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華姫奇譚  作者: 葛籠屋 九十九
第2章不死殺し編

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第31幕 集合

「よし、準備完了だな」


我輩は自分の部屋にある姿見で全身を映して確認する。

白の長襦袢に黒い片袖の羽織、紺色の袴。大事な事がある時に着る正装扱いの服に身を包み、親指以外の各指に十の願い事をはめて、首に残りの2つを紐で結び掛け、虎徹を腰に差す。


そして部屋にある本棚を少し強めに叩き本棚を回転させ後ろに隠してある狙撃用の銃、VSR-10を取り出し担ぐ。普段ならこれを担いで行くことなんてないんだが今日は珍しく使う気になった。使ってはいなかったが手入れはきっちりとしてある為問題はない。


「弾も大丈夫。まだ使えるな・・・」


袖に弾の入った箱を入れてから我輩の横の部屋、この家の元主にして我輩の祖父、風咲幸三郎の部屋へと足を踏み入れる。

そこは本が積み上げられた机と大きな本棚に爺様の仏壇が置いてあるだけの部屋だ


「爺様・・・いや、じいちゃん。頑張ってくるよ」


仏壇に手を合わせて我輩は部屋を出て玄関へと向かい虎織を待つ



「虎織、準備はいいか?」

「うん。将鷹も忘れ物は無い?」


虎織はいつもの正装である綺麗な空色の着物を着て真打虎徹を手に持っていた


「大丈夫だ。じゃあ行こうか。あんまり待たせると琴葉ちゃん怒るし」

「そうだね」

「乗り心地悪いかもだけどショートカットするから抱えるぞ」

「えっ、いいの?今の私ちょっと重いよ?」

「大丈夫。虎織くらいなら余裕で持ち上げて運べるし」

「それならお言葉に甘えて」


虎織を抱えると確かにいつもよりは重かった。多分着物の下に何かしらの仕掛けを仕込んでいるな。でも虎織自体軽いためこれくらいは苦でもない


「じゃあしっかり捕まっておいてくれよ!アリサ、行ってきます!」

「はーい!行ってらっしゃい!うちも後で追いつくけぇ!」


アリサの返事が返ってきてから我輩は魔術式を蹴り夜の空を駆けていく



門の前には既に桜花さん、ヴァンさん、ローズさん、日々喜さん、百合コンビ、琴葉ちゃん、月奈、それに雪が既に待っていた


「全員来たわね。それじゃあよく聞きなさい」


琴葉ちゃんは我輩達を見て直ぐに言葉を紡ぐ


「とりあえず将鷹は跪きなさい」


全身が何かに押さえつけられるように我輩は膝をつかされた。

これが琴葉ちゃん、というよりは市長に与えられた権限、命令遵守だ。

どんな無茶振りだろうが部下である我輩達は琴葉ちゃんに逆らう事は出来ない。何か命令違反をしようとした場合は強制的にそれが正される


「琴葉ちゃん、なんで我輩を実験台にするんだよ・・・!」


さっきの一言は試運転というかきっちりと機能するかの確認だ。琴葉ちゃんはこれを好んで使うという事はない。だいたいは頼まれた時だけだ


「1番効きにくいやつに言うのが最適だと思っただけよ。もう膝をつかなくてもいいわ」


そう言うと琴葉ちゃんは大きく息を吸い叫ぶ


「皆、生きて帰ってきなさい!そして必ず華姫を護り抜く事!」


普通の琴葉ちゃんなら有り得ない声量で我輩達に命令を下す。鬼気迫る表情なのにどこか優しさがある、これぞ我輩達のリーダー、綺姫琴葉の最大の特徴とも言える


「よし、それじゃあ行ってきます!」


我輩は走り出そうとしたが肩を掴まれそのままバランスを崩しかけてしまった。肩を掴んだのは雪だった


「あっぶなっ!雪、どうした?」

「ちょっとだけそのまま直立しててね」


雪は背伸びしてグイッと鼻と鼻が当たる程の距離に顔を近づける


「ゆ、ゆき?」

「将鷹、そのモノクル単体で使っちゃダメだよ。お爺さんの形見のモノクルなんだろうけどそれは危ないよ」

「なんでそれを・・・」


そう、この千里眼の片眼鏡は自らの視力を先取りして継ぎ足すだけの代物なのだ。一瞬使うだけならと思ったが止められてしまった


「お父さんが僕に言ったんだ。将鷹はこういう時にそのモノクルを着けるかもしれない、その時は釘を刺しなさいって。そのモノクルは肩代わりのスカーフが見つかるまで僕が預かるよ。その代わりこれ、僕からのささやかなプレゼント。モノクル程じゃないけどそれなりに遠くが見えるんじゃないかな?」


雪はそっとモノクルを外してからポンと我輩の手に長い筒状の物を握らせる。

どうやらスコープのようだ。それも我輩が使っていたスコープよりも倍率が高くより遠くを見ることができる代物だ


「あっ、今渡しても工具無いよね。付けるから30秒そのライフル貸して貰ってもいい?」

「付けてくれるのか?」

「うん!僕に任せて!この為にここに来たんだし!」


雪はそう言うとドンと来い!と胸を叩く。全く、頼もしい整備士だ・・・


「それじゃあ頼む」


VSRを雪に渡すとポケットからプラスドライバーやマイナスドライバーを取り出し手際よくスコープを付ける。

30秒と言ったものの多分20秒もかからず取り付け終えてしまった


「でーきた!それじゃ頑張ってね!」

「おう。あっ、1つ頼まれてくれるか?」

「何かな何かな?僕にできる事ならなんでも言って」

「アリサがあとからここに来ると思うからその時は近くで守ってやってくれ」

「合点承知!さぁさぁ、虎織が待ってるから行ってきなよ!」

「あぁ、行ってくる!」


我輩達は門の上に跳び乗り遠くを眺める


「すごい数だね・・・」


わらわらと遠くでおびただしい量の何かが蠢いているのが見える


「そうだな。でもどうにかなる範囲のはずだ」

「うん。今日は後方支援よろしくね」

「任せろ」


我輩は虎織を抱えて蠢くモノの近くまで跳ねて行く。

丁度いい高台があった為そこに陣取ることにした


「虎織はここで我輩を護ってくれるか?」

「もちろん。どんな所でも将鷹は私が護ってあげる。たとえ地獄の底だろうと夢の中であってもね!」

「それは心強い。それじゃあ頼むぜ相棒」

「任された!」


力強い虎織の応えを聞いて我輩はスコープを覗きながら引き金に指をかけた

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