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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編
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第34幕 貸し

「あっ、将鷹、おはよう」


血塗れの月奈が首をこちらに向けて言う。その眼は虚ろで死にかけているようにも見える


「月奈それ以上喋るな!おい不死野郎!月奈にこんな事してタダで済むと思うなよ・・・!殺して、殺して、死ぬまで殺してやる・・・!」

「・・・将鷹、心配させてごめん。私、無傷なんだ」


えっ・・・?マジで?それ全部返り血?えぇ・・・


「いや、でもそいつ首落としても血が出なかったんだけど・・・」

「あーこれね、日照様が痛覚とかその他諸々を付与したんじゃないかな。それと貸し2だってさ」


よりにもよって日照かよ・・・しかも貸し2って何されるか分からないな・・・いや、分かってるんだけど分かりたくない


「そうか。せめて天照様に助けて貰いたかったもんだ・・・ゲーム付き合うだけで済むし・・・」

「本音ダダ漏れだね」


月奈はそう言いながら槍を不死の男にグサリと刺す。ノールックで的確に首刺すの怖すぎない?月奈を敵に回すとやばいな・・・朝、相対した訳なんだけど・・・よく生きてたな


「あの、吉音さん・・・ノールックで当然の様に首をぶっ刺すのやめて、めっちゃ怖いから」

「えっ?あぁ、ごめん。というか苗字にさん付けはやめてね。やたらと距離置かれた感あるから」

「あぁ、悪い、冗談とは言え行き過ぎたな」


瞬間、どこからともなく現れた大きな刃物が月奈に襲いかかろうとしていた


「ヘラヘラと笑ってんじゃねぇぞ!何回ワタシを殺せば気が済むと言うんだ!」

「貴方が死ぬまでかな!」


月奈は答えると共に神殺しを男から引き抜きもう一度男に突き立てようとする。普通は刃物の方を防ぎに行くだろうに!


我輩は走り月奈と刃物の間に入り腕に鎖を巻き付け刃物を受け止める。その一撃は非常に重く、まるで十数人もの人が大きな何かを振り下ろした様な物だ

鎖は軋みながら限界を訴え、身体は今にも吹き飛びそうだった。不死身な上に怪力とは随分と厄介だ


「もってあと2秒!」


今はこの言葉を絞り出すので精一杯だ。

月奈は槍を刺す手を止めその場から跳び退く。腕に巻いた鎖は一部に亀裂が走り、砕けて地面へと落ちる。回避が間に合わない・・・!こんなの食らったら胴体真っ二つだぞ!何か手を探せ・・・!


もう間に合わない、そう思った瞬間だった


「貸し3やねー」


声と共に真っ黒なフリルの付いたゴシックアンドロリータのような袖から伸びる陶器のような白い腕が刃物を掴み止める


「日照様・・・ありがとうございます」

「あったりー、いやー(しょう)ちゃんなら分かってくれる思てたけどノータイムで答えてくれるのはえぇもんやね。あと礼には及ばんよ、わてが好きに助けただけやから。あぁ、でも貸しはきっちりその身体で返してぇな、それはそうと前から言うてる様にわてに様は付けんでえぇよー。わてと将ちゃんの仲やしなぁ?」


暗闇からヌルりと顔を出す日照様はいやらしくにたりと口角を上げ、まるで蛇のような眼で我輩を見る。正しく蛇に睨まれた蛙の気持ちがよく分かる状態だ。我輩は動きも出来ず声も出せない


「喋ってえぇよー。こんな蛇の眼で口も開けんようになるんはあかんよ。でもまぁこれで見つめたら抵抗できん様になるから直さんでもえぇか・・・うーんでも死んでもらっても困るしなぁ」

「ちなみに今回もまさかとは思いますけど・・・」

「あっはっはっは!わてが将ちゃんにやらせる事言うたら1つだけやろ?新しいのも増えとるから楽しませてもらうで?身長も体格も前からそないに変わっとらんからサイズは大丈夫そうやし。あと、虎ちゃん連れてきいなー」


ヌルッと日照様は暗闇へと消えていく。なんとか命は繋がった。日照様が居なければ我輩はもうここに立っていなかっただろう


「またも神に邪魔をされるとは・・・!本当に、本当に腹立たしい!」


不死男は起き上がると何かモヤのかかった大型の武器だと思われる物を構えて怒り、叫ぶ。

凄まじい怒気と共に男の身体はボコボコと膨れ上がり2mを越えるであろうがっちりとした大男へと変貌を遂げていた


「まだ進化残してそうな感じだな」

「あと2回かな?」


我輩のちょっとしたおふざけに月奈が乗っかる


「最後はスッキリした感じに進化するパターンだよね」


後ろから虎織の声が聴こえた。どうやら目が覚めたみたいだ


「おはよう。寝起きのところ悪いけど早速力を貸してくれ」

「うん、おはよう。りょーかい!月奈と私で前出るから将鷹はバックアップ頼めるかな。月奈、それでいいよね?」

「異論なーし。さっさと倒しちゃおう」

「問題はどうやって不死性を剥がすかだな・・・まぁどうにかするしかないか・・・あと月奈、攻撃を優先するのは良くないからな。お陰で死にかけたぞ」

「反省してます・・・」

「それならよろしい。アイツの武器、我輩は刃の部分しかきっちり見えてないから細心の注意を払ってくれ。多分鎌だとは思うんだけど・・・っな!」


向かってくる刃を腰に差した刀を振り抜いて弾く。やはり弾くだけでも一苦労な程に刃は重い。手がジンジンと痺れ、刀を落としそうになるのを堪え平然を装う。

今は訓練なんかじゃない。本気の殺し合いだ。当然話し合いの最中でも攻撃してくるのが当たり前なのだ



「やっぱり我輩も前出るわ。これは3人で護り合いながら戦った方がいい」

「じゃあ3人で切り刻みにいこうか!」


月奈の声と共に我輩達はそれぞれの武器を構え走り出す

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