さんで、あってますか?」
人違いだった。
「いや、俺は賢じゃないよ」
彼女の言葉を受け、俺は訂正で返した。
この挙動不審ぶりから見ても年上というわけではなさそうだし、敬語を解く。
すると、急に緊張の糸が解けたように「え?」と首を傾げる咲苗ちゃん。
ヤバい、カワイイ……。
小首を傾げた様子がどうにも小鳥のようで愛らしい。
頭頂部から一本、クセ毛のようなものが立ち上がってるから(アホ毛って言うっけ)、更に彼女の小鳥化を促していた。
どこか胸の苦しくなる感覚を抑え、俺は気取られぬように返す。
「賢ってのは、俺の双子の兄貴のことなんだ……。俺は陽。よろしくな」
「そう……なんですか……」
「ん? どうした? 急にうなだれちゃって。具合でも悪くなったのか?」
「い、いえ……別に」
あからさまにテンションが落下している彼女。どうしたんだろう?
「あ、そ、そうだ……。私、その賢さんに用事があって来たんです……」
見ると咲苗ちゃんは、制服姿だった。私立彩桜学園の女子の制服。彼女は言いながら、鞄の中をまさぐっている。
「これを、賢さんに渡してくれませんか?」
鞄から抜いた手には、大きな封筒が握られていた。A4サイズはあろうかという大きさの封筒だった。
「私立彩桜学園生徒会……って」
封筒の外面に書かれていた文字列を読み上げると同時に、俺の顔は驚きに溢れた。瞬間、顔を上げると……
「はい」
にっこりと微笑んだ、咲苗ちゃんがこちらに向いている。
「私は九一咲苗。私立彩桜学園の生徒会執行部に所属しています」
俺は唖然とした。
この子が……この、人見知り系ドギマギ屋さんが……生徒会執行部だなんて……。
でも、賢になんの用なんだろう。
「では、お願い、しましゅ……」
噛んでるし。
お久しぶりです、短い更新ですNOTEです。
今回は凄い期間開けてしまいました。
その結果、今回はだいぶ短い時間で書き上げてしまったという始末……。
自分としては、一話で4000文字程度を目標に書いていましたが、関係ないような気がしてきましたね……。
もう好き放題に書いちゃおうかな、みたいに思えてきたので、書きたい時に書きたいくらい書こうと思います。
元々、このお話はそんなコンセプトだったので。
さて、ここまで書くと九一咲苗さんのことに触れることができないで終わってしまいますね。
触れてしまうと、もしかしたら本編よりも長くなる気がするので、
「苗が咲くッてなんやねん!」
みたいな突っ込みは今後、たっぷりとしていきたいと思います。
次回はいつに更新できるやら……NOTEでした。