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14話.shooting star


 露原つゆはらみなととは、あまり話すことはなかった。

 当然だろう。

 俺たちは元々、彼女のプレイ風景を見に行っただけなのだから。

 しばらくとりとめもない話をした後、彼女は練習へと戻っていった。

 まぁ結局のところ、それから再開した部活動での練習試合を見ることで、俺たちは、本来の目的であるところの彼女を見ることができたわけだが。


 露原湊のそのプレイは――圧巻だった。

 目を見張るというか、舌を巻くというか……。

 露原が初めてその姿を前面にさらしたのは、ジャンプボールの時だ。紺色の、上下がそれぞれ長いジャージを脱ぎ、銀色の、肌に十分な余裕のあるユニフォームを着ていた。上着は肩口で大きく開き、ハーフパンツは膝下でダボダボと揺れる。

 いかにも動きやすそうなショートカットに、凛とした目。やや華奢きゃしゃな体つき。

 一度ちゃんと、女の子だ、と明言してくれなければただの少年にしか見えない。喋り方一つとっても、それはただひたすらに男の子のようだった。

「確かにあの体じゃあ、俊敏さでは天下なんだろうけど……」

 俺の、智里ちさとを挟んだ隣(露原がいなくなったことで一つ詰めた。俺が詰めようとしたら智里が強引に席を取りやがった)から、賢の声が聞こえてきた。

 賢の言わんとすることはわかる。というよりも大いに同感だ。

 あの子に名前を呼ばれたその瞬間から、

 すぐ隣で会話をしていたその最中にも、彼女が、智里が口頭で賞賛したスーパースターと同一人物とはとても思えない。 残念ながら、元々が互いの身長差、筋力差、体格差からの影響が激しいのがバスケの世界。

 男子ほど荒々しくないが、女子も、生まれもっての格差は変わらないのだ。

 しかしそんな俺の常識的概念は、たった数秒で、音を立てて崩れさることになる。

 笛の音を合図に、彼女は――飛んだ。

 跳び上がったのではない。

 飛び立ったと言った方がいい。

 ジャンプボールの相手はそこそこ背の高い女子だったのだが、露原の脚力は、ボールに吸いつくようなハイジャンプを見せた。

 結構な高さまで打ち上げられたボールを掌に収め、瞬時に遠くの味方へとパス。受け取ったメンバーはゴールへ。

 あっという間だった。いや、声など出る余地もない。

 見てみろよあの相手の顔。口をポカーンと開けて、眼なんかあのままじゃ干ばつ地帯になっちまうぞ。

 まぁ、この瞬間のこれが出オチではないことを、思い知らされるわけで。

 まるで呼吸をするみたいに――なんてよく聞くが、これは生理現象なんて生易しいものじゃない。

 まるでそこにいたかのようにボールを持った露原がいる。ボールを奪おうとする己の目の前に。

 そして、その一秒後には、自分の後ろに、まるでそこにいたかのように自分を抜いている。

 存在はあるのに、存在がつかめない。

 眼が追い付くスピードなのに、眼に留まらぬスピード。

 すれ違うように相手を抜いて、両手にボールを持つ――両足で踏み切った。

 飛ぶ。

 飛行する。

 上昇し、右手をゴールに入れ込んだ。

 まるで――

 そう、まるで籠の中に割れ物でも入れるかのように、そっと入れた。

「ダンクシュート!?」

 ビビった。そりゃビビるよ。高校生女子がそこまで跳んだら異常事態だ。世界を狙える(競技はわからんけど)。

 彼女は自由落下し、リングへと片手でぶら下がってこちらに、

「ぶいぶいピース!」

 と二本指を突き立てた。

 ありえねえ。

 そんな事も束の間。彼女はまたもボールの主導権を握っていた(いっそ試合の主導権も握ってると思うけど)。

 彼女のボールさばきには惚れる。ファンクラブが出来るわけだ。女子ながらもあの美少年っぷり、その上ここまでのスポーツセンスを発揮されたら、な。

 そう考える間にも3人を立て続けに抜き去った彼女は、壁を前にする。

 スリーポイントのライン上。

 巨人とまでは言えないが、そこそこ高い背の相手が、露原をすっぽり覆うように手を広げる。

 その体格差に露原は驚いたのか、両手でボールを持ってしまった。

 露原ほどの俊足でゴール前に行けるものなどそうそういない。つまり、近くに味方は皆無なのだ。

 こんな時どうする?

 抜くのか?

 無理だ。このままドリブルなんかしたら、ダブルドリブルになる。つまり――ファール。そんな根本的にして致命的ミスを犯す者はいない。

 露原ならどうする。


 彼女は跳んだのだった。


 足を前に蹴り出し、身体を後方へと傾けながら――バックステップ。そのまま、相対的に伸ばした腕から放たれたボールは、

 これまたよく聞く表現だが――吸い込まれるように、ゴールへと誘われた。

 それが当然であるように。

 そこに収まる運命のように。

 それがそのボールに宿せられた結果であるかのように。


「どうだ、竜崎陽! 凄いだろ」

 ビシッと指さされながらも、俺は硬直する。

 そんなに圧倒的なモン見せられたら、感情も感想もねえよ。

 まったく――

「凄過ぎんだよ、バーカ」


 お前のせいで。

 お前のプレイが圧巻だったせいで、

 この話がスポ根になるとこだったじゃんか。




 どうも御無沙汰しています。NOTEです。


 最近、あまり顔をださなかったせいか、このまま書かないんじゃあ……なんて声が聞こえてくる気分です。

 申し訳ありません。

 読んでくださっている皆様には、深く感謝と謝罪の念を打ち明けたいと思います。

 それに、文字数も少なくなっていると感じているのは私自身だけではないと思いますね。

 何でしょう。書きたいものを書きたいだけ書くともなると、自然と最小限に抑えてしまうのが私のクセなのでしょうか。


 まぁ、紛らわしいのも、まどろっこしいのも嫌ですよね。

 これからは、せめて1週間に1度はお目にかかれるよう努力いたします。


 NOTEでした。


 感想、評価、誤字脱字の指摘や世間話など、どんどん送ってくださいませ。

 P.S. 最後に関しては返信できかねますので……。


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