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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第40幕 問答

「虎織。怪我はしてないか?」


不死の男、いや、今は女か。まぁ自称不死を無視して我輩は虎織の元へ駆け寄る


「大丈夫。将鷹も怪我は・・・してなさそうだね」

「あぁ。問題ない。っ・・・!退るぞ!」


虎織の手を掴み後ろに跳び退く。するとバン!と何かが我輩達の目の前で地面に叩きつけられ土煙が巻き上がる


「ワタシを無視して会話とは・・・その態度非常に腹立たしい!」


どうやら地面に叩きつけられたのはあの不死のスライムみたいになっている腕のようだ。足だけじゃなくて腕までスライム状にできるのか


「あー悪い悪い。あんまりにも興味無かったからつい」


虎織の前に手を出し、前方を遮る。これは我輩達の少し待っていてくれという合図だ。

できる限り相手を煽る様に我輩は言う。こういうのは頭に血が上っている方が戦い易い


「消えた人間がどうなっても良いと言うのですか!?こちらには人質が居るのですよ!」


言い方的にまだ攫われた人達は存命の様だ。我輩は袖の携帯を見えない様に通話状態にする


「人質なんて本当に存在するのか?とっくにお前の不死性の糧になってるんじゃないのか?」


鼻で笑うように相手の感情を逆撫でするように煽り続ければポロッと何か口を滑らせるかもしれない。手がかりが掴めれば禍築が答えを導き出すだろう


「その言葉後悔させてあげましょう!」


不死はそう言うと地面に手を近づけていく。

見極めろ、我輩の眼なら影から取り出すのかどうか分かるはずだ。


地面に手が着く。影は湖面のように揺れることはなく地面から何かを引きずり出した。それは痩せこけた人間で失踪者リストにあった顔だった


「この人間の首を今すぐへし折って差し上げましょう」

「地面から出てきたけどそれは本当に人間か?」


愚かしい質問だった。こんなのに引っかかるのは馬鹿だけだ


「なるほど。貴方はこれが人形ではないのかと淡い期待を持っていると」

「期待なんかしてねぇよ」

「そうですか。起きなさい人間」


バチンと人質の頬を平手打ちする。人質はビクンと肩を上げてから目と口を開く


「あのー?どういう状態ですかこれ?」


人質は意外と冷静だった。並大抵の事では動じない人なのかそれとも単純に天然気質で鈍いのか


「今から貴方の首を折って彼のトラウマになるように苦しんで死んでもらいます」

「えーそれは嫌だなー見ず知らずの人の為に死ぬの・・・」


言い切る前に不死は人質の首を片手で締め、持ち上げる。予想ではあるが数秒しないうちに月奈が来るだろう。もし来なければ我輩がどうにかする


「黙りなさい」


人質がバタバタと宙に浮いた脚を動かし苦しそうにもがく。刹那、予想通り不死の腕と人質が地面へと落ちる。その瞬間に人質に鎖を巻き付けこちら側に引っ張り虎織に預ける


「そういうのよくないなぁ・・・」


眼にも止まらぬ速さで月奈が腕を切り落とした。眼にも止まらぬはちょっと語弊があるが眼で追うのがやっとという速さというのが正しいか


「人命最優先、だよね。人の命より情報を優先するな。将鷹が前言ってたよね」

「いやーすまん。でも月奈がこうやって助けるって予想してたんでな」

「信用してくれるのは嬉しいけどさっきのは感心しないなぁ・・・」

「以後気をつける」


月奈は我輩をジト目で見る。まぁそういう目で見られても仕方ない訳なんだけど


「なんとも愚かしい・・・実に愚かしい!」


不死は腕をスライム状にして鞭のように振るう。風を切る音がガチでやばい音だ。大根とかが綺麗に真っ二つになりそうな風切音だった。下手な防御はしない方がいい、それに短刀でも。持っていかれる所か短刀の強度では真っ向から受けると砕かれてしまうかもしれない


後ろからカチンと鉄が合わさる音がした


「左に避けろ!・・・短刀握ってる方だ!」


蓮の声で我輩は短刀を持っている方へと飛び込む。

我輩は右と左が曖昧で咄嗟には判断出来ない。元々の利き手と今の利き手が違うというのもあるのだろう。

そんな我輩の弱点を知っているからこその声掛けだった


避けた瞬間、風が地面を引き裂きながら不死へと突き進み両脚を切り裂き身体が地面へと落ちる


「月奈!雷撃!」

「了解!」


月奈は槍を額の前で構え魔術式を起動させると不死に落雷が落ちスライムの欠片が飛び散る。その反動か月奈の髪がわさっと跳ねた。まぁそれは置いておいて、我輩は落雷の落ちた所に拳銃を向ける


「打ち砕き、閉せ」


言霊を乗せて引き金を引く。


「ふふっ・・・そっちはただの囮ですよ」


後ろから声が聞こえそれと同時に首に冷たい物が巻き付きぎゅっと締めつけてくる。息が出来ない・・・!苦しい、力が入らない・・・!首に巻きついた物を必死に取ろうとするものの全く離れない


「風化、破魔」


虎織の声と柏手が響く。鈴の音と共に首の何かが弾けた。巫女の術だっけ・・・?神域、又は神に関わる人間が使える魔術の一種と奏さんから借りている本に書いてあった


「助かった・・・ありがとう・・・」

「どういたしまして」


多分まともに言えていなかっただろうが虎織はそう言って笑った


「これかなり厄介なんじゃないか・・・?」

「どうした蓮?」

「周り見てみろよ」


周りを見渡すと不死が何体にも別れ我輩達を取り囲んでいた


「もう向こうにリソースを割く必要が無くなったのなら貴方達をここでひねり潰してあげましょう!」


確かにこれは厄介だ。打開策を考えないとこれはしんどいぞ・・・

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