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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第45幕 刃の重み

我輩は目の前に刺さった鞘を地面から引き抜く。

なるほど。そう使えってのか。いやはや雪は我輩をよく理解してるな


「随分と正確な位置に投げられるお友達ですね。確かゆうひがおかゆうさんですかね」


男は感心していた。というかまた待ってくれている。ちょっと申し訳ない気分になりながら虎徹を鞘に納める。長さは大分余るが鞘としての機能は十分に果たしている


「あれは我輩の妹の能力さ。まぁ多くは語れないけどな」

「そうでしょうね。ワタシは敵ですから」


覚悟は決まった。どんな手を使っても勝つというかこの男を屠る!


「敵に優しくするのもどうかと思うがな。覚悟決まったから全力で来いよ」

「それもそうですね。ではお言葉に甘えて・・・!」


鎌が襲いかかる。それなりに距離が離れてるってのに刃が届くのどう考えてもおかしいよな・・・

確かに鎌のリーチは長い、でもここまでのリーチは無かったはずだ。我輩は考えながら風切に手をかけ引き抜く


「重っ!」


振り抜く時に身体が1回転しそうになるほど風切に重量があった。いつもの風切ではなくなっている。だが振り抜く一瞬だけが重く今はいつもと何ら変わりない。鎌は打ち払ったからいいけど危うく死ぬところだったな


「さっきまでの刀とは重みが違う・・・それが貴方の覚悟の重さというやつですか」

「ごめん、それは一切関係ない」

「そ、そうですか・・・」


ちょっとしょぼんとするのやめてくれ・・・本当に申し訳無くなるから。まぁ気にせず刀振らせて貰うか。風切を鞘に納め構える


「椿我流、居合、獅子式」


柄を握りながら走り出し袖から鎖を出して男に絡ませる


「一直線に向かってくるかと思いましたがまさかこういう姑息な手を使ってくるとは・・・」

「お前を屠る為にどんな手でも使うって決めたからな!」

「全てを捨ててでも勝つという訳ですか」

「全て護って勝つ。我輩は何も捨てないし手放さない!」


鎖を思いっきり引き寄せそして全力で風切を引き抜く。風切は異様に重いがその重さで加速がついて骨をも砕く一撃となった。多分こういう使い方を想定して雪が鞘に魔術式を刻んだのだろう


「骨を砕き一刀両断する居合、見事です・・・ですが骨まで斬れないのを見るとまだまだ未熟、といえますね」

「骨まで斬れるやつなんて早々居ないぜ。そんな高みに登れてたら多分ここにお前は立ってないだろうな」

「そうですね。きっともう少し先の貴方ならワタシはここにはいません」

「そいつは過大評価ってもんだぜ!」


風切を鞘に納める。そして両手を下ろし目を瞑り息を吐き出す。風が吹き抜け、渦巻き草木を揺らす音だけが感覚を満たす。

虎徹に手をかけ鯉口を切り、鞘にも風を満たす


「椿我流、居合、射手式」


虎徹に風を纏わせ目を見開き振り抜く。虎徹は振り抜く瞬間に重くなる事は無かった。むしろ軽くすんなりと振り抜ける。

風は刃の通った軌跡を追うように暴風を巻き起こしながら前へと進む。そして我輩は刀を鞘へと納めきらずにいつでも引き抜ける様に構え待つ


「遠距離攻撃ですか。ですがいささか避けやすい攻撃ですね」


男はつぶやく。これは遠距離攻撃だけでは無い。上に跳んだ姿を見えた瞬間もう一度刀を振り抜く


「なっ・・・身体がズレた・・・?なるほど風の刃を刀身から伸ばしましたか・・・」

「正解」


これは虎織と師匠の使う結の太刀を参考に色々と使いやすいようにしていった物だ。まぁ威力や範囲は結の太刀には遠く及ばないが・・・

さらに刀身に風を纏わせ袈裟斬りをする。

今回は風の刃を刀身から離し飛び道具として用いる


「くっ・・・」


一瞬赤紫色の何かが心臓付近に見えた。それはとても小さく目を凝らさなければ見えない程の物だ。それがもしかしたらやつの核となるモノ、魂のようなモノなのかもしれない。そこ目掛けて拳銃を撃ち放つが距離が遠すぎた。弾は当たることなく消えていく


「やっぱり飛距離が足りなかったか・・・!」


がしりとゴツゴツとした何かに足と腕を掴まれた。あの赤紫色の何かに気を取られて周りに注意を払っていなかった・・・

我輩を掴んでいるのは岩の腕。どうやらゴーレムクラフトというのも間違ってはいなかったようだ。だが今それが分かったところでどうしようもない


「これでお終いです!」


男の腕が目の前まで迫る。右側、心臓の位置を的確に狙ってくる。こいつは確実に殺しに来ている


「させるわけないよ」


白銀色の穂先が我輩達の間に割って入る。月奈の神殺しだ


「神薙の巫女・・・!さっきまで消耗していたというのにどうやってこの短時間で」

「お薬の力ってやつかな。やっと効いてきたみたいだからね」

「これは部が悪い様ですね。逃げるが勝ちとも言いますしこれにて失礼致します」


男は後ろへ飛び退き何処かへと逃げようとする。まだ視界の中にいる。まだ追える


「追うよ2人とも!」


月奈は我輩達に声をかけると共に男を追いかけて行く。虎織が後ろから我輩の肩を叩く。その瞬間、岩の腕は風化し土煙となり消えていった


「月奈を追いかけようか。それとさっきの戦闘お疲れ様、加勢出来なくてごめんね」


虎織は優しくそう言って我輩の手を握る。その手は少し震えている様に感じた


「あぁ、行こうか。さっきのは気にしなくてもいいさ。我輩は虎織に月奈を任せた訳だし」


虎織の手をぎゅっと握り返す。正直さっきのは死ぬかと思ったし怖かった。安心したが故にそんな感情が出てきてしまう。

我輩は虎織の手を引いて月奈を追いかける。

嫌な予感がする・・・この先って確か・・・


「やっと追いついた・・・!焦ってるのは分かるけど先に行くなよ・・・」


何とか月奈に追いつき声をかける


「あー、ごめん。将鷹、疲れてる所悪いんだけどアイツは視界に入ってる?」

「一応な」


肩が重くなり頭痛がしてきた。視界に男を捉えはしているが厄介なモノまで我輩の眼は捉えてしまっている


「ようこそ皆様!ここがワタシか君たちのどちらかの墓場となる場所!逢坂の幽霊トンネルです!」


最悪の場所で最悪な最終決戦になるのは予測が出来た。本当に気分が悪い・・・

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